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louis 2019-10-25 16:53:25 -04:00
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@ -0,0 +1,179 @@
{
"329000011_0": "夢の中の君",
"329000011_1": "「…………」",
"329000011_2": "「これで前回までの戦闘データの解析は終了、と」",
"329000011_3": "「装者のみなさんの戦術評価を共有領域にアップロードして……」",
"329000011_4": "「あと他に、やっておくべきことは……」",
"329000011_5": "「そうだ。溜まっている並行世界経由の資料を整理して\\n 情報をアップデートしておかないと……」",
"329000011_6": "(いつまた並行世界で次の事態が発生するとも知れないし……、\\n 今、ボクにできることを全力で――",
"329000011_7": "「……うッ」",
"329000011_8": "(流石に、徹夜続きで少し疲れたかな)",
"329000011_9": "(でも、休んでいる余裕なんてない)",
"329000011_10": "(もし今、ボクが気を緩めたことで、\\n 次の事態への準備が間に合わなかったら――",
"329000011_11": "(ボクはきっと、後悔することになる)",
"329000011_12": "「もっと、みなさんのお役に立てるように……」",
"329000011_13": "(今の状況で考え得ることは全てやりきって、\\n 不測の事態にも対応できるよう万全の準備をしておかないと",
"329000011_14": "(せっかくキャロルの残してくれたこの身体なんだから、\\n キャロルの分も……",
"329000011_15": "(……みなさんの、役に……)",
"329000011_16": "「……がんばら、ない、と……」",
"329000011_17": "「……」",
"329000011_18": "「…………」",
"329000011_19": "「ここ、は……?」",
"329000011_20": "「…………」",
"329000011_21": "「まさか、キャロル?」",
"329000011_22": "「ああ。久方ぶりだな、エルフナイン」",
"329000011_23": "「そんな、どうして……?\\n だってキャロルは……」",
"329000011_24": "「……そうか。これは夢なんですね」",
"329000011_25": "「…………」",
"329000011_26": "「キャロル……ボクは、君にも生きてほしかった」",
"329000011_27": "「ううん。どちらか1人しか生き残れないなら、\\n 君が生き残った方が、きっと、みんなの役に立てたはず」",
"329000011_28": "「……それは否だ」",
"329000011_29": "「想い出を焼却し尽くし、抜け殻となったオレには、\\n お前に与えた以上の知識など、残されてはいなかった」",
"329000011_30": "「それに……パパの命題を理解していなかったオレには、\\n 最早、生きる資格など……」",
"329000011_31": "「キャロル……」",
"329000011_32": "「…………」",
"329000011_33": "(これは、本当にキャロルの言葉なんだろうか?)",
"329000011_34": "(それともボクが、記憶の中のキャロルの姿を再構築して、\\n そう言わせているだけ",
"329000011_35": "「キャロル……ボクは……」",
"329000011_36": "(もしキャロルに会えたなら、話したいことも、伝えたいことも、\\n 聞きたいことも、たくさんあったはずなのに……",
"329000011_37": "(いざという時に、何も言葉にならないなんて)",
"329000011_38": "(ボクはどうして、いつもこうダメなんだろう)",
"329000011_39": "「言葉など。問いなど。\\n 今更、不要だろう」",
"329000011_40": "「オレはお前と共に在る。\\n だから、全ての答えはお前の中に在るはずだ」",
"329000011_41": "「えッ!?」",
"329000011_42": "「キャロル、それは、どういう――?」",
"329000011_43": "「…………」",
"329000011_44": "「待ってキャロルッ! ボクは――ッ!」",
"329000011_45": "(えッ……ここは……)",
"329000011_46": "(チフォージュ・シャトーの……中?)",
"329000011_47": "(間違いない。でも、どうして……?)",
"329000011_48": "(シャトーなら、とっくに崩壊したはず)",
"329000011_49": "(これは、さっきの夢の続き……?)",
"329000011_50": "(キャロル……それに、ファラたちまで)",
"329000011_51": "「つまり、オレの命令が受け容れられぬと言うのか?」",
"329000011_52": "「ええ……その通りです」",
"329000011_53": "(話している相手は、誰……?)",
"329000011_54": "(術式を? それに、あれは……)",
"329000011_55": "(ダインスレイフッ!?)",
"329000011_56": "「黒騎士……、\\n 魔剣ダインスレイフを触媒に召喚したのか……」",
"329000011_57": "「あーららッ。マスターを本気にさせちゃったー♪」",
"329000011_58": "「ふむ。色こそは地味だが、仰々しいナリをしている」",
"329000011_59": "「ええ。魔剣の呪いを具現化したかのような、禍々しい姿ですわね」",
"329000011_60": "「黒くておっきければいいってモンじゃないんだゾ?」",
"329000011_61": "「あくまで抗うならば、いいだろう」",
"329000011_62": "「身の程というものを、改めて脳髄に刻んでやるまでだッ!」",
"329000011_63": "「あーららッ。マスターを本気にさせちゃったわー♪」",
"329000011_64": "「だが、マスターの御手を患わせるほどではない」",
"329000011_65": "「ええ。まずは私たちがお相手しましょう」",
"329000011_66": "「言うこと聞かない悪い子はお尻ペンペンだゾッ!」",
"329000011_67": "「はッ!」",
"329000011_68": "「この数を弾くかッ!?」",
"329000011_69": "「あたしの水流も同じように弾けるかしら?」",
"329000011_70": "「クソッ、でかい図体でちょこまかとおッ!」",
"329000011_71": "「そうくると思ったゾッ!」",
"329000011_72": "「トドメは頼んだゾッ!」",
"329000011_73": "「任せなさい」",
"329000011_74": "「剣と定義されるモノならば、私の敵ではありませんわ」",
"329000011_75": "「さあ――砕け散りなさいッ!」",
"329000011_76": "「私の剣戟を、腕で受けたッ?」",
"329000011_77": "「くう――ッ!?」",
"329000011_78": "「奴め、ファラのソードブレイカーの特性を?」",
"329000011_79": "「しかもあの鎧、無茶苦茶硬そうだゾッ!」",
"329000011_80": "「どれ程硬かろうがッ!\\n 動きを止め片端から削り取ればいいだけの話ッ」",
"329000011_81": "「さっすが、マスター♪」",
"329000011_82": "「今のうちにタコ殴りだゾッ!」",
"329000011_83": "「ゲゲッ!? こいつ、マスターの糸を――」",
"329000011_84": "「力任せに千切っただとッ!?」",
"329000011_85": "「クッ……想像以上の出力だ」",
"329000011_86": "「いかがなさいます?」",
"329000011_87": "「面倒だ。最大出力でカタをつける。\\n それまでお前たちで牽制しろ」",
"329000011_88": "「承知ッ!」",
"329000011_89": "「お任せあれッ!」",
"329000011_90": "「やれやれ面倒だゾッ」",
"329000011_91": "「一撃一撃はいなせても――」",
"329000011_92": "「みんなで山ほどお見舞いすればッ!」",
"329000011_93": "「躱しきれはしないでしょうねッ!」",
"329000011_94": "「いくらなんでも頑丈過ぎるんだゾッ!」",
"329000011_95": "「だが、足さえ止まれば事足りるッ!」",
"329000011_96": "「ギギッ!?」",
"329000011_97": "「やりぃッ!」",
"329000011_98": "「マスターッ!」",
"329000011_99": "「よくやった、お前たち」",
"329000011_100": "「痴れ者どもめ――諸共に滅ぼし尽くしてくれるッ!」",
"329000011_101": "「フ……できるものですか」",
"329000011_102": "「なんだとッ!?」",
"329000011_103": "「こ、これ、は……反転術式だとッ!?」",
"329000011_104": "「貴様、予めこの準備を――」",
"329000011_105": "「なんの策も持たず、あなたの前に身を晒すとでも?」",
"329000011_106": "「お、おのれ、小癪な――」",
"329000011_107": "「ぐあああああッ!?」",
"329000011_108": "「いけませんわッ! 魔力がマスター自身に逆流をッ!」",
"329000011_109": "「だが、これでは手の出しようがないッ!」",
"329000011_110": "「クッ……こ、この程度の術式でッ!」",
"329000011_111": "「このオレの力を……凌駕できる、などと――ッ!」",
"329000011_112": "「高をくくったかあ――ッ!」",
"329000011_113": "「マスター……想い出の焼却をッ!?」",
"329000011_114": "「その出力の上限は天井知らず。\\n だが――」",
"329000011_115": "「燃やせば燃やすほど、みんな忘れてしまうんだゾッ!」",
"329000011_116": "「流石にそれはマズいですってッ!」",
"329000011_117": "(ダメだよ、キャロルッ! それだけは――)",
"329000011_118": "「無駄です」",
"329000011_119": "「力を注げば注ぐほど、それは己が身を戒め、苛むだけ」",
"329000011_120": "「がああああ――ッ!!」",
"329000011_121": "「がッ!」",
"329000011_122": "「う……ううッ……」",
"329000011_123": "「マスターッ!」",
"329000011_124": "「マスターを救うぞッ!」",
"329000011_125": "「任せるんだゾッ!」",
"329000011_126": "「いたッ!? なんか見えない壁があるんだゾッ!」",
"329000011_127": "「結界ッ! テンメエ、いつの間にッ!?」",
"329000011_128": "「人形たちはそこで黙って見ていなさい」",
"329000011_129": "「クッ! なんという強力な結界ッ!?」",
"329000011_130": "「よほど前から周到に準備をしていたようだな」",
"329000011_131": "「あんな奴に、チフォージュ・シャトーの管理をさせてたなんて、\\n マスター、後で抗議させてもらいますよッ」",
"329000011_132": "「そんなことより、アイツが暴れ出しそうだゾッ!」",
"329000011_133": "「マズッ! 黒騎士がッ!」",
"329000011_134": "「マスター、退避をッ!」",
"329000011_135": "「うう……」",
"329000011_136": "(いけませんッ!)",
"329000011_137": "(キャロル……逃げてッ!)",
"329000011_138": "「マスターッ!!」",
"329000011_139": "「人形どもが、結界をッ!?」",
"329000011_140": "「やらせるものかッ!」",
"329000011_141": "「お前の相手はあたしらだゾッ!」",
"329000011_142": "「お前たち……」",
"329000011_143": "「マスター、この場は退避を」",
"329000011_144": "「このオレに逃げろというのかッ!?」",
"329000011_145": "「ここは今や周到に準備された狩場。\\n 他に仕込みがあってもおかしくありませんわ」",
"329000011_146": "「ひとたび退いて、立て直すべきかと」",
"329000011_147": "「己が領域で、なんたる屈辱……」",
"329000011_148": "「だが、認めざるを得ないか……」",
"329000011_149": "「退くぞ、お前たちッ!」",
"329000011_150": "「なッ!? 転送ができぬだとッ!?」",
"329000011_151": "「千載一遇のこの機会、逃すとでも?」",
"329000011_152": "「どこまでも小癪ッ!」",
"329000011_153": "「ならば退路は私たちが支えます。\\n マスターは先に退避を」",
"329000011_154": "「馬鹿を言うなッ!」",
"329000011_155": "「馬鹿なんて言ってませんよ。マスターのために身体を張るのが\\n わたしたちの役目なんですからー」",
"329000011_156": "「マスターが倒れれば、計画は全て水の泡」",
"329000011_157": "「その大望、ここで潰えさせるわけには参りません」",
"329000011_158": "「後でご褒美もらうんだゾッ」",
"329000011_159": "「だからッ! さあ、早くッ!」",
"329000011_160": "「お前たち……」",
"329000011_161": "「わかった……」",
"329000011_162": "「ここまで追い詰めて逃がすものかッ!」",
"329000011_163": "「悪いけれど、もう少し付き合っていただきます」",
"329000011_164": "「私たちの死の舞踏にねッ!」",
"329000011_165": "「人形風情がッ!」",
"329000011_166": "「はッ!?」",
"329000011_167": "「ここは……ボクの、研究室……」",
"329000011_168": "「やっぱり夢……だったのか」",
"329000011_169": "(それも、2つも立て続けに……?)",
"329000011_170": "(1つ目は、キャロルと話した夢)",
"329000011_171": "(そして、2つ目は……キャロルたちが誰かと戦う夢)",
"329000011_172": "(1つ目はともかく、2つ目は、\\n 明らかにボクの記憶でも、願望でもない……",
"329000011_173": "(それなのに、あの現実感は、一体……)",
"329000011_174": "「なんだか、胸騒ぎがする……」",
"329000011_175": "(夢かもしれないけど、キャロル……)",
"329000011_176": "(どうか、無事でいて……)"
}

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@ -0,0 +1,27 @@
{
"329000111_0": "強襲、オートスコアラー",
"329000111_1": "「怪事件……?」",
"329000111_2": "「ああ。ここ数日、今までの事件にない症状の被害が\\n 立て続けに起きていてな」",
"329000111_3": "「そりゃまた、どんな?」",
"329000111_4": "「何者かに襲われて昏倒した犠牲者の意識が、\\n ずっと戻らないんだよ」",
"329000111_5": "「昏睡状態? 外傷は?」",
"329000111_6": "「転倒した際についたと思しきかすり傷以外は、\\n つ無かったようです」",
"329000111_7": "「けれど、幾ら刺激を与えても意識は覚醒しないのよね……」",
"329000111_8": "「まるで魂が抜かれた様だったと」",
"329000111_9": "「それって、命に別状はないのか?」",
"329000111_10": "「今の所はね。けれど、生体活動は極めて低いレベルよ。\\n 放っておけば、そのまま衰弱死もあり得るわ」",
"329000111_11": "「厄介だな……」",
"329000111_12": "「それで、原因の目星は?」",
"329000111_13": "「今の所は何も手がかり無しだ」",
"329000111_14": "「何かの新しい病気って線は?」",
"329000111_15": "「完全には否定できないけど、\\n 病原菌やウイルスの類いは検出されなかったわ」",
"329000111_16": "「それに、事件の前後にアルカ・ノイズも確認されていることから、\\n 特異災害絡みであることは間違いないだろう」",
"329000111_17": "「じゃあやっぱ、どこかに黒幕がいるってことか……」",
"329000111_18": "「恐らくな」",
"329000111_19": "「アルカ・ノイズの反応を検知ッ!」",
"329000111_20": "「座標、出しますッ!」",
"329000111_21": "「各所、通達を急げッ!\\n 奏、行けるなッ」",
"329000111_22": "「もちろんッ!」",
"329000111_23": "「一連の怪事件との関連も疑われる。油断するなよッ!」",
"329000111_24": "「ああ、わかったッ!」"
}

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@ -0,0 +1,36 @@
{
"329000121_0": "「はあああ――ッ!!」",
"329000121_1": "「ふう……一丁上がり、とッ」",
"329000121_2": "「た、助かった……」",
"329000121_3": "「ありがとう、お姉ちゃんッ!」",
"329000121_4": "「ああ」",
"329000121_5": "「それより、まだ他に敵がいるかもしれない。\\n 早く避難を――」",
"329000121_6": "「あらあら……。\\n 誰かしら、野暮な邪魔立てするおバカさんは」",
"329000121_7": "「誰だッ!?」",
"329000121_8": "「先に聞いたのはあたしなんだけど?\\n オウム返しなんて、輪を掛けたおバカさんね」",
"329000121_9": "(消えたッ!?)",
"329000121_10": "「ひいッ!?」",
"329000121_11": "「パパッ!?」",
"329000121_12": "「フ……いっただきまーす♪」",
"329000121_13": "「な、何をッ!?」",
"329000121_14": "「ぐあああ……」",
"329000121_15": "「フフッ……御馳走様っと」",
"329000121_16": "「…………」",
"329000121_17": "「パパ……パパあッ!」",
"329000121_18": "「あーら。\\n お子ちゃまにはちょっと刺激が強すぎたかしらん」",
"329000121_19": "「いやあッ! パパッ! パパああああッ!」",
"329000121_20": "「うっせーなッ! ギャーギャー喚くなッ!\\n 心配しなくてもお前もすぐ後を追わせてやるってのッ」",
"329000121_21": "「やめろッ!」",
"329000121_22": "「お、お姉ちゃんッ!」",
"329000121_23": "「邪魔するなって、何度言ったらわかるのかしらぁ、\\n このおバカさんってば」",
"329000121_24": "「その姿に動き――お前、オートスコアラーか?」",
"329000121_25": "「あらやだ。あたしらのこと知ってるの?」",
"329000121_26": "「そうか……最近起きている事件の犯人はお前たちか?」",
"329000121_27": "「さーてどうかしらね?」",
"329000121_28": "「で。もしそうだとしたら、どうするっていうのかしら?」",
"329000121_29": "「決まってる、お前を倒してこの件を解決するだけだ」",
"329000121_30": "「あーら、おっもしろい冗談ね♪」",
"329000121_31": "「できもしないことを口にするなんて――」",
"329000121_32": "「吠え面かいても知らないわよッ!」",
"329000121_33": "「そいつはこっちのセリフだ――ッ!」"
}

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@ -0,0 +1,27 @@
{
"329000131_0": "「フフ……おバカさんにこれが見破れるかしらッ!」",
"329000131_1": "(これは――分身ッ!?)",
"329000131_2": "「なら実体は――そっちだッ!!」",
"329000131_3": "「ぎゃッ!?」",
"329000131_4": "「こ、こいつ……あたしの水分身を見破っただとッ?」",
"329000131_5": "「一体なんなんだ、お前はぁッ!?」",
"329000131_6": "「だから言っただろう。\\n 吠え面かくのはお前だってなッ」",
"329000131_7": "「ちいッ!」",
"329000131_8": "「何を手こずっているのかしら?」",
"329000131_9": "「なッ?」",
"329000131_10": "「手こずってなんて。少し遊んでやってただけじゃない」",
"329000131_11": "「敵の増援かッ!?」",
"329000131_12": "「それにしては、余裕がなかったようですけれど?」",
"329000131_13": "「ちょっと油断しただけですよ」",
"329000131_14": "「何を余計なものに引っ掛かっているのだか」",
"329000131_15": "「グズグズしてるとマスターに叱られるんだゾ?」",
"329000131_16": "「わかってるっての。\\n ちゃっちゃと倒して偽物を探すわよ」",
"329000131_17": "(偽物? 探す? なんのことだ?)",
"329000131_18": "「さあ。今度こそお仕舞いにするわよ、おバカさん?」",
"329000131_19": "「1対4、か……上等だあッ!」",
"329000131_20": "「なんなのよ、この炎はッ!?」",
"329000131_21": "「下手するとあたしよりもあっちっちぃだゾ?」",
"329000131_22": "「光と共に、纏う装束も変化しましたわ」",
"329000131_23": "「なかなか派手な趣向だな。気に入ったッ!」",
"329000131_24": "「さあ、もう1番つきあってもらうぞッ!」"
}

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@ -0,0 +1,44 @@
{
"329000132_0": "「くッ!」",
"329000132_1": "「ほらほら、どうしたの? さっきまでの威勢はあッ!」",
"329000132_2": "(こいつら、連携が上手いッ!)",
"329000132_3": "(せめて1対1に持ち込めたら――)",
"329000132_4": "「無理をするな、奏ッ!」",
"329000132_5": "「ダンナッ!?」",
"329000132_6": "「一旦退いて体勢を立て直せッ!」",
"329000132_7": "「退けるかよッ!」",
"329000132_8": "「護らなきゃいけない人間がまだこの周りにいる……」",
"329000132_9": "「この場を引いたら、あたしは戦士失格だッ!」",
"329000132_10": "「潔いのは嫌いじゃないですわ」",
"329000132_11": "「だが悲しいかな、蛮勇に過ぎぬ」",
"329000132_12": "「我慢比べもそろそろお仕舞いだゾッ!」",
"329000132_13": "「クク……今度こそバラバラに引き裂いてあ・げ・る♪」",
"329000132_14": "「くッ!?」",
"329000132_15": "「じゃあね。バイバイ、おバカさん」",
"329000132_16": "「ってことで――\\n 死にさらしゃ――――ッ」",
"329000132_17": "「ちいッ!!」",
"329000132_18": "「がはッ!?」",
"329000132_19": "「だッ、誰よ、邪魔したのはッ!?」",
"329000132_20": "(援護? だけど、一体誰がッ?)",
"329000132_21": "「今の攻撃は……」",
"329000132_22": "「ああ。この反応、間違いない」",
"329000132_23": "「チッ、そういうこと?」",
"329000132_24": "「ええ、見つけましたわ。追いますわよ」",
"329000132_25": "「仕方ないんだゾ」",
"329000132_26": "「どこへ行くつもりだッ!? 決着はついてないぞッ!」",
"329000132_27": "「五月蠅いわねえ」",
"329000132_28": "「こっちは予定外のおまけなんかに\\n 構っている暇なんてないのよッ」",
"329000132_29": "「待てッ!!」",
"329000132_30": "「追うな、奏ッ!」",
"329000132_31": "「止めてくれるな、ダンナッ!」",
"329000132_32": "「せっかく敵が尻尾を見せたんだッ!\\n ここで逃がす手があるかッ」",
"329000132_33": "「敵の力量も目的もわからぬ状態の上、多勢に無勢。\\n ミイラ取りがミイラになるぞッ」",
"329000132_34": "「今の戦いでダメージも相当蓄積しているはずよ。\\n 無茶しないでッ」",
"329000132_35": "「これくらいの傷、問題ないッ!」",
"329000132_36": "「逆上せあがって目的をはき違えるなッ!\\n 最優先事項は市民の安全だッ」",
"329000132_37": "「それはいみじくも先刻お前が言った事だろうッ!」",
"329000132_38": "「それは……そうだけど……」",
"329000132_39": "「……周辺の避難誘導はもうじき完了する。\\n それを見届けてから戻ってこい」",
"329000132_40": "「……わかったよ。\\n 避難完了を見届け次第、撤収する」",
"329000132_41": "「クソ……。\\n 一体なんだってんだ、あいつらは……」"
}

View file

@ -0,0 +1,78 @@
{
"329000211_0": "消えゆく想い出",
"329000211_1": "「お呼びでしょうか、局長」",
"329000211_2": "「今度はどんな問題が発生したワケダ?」",
"329000211_3": "「なーんか嫌な予感がするんだけど」",
"329000211_4": "「心外だね、そんなに警戒されるなんて」",
"329000211_5": "「日頃の行いの帰結というワケダ」",
"329000211_6": "「はは。できないね、否定は」",
"329000211_7": "「ともあれ。よく来てくれた、3人とも」",
"329000211_8": "「ご用件はなんでしょうか?」",
"329000211_9": "「せっかちだね、君たちは」",
"329000211_10": "「現れたのさ、協会が長年追い続けてきた、\\n 例のはぐれ者がね」",
"329000211_11": "「長年……というと、まさかキャロルッ!?」",
"329000211_12": "「いいね、察しが。その通りだよ」",
"329000211_13": "「キャロル・マールス・ディーンハイムッ!\\n とうとう尻尾を掴んだというワケダッ」",
"329000211_14": "「で、どこに隠れてたのよ?」",
"329000211_15": "「馴染みの地だよ、君たちにとっても」",
"329000211_16": "「まさか――」",
"329000211_17": "「その通り。日本さ」",
"329000211_18": "「また日本……妙な因縁というワケダ」",
"329000211_19": "「嫌な予感が当たりそう……」",
"329000211_20": "「それで、どういった処遇を?」",
"329000211_21": "「捕縛しなければね、はぐれ者は」",
"329000211_22": "「理解してもらわねば、僕らの理想を。もう一度ね」",
"329000211_23": "「眠たいことを言うワケダッ!」",
"329000211_24": "「落ち着け、プレラーティ」",
"329000211_25": "「――ッ!」",
"329000211_26": "「やつが持ち出した物についての情報を引き出す必要もあるだろう」",
"329000211_27": "「ひとたび捕縛すれば、生殺与奪はあーしらの手の内――」",
"329000211_28": "「用済みになったら、その時考えればいいじゃない」",
"329000211_29": "「そうだね。追々考えるとしよう、彼女の正式な処遇は」",
"329000211_30": "「まずは捕縛を、そのためにもね」",
"329000211_31": "「納得はいかないが……任務としては承知したワケダ」",
"329000211_32": "「結構」",
"329000211_33": "「捕まえたらボーナスたんまり出してよね?」",
"329000211_34": "「検討しておこう、前向きにね」",
"329000211_35": "「やった。そうと決まれば早く行きましょッ!」",
"329000211_36": "「では、ただちに日本へと飛びます」",
"329000211_37": "「期待しているよ、いい仕事を。いつも通りにね」",
"329000211_38": "「チッ!」",
"329000211_39": "「そう荒ぶらないで、プレラーティ」",
"329000211_40": "「まあ気持ちはわかるけどね」",
"329000211_41": "「キャロルにはチフォージュ・シャトーの借りがあるワケダ……」",
"329000211_42": "「プレラーティが長年かけて設計してたのを、\\n 横から掻っ攫われちゃったんだものねえ」",
"329000211_43": "「とっとと行って首根っこを押さえるワケダ」",
"329000211_44": "「それじゃ、ちゃっちゃと終わりにして、\\n ボーナスでオシャンティな服でも仕入れましょうか」",
"329000211_45": "「油断しないでね、2人とも」",
"329000211_46": "「どうして? たかが、はぐれ1人じゃない」",
"329000211_47": "「ひとたび協会を出奔した以上、\\n やつも相応の覚悟を決めているはずよ」",
"329000211_48": "「チッ……」",
"329000211_49": "「相当な激戦となることも想定に入れなければ……」",
"329000211_50": "「もう。相変わらずサンジェルマンは心配性ね」",
"329000211_51": "「もっと気楽に行きましょ?」",
"329000211_52": "「あーあ。マスターに叱られちゃった」",
"329000211_53": "「当然ですわね。ターゲットを取り逃がしてしまったのですから」",
"329000211_54": "「雁首揃えて囲んでおきながら逃がしました、ではな。\\n 地味にも程があるというもの」",
"329000211_55": "「けど、アイツ、逃げ足だけは速かったんだゾ?」",
"329000211_56": "「逃がした原因はお前だろうが」",
"329000211_57": "「あれれ? そうだっけ? 覚えてないゾ」",
"329000211_58": "「ミカの広範囲攻撃で上がった粉塵に\\n 紛れて逃げられてしまいましたのよ」",
"329000211_59": "「あれは少々派手過ぎた」",
"329000211_60": "「うう……手加減は苦手だゾ……」",
"329000211_61": "「それに、途中でガリィが寄り道してたのも悪いゾ?」",
"329000211_62": "「はあ? あたしがあのクソ雑魚、\\n 痛ぶってたから釣れたんだろがッ」",
"329000211_63": "「まあ、そうとも言えますわね」",
"329000211_64": "「でしょでしょ? もっと褒めて褒めて」",
"329000211_65": "「だが、次はどうやって炙り出したものか」",
"329000211_66": "「そうですわねえ……」",
"329000211_67": "「それよりチューしてほしいゾッ!」",
"329000211_68": "「だーめ。せっかく手に入れた想い出も、\\n マスターに没収されちゃったんだから」",
"329000211_69": "「ううッ。お腹ペコペコだゾ……」",
"329000211_70": "「そんな顔したって、ない袖は振れないってえの」",
"329000211_71": "「そちらの方も、また集めないといけませんわね」",
"329000211_72": "「賛成ー♪ そうすればコソコソ隠れてる\\n ネズミちゃんも顔を出すかもだし」",
"329000211_73": "「ならば、派手に集めるとしようか」",
"329000211_74": "「たくさん集まったら、今度こそチューしてほしいんだゾッ!」",
"329000211_75": "「わかった、わかった」"
}

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@ -0,0 +1,77 @@
{
"329000221_0": "「オートスコアラー……それが今回の敵だと?」",
"329000221_1": "「ああ、間違いない」",
"329000221_2": "「先日、あちらの世界で、\\n 響ちゃんの仮想脳領域で戦った相手、ね……」",
"329000221_3": "「錬金術師の造った、戦う自動人形、オートスコアラー……。\\n それが奴らの正体さ」",
"329000221_4": "「藤尭。今回の戦闘データの解析は終わったか?」",
"329000221_5": "「はい。今回の戦闘で確認できたのは4機ですが――」",
"329000221_6": "「ガリィと呼ばれる青い機体は氷と水を、\\n レイアと呼ばれる黄色の機体はコインの様な金属を――」",
"329000221_7": "「ファラと呼ばれる緑の機体は剣と風を、\\n ミカと呼ばれる赤い機体は炎を主に操るようです」",
"329000221_8": "「コインは金属、金属は大地より産するもの……。\\n つまり四大元素に対応しているというわけね」",
"329000221_9": "「四大元素……なるほど、錬金術師ならではの思想だな」",
"329000221_10": "「四大元素の力を操る上に、\\n 口づけで人間の精気を奪う能力も持つ、と……」",
"329000221_11": "「はい。カメラからの中継映像でも確認できました」",
"329000221_12": "「今回の被害男性の症状は、これまでの事件の犠牲者たちと合致」",
"329000221_13": "「一連の事件が、オートスコアラーの手によるものと\\n 断定して間違いないと思います」",
"329000221_14": "「だが、奴らは所詮、操り人形……。\\n 背後に黒幕の錬金術師がいるはずだ」",
"329000221_15": "「ああ。そいつについても、少しばかり心当たりがある」",
"329000221_16": "「本当か?」",
"329000221_17": "「確か、キャロルとかいう名前の錬金術師だ」",
"329000221_18": "「それも、例の仮想脳領域で?」",
"329000221_19": "「ああ。二度ほど戦った」",
"329000221_20": "「そのキャロルとやらの素性はわかるか?」",
"329000221_21": "「向こうで聞いた感じだと、パヴァリア光明結社とかってのと\\n 関係があるらしいけど、詳しいことまでは聞かなかったな」",
"329000221_22": "「パヴァリア光明結社……。\\n 響くんたちの世界の、錬金術師協会の様な組織か」",
"329000221_23": "「ああ。らしいな」",
"329000221_24": "「キャロルってやつは、普段は子供のナリをしてるが、\\n いざとなると大人の姿に変身する、厄介な相手だった」",
"329000221_25": "「有力な情報だな」",
"329000221_26": "「では、今回の事件は、一旦、敵をキャロルと定めて、\\n 調査と対策を進めていくとしよう」",
"329000221_27": "「了解しました」",
"329000221_28": "「でも、どこから手をつけたものですかね?」",
"329000221_29": "「うむ……。できれば、キャロルをよく知る、\\n 向こう世界の装者たちの話を聞いておきたいところだが……」",
"329000221_30": "「あたしがひとっ走り、行ってくるか?\\n S.O.N.G.ならきっと協力してくれると思うし」",
"329000221_31": "「……いや、無闇には頼るまい」",
"329000221_32": "「この事件そのものは、あくまでこちらの世界の問題だ」",
"329000221_33": "「安易に彼女たちの力を当てにするのは、少々筋が違うだろう」",
"329000221_34": "「そんなものか……」",
"329000221_35": "「そうね。それに並行世界をまたいだ異変が頻発している昨今、\\n 彼女たちの戦力を無闇に分散させるのは得策ではないわ」",
"329000221_36": "「そういうことだ」",
"329000221_37": "「折よく定期連絡に来た際は少々話を聞かせてもらうとしても、\\n それまでは我々が自力で対処するとしよう」",
"329000221_38": "「わかったよ」",
"329000221_39": "「それで、どうします?」",
"329000221_40": "「そうだな……とりあえず、監視カメラの戦闘映像から\\n 更なる情報が引き出せるかもしれない。それを進めてくれ」",
"329000221_41": "「了解です」",
"329000221_42": "「それと、奏はキャロルの容姿やその他、\\n 覚えている情報を可能な限り共有してくれ」",
"329000221_43": "「ああ」",
"329000221_44": "「それをもとに、\\n 調査範囲を拡大させていくぞ」",
"329000221_45": "「了解しました」",
"329000221_46": "「それじゃ、私は錬金術師方面で調べてみるわ」",
"329000221_47": "「頼んだ」",
"329000221_48": "「やれやれ。また徹夜が続きそうだ……」",
"329000221_49": "「ぼやかないの」",
"329000221_50": "「フフ。いるいる、おいしそうな獲物たちが」",
"329000221_51": "「より取り見取り、食べ放題だゾッ!」",
"329000221_52": "「自分じゃ食べられないくせによく言うわね」",
"329000221_53": "「ガリィちゃんがご飯あげないって言ったらどうするつもり?」",
"329000221_54": "「そ、それはいけずだゾッ!」",
"329000221_55": "「さて、どうしよっかしらね?」",
"329000221_56": "「ムッ……。待て、誰か来た」",
"329000221_57": "「この気配、ただ者ではなさそうですわね」",
"329000221_58": "「とうとう見つけたというワケダッ!」",
"329000221_59": "「錬金術師……わかりましたわ、\\n あなたたちは錬金術師協会の追手ですわね」",
"329000221_60": "「ほーんと、いい迷惑よ」",
"329000221_61": "「あんたらのマスターのオイタのおかげで、こんな極東くんだりまで\\n あーしらがまた出張する羽目になったんだから」",
"329000221_62": "「来てくれと頼んだ覚えはないが」",
"329000221_63": "「戯れ言はいい。お前らのマスターを出せ」",
"329000221_64": "「はい無理ー。そんなの、できるわけないでしょ?」",
"329000221_65": "「マスターを護るために、\\n お前たちをケチョンケチョンにしてやるゾッ」",
"329000221_66": "「今日こそ、チフォージュ・シャトーを\\n 返してもらうワケダッ」",
"329000221_67": "「あれはもう私たちのモノ……。返せと言われて\\n はいそうですか、というわけにはいきませんわ」",
"329000221_68": "「ならば、お前たちを無力化して奪回するまで」",
"329000221_69": "「それに、あんたたちのマスターを捕まえたら、\\n 局長からボーナスが出るのよね」",
"329000221_70": "「それはなんとも派手なことだな」",
"329000221_71": "「ですが、易々と思い通りになると\\n お考えにはならないでほしいですわね」",
"329000221_72": "「ハッ! 人形が主たる錬金術師に敵うと思ってるワケダッ!」",
"329000221_73": "「オイタの過ぎる子はお尻ペンペンよ」",
"329000221_74": "「行くぞ、2人ともッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,35 @@
{
"329000231_0": "「はあ――ッ!」",
"329000231_1": "「甘いッ!」",
"329000231_2": "「クッ!?」",
"329000231_3": "「派手に砕け散れッ!」",
"329000231_4": "「全ての弾丸をコインで迎撃しただと?」",
"329000231_5": "「はああッ!」",
"329000231_6": "「クッ、人形の分際で、思ったよりやるワケダッ!」",
"329000231_7": "「お前もなかなか強いんだゾッ!」",
"329000231_8": "「簡単に一捻りと思ったけれど――」",
"329000231_9": "「ちょっとばかり、なめてかかってたかも」",
"329000231_10": "「フフ。どこを狙ってるのかしらー♪」",
"329000231_11": "「ほんと、鬱陶しい子たちね――ッ!?」",
"329000231_12": "「ならば諦めてくださらないッ!?」",
"329000231_13": "「チッ!! 次から次へとッ!」",
"329000231_14": "「一旦下がれッ!」",
"329000231_15": "「ふう……助かったわ」",
"329000231_16": "「数的不利を入れても、戦闘力はほぼ拮抗していると見ていい」",
"329000231_17": "「そうねえ。意外と連携もしっかりしてるし、面倒なことね」",
"329000231_18": "「このまま続けても埒が明かない」",
"329000231_19": "「こちらとしても膠着状態は望ましくないワケダ」",
"329000231_20": "「この子たちのマスターも相手にしないとだし」",
"329000231_21": "「ならば、こちらも本気で行くぞ」",
"329000231_22": "「そう来なくっちゃ」",
"329000231_23": "「錬金術の深奥、見せてやるワケダッ!」",
"329000231_24": "「なんだ、この派手な輝きはッ!?」",
"329000231_25": "「これは、マスターのダウルダブラと同じ――」",
"329000231_26": "「ファウストローブだってえッ!?」",
"329000231_27": "「よくわからないけど、ヤバそうなんだゾッ!」",
"329000231_28": "「あんな半端者の模造品と一緒にしないでほしいワケダ」",
"329000231_29": "「そうそッ、こっちが本家本元だもの」",
"329000231_30": "「これぞラピス・フィロソフィカス――賢者の石の輝きだッ!」",
"329000231_31": "「本物の力、見せてあ・げ・る♪」",
"329000231_32": "「さあ、第2ラウンドと行かせてもらおうか」"
}

View file

@ -0,0 +1,68 @@
{
"329000241_0": "「ほらほらほらッ!」",
"329000241_1": "「な、なんという派手な力だッ!?」",
"329000241_2": "「くう――ッ!」",
"329000241_3": "「さっきまでの勢いはどーしたのかしら?」",
"329000241_4": "「ヒキガエルみたいにブッ潰れるワケダッ!」",
"329000241_5": "「カ、カエルを持ってるのはお前だゾッ!」",
"329000241_6": "「このおバカッ!\\n そんなのに真正面からぶつかってどうすんだよッ」",
"329000241_7": "「助かったゾッ!」",
"329000241_8": "「所詮は水遊び。こそばゆいワケダ」",
"329000241_9": "「クッソ、こいつら調子にのりやがってッ!」",
"329000241_10": "「成る程。防御力も桁違い、というわけですのね」",
"329000241_11": "「それに、魔力も」",
"329000241_12": "「諦めろ。ラピス・フィロソフィカスの輝きの前には、\\n お前たち人形の力など無に等しい」",
"329000241_13": "「さあ、お前たちのマスターの居所を吐いてもらおうか」",
"329000241_14": "「心外ですわね。オートスコアラーが\\n 創造主を裏切るとでもお思いかしら」",
"329000241_15": "「……そうだな」",
"329000241_16": "「ならば、まずはお前たちという手足を捥いでおくとしよう」",
"329000241_17": "「くっそがあ――」",
"329000241_18": "「お腹ペコペコで力入らないゾ……」",
"329000241_19": "「勝ち目はなくとも、最後まで主命を全うするまでですわ」",
"329000241_20": "「ならば派手に散るとしようか」",
"329000241_21": "「不甲斐ない……」",
"329000241_22": "「この声はッ!?」",
"329000241_23": "「マスターッ!」",
"329000241_24": "「派手に、苦戦を――」",
"329000241_25": "「無様な姿をお見せしてしまいましたわ」",
"329000241_26": "「もういい、退がれ」",
"329000241_27": "「はッ……」",
"329000241_28": "「なあに、あのデカブツは?」",
"329000241_29": "「騎士……だと? 何者だ?」",
"329000241_30": "「さあ。キャロルの秘蔵っ子ってところじゃないの?」",
"329000241_31": "「何が相手でも変わらない。\\n わたしたちのファウストローブが負けるはずないワケダ」",
"329000241_32": "「嫌な予感がする……。\\n 人とも、油断しないで」",
"329000241_33": "「でも、こいつ1人であーしたちの相手をするつもり?」",
"329000241_34": "「いや。どうやら、そういうつもりでもないワケダ」",
"329000241_35": "「アルカ・ノイズ?\\n しかも随分と大盤振る舞いじゃないの」",
"329000241_36": "「だが、ラピスの前にはアルカ・ノイズなど物の数ではない」",
"329000241_37": "「そういうワケダッ!」",
"329000241_38": "「ちょい待ちッ! あの騎士の奴が――」",
"329000241_39": "「くッ! 爆発ッ!?」",
"329000241_40": "「警戒をッ! 爆煙に乗じてくるッ!」",
"329000241_41": "「……あら?」",
"329000241_42": "「騎士も、オートスコアラーもいない、だと?」",
"329000241_43": "「チッ……。目眩ましというワケダね」",
"329000241_44": "「まさか逃げるだなんて……」",
"329000241_45": "「意外に冷静な相手と見えるわね」",
"329000241_46": "「折角見つけたのにまた探し直し……はぁ」",
"329000241_47": "「で、どうするワケダ?」",
"329000241_48": "「まずは置き土産の処理をしましょう」",
"329000241_49": "「……気は乗らないけど、放っておくわけにもいかないもんね」",
"329000241_50": "「……待て、誰か来るワケダ」",
"329000241_51": "「なんて数のアルカ・ノイズだよッ!?」",
"329000241_52": "「それに、お前たちは……錬金術師協会のッ!」",
"329000241_53": "「アルカ・ノイズの反応で来ちゃったのね」",
"329000241_54": "「まあ、いずれ出くわすとは思っていたワケダ」",
"329000241_55": "「まさか、こいつはお前たちの仕業か?」",
"329000241_56": "「そんなわけないでしょう。いい加減、察して頂戴よ」",
"329000241_57": "「私たちではない。\\n はぐれ錬金術師の配下の仕業だ」",
"329000241_58": "「はぐれ錬金術師? まさか、キャロルのことかッ!?」",
"329000241_59": "「どうしてその名を知っている?」",
"329000241_60": "「いろいろあってね。\\n まあ、正直ほとんど知らないが」",
"329000241_61": "「どういうワケダ?」",
"329000241_62": "「さてね。お前らこそ、やつのことを知ってるなら\\n 詳しく話を聞かせてもらおうか」",
"329000241_63": "「どうする、サンジェルマン?」",
"329000241_64": "「まずは、こいつらを片付けてからとしよう」",
"329000241_65": "「仕方ないね……5分で片付けてやるよッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,33 @@
{
"329000242_0": "「はああああ――ッ!!」",
"329000242_1": "「相変わらずの馬鹿力というワケダ」",
"329000242_2": "「ふう……今ので最後だな?」",
"329000242_3": "「そうみたいだな」",
"329000242_4": "「さて、久方ぶりだな」",
"329000242_5": "「おひさー。元気してた?」",
"329000242_6": "「挨拶はいい。事情を聞かせてくれ」",
"329000242_7": "「そうだな……」",
"329000242_8": "「そこで立ち話もなんだろう。\\n こちらに来てもらえないか」",
"329000242_9": "「二課に?」",
"329000242_10": "「うーん、それはどうかしらね?」",
"329000242_11": "「そんなことしてる時間はないワケダ」",
"329000242_12": "「おわッ!?」",
"329000242_13": "「電話ッ? なんでこんなところに?」",
"329000242_14": "「局長からの連絡ね」",
"329000242_15": "「相変わらず心臓に悪いワケダ」",
"329000242_16": "「はい」",
"329000242_17": "「どうだい? 首尾の方は?」",
"329000242_18": "「キャロルはまだ見つかっていませんが、\\n オートスコアラーとは接触、一戦を交えました」",
"329000242_19": "「そうか」",
"329000242_20": "「それで局長、\\n 今、二課から接触を求められているのですが……」",
"329000242_21": "「ならば受けないとね。求められているのなら」",
"329000242_22": "「協会の情報を開示しても?」",
"329000242_23": "「つくだろう、君なら。\\n 言っていい事と悪いことの判断くらい」",
"329000242_24": "「……は。局長がそうおっしゃるなら」",
"329000242_25": "「待ってるよ、朗報をね」",
"329000242_26": "「期待しているよ、任務の達成を。\\n 取り逃がさないようにね、次は」",
"329000242_27": "「あーしらのやってること、全部お見通しってわけね」",
"329000242_28": "「覗き見とは趣味がいいワケダ」",
"329000242_29": "「で、どうするんだ?」",
"329000242_30": "「局長の許可を得た。\\n お邪魔させてもらおう」"
}

View file

@ -0,0 +1,61 @@
{
"329000251_0": "「はあ、はあ、はあ……」",
"329000251_1": "「くッ……少しばかり、力を使い過ぎたか……」",
"329000251_2": "「だが、こんなところで倒れるわけにはいかない」",
"329000251_3": "「オレはまだ、パパの命題を成し遂げていない……」",
"329000251_4": "「それまでは……こんなところで、終われるものか」",
"329000251_5": "(パパ……)",
"329000251_6": "(パパとの想い出だけは、焼却したりするものか)",
"329000251_7": "(それを失うことは、オレの生きる目的を失うと同義)",
"329000251_8": "(そう……それを焼却する時は、オレの最後の時だ)",
"329000251_9": "(待っていて、パパ……)",
"329000251_10": "(オレは、オレの命題を……。\\n パパとの約束を、必ず果たしてみせる……",
"329000251_11": "「うーん……」",
"329000251_12": "「パパ。何をさっきからうんうん言ってるの?」",
"329000251_13": "「いや、調合のレシピがどうもピンとこなくてね」",
"329000251_14": "「候補となる素材は幾つか絞ったんだけど。\\n どれも一長一短に思えてね……」",
"329000251_15": "「わたしにも見せて」",
"329000251_16": "「構わないけど……」",
"329000251_17": "「でもキャロルには少し早いんじゃないかなあ……」",
"329000251_18": "「いいからいいから」",
"329000251_19": "「まあいいか。\\n それじゃキャロルの意見も聞くとしようかな」",
"329000251_20": "「うんッ! 任せて、パパッ!」",
"329000251_21": "「…………」",
"329000251_22": "「どうだい、キャロル?」",
"329000251_23": "「なんとなくだけど、これじゃないかなぁ……」",
"329000251_24": "「それかい?\\n だがそれは、さっき候補から外したやつなんだけどな……」",
"329000251_25": "「ん? 待てよ……? 直接材料として調合するのではなく、\\n 中間生成の触媒としての効果を求めるなら――」",
"329000251_26": "「そうか、その手があったッ!」",
"329000251_27": "「パパ?」",
"329000251_28": "「ちょっと待っててくれ、キャロルッ!」",
"329000251_29": "「やっぱりそうだッ!\\n この中間生成物を最後の材料として調合すれば――」",
"329000251_30": "「成功だッ! 成功だよ、キャロルッ!!」",
"329000251_31": "「本当に? やったね、パパッ!」",
"329000251_32": "「ああ、それもこれもキャロルのおかげだよッ!」",
"329000251_33": "「すごいぞ、キャロルは天才だッ!」",
"329000251_34": "「て、天才だなんて、そんな……」",
"329000251_35": "「本当だとも。きっとキャロルは大きくなったら\\n パパなんか目じゃないくらいの錬金術師になれるよ」",
"329000251_36": "「大げさだよ……」",
"329000251_37": "「でもよかった、パパの役に立ってて」",
"329000251_38": "「ああ、ありがとうな、キャロル」",
"329000251_39": "「……ねえパパ。\\n わたし、もっともっとパパの役に立ちたい」",
"329000251_40": "「はは。それじゃたくさん勉強しないとな」",
"329000251_41": "「うん、わたし、頑張るよッ!」",
"329000251_42": "(そうだった)",
"329000251_43": "(パパに褒められるのがうれしくて。\\n もっとパパの役に立ちたいと思って――",
"329000251_44": "(オレは本格的に錬金術の勉強を始めたんだ……)",
"329000251_45": "(そんなこともあったな……)",
"329000251_46": "(そういえば……。\\n あの時パパは、なんの調合を……",
"329000251_47": "「……ッ?」",
"329000251_48": "(どうしてだ。\\n パパがなんの研究をしていたのかが思い出せないなんて……",
"329000251_49": "「そんな、馬鹿な――」",
"329000251_50": "「パパとの記憶の一部が、失われている、だと?」",
"329000251_51": "(まさか、あの戦いで焼却した想い出が……)",
"329000251_52": "(くッ……、\\n 己が焼却を望まぬ記憶領域にまで影響を及ぼしてしまったか",
"329000251_53": "(このまま力を使い続ければ、\\n いずれパパとの大切な想い出も……",
"329000251_54": "(だが、焼却の力を使わねば、命題は到底果たせない……)",
"329000251_55": "(いや、だがそれでも)",
"329000251_56": "「忘れてはいない。己に課せられた命題だけは」",
"329000251_57": "「パパからもらった命題だけは、\\n オレが生きている目的だけは、しっかりと」",
"329000251_58": "(そうだ。オレには、これだけあれば大丈夫だ……)"
}

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@ -0,0 +1,69 @@
{
"329000311_0": "共同戦線",
"329000311_1": "「よく来てくれた。歓迎する」",
"329000311_2": "「社交辞令は不要。単刀直入に進めさせてもらう」",
"329000311_3": "「では早速だが、キャロルについて聞かせてもらえるか」",
"329000311_4": "「その前に、何故お前たちはキャロルのことを知っているワケダ?」",
"329000311_5": "「まさか、うちの組織にスパイでも送り込んでるの?」",
"329000311_6": "「いや、そういうわけではない」",
"329000311_7": "「あたしが前に戦ったのさ」",
"329000311_8": "「キャロルと、以前に?」",
"329000311_9": "「でもさっき、知ってるのは名前だけ、とか言ってたじゃない」",
"329000311_10": "「ああ。解せぬワケダ」",
"329000311_11": "「1から説明すんのは面倒なんだけどな……」",
"329000311_12": "「掻い摘まんで言うと、キャロルのことを知っている人間の\\n 仮想脳領域内で交戦した、ということよ」",
"329000311_13": "「仮想脳領域……。\\n つまり精神世界で記憶上の存在と戦ったと、そういうことか」",
"329000311_14": "「流石は錬金術師。\\n 飲み込みが早くて助かるわ」",
"329000311_15": "「だが、キャロルたちのことを知る者とは、一体――」",
"329000311_16": "「……そうか。立花響たちの」",
"329000311_17": "「そうだ。キャロルと配下のオートスコアラーたちは、\\n 響くんたちの世界にも存在していたらしい」",
"329000311_18": "「それならば合点がいくというワケダ」",
"329000311_19": "「ならば、下手に隠し立てしても意味はないな」",
"329000311_20": "「察しの通り、キャロルは元々、\\n 我ら錬金術師協会に属していた錬金術師だ」",
"329000311_21": "「だけど、はぐれ錬金術師と言ってたな」",
"329000311_22": "「ああ。\\n わたしのチフォージュ・シャトーを奪って出奔したワケダ」",
"329000311_23": "「チフォージュ・シャトー?」",
"329000311_24": "「わたしが丹精込めて設計、開発した城だ」",
"329000311_25": "「……お城を奪って、出奔?」",
"329000311_26": "「城なんて造ってどうするんだ?」",
"329000311_27": "「凡人には言ってもわからぬというワケダ」",
"329000311_28": "「なんだとッ!?」",
"329000311_29": "「やめろ、2人とも」",
"329000311_30": "「そのチフォージュ・シャトーと、\\n 一連の事件の犠牲者にはどういう関係があるんだ」",
"329000311_31": "「犠牲者って?」",
"329000311_32": "「オートスコアラーたちに\\n 人間のエネルギーを吸収させているようね」",
"329000311_33": "「それは、想い出の力を集めさせているのだろう」",
"329000311_34": "「想い出の力、だって?」",
"329000311_35": "「そうだ。キャロルは過去、\\n 協会で想い出を力と変える研究を行っていた」",
"329000311_36": "「詳細までは不明だが、それは一定以上の成果があったのだろう。\\n だから、オートスコアラーを使って、想い出を集めている」",
"329000311_37": "「つまりそれは、他の人間から抽出したものも利用できる、\\n ということね」",
"329000311_38": "「恐らくは」",
"329000311_39": "「なるほど、犠牲者の意識が戻らないわけね……」",
"329000311_40": "「想い出を……奪う、だとッ?」",
"329000311_41": "「ふざけやがってッ!\\n 人の大事な想い出をなんだと思ってやがるッ」",
"329000311_42": "「やったのはキャロルよ。\\n あーしらに当たり散らさないで」",
"329000311_43": "「落ち着け。彼女たちの言う通りだ」",
"329000311_44": "「チッ……胸くそ悪いったらないな」",
"329000311_45": "「それで、君らはキャロルをどうするつもりだ?」",
"329000311_46": "「もちろん、裏切り者が本格的にオイタをする前に捕まえに来たのよ」",
"329000311_47": "「建造中のチフォージュ・シャトーも、\\n 完成前に回収しなければならないワケダ」",
"329000311_48": "「ようやくキャロルの配下である\\n オートスコアラーたちを見つけて、追い詰めたのだがな……」",
"329000311_49": "「謎の騎士とアルカ・ノイズのおかげで、取り逃がしたというワケダ」",
"329000311_50": "「謎の騎士?」",
"329000311_51": "「ああ。黒い鎧を纏った騎士だ」",
"329000311_52": "「黒い騎士……だと? 何者だ?」",
"329000311_53": "「それが、あーしらもさっぱりなのよね」",
"329000311_54": "「恐らくはキャロルの子飼いなワケダ」",
"329000311_55": "「向こうの装者たちの仮想脳領域で戦ったと言っていたな。\\n そういった存在については見なかったのか」",
"329000311_56": "「……いや、騎士は見てない」",
"329000311_57": "「……うーん。残念だけど、これまでの事件記録や研究データにも、\\n 該当するものは見当たらないわね」",
"329000311_58": "「では、響くんたちが来た時にでも聞いてみるか」",
"329000311_59": "「そうねえ……」",
"329000311_60": "「こちらも情報を提供したのだから、\\n 何かわかった時は、知らせてほしい」",
"329000311_61": "「ああ、もちろんだ。\\n 何か新しいことがあれば知らせよう」",
"329000311_62": "「そーこなくっちゃね」",
"329000311_63": "「では、みなさんに無線機をお渡ししておきます。\\n 何かあればこちらに連絡しますから」",
"329000311_64": "「感謝する」",
"329000311_65": "「話がついたならお暇しましょ」",
"329000311_66": "「ああ、長居は無用というワケダ」"
}

View file

@ -0,0 +1,75 @@
{
"329000321_0": "「は~あ……。\\n またまたマスターにこっぴどく叱られちゃったわねえ」",
"329000321_1": "「仕方ありませんわ。\\n マスターの介入がなければ、今頃、私たちは――」",
"329000321_2": "「ほんのちょっぴりだけど、危なかったんだゾ」",
"329000321_3": "「破壊されることこそが我らの存在意義。\\n とはいえ――」",
"329000321_4": "「ええ。錬金術師に倒されたのでは、意味がないですわ」",
"329000321_5": "「それでは、スコアが完成しませんものね……」",
"329000321_6": "「故に。次からは交戦せず離脱に徹せよとの厳命だ」",
"329000321_7": "「それにしてもさあ、\\n 最近のマスターったら、いつもご機嫌斜めで困るわー」",
"329000321_8": "「相手はこっちが逃げようとしても、\\n 黙って逃がしてくれるような奴らじゃないのにね」",
"329000321_9": "「敵はマスターと同じ錬金術師。\\n しかも、向こうは協会のお偉いさん……」",
"329000321_10": "「ラピス・フィロソフィカス。\\n 派手に恐ろしい輝きだった」",
"329000321_11": "「再び出会えば、こちらが意図せずとも、派手に戦闘になるだろう」",
"329000321_12": "「だったら倒してしまえばいいんだゾ。\\n 逃げるよりそっちの方がわかりやすいゾ」",
"329000321_13": "「それができたら世話はないっての。\\n この単細胞」",
"329000321_14": "「ええ……あの仲良し3人組とまとめて\\n 相手にするのは正直、厳しいですわね……」",
"329000321_15": "「ならば、分断させる必要があるか」",
"329000321_16": "「揃ってますね」",
"329000321_17": "「はい、マスター」",
"329000321_18": "「ご命令ですか?」",
"329000321_19": "「ターゲットの反応がありました。\\n すぐに反応地点へ向かいなさい」",
"329000321_20": "「了解で~す」",
"329000321_21": "「ほら、さっさと行くぞッ!」",
"329000321_22": "「わかったゾッ!\\n 悪い奴はさっさと片付けるに限るんだゾッ」",
"329000321_23": "「ですが、また協会の錬金術師に来られると面倒ですわね……」",
"329000321_24": "「ならば、我らが陽動を仕掛けるまで」",
"329000321_25": "「せいぜい派手に暴れて目をひくこととしよう」",
"329000321_26": "「ええ、では参りましょうか」",
"329000321_27": "「陽動は、派手なほどいい」",
"329000321_28": "「同感ですわね」",
"329000321_29": "「きゃあッ! 化け物よッ!」」",
"329000321_30": "「騒げ、泣け、喚けッ!\\n 地平の彼方まで響く角笛の様にッ」",
"329000321_31": "「ついでに想い出の採取も行える――」",
"329000321_32": "「ひッ!? た、助けてッ!!」",
"329000321_33": "「う……むぐッ!?」",
"329000321_34": "「あああ……」",
"329000321_35": "「――はあ。\\n まさに一石二鳥というものですわ」",
"329000321_36": "「さて、うまいこと釣れるかしら?」",
"329000321_37": "「釣れなければ釣れるまで続けるだけ」",
"329000321_38": "「まあ、そういうことですわね」",
"329000321_39": "「アルカ・ノイズの反応を検知ッ!」",
"329000321_40": "「来たかッ!」",
"329000321_41": "「座標特定――近隣の市街地の様ですッ!」",
"329000321_42": "「反応数、尚も増大中ッ! 召喚者が存在する模様ッ!」",
"329000321_43": "(これみよがしにアルカ・ノイズを用いた大規模な襲撃。\\n それが意味するところは――",
"329000321_44": "「司令ッ! 装者の出撃は――」",
"329000321_45": "「……すぐに奏を現場へ向かわせろッ!」",
"329000321_46": "「了解しましたッ!」",
"329000321_47": "(わかっていても、我々二課の戦力だけでは、\\n どうしても後手に回ってしまう。ならば――",
"329000321_48": "「錬金術師協会の者たちに回線を繋げッ!」",
"329000321_49": "「きょ、共同戦線を張るつもりですかッ!?」",
"329000321_50": "「ああ。非公式ではあるがな。\\n 至急繋いでくれッ」",
"329000321_51": "「了解しましたッ! 呼び出しますッ!」",
"329000321_52": "「――はい。\\n そちらで何か」",
"329000321_53": "「アルカ・ノイズとオートスコアラーたちが現れたようだ。\\n 今、奏を現場に向かわせている」",
"329000321_54": "「なるほど。それでオートスコアラーの数は?」",
"329000321_55": "「今、確認している。\\n ――藤尭ッ」",
"329000321_56": "「はいッ! 映像来ましたッ!」",
"329000321_57": "「偵察機からの映像解析では、\\n 現在機までが確認されていますッ」",
"329000321_58": "「ファラとレイアと呼ばれる機体と同定ッ!」",
"329000321_59": "「2機だけ、か……」",
"329000321_60": "「これは、ひょっとすると……」",
"329000321_61": "「……やはり君も引っかかるようだな」",
"329000321_62": "「そちらもそうなら、話が早い。\\n ……つ、提案だ」",
"329000321_63": "「聞こう。話してくれ」",
"329000321_64": "「なるほどな。\\n そのように手配しよう」",
"329000321_65": "「助かる。それでは私たちは現場へ向かう」",
"329000321_66": "「ああ。奏のことを頼む。\\n 少しばかり直情に過ぎるところがあるが、悪いやつではない」",
"329000321_67": "「私たちはただ、私たちの任務を遂行するのみ。\\n それ以上のことを期待されても困る」",
"329000321_68": "「それで構わんさ。\\n それが我々の助力となると信じている」",
"329000321_69": "「……食えない人物だな、あなたは」",
"329000321_70": "「フッ」",
"329000321_71": "「それではまた後で」",
"329000321_72": "「ああ、頼んだ」"
}

View file

@ -0,0 +1,26 @@
{
"329000331_0": "「そこまでだ、人形どもッ!」",
"329000331_1": "「どうやら獲物が陽動にかかったようですわね」",
"329000331_2": "「それでこそ派手に暴れた甲斐があったというもの」",
"329000331_3": "「どっけえええ――ッ!」",
"329000331_4": "「はあッ!」",
"329000331_5": "「ひい、ふう……あら?」",
"329000331_6": "「釣れたのは2匹だけ、だと? 地味な釣果だな」",
"329000331_7": "「好き勝手に暴れてくれたようだなッ!」",
"329000331_8": "「派手好きなものでね」",
"329000331_9": "「そちらも、もっと派手に歓迎してくれると思ったが」",
"329000331_10": "「他のお仲間はどうしたのかしら?」",
"329000331_11": "「お前たちだけに、全員でかかる必要はないだろう?」",
"329000331_12": "「なるほど、お見通しというわけね」",
"329000331_13": "「流石は協会の幹部殿。一筋縄ではいかないようだな」",
"329000331_14": "「人形に褒められてもなんの感慨も湧かない」",
"329000331_15": "「それで。こちらの作戦がお見通しだとしても、\\n 急造コンビなんかで勝てるおつもりかしら」",
"329000331_16": "「そいつは、やってみればわかるさ」",
"329000331_17": "「無駄な時間はかけない。一気に行くぞッ!」",
"329000331_18": "「はああ――ッ!!」",
"329000331_19": "「相変わらず派手な演出だな」",
"329000331_20": "「ブリーシンガメンの同時起動。\\n なるほど、短期決戦というわけか」",
"329000331_21": "「ならば私も、出し惜しみはなしとしよう」",
"329000331_22": "「恐ろしくも美しき、ラピス・フィロソフィカスの輝き。\\n これこそが錬金術の秘奥――」",
"329000331_23": "「ですが二度目となれば、私たちも易々とは屈しませんわよッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,29 @@
{
"329000341_0": "「う……ん……」",
"329000341_1": "「ハッ!?」",
"329000341_2": "「ここ、は……?」",
"329000341_3": "(そうか。追跡を撒くために、\\n 欺瞞術式を張りつつ、ここで身を伏せていたが……",
"329000341_4": "(焼却の反動と疲労で、意識を失っていたというわけか)",
"329000341_5": "(だが、オレはどれだけの間、意識を?)",
"329000341_6": "「あ~ら起きちゃった。残念~」",
"329000341_7": "「もうちょっと寝ててもよかったんだゾ」",
"329000341_8": "「なるほど。意識を失った間に、\\n 欺瞞術式が解除されていたというわけか」",
"329000341_9": "(だが、意識を取り戻す前に見つからずに済んだのは、\\n 不幸中の幸いか",
"329000341_10": "「もうちょっとで寝首をかけたのに。ざーんねん」",
"329000341_11": "「ガリィ、ミカ……」",
"329000341_12": "「あん? 気安く呼ぶんじゃねーよ、この偽物がッ!」",
"329000341_13": "「オレが偽者、だと……」",
"329000341_14": "「あたしたちはオマエを捕まえに来たんだゾ」",
"329000341_15": "「成る程、奴め。どこまでも周到なことだ」",
"329000341_16": "「さっきから、何をぶつくさ言ってるのかしら?」",
"329000341_17": "「さあ、とっとと始めるんだゾッ!」",
"329000341_18": "「クッ。戦いは避けられぬということか……」",
"329000341_19": "「なーに唇を噛んでるのかしら?」",
"329000341_20": "「かくれんぼで見つかったのが悔しいんだゾ?\\n あたしらの勝ちだゾ」",
"329000341_21": "「五月蠅いわね。いいからさっさと\\n とっ捕まえてあげなさいッ」",
"329000341_22": "「ン。わかったんだゾッ!」",
"329000341_23": "「……仕方ない、相手をしてやろう」",
"329000341_24": "「創造主に勝てると言うなら、かかってくるがいいッ!」",
"329000341_25": "「だあれが創造主だ、この偽者がああッ!!」",
"329000341_26": "「上から目線がなんかムカつくんだゾッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,42 @@
{
"329000342_0": "「郊外の森林公園にて、謎の爆発現象を確認ッ!」",
"329000342_1": "「映像は取れるかッ!?」",
"329000342_2": "「はいッ! 現地のライブカメラに接続中――」",
"329000342_3": "「出ましたッ! オートスコアラー2機の存在を確認ッ!」",
"329000342_4": "「ガリィとミカと呼ばれる機体と見られますッ!\\n 何者かと交戦中の模様ッ」",
"329000342_5": "「やはり先ほどのアルカ・ノイズの反応は陽動だったか……」",
"329000342_6": "「しかし、交戦中だと? 一体何者だ……?」",
"329000342_7": "「カメラの映像が不鮮明で依然、確認できませんッ!」",
"329000342_8": "「わかった。友里ッ!」",
"329000342_9": "「はい、直ちに繋ぎますッ!」",
"329000342_10": "「おいでなすったみたいね?」",
"329000342_11": "「ああ、アルカ・ノイズの反応とは別の地点で、\\n 謎の爆発現象が確認された」",
"329000342_12": "「どこかで一般人でも襲ってるの?」",
"329000342_13": "「郊外の森林公園内だ。\\n 何者かと交戦中らしいが……」",
"329000342_14": "「森林公園?\\n なんでそんなところで」",
"329000342_15": "「そもそも、交戦相手とは誰なワケダ?」",
"329000342_16": "「そこまでは不明だ。今、映像で状況を確認している」",
"329000342_17": "「映像、出ますッ!」",
"329000342_18": "「うむ……これだな」",
"329000342_19": "「一見、小柄な少女に見えるが……」",
"329000342_20": "「しかし、この身のこなし、ただ者ではないな」",
"329000342_21": "「小柄な少女が、オートスコアラーと、だとッ!」",
"329000342_22": "「藤尭、彼女たちの端末にも映像をまわしてくれッ!」",
"329000342_23": "「はい、ただ今ッ!」",
"329000342_24": "「これは……まさか……?」",
"329000342_25": "「キャロルッ!?」",
"329000342_26": "「なッ! この少女がッ!?」",
"329000342_27": "「何がどうなってるワケダッ!?」",
"329000342_28": "「キャロルとは、オートスコアラーたちの\\n マスターではなかったのか」",
"329000342_29": "「ええ、そうよ」",
"329000342_30": "「仲間割れ、ということか?」",
"329000342_31": "「造物主への造反など、普通だったらあり得ないワケダッ!」",
"329000342_32": "「ならば、これは一体――?」",
"329000342_33": "「あーしたちにもわかんないわよッ!」",
"329000342_34": "「でもとにかくキャロルの捕縛があーしたちの任務」",
"329000342_35": "「ああ。現場へ向かうワケダッ!」",
"329000342_36": "「よろしく頼む。\\n こちらもできる限りの情報支援はする」",
"329000342_37": "「せいぜい当てにしないでおくわ」",
"329000342_38": "「ひとまず通信は以上なワケダ」",
"329000342_39": "「一体、何がどうなっているんだ……?」"
}

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@ -0,0 +1,45 @@
{
"329000411_0": "偽りのマスター",
"329000411_1": "「戦いは質より量が制するもの――」",
"329000411_2": "「ああ、派手に盛り上げようッ!」",
"329000411_3": "「くそッ! 倒しても、次から次へとッ!」",
"329000411_4": "「奴ら、こちらの疲弊を待つ算段か」",
"329000411_5": "「ハッ、おもしろいじゃないかッ!」",
"329000411_6": "「あたしらの力が尽きるのが先か、アルカ・ノイズの\\n タマが尽きるのが先かッ 我慢比べだッ」",
"329000411_7": "「待てッ! それでは相手の思う壺だッ」",
"329000411_8": "「思う壺だろうが蛸壺だろうが、\\n 中からぶち破ってやればいいんだよッ」",
"329000411_9": "「待てと言っているッ!」",
"329000411_10": "「でりゃああああ――ッ!」",
"329000411_11": "「……まったく。これのどこが『少しばかり直情』だ。\\n 猪突にも程がある」",
"329000411_12": "「……已むを得ないか。フォローに入るッ!」",
"329000411_13": "「フッ……期待通りに派手な戦いをしてくれる」",
"329000411_14": "「これだけの数を物ともしないなんて……」",
"329000411_15": "「やはり、私たちだけで相手をするのは無理があるようね」",
"329000411_16": "「折角、盛り上がってきたところなのだがな」",
"329000411_17": "「そろそろ潮時ですわね、後はガリィたちの上首尾を祈って、\\n こちらは引き上げるとしましょう」",
"329000411_18": "「ああ……マスターの命もある。\\n ここは派手に撤退させてもらうとしよう」",
"329000411_19": "「待たせたな、オートスコアラーッ!」",
"329000411_20": "「人間から奪った想い出の力、返しやがれッ!!」",
"329000411_21": "「それは聞けない相談ですわね」",
"329000411_22": "「こいつらを相手に派手に踊り続けるがいい」",
"329000411_23": "「くそッ! まだ持ってやがったのかッ!!」",
"329000411_24": "「背中に気をつけろッ!」",
"329000411_25": "「チッ、囲まれていただとッ?」",
"329000411_26": "「それではおふたりとも。\\n またいずれお会いしましょう」",
"329000411_27": "「派手にさらばだ」",
"329000411_28": "「クソッ……逃がしたかッ!」",
"329000411_29": "「やはりこちらは陽動のようだな」",
"329000411_30": "「ダンナ、そっちの状況はッ!?」",
"329000411_31": "「ある意味では予想通りだったが、\\n またある意味では予想外の事態が起きている」",
"329000411_32": "「要点をッ!」",
"329000411_33": "「オートスコアラーのガリィとミカが出現し、\\n 君の仲間たちが向かった」",
"329000411_34": "「予想外の事態とは?」",
"329000411_35": "「奴らが襲っている相手が、キャロルらしい」",
"329000411_36": "「なんだとッ!?」",
"329000411_37": "「そいつは一体どういうことだッ!? 奴らの主だろ?」",
"329000411_38": "「俺たちにもわからん」",
"329000411_39": "「とにかく、その場のアルカ・ノイズを殲滅して、\\n 彼女らの後を追ってくれッ」",
"329000411_40": "「殲滅って、簡単に言うけどな」",
"329000411_41": "「所詮、相手はアルカ・ノイズ。\\n 万が一にもやられはしないが――」",
"329000411_42": "「この数はなかなか骨が折れそうだッ!」"
}

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@ -0,0 +1,73 @@
{
"329000421_0": "「ほーら、大人しくなさいッ!\\n バラバラに切り刻んであげるからッ」",
"329000421_1": "「そう簡単にやられるものかッ!」",
"329000421_2": "「チッ、すばしっこいわね、チビの癖してッ!」",
"329000421_3": "「コイツ、さっきから逃げ回ってばかりだゾ?」",
"329000421_4": "「マスターと違ってズイブン弱っちいんだゾ?」",
"329000421_5": "(力が戻らぬ上、身体も言うことをきかぬとは……)",
"329000421_6": "(これも脱出時に力を使いすぎた反動か……)",
"329000421_7": "(もう一度、想い出を焼却すれば……)",
"329000421_8": "(だが。これ以上は、パパの記憶、\\n パパからの命題まで忘れてしまいかねない……",
"329000421_9": "(それだけは絶対に避けねばならぬ)",
"329000421_10": "(命題を達成する、その瞬間まではッ!)",
"329000421_11": "「あーもうッ! お腹ペコペコでいい加減早く帰りたいゾッ!」",
"329000421_12": "「そうねえ。\\n それじゃ、こいつには――」",
"329000421_13": "「ボチボチ終わりにさせてもらいましょッ!」",
"329000421_14": "「焼き鳥みたく串刺しだゾッ!!」",
"329000421_15": "「ぐうッ!?」",
"329000421_16": "「あらま。腐っても錬金術師、結構な結界をお持ちだこと」",
"329000421_17": "「けど、息が上がってるんだゾ? もうひと押しだゾッ!」",
"329000421_18": "「ガリィ、ミカ……本当にオレのことがわからないのか?」",
"329000421_19": "「ええ、わかってますよ。偽のマスター」",
"329000421_20": "「マスターの真似ッ子するなんて、オマエ、悪いヤツだゾッ!」",
"329000421_21": "(やはり、言葉で解けるほど浅い洗脳ではないか……)",
"329000421_22": "「くッ――」",
"329000421_23": "「もう逃げ場は無いですよ、偽マスターさん?」",
"329000421_24": "「追いかけっこもおしまいだゾッ!」",
"329000421_25": "「そんじゃ、手足をブッチギッて、\\n ダルマにして差し上げますよッ」",
"329000421_26": "「已むを得んッ!」",
"329000421_27": "「要の記憶が消えぬことに賭け、焼却を使うしかあるまいッ!」",
"329000421_28": "「そんな暇、与えるかよおお――ッ!」",
"329000421_29": "「ゲフッ!?」",
"329000421_30": "「ありゃりゃ? ガリィ、なに横っ飛びしてんだゾ?」",
"329000421_31": "「飛んだんじゃなくて飛ばされたんだよッ!\\n 見てわかれッ」",
"329000421_32": "「てっきり新しい遊びかと思ったゾ」",
"329000421_33": "「誰だッ、邪魔しやがったのはッ!?」",
"329000421_34": "「人形風情相手に名乗る名はないワケダ」",
"329000421_35": "「ええ。さしずめ、さすらいのお助け錬金術師ってとこかしら」",
"329000421_36": "「妙な自称に人を巻き込まないでほしいワケダ……」",
"329000421_37": "「チッ、あの大口コンビめ。\\n 陽動するとか言っといて、このザマか」",
"329000421_38": "「ガリィとミカの方が口おっきいんだゾ?」",
"329000421_39": "「そういう意味じゃねーッ! おバカは黙ってろッ!」",
"329000421_40": "「怒っちゃいやだゾーッ!?」",
"329000421_41": "「やっぱり変じゃない?\\n なんでこの子、自分のオートスコアラーに襲われてるわけ」",
"329000421_42": "「奴らの事情など、どうでもいいワケダッ!」",
"329000421_43": "「キャロル・マールス・ディーンハイムッ!\\n わたしのチフォージュ・シャトーを返すワケダッ」",
"329000421_44": "「お前たちは……一体、誰だ……?」",
"329000421_45": "「この子ってば、何をすっとぼけてるのかしら?\\n 協会じゃ、結構長い付き合いだったじゃない」",
"329000421_46": "「いや、それにしては様子がおかしいワケダ……。\\n まさか……想い出の焼却を――」",
"329000421_47": "「なんですってッ!?」",
"329000421_48": "「あーあ。とんだ邪魔が入っちゃったわねえ」",
"329000421_49": "「あたしらで錬金術師3人相手ってのは、\\n ちょっと荷が重たすぎよねえ」",
"329000421_50": "「というわけなんですけど。\\n どうしましょう、マスター」",
"329000421_51": "「マスターですって?」",
"329000421_52": "「宙に向かって?\\n 目の前のキャロルではないというワケダ」",
"329000421_53": "「…………」",
"329000421_54": "「もういい、役立たずは退がりなさい」",
"329000421_55": "「はいはーい。\\n そうさせてもらいまーすッ」",
"329000421_56": "「でも、まだ勝負はついてないんだゾ?」",
"329000421_57": "「マスターが退がれって言ってんだッ!\\n 四の五の言わずに帰るんだよッ」",
"329000421_58": "「わかったゾ……」",
"329000421_59": "「いやにあっさり退いたわね。\\n 気味が悪いくらいに……」",
"329000421_60": "「いや。そうでもないワケダ」",
"329000421_61": "「黒騎士……またこいつか……」",
"329000421_62": "「この前の騎士?」",
"329000421_63": "「どうやら、キャロルの秘蔵っ子――というわけではないようだ」",
"329000421_64": "「なんだか、アレ、思いっきりあなたのことタゲってない?」",
"329000421_65": "「……そのようだな」",
"329000421_66": "「お前は捕縛して連れ帰らなければならないワケダ」",
"329000421_67": "「勝手に死なれちゃうと困るのよねえ……」",
"329000421_68": "「用件ならば、こいつを退けてからにしてもらおうか」",
"329000421_69": "「なんでこんな展開になるのよ……」",
"329000421_70": "「わからんが、今はその黒騎士とかいう奴を\\n 退けるのが先決なワケダ」"
}

View file

@ -0,0 +1,104 @@
{
"329000431_0": "「くう――ッ!?」",
"329000431_1": "「プレラーティッ!! 大丈夫ッ!?」",
"329000431_2": "「ああ、なんとか無事なワケダが……」",
"329000431_3": "「あいつのパワーは一体なんなのよッ?」",
"329000431_4": "「一挙手一投足に錬金の術式が作動している気配がするワケダ」",
"329000431_5": "「つまり錬金術で動いてるってこと? 人間じゃなくって?」",
"329000431_6": "「それか、全身を強化している可能性もあるワケダ」",
"329000431_7": "「どっちにしても、出し惜しみしてる場合じゃなさそうね」",
"329000431_8": "「ああ……。キャロルを屠らせるわけにはいかないワケダッ!」",
"329000431_9": "「その姿、まさかファウストローブか……?」",
"329000431_10": "「ご名答よ」",
"329000431_11": "「どうやら、堕ちても錬金術師というワケダな」",
"329000431_12": "「まあ見てなさいって。あんな着ぐるみ、\\n お姉さんたちがちゃちゃっとやっつけてあげるから」",
"329000431_13": "「そこで大人しく、首を洗って待っているワケダ」",
"329000431_14": "「行くわよッ!」",
"329000431_15": "「言われるまでもないワケダッ!」",
"329000431_16": "「やああ――ッ!」",
"329000431_17": "「木っ端微塵に吹き飛ぶワケダッ!」",
"329000431_18": "「どうよッ!」",
"329000431_19": "「いや――まだだッ!」",
"329000431_20": "「うっそッ!?\\n あれを食らってピンシャンしてるなんてッ」",
"329000431_21": "「どういう防御力なワケダッ!?」",
"329000431_22": "「くう――ッ!?」",
"329000431_23": "「直撃でもないのに、なんという威力ッ!」",
"329000431_24": "「いったあーッ?\\n もう、乙女の柔肌を傷つけるなんて許さないわよッ」",
"329000431_25": "「奴め、どこへ向かうつもりなワケダ?」",
"329000431_26": "「まるで、あーしたちが眼中にないみたい……」",
"329000431_27": "「って、まさかッ!?」",
"329000431_28": "「そのまさかなワケダッ!?」",
"329000431_29": "「キャロルが消えてるッ!」",
"329000431_30": "「本当に逃げるとは思わなかったワケダ」",
"329000431_31": "「でも、それってつまり、あの黒騎士の標的は?」",
"329000431_32": "「ああ……最初からキャロル1人だったというワケダな」",
"329000431_33": "「主に逆らうオートスコアラーに――」",
"329000431_34": "「奴らがマスターと呼んだ、キャロル以外の存在――」",
"329000431_35": "「もうッ! 一体何が、どうなってるのよ?」",
"329000431_36": "「色々と状況の整理が必要だな」",
"329000431_37": "「同感だ」",
"329000431_38": "「まず第一に、キャロルについて」",
"329000431_39": "「なぜ彼女がオートスコアラーたちと争っていたのか、だが――」",
"329000431_40": "「本来、オートスコアラーは\\n 創造主には反逆できないように造られているワケダ」",
"329000431_41": "「でも、あーしたちが着いた時には、思いっきり襲われてたわよね」",
"329000431_42": "「この世界じゃ、奴らを造ったのは\\n キャロルじゃないって線はないのか」",
"329000431_43": "「いや。あの4機ならば、\\n 確かにキャロルが造ったオートスコアラーなワケダ」",
"329000431_44": "「協会の資料で以前確認したから、それは間違いない」",
"329000431_45": "「では、あえて自分自身を襲わせているという線は?」",
"329000431_46": "「自作自演ということ?」",
"329000431_47": "「そうそう」",
"329000431_48": "「そんな演技には見えなかったわよねえ……」",
"329000431_49": "「何が目的かわからないけど、\\n あまりメリットがなさそうじゃない」",
"329000431_50": "「ただ、記憶をだいぶ失っているようだったから、\\n 本来の目的も忘れてる可能性はあるかもだけど……」",
"329000431_51": "「記憶を?\\n もしかして、想い出の焼却」",
"329000431_52": "「ああ。あの様子ではだいぶ酷使したワケダ」",
"329000431_53": "「なんだ、その焼却ってのは?」",
"329000431_54": "「先日も話したはずだ。\\n キャロルは想い出を力とする研究を行っていた、と」",
"329000431_55": "「そういえば、そんなこと言ってたな」",
"329000431_56": "「想い出を焼却する――\\n つまりそれは、記憶を薪として火にくべるというワケダ」",
"329000431_57": "「それって……」",
"329000431_58": "「つまり、燃やした記憶は二度と戻らないってことね?」",
"329000431_59": "「ああ……。そういうことだろうな」",
"329000431_60": "「だが、当然それは諸刃の剣。失っても支障のない想い出や、\\n 他の者から集めた想い出を本来であれば焼却するはず」",
"329000431_61": "「あーしたちがあの子にとって大事な存在だった、なんてことは\\n 言わないけど、追手になり得る存在を忘れるってのはね……」",
"329000431_62": "「だが実際、奴は我々の存在すら忘れていたワケダ。\\n つまり、かなりの想い出を既に焼却している……」",
"329000431_63": "「ええ。しらを切ってるわけじゃなさそうだったわよね」",
"329000431_64": "「キャロルが協会に関わっていた期間は相当に長い。\\n そしてその期間の記憶の大半は研究と研鑽の日々」",
"329000431_65": "「我ら錬金術師にとっては珠玉とも言える記憶だ。\\n しかし、その記憶に付随するはずの私たちを忘れている――」",
"329000431_66": "「そのレベルで記憶を失っているということは……」",
"329000431_67": "「ええ。既に相当量の想い出を薪として焼却――\\n つまり、記憶の大半を失っているとみるべきだろう」",
"329000431_68": "「話は変わるけど、あのオートスコアラーたちが\\n 別人にマスターって呼びかけてたのも気になるわよね」",
"329000431_69": "「黒騎士を召喚して寄越した声の主なワケダ」",
"329000431_70": "「黒騎士か……」",
"329000431_71": "「そんなに強いのか?」",
"329000431_72": "「強いなんてものじゃないわ。\\n あんなのまともに相手したら、あーしたちが壊れちゃう」",
"329000431_73": "「規格外といっていいワケダ」",
"329000431_74": "「だが、まさかファウストローブを纏った\\n 人の力が及ばぬ相手とはな……何者だ」",
"329000431_75": "「プレラーティは、錬金術の力で動いてるって言ってたけど?」",
"329000431_76": "「交戦後にラピスに残った反応で、少し気になることがあるワケダ」",
"329000431_77": "「気になることって?」",
"329000431_78": "「ああ。ラピスに残留した呪力――\\n それはラピスとは正反対の力、恐らくは強力な呪いの力なワケダ」",
"329000431_79": "「呪いの力だと? そんなことはありえないッ!」",
"329000431_80": "「どういうことだ?」",
"329000431_81": "「あらゆる不浄を浄化するのが、賢者の石、\\n ラピス・フィロソフィカスの力……」",
"329000431_82": "「相手の存在が呪いによって成るものならば、\\n ラピスの力を受けて無事でいるはずがない」",
"329000431_83": "「それでも無事だったのよね……なんでかしら」",
"329000431_84": "「せめてキャロルという子の身柄を確保できてたら、\\n 手がかりが掴めたかもしれないわね」",
"329000431_85": "「取り逃がしてしまったことがつくづく悔やまれるワケダ」",
"329000431_86": "「なんにしても、事態はキャロルがオートスコアラーを操って\\n 何かを目論んでいるという、単純な構図ではなさそうだな……」",
"329000431_87": "「ええ。根本的な所から対策を考え直さないといけないわね」",
"329000431_88": "「我々も一度、局長に報告と指示を求めようと思う」",
"329000431_89": "「餅は餅屋、錬金術師は錬金術師の局長というわけか」",
"329000431_90": "「そんないい物じゃないけどね」",
"329000431_91": "「また嫌味を言われるかと思うと気が重いワケダ……」",
"329000431_92": "「失礼します」",
"329000431_93": "「こんにちはーッ!」",
"329000431_94": "「邪魔するぞ」",
"329000431_95": "「――ッ!?\\n 人共、いい所に来てくれたッ」",
"329000431_96": "「わあッ、びっくりしたッ!?」",
"329000431_97": "「なんだ、何かあったのか?」",
"329000431_98": "「何やら相当深刻な事態のようですね」",
"329000431_99": "「ああ、察しの通りだ」",
"329000431_100": "「立花響か。久しいな」",
"329000431_101": "「え……サンジェルマンさん?\\n どうしてここにッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,67 @@
{
"329000441_0": "「この世界にもキャロルちゃんがいたなんて……」",
"329000441_1": "「以前の錬金術絡みの事件にも関わってこなかったから、\\n てっきり存在していないものかと思っていました」",
"329000441_2": "「あたしも、先日の仮想脳領域での戦いが無かったら、\\n そいつだと気づかなかったけどな」",
"329000441_3": "「まずはあなたたちの世界で交戦したキャロルと、\\n オートスコアラーたちについて聞かせてもらえるかしら」",
"329000441_4": "「はい、わかりました」",
"329000441_5": "「なるほど……大体は、こちらで収集したデータの通りね」",
"329000441_6": "「大人の姿になったキャロルは、\\n まだこっちじゃ確認してないけどな」",
"329000441_7": "「肉体変化まで行うとなると、\\n 少なからず想い出の焼却が伴うワケダが」",
"329000441_8": "「あの衰弱した状態では、とても使えないでしょうね」",
"329000441_9": "「キャロルちゃん……またそんなに自分を追い込んで……」",
"329000441_10": "(立花響……?)",
"329000441_11": "「ところで、黒い騎士については何か知っているか?」",
"329000441_12": "「黒い騎士……、ですか?」",
"329000441_13": "「映像、出します」",
"329000441_14": "「見覚えがないです……」",
"329000441_15": "「ああ、さっぱりだな」",
"329000441_16": "「この黒騎士とやらが、今回の敵なのですか?」",
"329000441_17": "「ああ。それもかなりの強敵だ」",
"329000441_18": "「彼女たちの情報では、\\n どうやら呪いの力で動いているらしいの」",
"329000441_19": "「呪いの力ッ?」",
"329000441_20": "「それって、ひょっとしてッ!」",
"329000441_21": "「ああ、呪い、剣、そしてキャロル……、\\n その組み合わせで連想できるのは――」",
"329000441_22": "「魔剣ダインスレイフ」",
"329000441_23": "「ダインスレイフ?」",
"329000441_24": "「キャロルが己の目的のため、S.O.N.G.へ送った物です」",
"329000441_25": "「それを元に、イグナイトモジュールという\\n 決戦機能をギアに実装できたのですが――」",
"329000441_26": "「でもおかしいな。イグナイトの力だったら、\\n ラピスの力で浄化されていとも簡単に破壊されちまっただろ」",
"329000441_27": "「ああ……。我々の場合、その後、愚者の石の力を使って\\n 対消滅バリアコーティングを施し、防ぐことはできたが……」",
"329000441_28": "「錬金術師たちが、ファウストローブを纏っていながら、\\n 一方的に押されるといった状況とは、どうも結びつかないな」",
"329000441_29": "「イグナイトモジュールなら、\\n 私もそっちからの資料で読んだわ」",
"329000441_30": "「確か、イグナイトモジュールで使用していたのは、\\n ダインスレイフの欠片だったわよね」",
"329000441_31": "「はい、そうです」",
"329000441_32": "「あの黒騎士は、もしかしたら、欠片じゃなくて、\\n 聖遺物本体を使って構成されているんじゃないかしら」",
"329000441_33": "「つまり、こちらのダインスレイフは完全聖遺物ということかッ!」",
"329000441_34": "「呪われた魔剣の完全聖遺物、か……」",
"329000441_35": "「確かにそれ程の存在であるならば、\\n 今の私たちのラピスで浄化するのは難しいかもしれない」",
"329000441_36": "「ああ。残念ながら、わたしたちが開発したラピスも、\\n 未だ完全な代物ではないからな」",
"329000441_37": "(完全ではない……?\\n わたしたちの世界では、完成されているように思えたが……",
"329000441_38": "(こちらの世界のラピスは、未完成ということか?)",
"329000441_39": "「世知辛い話だけど、より力が強い方が勝つってところかしら」",
"329000441_40": "「真なる完全存在ならば、そんなことはあり得ないワケダ」",
"329000441_41": "「だが、我らの錬金術も未だ道半ば、ということだ」",
"329000441_42": "「しかし、相手の正体の1つがわかったのは、大きな前進だ」",
"329000441_43": "「ええ。あなたたち錬金術師の力と、私たち二課の力を\\n 束ねれば、きっと対抗策が見つかるはずよ」",
"329000441_44": "「あら、いいじゃない。\\n こっちも望むところだし」",
"329000441_45": "「ああ。あいつを倒さないことには\\n チフォージュ・シャトーも奪回できないワケダ」",
"329000441_46": "「チフォージュ・シャトーまであるのかッ!?」",
"329000441_47": "「それなら、わたしたちにも手伝わせてくださいッ!」",
"329000441_48": "「響くん?」",
"329000441_49": "「我々ならばキャロルとチフォージュ・シャトーについて\\n <ruby=ちしつ>知悉</ruby>しています」",
"329000441_50": "「だが、君たちの世界は?」",
"329000441_51": "「なあに。向こうには頼もしい後輩たちもいるし、\\n 事情を説明すれば、少しの間くらいは大丈夫だと思う」",
"329000441_52": "「本来ならば我々の世界の問題だ、と言いたいが……」",
"329000441_53": "「ええ。流石に事態が大きくなりすぎたわね」",
"329000441_54": "「ありがたく、その申し出を受けさせてもらうとしよう」",
"329000441_55": "「承知しました。微力を尽くします」",
"329000441_56": "「まあ、大船に乗ったつもりでいてくれって」",
"329000441_57": "(キャロルちゃん……)",
"329000441_58": "(今度こそ、わかり合いたい。\\n わたしの世界では、最後までわかり合えなかったから……",
"329000441_59": "「先刻からどうした、心配事か?」",
"329000441_60": "「え? あ、いえ……。\\n な、なんでもないです」",
"329000441_61": "(なんでもないという顔には見えなかったが……)",
"329000441_62": "「そうか、ならばいい」",
"329000441_63": "「それでは、我々は一旦報告に戻るとする」",
"329000441_64": "「ああ。よろしく頼む」"
}

View file

@ -0,0 +1,87 @@
{
"329000511_0": "装者VSオートスコアラー",
"329000511_1": "「やっと終わりましたわね……」",
"329000511_2": "「マスター、相変わらずご機嫌斜めでしたねー」",
"329000511_3": "「ああ。最近、殊の外怒りっぽくなったな」",
"329000511_4": "「ひょっとしてカルシウムが足りていないのではないかしら?」",
"329000511_5": "「きっとストレス社会にやられたんだゾ」",
"329000511_6": "「ま、お説教を言いたくなるのもわかりますけどねえ」",
"329000511_7": "「どういう意味だ?」",
"329000511_8": "「だってえ、そもそもおふたりが\\n しっかり陽動してたら今回で終わってた話だしい」",
"329000511_9": "「まさかこちらの意図を読んで\\n 戦力を温存してるとは思わなかったですわ……」",
"329000511_10": "「奴らが全員こっちに釣られていたら、\\n 今頃は派手に仕留められていたはずだ」",
"329000511_11": "「そりゃまあ、そうなんですけどねえ」",
"329000511_12": "「おかげでみんな揃って、\\n また役立たず扱いだったんだゾ……」",
"329000511_13": "「ああ。あれは地味にへこむな」",
"329000511_14": "「最終的に取り逃がしたのはあの黒い木偶の坊だってのにさ。\\n 役立たずはどいつだってのッ」",
"329000511_15": "「言うな。マスターも焦っているんだろう」",
"329000511_16": "「そうね……」",
"329000511_17": "「でも、マスターって、前からあんな感じだったかしら?」",
"329000511_18": "「どういう意味だ?」",
"329000511_19": "「……いえ、気のせいですね。忘れてくださいな」",
"329000511_20": "「ま、ともかく。あたしたちの任務は、偽マスター――\\n 錬金術師キャロルの野郎を引っ捕らえることだし」",
"329000511_21": "「ああ。次こそは派手に成功させなければな」",
"329000511_22": "「ええ、そうね……」",
"329000511_23": "「なるほどね」",
"329000511_24": "「把握したよ、概ねの状況は」",
"329000511_25": "「厄介な展開だね、実に」",
"329000511_26": "「オートスコアラーの造反、黒騎士の出現と、\\n その背後にいると思しき謎の黒幕――」",
"329000511_27": "「およそ、キャロル自身の狂言とは思えぬ事態ばかりです」",
"329000511_28": "「同感だね、その見解は」",
"329000511_29": "「時に、黒騎士の核と思しき完全聖遺物ダインスレイフについて、\\n 局長は何か情報をお持ちではないですか」",
"329000511_30": "「それによっては、\\n 黒幕の素性も明らかになるというワケダ」",
"329000511_31": "「あったね、確かに。そんな物が」",
"329000511_32": "「では、ダインスレイフは元々、我が協会に?」",
"329000511_33": "「そのはずだよ、僕の記憶が確かならね」",
"329000511_34": "「どこだったかな、しまっていたのは」",
"329000511_35": "「<size=25>しまうって言ったって……</size>」",
"329000511_36": "「<size=25>あの局長のことだ、またぞろ\\n そこらの部屋の隅にでも転がしておいたワケダ</size>」",
"329000511_37": "「<size=25>そんなの、協会本部に出入りできる奴なら\\n 誰だって取り放題じゃないのッ</size>」",
"329000511_38": "「<size=25>その度に、わたしたちが東奔西走させられるワケダね</size>」",
"329000511_39": "「<size=25>どうやら今回もそのパターン臭いわよね……</size>」",
"329000511_40": "「何か言ったかな、2人とも?」",
"329000511_41": "「い、いえ。なんでもありませんッ!」",
"329000511_42": "「いいんだよ、言ってくれても。\\n あるならね、言いたいことが」",
"329000511_43": "「では、私から――」",
"329000511_44": "「我が協会の杜撰な聖遺物管理状況では、\\n 内部に通じた者という以上は絞り込みようがないかと」",
"329000511_45": "「ダイレクトに切り込んだワケダッ!」",
"329000511_46": "「耳が痛いね、真実というものは」",
"329000511_47": "「前も指摘されていたね、管理体制の問題を」",
"329000511_48": "「そうそう。あれから全然変わってないけどね」",
"329000511_49": "「検討するとしよう、いずれまた、近い内に」",
"329000511_50": "「あ、これ絶対永遠に変わらない奴だわ」",
"329000511_51": "「だが知る必要があるね、その黒幕の正体は。早急に」",
"329000511_52": "「局長のお力でおわかりになりませんか?」",
"329000511_53": "「そうそう。ダインスレイフやチフォージュ・シャトーの行方とか\\n ちゃちゃーって見つけたり」",
"329000511_54": "「万能ではないよ、流石の僕もね」",
"329000511_55": "「秘匿しているようだね、何者かが。周到に」",
"329000511_56": "「内包する魔力の割りに存外役に立たないワケダ」",
"329000511_57": "「ほんとほんと。\\n 部下の仕事はいっつも覗き見してるのにね」",
"329000511_58": "「部下想いだからね、僕は。こう見えて」",
"329000511_59": "「心配なんだよ、君たちのこともね」",
"329000511_60": "「部下想いねえ……」",
"329000511_61": "「ああ、そうさ。\\n だから例外ではないよ、キャロルのことも」",
"329000511_62": "「キャロルを……?」",
"329000511_63": "「心配してるって、局長が?」",
"329000511_64": "「痛ましいね、実に。\\n 焼却するなんて、想い出を」",
"329000511_65": "「話してほしかったね、そこまで思い詰めているならば」",
"329000511_66": "「不徳の致すところだよ、組織の主としてはね」",
"329000511_67": "「珍しく殊勝な事をいうワケダ」",
"329000511_68": "「果たして何を願うのかね、彼女は」",
"329000511_69": "「チフォージュ・シャトー、\\n 並行世界で世界を滅ぼしかけたという、それに――」",
"329000511_70": "「局長。当初の目的であるキャロルの捕縛については、\\n 変更なしでよろしいのでしょうか」",
"329000511_71": "「ああ。変更はないよ、任務自体にはね」",
"329000511_72": "「では引き続きキャロルの捕縛とチフォージュ・シャトーの回収を\\n 第一優先事項として進めます」",
"329000511_73": "「頼んだよ」",
"329000511_74": "「だが、注意してほしい、充分にね」",
"329000511_75": "「予想されるからね、妨害が」",
"329000511_76": "「妨害……ですか? 例の黒幕以外にも?」",
"329000511_77": "「そこまではわからないよ、僕にもね」",
"329000511_78": "「今後の任務について、どう進めるべきでしょう?」",
"329000511_79": "「上手くやってほしい、例の彼女らと協力してね」",
"329000511_80": "「承知しました。\\n 引き続き二課と、増援の装者たちと協力して事に当たります」",
"329000511_81": "「ああ。待ってるよ、次の報告を」",
"329000511_82": "「ふむ……」",
"329000511_83": "「容易ならないね、この事態は」",
"329000511_84": "「これは行くべきかもしれないね、僕も、日本へ」"
}

View file

@ -0,0 +1,90 @@
{
"329000521_0": "(ここは……どこの森だろう?)",
"329000521_1": "「<size=25>ううう……やめろッ!</size>」",
"329000521_2": "「<size=25>これ以上……オレから、奪うな……</size>」",
"329000521_3": "(あの声は……)",
"329000521_4": "「――はッ!?」",
"329000521_5": "「はあ、はあ、はあ……」",
"329000521_6": "(やっぱり、キャロル……)",
"329000521_7": "(それじゃ、ボクはまた夢を見てるんだ)",
"329000521_8": "「ああ……全てがオレの掌から零れていく……」",
"329000521_9": "「部下も、計画も、命題も、パパの記憶までもッ!」",
"329000521_10": "「全てあいつのせいだッ!」",
"329000521_11": "「あいつさえ、このオレに造反しなければッ!」",
"329000521_12": "「ノエル……お前だけは許さぬぞ」",
"329000521_13": "(ノエル……? 誰のことだろう?)",
"329000521_14": "(ひょっとして、ボクの知らない世界のキャロル?)",
"329000521_15": "「なんとしても、反撃の糸口を掴まねば……」",
"329000521_16": "「計画をこの手に取り戻し、そして、命題の完遂を――\\n パパとの誓いを、果たさねばならんのだ……」",
"329000521_17": "(なんて苦しそうなんだろう……)",
"329000521_18": "(そう、あの時のキャロルみたいだ)",
"329000521_19": "(ああ……もしボクの言葉が届けられるなら、\\n 今後こそ――",
"329000521_20": "「それじゃ、あたしは一旦S.O.N.G.に報告に戻る」",
"329000521_21": "「うん。よろしくね、クリスちゃん」",
"329000521_22": "「あたしがいない間、突っ走って馬鹿やるんじゃねーぞ?」",
"329000521_23": "「もう、心配性だなあ」",
"329000521_24": "「なに、わたしもついている。\\n 安心して行ってくるといい」",
"329000521_25": "「任せた。\\n んじゃ行ってくる」",
"329000521_26": "「先方によろしく伝えてくれ」",
"329000521_27": "「ああ、わかった」",
"329000521_28": "「さて、と。\\n 雪音がいない間、のんびりしているわけにもな」",
"329000521_29": "「そんならシミュレータにつきあってくれないか?\\n 了子さんがこの前の敵のデータを構築したらしいからさ」",
"329000521_30": "「ふむ。では、そうしよう。\\n なあ、立花」",
"329000521_31": "「…………」",
"329000521_32": "「立花? どうした?」",
"329000521_33": "「え? あ、はい?」",
"329000521_34": "「あ、シミュレータですよね?\\n モチロンつきあいますッ」",
"329000521_35": "「また何か迷っている顔だな?」",
"329000521_36": "「え、やだなあ。なんでもないですって。\\n あはははは」",
"329000521_37": "「隠しおおせる程、浅い付き合いだと思うのか?」",
"329000521_38": "「えっと……その……ですね。\\n 実は――」",
"329000521_39": "「アルカ・ノイズの反応を検知ッ!」",
"329000521_40": "「って、あれ――おかしいな」",
"329000521_41": "「不明瞭な発言は控えろ。\\n 何があった」",
"329000521_42": "「いえ、一瞬だけ反応があって、すぐに消えてしまって……」",
"329000521_43": "「システムの誤検知かしら?」",
"329000521_44": "「念のため現地を映像で確認しろ」",
"329000521_45": "「了解。近隣のカメラに接続します」",
"329000521_46": "「画面、出ますッ!」",
"329000521_47": "「工場地帯、ですか?」",
"329000521_48": "「む、あれは……」",
"329000521_49": "「オートスコアラーじゃないかッ!」",
"329000521_50": "「おかしいわ……。\\n 画面ではアルカ・イズの姿が確認できません」",
"329000521_51": "「ならば、なぜ反応があったのですか?」",
"329000521_52": "「原因不明ですッ!」",
"329000521_53": "「詮索は後だッ! 装者たちは至急現場へ急行をッ!」",
"329000521_54": "「了解ッ! 2人とも手を貸してくれッ!」",
"329000521_55": "「もちろんだ、立花ッ、行くぞッ!」",
"329000521_56": "「は、はいッ!」",
"329000521_57": "「友里は直ちに錬金術師たちへ連絡をッ!\\n 現地での合流を要請すると伝えてくれッ」",
"329000521_58": "「了解ですッ!」",
"329000521_59": "(オートスコアラーめ、今度は一体何を企む?)",
"329000521_60": "「装者3名、無事現着しましたッ!」",
"329000521_61": "「状況はッ!?」",
"329000521_62": "「工場の人たちがたくさん倒れてますッ!」",
"329000521_63": "「こいつは……想い出を吸い取られたのか?」",
"329000521_64": "「ならば、やはりオートスコアラーの仕業かッ!」",
"329000521_65": "「回収班を向かわせるッ! 敵の排除を頼むッ!」",
"329000521_66": "「了解ですッ!」",
"329000521_67": "「や、やめてくれえッ!!」",
"329000521_68": "「あ……あああ……」",
"329000521_69": "「今の悲鳴は?」",
"329000521_70": "「あっちだッ!」",
"329000521_71": "「あーら、お邪魔虫が嗅ぎつけて来たみたいね」",
"329000521_72": "「地味にアルカ・ノイズは使わなかったのだがな」",
"329000521_73": "「なんだ、見たことない奴がいるゾ?」",
"329000521_74": "「あら、ホントだわ。\\n 装者が人って、どういうことよ」",
"329000521_75": "「わからんな。\\n だが、こちらの数的優勢は揺らがない」",
"329000521_76": "「フ……お食事の邪魔は無粋ですわよ?」",
"329000521_77": "「ひいッ!?」",
"329000521_78": "「や……やめろおおおッ!!」",
"329000521_79": "「立花ッ! 迂闊に突っ込むなッ!」",
"329000521_80": "「あれを黙って見てられるかよッ!」",
"329000521_81": "「奏までッ!? クッ、已むを得ないかッ!」",
"329000521_82": "「風鳴の剣――推して参るッ!!」",
"329000521_83": "「あーら。なんかやる気みたいよ?」",
"329000521_84": "「だがマスターから禁じられているのは錬金術師との交戦のみ」",
"329000521_85": "「3人とはいえ、装者だけなら問題ないですわね?」",
"329000521_86": "「ガツンとやってやるんだゾッ!」",
"329000521_87": "「でやああああああああ――ッ!!」"
}

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@ -0,0 +1,29 @@
{
"329000531_0": "「覚悟なさいッ!」",
"329000531_1": "「くッ、ファラかッ!」",
"329000531_2": "「なぜ私の名前を……。まあ、いいですわ。\\n 剣と定義される物ならば、私の敵ではありません」",
"329000531_3": "「それなら、わたしの拳が相手だッ!」",
"329000531_4": "「なッ!? 拳ですってッ!?」",
"329000531_5": "「邪魔立てするんじゃねえってのッ!」",
"329000531_6": "「今更、分身如きに眩惑されるわたしではないッ!」",
"329000531_7": "「はああ――ッ!!」",
"329000531_8": "「くそッ、なんなんだよッ!?」",
"329000531_9": "「コイツにも水分身を見破られたッ!\\n 一体どういうことなんだよッ」",
"329000531_10": "「地味に解せないな。\\n こちらは全く知らない装者だというのに……」",
"329000531_11": "「ええ、まるで私たちのことを熟知しているよう」",
"329000531_12": "「あの錬金術師たちからの情報か?」",
"329000531_13": "「マスターが私たちを作り上げたのは協会を出てからのこと」",
"329000531_14": "「存在程度ならともかく、詳細スペックまでは\\n 流石に協会も把握してないと思いますわ」",
"329000531_15": "「派手に怪しいものだ。\\n だが、これならば存在も知るまいッ」",
"329000531_16": "「レイアの妹だゾッ! おっきいんだゾッ!」",
"329000531_17": "「あーはははッ! お前らまとめてペチャンコだあッ!」",
"329000531_18": "「なんだ、海の中からデカブツがッ!?」",
"329000531_19": "「あれは――S.O.N.G.の本部を襲った奴ですッ!」",
"329000531_20": "「だが、さしたる特殊能力も無い、力任せの輩だったはず」",
"329000531_21": "「そういうことなら、こっちも全力でぶつかるまでッ!」",
"329000531_22": "「はああ――ッ!!」",
"329000531_23": "「行くぞッ、このデカブツッ!!」",
"329000531_24": "「奏さん、ブリーシンガメンをッ!?」",
"329000531_25": "「我々も援護に向かうぞッ!」",
"329000531_26": "「は、はいッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,43 @@
{
"329000532_0": "「フ……予想以上にやってくれるな」",
"329000532_1": "(装者の数こそ、予想の外だったが)",
"329000532_2": "(それでこそ、アルカ・ノイズの反応を使ってまで\\n わざわざおびき寄せた甲斐があるというもの",
"329000532_3": "(仮に装者の力が及ばずとも、\\n 最悪、戦力を削れればとも思ったが……",
"329000532_4": "(まさか、こうも一方的な展開になるとはな)",
"329000532_5": "(オートスコアラーたちが窮地に陥れば、\\n アイツが姿を現すはず……",
"329000532_6": "(その時こそ、奴の尻尾を掴んでみせる)",
"329000532_7": "「さあ、そいつらを追い詰めるがいい、装者どもッ!」",
"329000532_8": "「このオレの目的のためになッ!」",
"329000532_9": "「はあああ――ッ!!」",
"329000532_10": "「うっそだろッ!?」",
"329000532_11": "「まさか、レイアの妹も物ともしないだなんてッ?」",
"329000532_12": "「よそ見している場合ではないぞッ!」",
"329000532_13": "「でりゃあ――ッ!!」",
"329000532_14": "「こいつはこいつで馬鹿力なんだゾッ!?」",
"329000532_15": "「ええい、忌々しい子ねッ!」",
"329000532_16": "「そこをどけ、唐変木ッ!」",
"329000532_17": "「はあああッ!」",
"329000532_18": "「なッ!? なんだよこの壁みたいのはッ!?」",
"329000532_19": "「剣だッ!! お前の相手ならばわたしが務めようッ!」",
"329000532_20": "「なんてド派手な剣ッ!?」",
"329000532_21": "「ああもうッ!\\n さっきからしっちゃかめっちゃかじゃないッ」",
"329000532_22": "「こうなったらマスターも手伝ってくれればいいのにッ!」",
"329000532_23": "「って……あれ?」",
"329000532_24": "「マスターが直接戦った事なんてあったかしら?」",
"329000532_25": "「隙あり―――ッ!」",
"329000532_26": "「なッ! こいつどっから――」",
"329000532_27": "「立花が貴様の死角になるよう動いていたまでだ」",
"329000532_28": "「ぐッ……やってくれるじゃないのさッ!!\\n だけど、これくらい――うッ」",
"329000532_29": "「ガリィッ!?」",
"329000532_30": "「派手に損傷したようだッ!」",
"329000532_31": "「これじゃ動けそうにないんだゾッ!」",
"329000532_32": "「それ以上壊れれば、計画に支障が出ます。\\n ガリィはそのまま寝ていなさい」",
"329000532_33": "「マスターッ!?」",
"329000532_34": "「やれやれ。本当に役に立ちませんね。\\n あなたたちは……」",
"329000532_35": "「出てきてはいけません、こいつらは危険です」",
"329000532_36": "「マスターだとッ!?」",
"329000532_37": "「フ……この程度の輩が脅威になると?」",
"329000532_38": "「それじゃ、この人が……」",
"329000532_39": "「でも、その姿――」",
"329000532_40": "「この姿がどうかしましたか?」"
}

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@ -0,0 +1,38 @@
{
"329000611_0": "もう1人のキャロル",
"329000611_1": "「それ以上壊れれば、計画に支障が出ます。\\n ガリィはそのまま寝ていなさい」",
"329000611_2": "「マスターッ!?」",
"329000611_3": "「やれやれ。本当に役に立ちませんね。\\n あなたたちは……」",
"329000611_4": "「出てきてはいけません、こいつらは危険です」",
"329000611_5": "「マスターだとッ!?」",
"329000611_6": "「フ……この程度の輩が脅威になると?」",
"329000611_7": "「それじゃ、この人が……」",
"329000611_8": "「でも、その姿――」",
"329000611_9": "「この姿がどうかしましたか?」",
"329000611_10": "「キャロルちゃんに似てるけど……違う……」",
"329000611_11": "「ああ、外見や雰囲気は近いものを感じるが……」",
"329000611_12": "「揃いも揃って、こうまで不甲斐ないとは……」",
"329000611_13": "「マスター……」",
"329000611_14": "「面目次第もなく……」",
"329000611_15": "「でもでも、頑張ったんだゾ?」",
"329000611_16": "「結果が伴わなければ過程など意味はありません。\\n 塵芥のようなもの」",
"329000611_17": "「――ッ!」",
"329000611_18": "「やはり、信頼できるのはこれだけのようですね」",
"329000611_19": "「あれはまさか――ッ!」",
"329000611_20": "「完全聖遺物たるダインスレイフかッ!?」",
"329000611_21": "「さあ、来なさい。\\n 我が忠実なる僕よ――」",
"329000611_22": "「この身に覚えのある負の波動――これはッ!?」",
"329000611_23": "「イグナイトの暴走衝動と同じ――呪いの力ですッ!」",
"329000611_24": "「黒騎士ッ! じゃあ、やっぱりこいつが黒幕かッ!」",
"329000611_25": "(キャロルちゃんじゃない……でも、キャロルちゃんに似てる?\\n あの人は一体……",
"329000611_26": "「目の前の状況に集中しろ、立花ッ!」",
"329000611_27": "「え? あ……」",
"329000611_28": "「戦場で呆けるようでは、如何に崇高な理想を胸に抱こうと、\\n 何人たりとも救えんぞッ」",
"329000611_29": "「はッ……はいッ!」",
"329000611_30": "「救う? 一体何を?\\n あなたたちには何者も救えません」",
"329000611_31": "「なぜならば、あなたたちはここで息絶えるのだからッ!」",
"329000611_32": "「その魂を、死にゆく無念を、\\n 呪いの刃に糧として差し出しなさいッ」",
"329000611_33": "「はッ。オバケ屋敷にゃちょっとばかし時期外れだな」",
"329000611_34": "「来るぞ。気を引き締めろッ!」",
"329000611_35": "「は、はいッ!」"
}

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@ -0,0 +1,84 @@
{
"329000621_0": "「やはり来たかッ!」",
"329000621_1": "(逸るな。もう少しだ)",
"329000621_2": "(黒騎士とノエルの距離が充分に開くまで、機を窺う)",
"329000621_3": "(これ以上無駄な力は使えない、狙うは確実たる瞬間)",
"329000621_4": "(ッ! 黒騎士が装者との交戦で突出したッ!)",
"329000621_5": "「……千載一遇の好機は今ッ!」",
"329000621_6": "「この一撃にオレの全てを賭けるッ!」",
"329000621_7": "「覚悟しろ、ノエル――ッ!」",
"329000621_8": "「――ッ!?」",
"329000621_9": "「フッ、やはりそう来ましたか」",
"329000621_10": "「あれッ? マスター、どうしたんだゾ――」",
"329000621_11": "「ぎゃあ――ッ!?」",
"329000621_12": "「なッ! ミカを盾にッ!?」",
"329000621_13": "「ミカッ!!」",
"329000621_14": "「ギャフン、だゾ……」",
"329000621_15": "「マスターッ! 何をなさいますッ!?」",
"329000621_16": "「何とは? 下僕を最大限に有効利用しただけですよ」",
"329000621_17": "「それに心配せずとも、\\n この程度でミカは破壊されません」",
"329000621_18": "「おのれ、ノエルッ! 姑息な真似をッ!」",
"329000621_19": "「なんだと?」",
"329000621_20": "「キャロルちゃんッ!?」",
"329000621_21": "「どうなってんだ、これは?」",
"329000621_22": "「お久しぶりですね、マスター。\\n いえ、キャロル」",
"329000621_23": "「付近に潜伏し、混乱に乗じてボクを討つ機を\\n 窺っていたのでしょうが……全てお見通しですよ」",
"329000621_24": "「ノエル……予備躯体の分際でッ!」",
"329000621_25": "「ええ……。\\n ですが、それ故にあなたの考えも手に取るようにわかります」",
"329000621_26": "「たとえ奇襲に失敗しようとも、お前など――」",
"329000621_27": "「ぐうッ!?」",
"329000621_28": "「先ほどの一撃が最後の力ですか?\\n 見たところ、随分と想い出を焼却したようですね」",
"329000621_29": "「先日の逃亡から今日まで、焼却を繰り返し、\\n あなたはもう己の自我を保つので精一杯なのではないですか」",
"329000621_30": "「たとえ最後の一欠片まで燃やしても、\\n 貴様の喉笛、掻っ斬ってくれる――」",
"329000621_31": "「恐ろしい執念ですね」",
"329000621_32": "「でも、そんな想いも、ボクには届きません」",
"329000621_33": "「この黒騎士が、ボクに付き従う限りはね」",
"329000621_34": "「さあ、そいつを捕まえてください」",
"329000621_35": "「クッ。万策尽きたか……」",
"329000621_36": "「キャロルちゃんッ!」",
"329000621_37": "「させるかあ――ッ!」",
"329000621_38": "「それはこちらのセリフですわ」",
"329000621_39": "「マスターの邪魔はさせぬッ!」",
"329000621_40": "「どういうことッ!?\\n あなたたちのマスターはキャロルちゃんでしょッ」",
"329000621_41": "「貴様らも一振りの剣ならば、己が定めし主を見失うなッ!」",
"329000621_42": "「キャロルが私たちの――」",
"329000621_43": "「主、だと?」",
"329000621_44": "「しまったッ!」",
"329000621_45": "「派手な繰り言をッ!」",
"329000621_46": "「はああああ――ッ!!」",
"329000621_47": "「てやあああ――ッ!!」",
"329000621_48": "「くうッ! 立花との合撃で互角とはッ!」",
"329000621_49": "「大丈夫、キャロルちゃんッ!?」",
"329000621_50": "「お前たちは、何者だ?」",
"329000621_51": "「わたしは、立花響ッ!」",
"329000621_52": "「風鳴翼だッ!」",
"329000621_53": "「わたしたちも、事態をまだ把握できていないが、\\n とりあえず、この場でお前を死なすわけにはいかない」",
"329000621_54": "「何も、思い出せない……」",
"329000621_55": "「お前たちも、オレが失った過去なのか?」",
"329000621_56": "「ううん……そうじゃない」",
"329000621_57": "「わたしたちは、この世界で出会うのは、初めてだよ」",
"329000621_58": "「なんだと?」",
"329000621_59": "「それでも……わたしたちは、あなたを知っている」",
"329000621_60": "「そして、多分……だけど、\\n キャロルちゃんの苦しみも……」",
"329000621_61": "「本当は、何を求めているのかも――」",
"329000621_62": "「本当に、オレが求めている、もの――?」",
"329000621_63": "(オレ自身が忘れ去ろうとしているのに?)",
"329000621_64": "(この者が、何故?)",
"329000621_65": "「お前がオレの何を知っていると言うのだッ!?」",
"329000621_66": "「どんな因縁があるかは知りませんが、\\n これはキャロルとボクの問題」",
"329000621_67": "「部外者がみだりに口を挟まないでほしいものですね」",
"329000621_68": "「あなたたちの間の事情は、正直わからない」",
"329000621_69": "「けれど、キャロルちゃんを助けるって決めたんだッ!\\n わたしたちがッ 今度こそッ」",
"329000621_70": "「やれやれ……。\\n 全く会話が成り立たないようですね……」",
"329000621_71": "「ファラ、レイア」",
"329000621_72": "「……はい、マスター」",
"329000621_73": "「お呼びでしょうか」",
"329000621_74": "「黒騎士と協力し、その者たちを始末しなさい」",
"329000621_75": "「これが、最後のチャンスのつもりでね」",
"329000621_76": "「承知いたしました」",
"329000621_77": "「ご命令とあれば」",
"329000621_78": "「ファラ、レイア……」",
"329000621_79": "「洗脳でもされているというのか?」",
"329000621_80": "「しょせんは操り人形って奴か? だが、悲しいな」",
"329000621_81": "「誰が相手でも……キャロルちゃんに手は出させないッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,67 @@
{
"329000622_0": "「はああ――ッ!!」",
"329000622_1": "「くう――ッ!? なんと恐るべき剣風かッ!」",
"329000622_2": "「だが、無茶だッ!\\n それ以上の負荷をかければ、己の身が砕けるぞッ」",
"329000622_3": "「マスターのためならば、\\n たとえこの身が砕け散ろうと本望――」",
"329000622_4": "「と言いたいところですが、この身体は大切な使命を帯びた身体、\\n ここで失うわけにはいきませんわ」",
"329000622_5": "「ですから、その前にケリを付けさせていただきます」",
"329000622_6": "(奴のソードブレイカーと再び打ち合えば、\\n 天羽々斬は破壊されてしまう……",
"329000622_7": "(とはいえ、一度は倒した相手、\\n 負けるわけにはいかないッ",
"329000622_8": "「いつまで寝ているッ! 派手に起きろッ!」",
"329000622_9": "「あのデカブツ、くたばってなかったのかッ!?」",
"329000622_10": "「なッ!? その船、一体どうするつもりだッ!」",
"329000622_11": "「無論、派手に投げるのさッ!」",
"329000622_12": "「冗談よせってッ!\\n あんなの食らったら――ッ」",
"329000622_13": "「派手に隙だらけだッ!」",
"329000622_14": "「チィッ!? 土埃の中からッ!」",
"329000622_15": "「派手な動きに到底目が追いつくまいッ!」",
"329000622_16": "「クソッ、確かにこれじゃ目も手も足りねえッ!」",
"329000622_17": "(って、泣き言言っても始まらないか。\\n そいつは他も同じだ",
"329000622_18": "(ましてや、お荷物かかえたあいつのところに\\n こいつらを行かせるわけにはッ",
"329000622_19": "「はああ――ッ!!」",
"329000622_20": "「はあ、はあ、はあ……」",
"329000622_21": "(この呪いの刃、一太刀一太刀が、すっごく重い……)",
"329000622_22": "(これ以上、受け続けるのは流石に厳しい……)",
"329000622_23": "(だけど、ここで退いたらキャロルちゃんがッ!)",
"329000622_24": "「おい、お前」",
"329000622_25": "「えッ!? どうしたの?」",
"329000622_26": "「オレに構うな」",
"329000622_27": "「そんなことできないよッ!」",
"329000622_28": "「何故だッ!\\n オレとお前はこれまで面識もなかったと言っただろうッ」",
"329000622_29": "「同情の類で助けようとしているのなら虫唾が走るッ!」",
"329000622_30": "「そんなんじゃないッ! そんなんじゃないよ……、\\n わたしはただ、諦めたくないんだ」",
"329000622_31": "「……諦めたくないだと?」",
"329000622_32": "「うん、人と人とが、わかり合うことを……」",
"329000622_33": "「まさか、それがお前の命題、なのか……?」",
"329000622_34": "「命題……?」",
"329000622_35": "「ううん、そんな立派なものじゃないよ。\\n でも、この拳はそのためのモだから」",
"329000622_36": "「……んだ。\\n 人と人が……には……だと思…から」",
"329000622_37": "「ぐッ……なん、だ……?」",
"329000622_38": "(今のは、パパの、記憶――?)",
"329000622_39": "「キャロルちゃんッ!」",
"329000622_40": "「バ、馬鹿がッ、よそ見をするな――ッ!」",
"329000622_41": "「――ッ!? しまったッ!!」",
"329000622_42": "「この力は――?」",
"329000622_43": "「錬金術の結界、だと?」",
"329000622_44": "「相変わらず愚直にも程があるぞ、立花響」",
"329000622_45": "「だが……それを含めて、全きお前の姿なのだろうがな」",
"329000622_46": "「サンジェルマンさんッ!」",
"329000622_47": "「ほーんと、危なっかしくて見てられないんだから」",
"329000622_48": "「お前らッ!?」",
"329000622_49": "「協会の狗がッ! 派手に邪魔をしてくれるッ!」",
"329000622_50": "「1対1でファラごときに手こずるなんて、\\n 大した腕じゃないワケダ」",
"329000622_51": "「フッ、手こずった覚えなどないがな」",
"329000622_52": "「これで2対1、というわけですわね……」",
"329000622_53": "「……なるほど。\\n 形勢はあちらに傾いたというわけですね」",
"329000622_54": "「ならば、今日の所は退くとしましょう」",
"329000622_55": "「ファラッ! レイアッ!」",
"329000622_56": "「はッ! 承知しております」",
"329000622_57": "「この場は我々に任せて、お退きください」",
"329000622_58": "「いや、いい。ここでお前たちを失うわけにはいかない。\\n 一緒に退きなさい」",
"329000622_59": "「……マスターがそう仰るなら」",
"329000622_60": "「また会いましょう、装者たち」",
"329000622_61": "「それまで、キャロルの身は預けるとしましょう」",
"329000622_62": "「待て、ノエルッ!」",
"329000622_63": "「オートスコアラーたちも――」",
"329000622_64": "「ああ。ご丁寧に倒れていた2機も回収していったというワケダ」"
}

View file

@ -0,0 +1,62 @@
{
"329000631_0": "「大丈夫だった、キャロルちゃん?」",
"329000631_1": "「オレに触るなッ!」",
"329000631_2": "「キャロルちゃん……」",
"329000631_3": "「ちッ……」",
"329000631_4": "「ようやく会えたな」",
"329000631_5": "「お前は……」",
"329000631_6": "「待ってくださいッ!」",
"329000631_7": "「いいから、黙ってるワケダ」",
"329000631_8": "「ここはサンジェルマンに任せて」",
"329000631_9": "「キャロル・マールス・ディーンハイム、\\n 我々のことがわかるか」",
"329000631_10": "「錬金術師協会の追手だろう?」",
"329000631_11": "「なるほど、今はその程度の認識というわけか」",
"329000631_12": "「これでもお前とは、永い年月の間に、幾度も会っているのだが」",
"329000631_13": "「…………」",
"329000631_14": "「その様子では、\\n やはり相当量の想い出を焼却してしまったようだな」",
"329000631_15": "「だったら、なんだと言うのだ?」",
"329000631_16": "「オレはまだ貴様らの縛につくわけにはいかぬのだッ!」",
"329000631_17": "「残された命題を果たす、その時まではッ!」",
"329000631_18": "「そのためならば――幾らでも代償を払ってやるッ!!」",
"329000631_19": "「はああ――ッ!!」",
"329000631_20": "「あの子ったら、そんな身体で無茶をッ!?」",
"329000631_21": "「キャロルちゃん、ダメッ!!」",
"329000631_22": "「愚かな……自ずから滅びを望むか」",
"329000631_23": "「ぐッ――貴様、何、を――?」",
"329000631_24": "「当て身か……見事な技前だ。\\n 錬金術師にしておくのが惜しい程にな」",
"329000631_25": "「死に急ぐこともないだろう」",
"329000631_26": "「それに、お前には聞かねばならぬこともある」",
"329000631_27": "「記憶が残ってれば、というワケダが」",
"329000631_28": "「でも、この感じだとちゃんと残ってるか怪しいわね……」",
"329000631_29": "「サンジェルマンさんッ!」",
"329000631_30": "「どうした?」",
"329000631_31": "「もう少しだけ待ってもらえませんか。\\n その……キャロルちゃんを、捕まえるのを……」",
"329000631_32": "「どうしてだ?」",
"329000631_33": "「さっきの様子を見ても、キャロルちゃんを悪者と\\n 決めつけるのはまだ早いと思うんです」",
"329000631_34": "「それは飲めない相談よ。\\n この子は協会からのお尋ね者なんだから」",
"329000631_35": "「そもそも、こいつがチフォージュ・シャトーを持ち出して\\n 協会を出奔しなければ、こんな事態にはならなかったワケダ」",
"329000631_36": "「それは……そうかもしれませんけど……」",
"329000631_37": "「でも、きっと何か、事情があるはずです。\\n あのエルって子のことも」",
"329000631_38": "「そんな不確かな話で聞けるわけないでしょ。\\n ね、サンジェルマン」",
"329000631_39": "「……いいだろう」",
"329000631_40": "「サンジェルマンッ!?」",
"329000631_41": "「嘘でしょッ!?」",
"329000631_42": "「キャロルの身柄は、一時お前たちに預ける」",
"329000631_43": "「流石にそれは局長も黙ってないワケダッ!」",
"329000631_44": "「いつからそんな甘ちゃんになったわけ?」",
"329000631_45": "「別に、情に絆されたわけではない」",
"329000631_46": "「なら、どうしてよ?」",
"329000631_47": "「納得のいく理由を聞かせてほしいワケダ」",
"329000631_48": "「お前たちも先刻言った通り、キャロルのこの状態を見るに、\\n 必要な情報を引き出せるかわからない」",
"329000631_49": "「その一方で、敵がキャロルに固執している以上、\\n その身柄を護るには護衛も必要」",
"329000631_50": "「そう言えば、あのノエルとかいう奴、\\n キャロルの身は預けておくとか言ってたな……」",
"329000631_51": "「敵襲からの防衛に適した拠点ならば、\\n 我々の仮アジトより二課のほうが適切だろう」",
"329000631_52": "「それは、そうかもしれないけどさ……」",
"329000631_53": "「……サンジェルマンがそう決めたなら、従うワケダ」",
"329000631_54": "「もう、仕方ないわね……」",
"329000631_55": "「サンジェルマンさん、ありがとうございます」",
"329000631_56": "「お前のためではない。\\n それが最善と考えたまでだ」",
"329000631_57": "「だが、そうと決まればキャロルの身柄を二課に移そう。\\n とにかく衰弱が酷い」",
"329000631_58": "「はいッ!」",
"329000631_59": "(キャロルちゃん、しっかり……)"
}

View file

@ -0,0 +1,61 @@
{
"329000641_0": "「向こうの世界でそんなことがあったとはな」",
"329000641_1": "「まさかあの世界にキャロルまでいたなんて」",
"329000641_2": "「何度か行き来してたけど、全然気づかなかったデス」",
"329000641_3": "「ずっと向こうに行きっぱなしというわけではないもの。\\n わたしたちが知りうるのは、その世界のごくごく一部よ」",
"329000641_4": "「それじゃ、やっぱりボクが見た夢は……」",
"329000641_5": "「夢?」",
"329000641_6": "「ここ数日、何度かキャロルの夢を見たんです」",
"329000641_7": "「最初はボクの記憶が構築した、\\n ただの夢だと思ったんですが……」",
"329000641_8": "「途中から、明らかにボクの記憶に無い情報まで\\n 混じりだしたんです」",
"329000641_9": "「記憶に無い情報?」",
"329000641_10": "「はい。キャロルが黒い騎士に追いやられて、\\n チフォージュ・シャトーから逃げ出すところも見ました」",
"329000641_11": "「確か、その黒騎士の画像なら、\\n 持ち帰ったデータに入ってたはずだ」",
"329000641_12": "「ええと……はい、ありましたッ!」",
"329000641_13": "「……ボクの見た夢と瓜二つです」",
"329000641_14": "「マジかよ」",
"329000641_15": "「はい。でもその夢の中では、\\n オートスコアラーたちはキャロルを護って残っていました……」",
"329000641_16": "「確か以前も、並行世界間の同一人物の間で、\\n 精神的な相互影響が見られた事例があったな」",
"329000641_17": "「はい……もう1人の響ちゃんの件とかです」",
"329000641_18": "「最近では緒川さんの件でも、影響があったみたいですね」",
"329000641_19": "「はい。今回もそれらと同様に、向こうのボク……。\\n いいえ、キャロルとの意識の混線が起きているんだと思います」",
"329000641_20": "「意識の混線……?」",
"329000641_21": "「はい。それらの混線や相互影響は、恐らくは\\n 強烈な精神的負荷を受けた際に引き起こされるものだと思います」",
"329000641_22": "「どうしてエルフナインに起きるデスか?」",
"329000641_23": "「この肉体は本来キャロルのもの、\\n だからボクとの混線が起きたのでしょう」",
"329000641_24": "「エルフナインとキャロルの意識が……」",
"329000641_25": "「どうだ、様子は?」",
"329000641_26": "「幸いバイタルは安定しつつありますが、\\n 意識の方はまだ……」",
"329000641_27": "「…………」",
"329000641_28": "「う……」",
"329000641_29": "「パ、パ……」",
"329000641_30": "「キャロルちゃんッ!?」",
"329000641_31": "「意識が戻ったか?」",
"329000641_32": "「いえ、意識レベルは、依然低いままです」",
"329000641_33": "「怖い夢を見てるのかな……?」",
"329000641_34": "(キャロルちゃん……。\\n 今度は、必ず助けるからね",
"329000641_35": "(パパが……また夜遅くまで1人で研究を続けている)",
"329000641_36": "(遺跡の探索から帰ってきたパパは、\\n いつも以上に、研究に没頭するようになった",
"329000641_37": "(パパが、熱心に研究していたモノ……)",
"329000641_38": "(そう、あれは……分解を目的とした解析機――\\n 今で言うアルカ・イズの研究だった",
"329000641_39": "(でも、その時、オレはそれを知らなくて……)",
"329000641_40": "「パパ――ッ!」",
"329000641_41": "「パパ、何処にいるのー?」",
"329000641_42": "「キャロル、こっちだよ」",
"329000641_43": "「パパ、やっと見つけた」",
"329000641_44": "「どうかしたのかい?」",
"329000641_45": "「食事の用意ができたから呼びに来たの」",
"329000641_46": "「おっと、もうそんな時間だったのか……」",
"329000641_47": "「……ねえ、パパ。\\n このヘンテコな物は何」",
"329000641_48": "「これかい? そうだな……分解解析機のプロトタイプ\\n と言ったところかな」",
"329000641_49": "「分解解析機?」",
"329000641_50": "「この間、遺跡を探索していて遂に見つけたんだよッ!\\n 先史文明期の遺産、これの設計図の一部を」",
"329000641_51": "「……この設計図に描かれる絵……何処かで……」",
"329000641_52": "「――ッ!?\\n これってもしかして、人間を炭に変えちゃうあの魔物ッ」",
"329000641_53": "「パパッ! こんなの造っちゃダメだよッ!」",
"329000641_54": "「安心して、キャロル。\\n もちろん、人間を炭にするために造るわけじゃない」",
"329000641_55": "「本当に?」",
"329000641_56": "「キャロルが悲しむことを、パパがするはずないだろう?」",
"329000641_57": "「……うん」",
"329000641_58": "「これはね。森羅万象を読み解くために、\\n 人類のために必要なものになるんだよ」"
}

View file

@ -0,0 +1,84 @@
{
"329000711_0": "父親から受け継いだモノ",
"329000711_1": "「それが神の奇跡でないのなら、\\n 人の身に過ぎた、悪魔の智慧だッ」",
"329000711_2": "「裁きをッ!\\n 浄罪の炎でイザークの穢れを清めよッ」",
"329000711_3": "「パパッ!\\n パパッ パパッ」",
"329000711_4": "(錬金の技を知られ異端狩りに糾弾されたパパは、\\n 弁明の余地もなく焚刑に処された",
"329000711_5": "(オレは世界を憎んだ。\\n そして奇跡を憎んだ",
"329000711_6": "(この時、オレは初めて知ったのだ。\\n 世界は驕慢と愚劣と蒙昧に溢れていると",
"329000711_7": "(そして、世の中で奇跡などと崇められているものが、\\n 何者をも救わぬどころか、人を死に至らしめるということを",
"329000711_8": "(信じる者も、希う者も、縋る者も、何者をも。\\n それは見捨て、裏切り、嘲笑う存在なのだということを――",
"329000711_9": "「ようこそ、我が錬金術師協会へ」",
"329000711_10": "「歓迎するよ」",
"329000711_11": "(異端の娘として石もて追われたオレは、\\n ある日、錬金術師協会に引き取られた",
"329000711_12": "「学ぶといい、存分に」",
"329000711_13": "「見つけるといい、君のやりたいことを」",
"329000711_14": "(そこでオレは、錬金術師としての研鑽を続けた)",
"329000711_15": "(命題を果たすために。\\n そして奇跡を殺すために――",
"329000711_16": "(そう……そのはず、だ……)",
"329000711_17": "(だが、この頃のことは、今ではほとんど思い出せない)",
"329000711_18": "(永い年月をどう過ごしてきたかも。\\n 旁らに誰がいたのかも……",
"329000711_19": "(覚えているのは、ただ1つ、赤く輝く宝石だ)",
"329000711_20": "(オレはそこで、錬金技術の叡智、\\n 赤く輝きを放つ宝石を研究していた",
"329000711_21": "「これが賢者の石――ラピス・フィロソフィカス」",
"329000711_22": "「もっとも、未だ真の完成には遙かに及ばぬワケダ」",
"329000711_23": "「あーあ。やっぱり、また壊れちゃったわね」",
"329000711_24": "「必要なエネルギーを集めても、\\n 安定して収束させるのが難しいのよねえ……」",
"329000711_25": "「それ以前に、そもそも錬成純度が低すぎるワケダ」",
"329000711_26": "「だが、いつの日にか、その境地にも到達できよう」",
"329000711_27": "「そのために、あなたにも手伝ってもらうわ」",
"329000711_28": "「認めたくないが、お前の知識のおかげで、\\n 研究が大きく前進したワケダ」",
"329000711_29": "「可愛い顔して、なかなかやるじゃない」",
"329000711_30": "「我々の知識を束ねれば、必ず完成させることができる」",
"329000711_31": "「そして、完成の暁には――」",
"329000711_32": "(ダメだ、思い出せない)",
"329000711_33": "(残っているのは、虫に食われたタぺストリーのような、\\n 穴だらけの記憶だけ",
"329000711_34": "(思い出そうとしても、肝心のところが、\\n 全て剥げ落ちてしまっている……",
"329000711_35": "(ああ……だが、この頃のことは、まだ鮮明に覚えている)",
"329000711_36": "(それも、時間の問題だろうが……)",
"329000711_37": "(ここはチフォージュ・シャトー、\\n 協会が建造を進めていたメガストラクチャー、その内部だ",
"329000711_38": "「お初にお目に掛かりますわ、マスター」",
"329000711_39": "「さあ、マスター。\\n なんなりとご命令を♪」",
"329000711_40": "「あたしもバリバリ手伝うゾッ!」",
"329000711_41": "「派手に計画遂行といきましょう」",
"329000711_42": "「ああ……存分にこき使わせてもらおう」",
"329000711_43": "(計画を実行に移す前に、オレ自身の感情をベースに、\\n オートスコアラーを制作し、起動したのだ",
"329000711_44": "(剣たるファラ、硬貨たるレイア、\\n 聖杯たるガリィ、錫杖たるミカ――",
"329000711_45": "(アルカナと照応させ、四大元素の力を付与した4機は、\\n オレの手足となって忠実に働いてくれた",
"329000711_46": "「……というわけで目下の所、首尾は上々ですわ」",
"329000711_47": "「次の段階へ派手に移るとしましょう」",
"329000711_48": "「ああ……ご苦労だった」",
"329000711_49": "「ところで、お前たち。\\n いちいち、その大仰なポーズを取らねば気がすまないのか」",
"329000711_50": "「ほんとですよねえ。\\n 隣でダッサい動きを取られると目障りなんですけどー」",
"329000711_51": "「この派手さがわからぬとは、地味にナンセンスな奴」",
"329000711_52": "「けど、ガリィのブリっ子も大概だゾ?」",
"329000711_53": "「あんだと、もう1回言ってみろッ!?」",
"329000711_54": "(難点と言えば、奇妙なポーズを取る癖がついてしまったことと、\\n オレの想定通りの性格とはならなかったことか",
"329000711_55": "(特に個性の強いその性格は、時に互いに衝突し、命令の円滑な\\n 遂行を阻害することもままあり、その度にオレは頭を抱えた",
"329000711_56": "(だが……)",
"329000711_57": "(それでも、こいつらはオレ自身の命令に対しては、\\n どこまでも従順だった",
"329000711_58": "(そう。あいつと違って……)",
"329000711_59": "(永劫に続く1人きりの世界の中で、\\n ある意味、オートスコアラーたちだけが、オレの味方だった",
"329000711_60": "(だが……。あいつらすらも、今のオレの下には――)",
"329000711_61": "「う……ん……」",
"329000711_62": "「ここ、は……?」",
"329000711_63": "「――ッ?」",
"329000711_64": "(まずい、また欺瞞術式が解けていたかッ!?)",
"329000711_65": "「……ッ!」",
"329000711_66": "(……付近にオートスコアラーやノエルの気配は無い、か……?)",
"329000711_67": "「この部屋は……?」",
"329000711_68": "(設備や室内の様相からして、\\n 錬金術師協会に捕らえられたわけではなさそうだ",
"329000711_69": "「ならば、二課か……」",
"329000711_70": "(だが、まさか手足に拘束具すら無し、とはな)",
"329000711_71": "(先端技術の医療機器……、\\n オレの治療のために搬送したというところか",
"329000711_72": "(なるほど。ノエルたちが手を出せなかったのも、\\n 二課の懐の内だからというわけだ",
"329000711_73": "「確かに、ここのまま拘束され続ければ、\\n 奴らの襲撃を免れ得る、か……」",
"329000711_74": "(だが、オレにはまだ成さねばならぬことがある。\\n 黙って捕まっているわけにはいかぬのだ",
"329000711_75": "(転移は……無理か……)",
"329000711_76": "(ならば――)",
"329000711_77": "(まずは欺瞞術式と静音術式をかけ直す)",
"329000711_78": "(次に、扉のロックを解除して――)",
"329000711_79": "(まさか。施錠されていない、だと?)",
"329000711_80": "(……付近に見張りと思しき気配はある。\\n 緩い監視だけで充分と考えたか",
"329000711_81": "「ずいぶん甘いことだな……」"
}

View file

@ -0,0 +1,57 @@
{
"329000721_0": "「今、戻ったぞ」",
"329000721_1": "「お帰り、クリスちゃん」",
"329000721_2": "「その後、なんか動きはあったか?」",
"329000721_3": "「ああ、大ありだ。その後の敵との交戦で、\\n オートスコアラーたちや黒騎士を操る黒幕が判明した」",
"329000721_4": "「その時、キャロルちゃんを保護したんだよ」",
"329000721_5": "「はしょり過ぎでワケわかんねーっての」",
"329000721_6": "「けど、あたしのいない間に随分と事が進んだみたいだな」",
"329000721_7": "「ああ。そちらは何か有益な情報はあったか?」",
"329000721_8": "「じゃ、まずは情報の交換といくか」",
"329000721_9": "「……なるほど、な。\\n キャロルと同じ顔をしたエルって奴が、今回の黒幕なわけか」",
"329000721_10": "「ああ。キャロル自身が昏倒しているので、まだ詳しい話は\\n 聞き取れていないが。ほぼ確定とみていいだろう」",
"329000721_11": "「キャロルが何者かによりチフォージュ・シャトーから\\n 追われたという、そちらの者が見た夢の流れと符合するな」",
"329000721_12": "「ああ。こっちでもらった黒騎士の画像もエルフナインに\\n 実際に見てもらったが、間違いないそうだ」",
"329000721_13": "「ただ、そん時はオートスコアラーはキャロルを逃がすために\\n その場に残ったらしいんだが……」",
"329000721_14": "「恐らく、キャロルが脱出した後に、\\n オートスコアラーの制御権がエルに奪われたのでしょうね」",
"329000721_15": "「しかし、まさかエルフナインと、こちらの世界のキャロルとの間で\\n 意識が混線しているとはな……」",
"329000721_16": "「しかし、おかげで事件の全容が見えてきたな」",
"329000721_17": "「ノエルの目的自体は、未だにわかっていないけどね」",
"329000721_18": "「だけど、そのノエルって奴に奪われる前は、\\n キャロルがチフォージュ・シャトーに詰めていたんだろ」",
"329000721_19": "「ああ。だとすると、やっぱり我々の世界同様、万象黙示録――\\n 世界の分解を果たそうとしていた可能性は高い」",
"329000721_20": "「世界の分解だとッ!? それがキャロルの目的なのか?」",
"329000721_21": "「わたしたちの世界のキャロルの目的は、そうでした」",
"329000721_22": "「やっぱり、そうなのかな……」",
"329000721_23": "「他に思い当たることがあるのか?」",
"329000721_24": "「ううん。でも、ちょっとだけ変な気がします」",
"329000721_25": "「変?」",
"329000721_26": "「キャロルちゃんもノエルちゃんも、同じ様に、\\n 世界を壊すことが目的だったら、裏切る必要ないんじゃ……」",
"329000721_27": "「確かに、一理あるか……」",
"329000721_28": "「珍しく、核心っぽいとこついてくるな」",
"329000721_29": "「キャロルとノエルの目的がどこにあるか、\\n 上手くキャロルから情報を引き出せればいいのだが……」",
"329000721_30": "「どうだろうね。\\n 焼却とやらで、記憶の大部分を失っているようだから」",
"329000721_31": "「で、肝心のキャロルの容態はどうなんだ?」",
"329000721_32": "「バイタルは安定したけど、意識がいつ戻るかは不明ね」",
"329000721_33": "「今もメディカルルームで施療を――」",
"329000721_34": "「えッ!?」",
"329000721_35": "「どうしたんです?」",
"329000721_36": "「キャロルが病室から抜け出した模様ですッ!」",
"329000721_37": "「なんだとッ!? 警備は何をしていたッ!?」",
"329000721_38": "「病室周辺に常時配置していましたが、\\n 気づかなかったようですッ」",
"329000721_39": "「なんらかの術で認識をずらされて、\\n 離脱を許してしまったみたいね……」",
"329000721_40": "「本部内の記録を虱潰しに当たれッ!」",
"329000721_41": "「は、はいッ!」",
"329000721_42": "「…………」",
"329000721_43": "「ゲート外の監視カメラに映像が残っていましたッ!」",
"329000721_44": "「本部から脱した後、街中へと移動した模様ですッ!」",
"329000721_45": "「発信機はッ?」",
"329000721_46": "「ゲート付近に反応がありますッ!」",
"329000721_47": "「どうやら、気づいて外されたみたいね……」",
"329000721_48": "「今、1人で外に出たら危ないよッ!」",
"329000721_49": "「確かに、ノエルたちが気づいたら黙ってないでしょうね」",
"329000721_50": "「だがあの身体だ、まだそう遠くへは行っていまい」",
"329000721_51": "「ああ。手分けして探すぞッ!」",
"329000721_52": "「我々も情報部に調査させるッ!\\n とにかく、見つけ次第、彼女の保護をッ」",
"329000721_53": "「ノエル一派の急襲も想定し、充分気をつけてくれッ!」",
"329000721_54": "「わかりましたッ!」"
}

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@ -0,0 +1,44 @@
{
"329000722_0": "「アルカ・ノイズがお出迎えなんてねッ!」",
"329000722_1": "「だがこの程度、物の数ではないワケダッ!」",
"329000722_2": "「片付いたようね」",
"329000722_3": "「そうね。他に術者やオートスコアラーはいないみたい」",
"329000722_4": "「アルカ・ノイズを自動召喚する罠だけだったワケダ」",
"329000722_5": "「この程度であーしらを返り討ちにできるとでも\\n 思ってるのかしら」",
"329000722_6": "「だとしたら、見くびられたワケダ」",
"329000722_7": "「いや……そうではない」",
"329000722_8": "「どういうワケダ?」",
"329000722_9": "「高位術師の知識を継いだノエルのこと、私たちを相手取ろうと\\n していたなら、錬金術への対策措置も講じているはずよ」",
"329000722_10": "「確かにそうかもね」",
"329000722_11": "「ではここの罠は、\\n あくまで雑魚の侵入者を対象としたものというワケダね」",
"329000722_12": "「ええ、恐らくは」",
"329000722_13": "「つまり……ここは既に用済み、もぬけの殻というワケダ」",
"329000722_14": "「はあ。やっとノエルの拠点を見つけたと思ったけど、\\n とんだ肩すかしだったわね」",
"329000722_15": "「それじゃ、さっさと帰るとしましょうか」",
"329000722_16": "「いいえ。何か足取りに関わる情報が残っているかもしれない。\\n もう少し調べてみましょう」",
"329000722_17": "「もうッ。サンジェルマンったら、\\n 相変わらずクソ真面目なんだから」",
"329000722_18": "「文句を言ってないで、手を動かすワケダ」",
"329000722_19": "「はい、はい……わかりましたよっと」",
"329000722_20": "「……あら? 2人ともちょっと来て」",
"329000722_21": "「どうしたワケダ?」",
"329000722_22": "「この辺り、何か感じない?」",
"329000722_23": "「確かに、微かに施術の形跡が……?」",
"329000722_24": "「この作業台の奥なワケダ」",
"329000722_25": "「床にも台をずらした痕跡があるわね」",
"329000722_26": "「どかしてみましょう」",
"329000722_27": "「ええーッ!\\n こんな薄汚いの触ったら、お肌ばっちくなっちゃうじゃないッ」",
"329000722_28": "「つべこべ言わず手伝うワケダッ!」",
"329000722_29": "「はあ、もう……」",
"329000722_30": "「準備はいい? せーの――ッ!」",
"329000722_31": "「床の下に扉が……?」",
"329000722_32": "「隠しストレージ、というワケダね」",
"329000722_33": "「魔力による封印がかけられているわ」",
"329000722_34": "「この程度の解呪なら任せるワケダ」",
"329000722_35": "「……成功なワケダね」",
"329000722_36": "「何が入ってるのかしらね?」",
"329000722_37": "「鬼が出るか蛇が出るか――」",
"329000722_38": "「何それ、書類?」",
"329000722_39": "「恐らくは奴らの計画書なワケダが」",
"329000722_40": "「そのようね」",
"329000722_41": "「これは……ッ!?」"
}

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@ -0,0 +1,190 @@
{
"329000731_0": "「…………」",
"329000731_1": "(さて、これからどうする?)",
"329000731_2": "(術式が作用している間は魔力の気配は隠せる。\\n エルの追跡の目は欺けるだろう",
"329000731_3": "(直近の問題は、\\n 街に精通している二課をいかにして撒くか、か……",
"329000731_4": "(だが、街中であることが、逆にオレに味方するはずだ)",
"329000731_5": "(ああいった組織の手合いのこと、\\n 街中で強硬な手段を取ってくることはないだろう",
"329000731_6": "(いざとなっても混乱を引き起こし、\\n 人混みに紛れれば逃げることは容易い",
"329000731_7": "(最大の懸念は、錬金術師協会の追手たちか……)",
"329000731_8": "(あの口ぶり、恐らく幹部級だろう。\\n 欺瞞術式も、奴らには完全に効果があるという保証は無い",
"329000731_9": "(だが錬金術師協会も、残されたオレの記憶が確かなら、\\n 一般人に対しては穏健な方針を長年続けていたはず……",
"329000731_10": "(よほどのことがない限り、民間人に被害を出してまで、\\n 拘束しようとはしてこないだろう……",
"329000731_11": "「フ……我ながら、楽観論の積み重ねに過ぎるな」",
"329000731_12": "(だが、そのか細い可能性の積算の上でなければ、\\n これからの行動の想定が成り立たないのも確かだ……",
"329000731_13": "「なんと惨めな有様なのだ……」",
"329000731_14": "「チッ!」",
"329000731_15": "「きゃッ!?」",
"329000731_16": "「ご、ごめんなさい、お姉ちゃん」",
"329000731_17": "「オレに構うなッ! とっとと消えろッ!」",
"329000731_18": "「ひッ! ……うう……う」",
"329000731_19": "(――ッ! まずい、ここで泣かれるのは面倒だ)",
"329000731_20": "「待てッ! オレは大丈夫だから、気にするな」",
"329000731_21": "「……う、うん」",
"329000731_22": "「じゃあな」",
"329000731_23": "「なんだ?」",
"329000731_24": "(……何故オレの服の裾を引く? 馴れ馴れしい)",
"329000731_25": "「お姉ちゃん、わたしのパパ、知らない?」",
"329000731_26": "(なんだ、迷子か)",
"329000731_27": "「知らん。そもそも、なぜオレが顔も知らぬ\\n お前の父親を知っている道理がある」",
"329000731_28": "「だって……パパ、急にいなくなっちゃって……」",
"329000731_29": "「急にいなくなったのは、父親ではなくお前だろう」",
"329000731_30": "「違うもんッ! パパが迷子なんだもんッ!」",
"329000731_31": "「やかましいッ!\\n これ以上オレを煩わせるなッ」",
"329000731_32": "「う……ああ……うわああああんッ!」",
"329000731_33": "(くッ! しまった――)",
"329000731_34": "「お、おいッ!」",
"329000731_35": "「パパッ!\\n パパッ パパッ」",
"329000731_36": "「パパッ!\\n パパッ パパッ」",
"329000731_37": "(――ッ!!)",
"329000731_38": "「おい、やめろッ! 泣くなッ!」",
"329000731_39": "「うわあああんッ!\\n ああああんッ」",
"329000731_40": "「ねえ、どうしたの?\\n 大丈夫――って、キャロルちゃんッ」",
"329000731_41": "「お前は……」",
"329000731_42": "「そうなんだ、パパが迷子になっちゃったのか……」",
"329000731_43": "「うん……」",
"329000731_44": "「ねえ、お嬢ちゃん。\\n お名前、なんて言うの」",
"329000731_45": "「……ユミ」",
"329000731_46": "「ユミちゃんかー。それじゃ、お姉ちゃんたちが、\\n ユミちゃんのパパを探してあげるッ」",
"329000731_47": "「ほんとに?」",
"329000731_48": "「うん、ほんとほんとッ!」",
"329000731_49": "「『たち』とはなんだ?\\n 勝手にオレを加えるなッ」",
"329000731_50": "「だって、この子、キャロルちゃんに懐いてるみたいだし……」",
"329000731_51": "「なんだと?」",
"329000731_52": "「ッ! お前もいつまで裾を握ってるッ! 放せッ!」",
"329000731_53": "「だ、だって……」",
"329000731_54": "「握らせてあげて、きっと心細いんだよ」",
"329000731_55": "「心細い? 何を甘ったれたことを」",
"329000731_56": "(オレはずっと1人だった。\\n 心細いだなどと思ったことは――",
"329000731_57": "「う……ううッ……」",
"329000731_58": "「わ、わかったッ!\\n 掴んでてもいいから、泣くなッ」",
"329000731_59": "「うん……ありがと、ちっちゃいお姉ちゃん」",
"329000731_60": "「ちっちゃ――ッ!?」",
"329000731_61": "「フフ。それじゃ、迷子のパパを探そうかッ!」",
"329000731_62": "「うんッ!」",
"329000731_63": "(なんだってオレがこんな目に……)",
"329000731_64": "「へー。ユミちゃん、パパとお買い物に来てたんだ」",
"329000731_65": "「うんッ!」",
"329000731_66": "「どんなお店でお買い物してたか覚えてる?」",
"329000731_67": "「ん。うーんとね、本屋さんッ!\\n ユミね、新しいご本買ってもらったのッ」",
"329000731_68": "「そうなんだー、よかったねッ!」",
"329000731_69": "「じゃ、本屋さんの方に行ってみようか。\\n パパがいるかもしれないし」",
"329000731_70": "「うんッ!」",
"329000731_71": "「ユミちゃん、ご本はもう自分で読めるの?」",
"329000731_72": "「まだちょっとだけ……。\\n いつもはね、ママが読んでくれるの」",
"329000731_73": "「でもね、お休みの日だけはパパが読んでくれるのッ!」",
"329000731_74": "「へえ……羨ましいなあ。\\n ユミちゃんのパパ、優しいんだね」",
"329000731_75": "「うん、すっごくッ!!」",
"329000731_76": "「お姉ちゃんたちのパパは?」",
"329000731_77": "「え? わたしたちのパパ?」",
"329000731_78": "「…………」",
"329000731_79": "「うーん……そうだなあ……」",
"329000731_80": "「ちょっとだらしないところもあるけど、\\n いざと言うときは頑張ってくれる、いいパパだよ」",
"329000731_81": "「そうなんだあ……」",
"329000731_82": "「……実はわたしのパパもね、ユミちゃんのパパと同じで、\\n 迷子になっちゃったことがあったんだ」",
"329000731_83": "「ほんとに?」",
"329000731_84": "「うん。でもね、ちゃんと見つかったよ」",
"329000731_85": "「だから、ユミちゃんも大丈夫。\\n すぐにパパ、見つかるからね」",
"329000731_86": "「ほんとに?」",
"329000731_87": "「ほんとだよッ!」",
"329000731_88": "「そうだッ! こういう時に唱えるとっておきの魔法の言葉、\\n 教えてあげるね」",
"329000731_89": "「魔法の……言葉?」",
"329000731_90": "「うん。お姉ちゃんが小さい時、\\n お姉ちゃんのパパから教えてもらったんだ」",
"329000731_91": "「なんて言うの?」",
"329000731_92": "「へいき、へっちゃら――って言うんだよ」",
"329000731_93": "「へいき……へっちゃら?」",
"329000731_94": "「うん。哀しい時も、辛い時も、困った時もね。\\n これを唱えていると、なんとかなっちゃうんだよ」",
"329000731_95": "「だから、ユミちゃんも、唱えてみて。ね?」",
"329000731_96": "「へいき、へっちゃら……?」",
"329000731_97": "「うんッ! だから、これでもう大丈夫だよッ!」",
"329000731_98": "「へへ……ありがとう、お姉ちゃん。\\n へいき、へっちゃらッ」",
"329000731_99": "「そうそうッ! その調子ッ!」",
"329000731_100": "「ちっちゃいお姉ちゃんのパパは? 優しい?」",
"329000731_101": "「オレの、パパは――」",
"329000731_102": "(ああ……オレのパパは誰よりも優しかったさ)",
"329000731_103": "(オレに錬金術を教えてくれて……)",
"329000731_104": "(それに、いつでも一緒にいてくれた)",
"329000731_105": "(そうだ。あの日までは――)",
"329000731_106": "(火炙りにされた、パパ――)",
"329000731_107": "(世の中の人々のためにと、錬金術を使っていたのに)",
"329000731_108": "(誰も救いもしない『奇跡』などという\\n くだらぬ概念の犠牲となったパパ――",
"329000731_109": "(パパの願い。パパの残した命題。\\n オレは、それを――",
"329000731_110": "「オレの、パパは――」",
"329000731_111": "「ん? お姉ちゃん、どうしたの?」",
"329000731_112": "「ユミ――ッ!」",
"329000731_113": "「あ、パパだッ!」",
"329000731_114": "「パパぁッ!」",
"329000731_115": "「ハァ、ハァ、ハァ……。\\n よかった、ユミ……パパ、心配したんだぞ」",
"329000731_116": "「それはパパのほうッ! 迷子になっちゃ、メッ!」",
"329000731_117": "「え? 迷子になったのはパパなのかい?」",
"329000731_118": "「そうだよ。\\n あのお姉ちゃんたちが探してくれたんだからねッ」",
"329000731_119": "「そっかあ……ごめんごめん」",
"329000731_120": "「どうも娘がお世話になったようで。\\n 本当にありがとうございました」",
"329000731_121": "「いえいえッ! とんでもないですッ!」",
"329000731_122": "「パパが見つかってよかったね、ユミちゃん」",
"329000731_123": "「うんッ!」",
"329000731_124": "「ね? 魔法の言葉、効いたでしょう?」",
"329000731_125": "「ホントだねッ! お姉ちゃん、ありがとッ!」",
"329000731_126": "「フフ……どういたしまして」",
"329000731_127": "「ちっちゃいお姉ちゃんも、ありがとねッ!」",
"329000731_128": "「オレは……何もしていない」",
"329000731_129": "「そんなことないよッ!」",
"329000731_130": "「哀しい時、辛い時、困った時――\\n 近くにいて話を聞いてくれる人がいるだけで、救われるんだよ」",
"329000731_131": "「今日のユミちゃんにとって、\\n それがキャロルちゃんだったんだ」",
"329000731_132": "(オレが……誰かの……救いに……?)",
"329000731_133": "「それでは、失礼します」",
"329000731_134": "「お姉ちゃんたち、バイバイッ!」",
"329000731_135": "「うん、バイバイッ!」",
"329000731_136": "「……」",
"329000731_137": "「五月蠅いのが消えたな」",
"329000731_138": "「それで、オレを拘束するのか?」",
"329000731_139": "「……ううん、キャロルちゃんと話がしたかったんだ」",
"329000731_140": "「話だと?」",
"329000731_141": "「うん、わたしのお父さん……」",
"329000731_142": "「わたしが1番苦しい時に傍にいてくれなくて。\\n 全部捨てて逃げ出して……」",
"329000731_143": "「大人のくせに無責任で、\\n どうしようもない、ダメな人だと思った」",
"329000731_144": "「お前は、一体何を……」",
"329000731_145": "「そんな人だったけどね。でも、わたしの中にも\\n お父さんから受け継いでいたものはあったんだ」",
"329000731_146": "「それは、お父さんがいない間も、\\n ずっとわたしを支えてくれていた」",
"329000731_147": "「それが魔法の言葉とやらか?\\n くだらん戯れ言だッ」",
"329000731_148": "「そうだね。\\n 確かにくだらない戯れ言かもしれない」",
"329000731_149": "「でもね……人は、そんなくだらないものからでも、\\n 救われることがあるんだよ」",
"329000731_150": "「許せないと思った人を、\\n 許せる理由になることもあるんだよ」",
"329000731_151": "「……ッ!」",
"329000731_152": "「オレには救いの言葉などなかったッ!!\\n そんなものは――」",
"329000731_153": "「そんなことないよッ!」",
"329000731_154": "「キャロルちゃんの中にも、恨みとか、憎しみだけじゃない。\\n お父さんが残してくれた大切なものが、きっとあるはずだよ」",
"329000731_155": "「オレは……オレには――」",
"329000731_156": "(パパの残した命題。\\n パパの願い――",
"329000731_157": "(オレはシャトーに籠もり、\\n 万象黙示録を研究し続けた",
"329000731_158": "(それこそがパパから受け継いだ、ただ1つの物と信じて。\\n 憎しみと恨みだけを糧にして――",
"329000731_159": "(世界の解剖こそが、パパからの命題であり、\\n パパが言っていた、世界を識る唯一の手段だとッ",
"329000731_160": "(でも――本当に?)",
"329000731_161": "(パパは、万象黙示録を達成したオレを、\\n さっきの少女のように、褒めてくれるだろうか",
"329000731_162": "(あんな風に、笑いかけてくれるだろうか?)",
"329000731_163": "(――ッ!? 何を今更迷っているんだオレはッ!)",
"329000731_164": "(オレはパパの無念を晴らしッ!\\n 奇跡の否定を果たすのだと、そう決めただろうッ",
"329000731_165": "「キャロルちゃん?」",
"329000731_166": "「オレがパパから何を受け継いだかなど、\\n お前に言われる筋合いではない」",
"329000731_167": "「キャロルちゃん……」",
"329000731_168": "「話は終わりだッ! さあ、どうする?\\n オレを拘束するか」",
"329000731_169": "「だが、ただでは捕まらんぞッ!」",
"329000731_170": "「捕まえるつもりなんてないよ。\\n ただ、キャロルちゃんにお願いがあるんだ」",
"329000731_171": "「オレにお願い、だと?」",
"329000731_172": "「わたしたちに協力してくれないかな?」",
"329000731_173": "「何を言っているのだ、お前は?\\n オレは敵だぞッ」",
"329000731_174": "「敵じゃないよッ! 少なくとも、今はッ!」",
"329000731_175": "(こいつ、思考が全く読めん……どういう腹づもりだ?)",
"329000731_176": "(それに、先ほどからの会話、オレのことを知っている風だった)",
"329000731_177": "(面識はないと言っていたわりに……。\\n 一体、こいつはなんなんだ",
"329000731_178": "「オレに何を協力しろと言うんだ?」",
"329000731_179": "「ノエルって子を止めたい……。\\n だから、それを手伝ってほしいんだ」",
"329000731_180": "「ノエルを――?」",
"329000731_181": "(当座の目的は、オレと合致する)",
"329000731_182": "(そして、今や全ての持ち駒を失ったオレに、\\n 独力でエルに立ち向かう力はない……",
"329000731_183": "(このまま拘束されるなら、話に乗った方が得策か?)",
"329000731_184": "(そうだ。いざとなれば、隙を見て逃げ出せばいい)",
"329000731_185": "「……ならば、1つだけ条件がある」",
"329000731_186": "「錬金術師協会にオレを引き渡さない、それが条件だ」",
"329000731_187": "「わかった。\\n 必ずサンジェルマンさんたちを説得する」"
}

View file

@ -0,0 +1,164 @@
{
"329000741_0": "「そんな話は到底聞けぬワケダッ!」",
"329000741_1": "「裏切り者を信用しろってのは、流石にね……」",
"329000741_2": "「どうか、お願いしますッ!」",
"329000741_3": "「全く、お前らしいと言えばお前らしいけどな」",
"329000741_4": "「予想通りの展開だな。\\n 説得できるのではなかったのか」",
"329000741_5": "「うん、ちゃんとわかってもらうからッ!」",
"329000741_6": "「……私は、その条件で構わない」",
"329000741_7": "「ね? ほら、ちゃんとわかってもらえて――」",
"329000741_8": "「――って、えええええッ!?」",
"329000741_9": "「サンジェルマンッ!?」",
"329000741_10": "「正気なわけッ!?」",
"329000741_11": "「ああ。無論だ」",
"329000741_12": "「今度こそ局長も黙ってないワケダッ!」",
"329000741_13": "「その局長から課せられた任務は、キャロルの拘束だけでなく、\\n チフォージュ・シャトーの奪還も含まれている」",
"329000741_14": "「片方だけでは任務を達成したことにはならない」",
"329000741_15": "「そんなの、別々に果たせばいいだけでしょ?」",
"329000741_16": "「2つの任務の間では、より後者の方が、\\n 優先度も緊急度も高いものと、私は考える」",
"329000741_17": "「その扶けとなるならば、逃亡者との一時的な休戦も共闘も、\\n 已むを得ぬと判断する」",
"329000741_18": "「無茶が過ぎるでしょ、その理屈……」",
"329000741_19": "「ただし。\\n 身柄を保証できるのは、この事態が収拾するまでの間」",
"329000741_20": "「その条件でよければ、私は立花響の提案を、受け容れよう」",
"329000741_21": "「もとより大赦など望んでいない。\\n それで十分だ」",
"329000741_22": "「ならば、聞かせてもらおうか。\\n まずは、事ここに至るまでの経緯とやらを」",
"329000741_23": "「ああ……」",
"329000741_24": "「ノエルの正体とは、やはり?」",
"329000741_25": "「……ヤツは、過去にオレの創ったホムンクルス躯体だ」",
"329000741_26": "「元は、オレ自身の器として用意したものだったが――」",
"329000741_27": "「計画遂行のための手が足りず、\\n 急遽、サポートをさせるために、駒として置いたのだ」",
"329000741_28": "「その辺の経緯は、エルフナインと同じだな」",
"329000741_29": "「エルフナイン? 誰だそれは?」",
"329000741_30": "「あ……うん。\\n その辺は、長くなるから、後で話すね」",
"329000741_31": "「……まあいい」",
"329000741_32": "「初めはオレの命に従い、計画の遂行を補助していた」",
"329000741_33": "「だが――アレに触れたことで、ヤツの裡に邪悪な意思が目覚め、\\n 反旗を翻したのだ」",
"329000741_34": "「アレって……?」",
"329000741_35": "「ひょっとして、呪いの魔剣、ダインスレイフ……?」",
"329000741_36": "「ああ。その通りだ」",
"329000741_37": "「計画の核心に関する知識までヤツにインストールしていたために、\\n 計画そのものを横から乗っ取られたのだ」",
"329000741_38": "「ザマを見たワケダ」",
"329000741_39": "「もう。あんまりイケズ言わないの」",
"329000741_40": "「……いや、構わない。\\n これ以上ない不様さだ」",
"329000741_41": "「でも、力そのものは創造主のあなたの方が強いのでは?」",
"329000741_42": "「ああ……本来はな。\\n だが計画の準備に力を使い、疲弊したタイミングを狙われた」",
"329000741_43": "「しかもヤツは、オレに対抗するために、\\n シャトー内に罠を張り巡らせてから、牙を剥いたのだ」",
"329000741_44": "「<size=25>エルフナインが夢で見たくだりのようだな</size>」",
"329000741_45": "「<size=25>ああ、らしいな</size>」",
"329000741_46": "「罠に掛けられたオレは、ヤツに抗し得ず、\\n オートスコアラーに足止めを命じて撤退した」",
"329000741_47": "「いや……言葉を繕っても仕方ない。\\n 不様に逃げ出したのだ」",
"329000741_48": "「そんなこと……」",
"329000741_49": "「お為ごかしはいい。これを不様でなくてなんと言う?\\n 配下のオートスコアラーも奪われ、逆にこの身を狙われる有様だ」",
"329000741_50": "「ノエルには、オートスコアラーたちの知識も渡していたの?」",
"329000741_51": "「ああ。万が一オレが命題を果たす前に倒れた時、\\n 計画を引き継ぎ、遂行させるためにな……」",
"329000741_52": "「その知識を使って、制御権を奪われたワケダ」",
"329000741_53": "「あちゃー。やっちゃったわねえ……」",
"329000741_54": "「本来ならばホムンクルス躯体もオートスコアラーと同様、\\n 創造主に従順なはず。反逆は予想外」",
"329000741_55": "「――これが、ここに至った経緯というわけだ」",
"329000741_56": "「<size=25>ここまでは、こちらで把握していた情報と合致するな</size>」",
"329000741_57": "「<size=25>今の所、騙そうという意図はなさそうね</size>」",
"329000741_58": "「なるほど。その点については納得できた」",
"329000741_59": "「では、他にまだ納得のいかぬ点があると?」",
"329000741_60": "「ああ……もう1つ、聞かせてもらわねばならない」",
"329000741_61": "「お前自身の本来の目的が、なんであるのかを」",
"329000741_62": "「…………」",
"329000741_63": "「答えられないのか?」",
"329000741_64": "「やっぱり、万象黙示録じゃ――」",
"329000741_65": "「ッ!? なぜその名を知っているッ!?」",
"329000741_66": "「お前が使っていたと思しき拠点から、\\n こんな資料を見つけたのだ」",
"329000741_67": "「こ、これは――」",
"329000741_68": "「そうか。既に知られていたのか……」",
"329000741_69": "「ならば、今更隠す必要もないな」",
"329000741_70": "「やはりこれは、お前の計画書なのか?」",
"329000741_71": "「ああ、その通りだ」",
"329000741_72": "「そんなッ!」",
"329000741_73": "「やっぱり、お前も世界を滅ぼそうとッ!?」",
"329000741_74": "「そうだ。世界を壊す歌の成就、\\n 万象黙示録こそが、オレの果たすべき命題だ……」",
"329000741_75": "「だが、まさか装者にまで知られているとはな……」",
"329000741_76": "「その上、協会の幹部ともあろうものが、秘技にまつわる資料を\\n 協会外の人間に見せるなど、予想外だったぞ」",
"329000741_77": "「それは違うよ」",
"329000741_78": "「何が違うと言うのだ?」",
"329000741_79": "「わたしたちは、前から知ってたんだ。\\n 万象黙示録のこと」",
"329000741_80": "「どういうことだ?」",
"329000741_81": "「わたしたちは、見たんだよ。\\n キャロルちゃんが世界を壊そうとするところを……」",
"329000741_82": "「ああ。この目で直接な……」",
"329000741_83": "「そういうこった」",
"329000741_84": "「何を言っている? まだオレは何も――ッ!?」",
"329000741_85": "「この世界じゃあな」",
"329000741_86": "「我々は別の世界――いわゆる並行世界からやってきたのだ」",
"329000741_87": "「そんなバカな……」",
"329000741_88": "「最初に会った時に、この世界では初めて会ったけど、\\n あなたのことを知ってるって言ったでしょ」",
"329000741_89": "「そんな突拍子もない話を信じろと?」",
"329000741_90": "「証明してやるといい」",
"329000741_91": "「わかりました」",
"329000741_92": "「もういい……十分だ」",
"329000741_93": "(オレの計画に、ダウルダブラ……、\\n 知られるはずのない情報……疑う余地は無いか……",
"329000741_94": "(エルフナインという不整合も見られるが……、\\n それでも、納得のいく話だ",
"329000741_95": "(並行世界……存在する可能性は十分にあり得る。\\n しかし、実際に行き来が可能だとはな",
"329000741_96": "「で、どうする?\\n 世界を壊すのが目的のやつと手を組むか」",
"329000741_97": "「確かに、危険性は高い……」",
"329000741_98": "「やはり、拘束して協会へ連れ帰るのがいいと思うワケダが」",
"329000741_99": "「大丈夫だよ、みんな」",
"329000741_100": "(だって、前よりもずっと近く、\\n 手の届くところにキャロルちゃんがいるんだからッ",
"329000741_101": "(例え間違いそうになっても、\\n わたしがその手を掴んで離さないからッ",
"329000741_102": "「お前なあ……何が大丈夫なんだ?」",
"329000741_103": "「前はいなかった、サンジェルマンさんたちもいますし、\\n わたしたち以上に錬金術に詳しい、心強い味方がッ」",
"329000741_104": "「立花響……」",
"329000741_105": "「わたしらまでその不確かな計算に入れるワケダ」",
"329000741_106": "「相変わらず無茶苦茶ね、この子……」",
"329000741_107": "「疑念を抱くのも無理はない。\\n が、今はひとまず胸に留めておけ」",
"329000741_108": "「このまま座視すればノエルが計画を発動してしまう。\\n それを防ぐには、人でも多くの専門家の協力が必要だ」",
"329000741_109": "「目下は、ノエルの計画を防ぐことを第一に考えよう」",
"329000741_110": "「はいッ!」",
"329000741_111": "「やれやれ……こっちの二課も、\\n お人好しの楽天家ばっかなのは変わらないな」",
"329000741_112": "「フ……そう言う雪音もその一員だろう」",
"329000741_113": "「先輩もな?」",
"329000741_114": "「ああ」",
"329000741_115": "(こいつらは、揃いも揃ってバカなのか?\\n オレの計画を知ったうえで捕らえることもしないなどと",
"329000741_116": "(いや、こいつ立花響と言ったか……。\\n この自信、オレの計画を止める算段があるのか",
"329000741_117": "(……まあいい、ノエルを討ち、全てもと通りにしてやる。\\n そう、もとの計画通りに",
"329000741_118": "(必ず、パパの命題を達成してみせるッ!)",
"329000741_119": "「話を戻そう。呪いの旋律を完成させるには、ダインスレイフ――\\n 呪われた魔剣の力でオートスコアラーを倒す必要があったはず」",
"329000741_120": "「錬金術師たちが見つけた資料にも似たようなことが載っているわ」",
"329000741_121": "「大量のフォニックゲインを持つ者に呪いの力を纏わせ\\n オートスコアラーを倒させることで旋律が完成すると」",
"329000741_122": "「なら、放っておいても問題ないんじゃないか?」",
"329000741_123": "「あたしらのギアの中のイグナイトモジュールは、\\n 昇華しちまったわけだし」",
"329000741_124": "「正しい手順を踏むならば、そうだ。\\n だから本来は二課の装者を追い詰め、利用する計画だった……」",
"329000741_125": "「そりゃ、面白くない話だね」",
"329000741_126": "「しかし、ノエルはそれとは違う方法――装者を必要としない\\n 方法で呪いの旋律を作ろうとしている」",
"329000741_127": "「どうやって?」",
"329000741_128": "「シャトーを改造し、ダインスレイフと共鳴させることで、\\n 呪いの旋律を奏でられるように準備を進めているはずだ」",
"329000741_129": "「なぜわかる?」",
"329000741_130": "「本来、オレが準備していた予備プランの1つだからだ」",
"329000741_131": "「そして、ヤツに錬金術師の知識を与えたのも、オレだ」",
"329000741_132": "「現状の条件下で計画を成し遂げるには、\\n この手しかないと、ヤツも理解しているはずだ」",
"329000741_133": "「そのプランでの詳しい発動条件は?」",
"329000741_134": "「装者に依らずとも、先ほど話したシャトーの共鳴で、\\n 呪いの旋律が奏でられるようになったダインスレイフ――」",
"329000741_135": "「その剣で、4機のオートスコアラーを斬れば、\\n 譜面に必要な旋律が刻まれ、世界を壊す歌は完成する」",
"329000741_136": "「なんだってッ!?」",
"329000741_137": "「今、そのどちらも敵の手の内にある……」",
"329000741_138": "「では、今すぐにでも計画が実行に?」",
"329000741_139": "「いや……。2つ問題がある」",
"329000741_140": "「それはなんだ?」",
"329000741_141": "「1つめは、呪いの旋律の代替生成方法だ。\\n 正規の手順でない以上、相応のデメリットもある」",
"329000741_142": "「デメリット?」",
"329000741_143": "「装者のフォニックゲインから個々に抽出するよりも、\\n 一挙に大量のエネルギーが必要となる」",
"329000741_144": "「これにより、シャトーの起動準備を整えた後、\\n 短時間で旋律全体を完成させる必要が出てくる」",
"329000741_145": "「わたしたちの世界では、オートスコアラー1機1機を\\n 倒す間に多少スパンがあったが……」",
"329000741_146": "「その時みたいに、呪いの旋律のエネルギーを\\n 長く備蓄しとくことはできないってことか」",
"329000741_147": "「そういうことだ。それ程までに巨大な力の確保には、\\n まだ時間がかかるはず」",
"329000741_148": "「2つめは?」",
"329000741_149": "「こちらの方が決定的だろう」",
"329000741_150": "「肝心の譜面が、未だに完成していないということだ」",
"329000741_151": "「譜面……そうかッ!」",
"329000741_152": "「譜面が無ければ、旋律が刻まれる先が無い。\\n したがって、世界を壊す歌は創れない」",
"329000741_153": "「ああ。その譜面そのものは、オレ自身が\\n ダインスレイフにより攻撃されることで、初めて完成する」",
"329000741_154": "「そういえば、あの時は、わたしが――」",
"329000741_155": "「だから連中は未だに君の身柄を狙っているのかッ!」",
"329000741_156": "「ああ、そういうことだ」",
"329000741_157": "「だが、万が一それらの条件が満たされたら、世界は――」",
"329000741_158": "「……正しい手順を踏めば、分解、解析、そして再構築が\\n 行われるはずだが、エルの旋律ではどうなるか予想がつかない」",
"329000741_159": "「本来あるべき手順を飛ばし、完全なダインスレイフの呪いを共鳴、\\n 強引に世界を壊す歌として機能させようというものだからな」",
"329000741_160": "「下手をすれば、制御不能に陥り、分解の力で\\n 惑星ごと消滅させてしまうかもしれない」",
"329000741_161": "「そんな……ッ!?」"
}

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@ -0,0 +1,44 @@
{
"329000751_0": "「だが、万が一それらの条件が満たされたら、世界は――」",
"329000751_1": "「……正しい手順を踏めば、分解、解析、そして再構築が\\n 行われるはずだが、エルの旋律ではどうなるか予想がつかない」",
"329000751_2": "「本来あるべき手順を飛ばし、完全なダインスレイフの呪いを共鳴、\\n 強引に世界を壊す歌として機能させようというものだからな」",
"329000751_3": "「下手をすれば、制御不能に陥り、分解の力で\\n 惑星ごと消滅させてしまうかもしれない」",
"329000751_4": "「そんな……ッ!?」",
"329000751_5": "「そう思い通りにやらせはしない」",
"329000751_6": "「そのために、我々は手を結んだのだから」",
"329000751_7": "「はいッ! 絶対に止めましょうッ!」",
"329000751_8": "「だが、どのようにして止める?」",
"329000751_9": "「ああ。根性論だけじゃどうにもならないだろ」",
"329000751_10": "「可能なら、まずはオートスコアラーを取り返したい」",
"329000751_11": "「どうして?」",
"329000751_12": "「捕獲し、再調整すれば、再びオレに従ってくれるはずだ」",
"329000751_13": "「あの者たちの忠誠、見上げるものがあった。\\n 可能なら、そうしてやりたいところだが……」",
"329000751_14": "「だが、そう簡単にいくとは思えないワケダ」",
"329000751_15": "「ああ。無傷で捕まえるなんて、\\n ぶっちゃけ、ぶっ壊すより難しいだろ」",
"329000751_16": "「相手が1機ずつ繰り出してくれば捕獲しやすいだろうが、\\n そう都合よくいくとも思えないしな……」",
"329000751_17": "「それに、再調整しても、向こうに再度鹵獲されれば\\n 同じことの繰り返しとなる可能性もあるわね……」",
"329000751_18": "「だが、その難しさはノエルも同じだったはず」",
"329000751_19": "「どういうことだ?」",
"329000751_20": "「聞きたいのだが、ノエルはどうやって\\n オートスコアラーたちを従えたのか、想像がつくか」",
"329000751_21": "「推測だが、単純にマスターがノエルだと誤認させたのだろう」",
"329000751_22": "「それってつまり、ノエルって子のことを、\\n キャロルちゃんだって思い込ませてるってこと」",
"329000751_23": "「ああ。メモリを完全消去し、1から人格を再構築するには、\\n 幾ら奴らの構造を<ruby=ちしつ>知悉</ruby>していても、膨大な時間がかかる」",
"329000751_24": "「だが、奴らのメモリの中に残る、\\n オレに関する情報を、エルのものとして上書きしたならば……」",
"329000751_25": "「あたかも最初からノエルが主人であったかのように振る舞う――\\n という道理か」",
"329000751_26": "「だが、流石に記憶の中の誰かが他人へ置き換えるのは、\\n 相当な無理がないか 記憶に齟齬が発生しそうなものだが……」",
"329000751_27": "「まあ、いくら同じような顔をしてると言ってもな……」",
"329000751_28": "「ええ。その上、あれだけの忠誠心の持ち主。\\n 相当な違和感を覚えるはず」",
"329000751_29": "「短期間にほころびが出なければ、\\n 目的遂行には問題ないという判断だろうな……」",
"329000751_30": "「そういえば、あのお人形さんたち、\\n キャロルのことを偽マスターとか言ってなかった」",
"329000751_31": "「ああ、確かにな」",
"329000751_32": "「それでマスターが2人いるという矛盾を、\\n 可能な範囲で低減しているワケダ」",
"329000751_33": "「なるほどな……」",
"329000751_34": "「だが、裏を返せば、そんな小細工をしなければ\\n 不整合が容易に発生する恐れがあるということだろう」",
"329000751_35": "「そうかもしれないが……」",
"329000751_36": "「ならば、いっそ意図的に齟齬を促進させたらどうなる?」",
"329000751_37": "「齟齬を、促進?」",
"329000751_38": "「なるほど……いい目の付けどころかもしれないわね」",
"329000751_39": "「齟齬を促進、拡大させれば、本来の記憶、\\n 認識を取り戻す可能性もあるんじゃないかしら」",
"329000751_40": "「そんなことができるのか?」",
"329000751_41": "「私は天才・櫻井了子よ。任せなさい」"
}

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@ -0,0 +1,102 @@
{
"329000811_0": "記憶の弾丸",
"329000811_1": "「お待たせしたわね」",
"329000811_2": "「急にラボに籠もったかと思ったら、何をしてたんだ?」",
"329000811_3": "「これを作っていたのよ」",
"329000811_4": "「これは……弾丸?」",
"329000811_5": "「私特製の『メモリアルバレット』よ」",
"329000811_6": "「メモリアルバレット……?」",
"329000811_7": "「直訳すると『記憶の弾丸』か?」",
"329000811_8": "「ええ、その通り」",
"329000811_9": "「これはキャロルちゃんやオートスコアラーが力の源としている、\\n 『想い出』を込めることのできる特殊な弾なの」",
"329000811_10": "「想い出をエネルギーと化す技術は、\\n 本来、錬金術の秘奥なのだが……この際仕方がない」",
"329000811_11": "「で、弾に想い出を込めてどうするんだよ?」",
"329000811_12": "「弾丸を打ち込まれた対象の脳領域に、内包された想い出が\\n 働きかけて、種の記憶として定着させるの」",
"329000811_13": "「それって、洗脳ってことにならないか?」",
"329000811_14": "「大丈夫。普通なら、自分の記憶として定着することは、\\n まずないでしょう」",
"329000811_15": "「他人の想い出を垣間見る程度ということか」",
"329000811_16": "「ええ、でも今回は、キャロルちゃんのオートスコアラーとの\\n 想い出を込めて、彼女たちに当てれば――」",
"329000811_17": "「そうか。オートスコアラーの中に、2人の主との記憶が\\n 並行して存在することになり、そこに齟齬が生じるとッ」",
"329000811_18": "「ええ、そういうこと」",
"329000811_19": "「だが、キャロルの想い出が勝るという公算は?」",
"329000811_20": "「本来なら、弾に込められる想い出の量が多ければ多いほど、\\n 齟齬も大きくなり、真の記憶が目覚めやすいはずだけど……」",
"329000811_21": "「……」",
"329000811_22": "「あ、そっか。\\n キャロルは既に相当量の想い出を焼却してるから――」",
"329000811_23": "「これ以上、想い出を失うことは危険なワケダ」",
"329000811_24": "「ええ、そう」",
"329000811_25": "「だからこの弾には、最低限の量の想い出だけしか、\\n 込められていないわ」",
"329000811_26": "「効果が出るかどうかは……そうね、\\n 希望的観測を含めても、半々がいいところだと思ってちょうだい」",
"329000811_27": "「半々って、丁半博打かよ……」",
"329000811_28": "「あの、万が一、効果がなかった時はどうするんですか?」",
"329000811_29": "「その時は、オートスコアラーを破壊する」",
"329000811_30": "「そんなッ!?」",
"329000811_31": "「譜面の完成を防ぐ上で、最も公算の高い方法だ」",
"329000811_32": "「本来ならば、それを第1のプランとしてもいいワケダ」",
"329000811_33": "「これは、あーしたちの最後の妥協ラインってところね」",
"329000811_34": "「でも、それじゃ……」",
"329000811_35": "「ああ、それで構わない」",
"329000811_36": "「……本当にいいの?」",
"329000811_37": "「そのままでも、ノエルに利用されるだけだ」",
"329000811_38": "「敵を利するくらいならば、いっそ……」",
"329000811_39": "「キャロルちゃん……」",
"329000811_40": "「悲観するな、立花」",
"329000811_41": "「わたしは、あの者たちの中に眠る忠の心を信じる」",
"329000811_42": "「五分五分の勝負ならば、必ず主の下へ戻ってくるとな」",
"329000811_43": "「……はい」",
"329000811_44": "「そういうのは五分五分って言わないんだけどな……」",
"329000811_45": "「理屈の通じないやつらに幾ら言っても無駄なワケダ」",
"329000811_46": "「やれやれ。相変わらず楽観的すぎんだろ……」",
"329000811_47": "「どうしたッ!?」",
"329000811_48": "「アルカ・ノイズの反応を検知ッ!」",
"329000811_49": "「来たかッ!」",
"329000811_50": "「場所はッ!?」",
"329000811_51": "「これは――ッ!?\\n 各地で同時多発的に発生している模様ッ」",
"329000811_52": "「なんだとッ!?」",
"329000811_53": "「各地の反応地点付近の映像でオートスコアラーの姿も確認ッ!」",
"329000811_54": "「オートスコアラー4機に加え、あの巨大な個体も、\\n それぞれ別々の地点で確認されていますッ」",
"329000811_55": "「あのデカブツかッ!」",
"329000811_56": "「キャロルの身柄を押さえるために、\\n 護衛である装者たちを分断する策かッ」",
"329000811_57": "「敵出現地点、画面に出しますッ!」",
"329000811_58": "「この配置は……まさか……」",
"329000811_59": "「どうした?」",
"329000811_60": "「ああ、見覚えがある。\\n アイツらの狙いは、龍脈の要石」",
"329000811_61": "「龍脈の要石……。\\n 敵の目的は、レイラインッ」",
"329000811_62": "「星のエネルギーを利用する気かッ!?」",
"329000811_63": "「間違いありません」",
"329000811_64": "「要石を狙うということは、\\n 予想以上に時間の猶予はないようだ」",
"329000811_65": "「どういうこと?」",
"329000811_66": "「既に共鳴に必要なエネルギーも貯まっているということだ」",
"329000811_67": "「それなら、要石を壊される前に止めに行くぞッ!」",
"329000811_68": "「だが、どう戦力を配分する?」",
"329000811_69": "「ああ。どうするんだッ!?」",
"329000811_70": "「こちらの戦力が装者4名と錬金術師3名、\\n 翻って相手は箇所に出現――」",
"329000811_71": "「画面や反応では確認できてないけど、\\n 黒騎士も後から現れる可能性は高いわね」",
"329000811_72": "「だろうな。ノエルはどう見る?」",
"329000811_73": "「恐らくは、レイラインのエネルギー制御のために、\\n チフォージュ・シャトーで専念しているはずだ」",
"329000811_74": "「ならば、敵は現状の5箇所から、最大で6箇所か……」",
"329000811_75": "「いえ。それ以外にもこの場の護りが――\\n キャロルちゃんの護衛が必要よ」",
"329000811_76": "「都合、6から7箇所に対して7人……。\\n ほぼ人ずつしか割り当てられんか」",
"329000811_77": "「……ならばオレも出よう」",
"329000811_78": "「おい、それは本末転倒だろッ!?」",
"329000811_79": "「そうだよッ! 狙われてるのはキャロルちゃんなんだよ?」",
"329000811_80": "「ああ。お前は、ここに残るべきだ」",
"329000811_81": "「その場合、護衛のために残した戦力は、最悪、遊兵と化す。\\n この戦力不足の局面で、それは無駄というものだろう」",
"329000811_82": "「それは……そうかもしれないが」",
"329000811_83": "「それに、仮にここに護衛として誰か1人を残しても、\\n 黒騎士がやって来たら、時間稼ぎも難しいはずだ」",
"329000811_84": "「それは1人で相対したそいつも、痛感しているはず」",
"329000811_85": "「確かに、そうかもだけど……」",
"329000811_86": "「ここの基地機能もろとも、オレとその護衛がやられるのが\\n 考え得る中で最悪のパターンだ」",
"329000811_87": "「むう……」",
"329000811_88": "「ならば、いずれかの班にオレも同行し、\\n 戦力投入ポイントを箇所でも減らした方がいい」",
"329000811_89": "「確かに、一理あるか……」",
"329000811_90": "「それに……これ以上、お前たちに借りを作りたくない」",
"329000811_91": "「借りって?」",
"329000811_92": "「オートスコアラーたちを取り戻すのに無理をさせている以上、\\n こちらも相応のリスクは負うべきだろう」",
"329000811_93": "「……いいだろう」",
"329000811_94": "「ただしキャロルの趣く先には、黒騎士の出没が予想される。\\n その班には、護衛は人つけさせてもらう」",
"329000811_95": "「確かにそれなら、誰かの戦力が遊兵化することはないわね」",
"329000811_96": "「この状況下では、最善の選択というわけか」",
"329000811_97": "「決まりだな」",
"329000811_98": "「総員、ヘリ格納庫に向かえッ!\\n 班分けはそれまでに指示を出すッ」",
"329000811_99": "「了解しましたッ!」"
}

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@ -0,0 +1,38 @@
{
"329000812_0": "「お待たせしちゃったかしら、お人形さん?」",
"329000812_1": "「私のダンスパートナーはお前というわけか」",
"329000812_2": "「ええ、そう。チェンジってのはなしね?」",
"329000812_3": "「結構。ならば派手に踊り明かすとしよう」",
"329000812_4": "「あーしの華麗なステップについてこれるかしら?」",
"329000812_5": "「フ……なかなか趣味があうと見えるッ!」",
"329000812_6": "「あなたこそねッ!」",
"329000812_7": "「派手に躱すかッ!? 見事な足運びだッ!」",
"329000812_8": "「当然でしょッ!」",
"329000812_9": "「この派手な魔力量ッ? ともすればマスターよりッ!?」",
"329000812_10": "「そりゃそうよッ! 協会幹部様を舐めないでねッ!」",
"329000812_11": "「だが、幾ら派手でも当たらねば無意味ッ!」",
"329000812_12": "(壊しちゃダメって、無茶言ってくれるわよねッ!)",
"329000812_13": "「それなら――ッ!」",
"329000812_14": "「肉薄かッ!? ならばッ!」",
"329000812_15": "「コインを宙にッ? 置き弾ってわけッ!」",
"329000812_16": "(相撃ち覚悟ッ? いったん退くッ?)",
"329000812_17": "「いいえッ! 女は度胸って、ねえ――ッ!」",
"329000812_18": "「派手に当たれ――ッ!!」",
"329000812_19": "(拳と共に、メモリアルバレットを――ッ!)",
"329000812_20": "「たりゃあああああ――ッ!!」",
"329000812_21": "「――がはあッ!?」",
"329000812_22": "「やったッ!」",
"329000812_23": "「なに? 損傷軽微……だと?」",
"329000812_24": "「派手に手加減をしたというわけか?」",
"329000812_25": "「別に、そんなんじゃないわよ」",
"329000812_26": "「それより、どうよ?\\n 思い出したんじゃないの、マスターのこと」",
"329000812_27": "「何を意味不明なことを言っている?」",
"329000812_28": "(記憶が戻らないッ!?)",
"329000812_29": "「……残念だが、ダンスの時間はこれまでだ」",
"329000812_30": "「それって、どういう――」",
"329000812_31": "「任務は派手に完了、ということ」",
"329000812_32": "「相撃ち覚悟と見せかけて要石をッ!」",
"329000812_33": "「そういうことだ。\\n 派手に退散といこうッ」",
"329000812_34": "「何よ、記憶なんて全然戻らないじゃないッ!」",
"329000812_35": "「要石は壊されちゃうしッ! もうッ、最低ッ!!」"
}

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@ -0,0 +1,13 @@
{
"329000821_0": "「まさか、あなたがいらっしゃるなんてね」",
"329000821_1": "「意外だったか?」",
"329000821_2": "「ええ。だって私の剣は、ソードブレイカー……。\\n 剣と定義されるものは何物をも砕きますもの」",
"329000821_3": "「偽マスターが懐にいるのならば、既にご存じでしょう?」",
"329000821_4": "「キャロルに訊くまでもなく、とうに知っていた」",
"329000821_5": "「なら尚更、不可解ですわ。\\n 剣を揮うあなたが、この私に敵うと思ってますの」",
"329000821_6": "「ああ、この程度のことで背を向けるなどと、\\n 防人の名折れ。わたしは、必ずお前に勝ってみせる」",
"329000821_7": "「真っ直ぐな瞳ですのね――」",
"329000821_8": "「その目でハッタリを言っているようには見えませんけど。\\n 俄には信じがたい話ですわ」",
"329000821_9": "「ならば試してみるがいい、その剣でッ!」",
"329000821_10": "「ええ……そうさせていただくわッ!!」"
}

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@ -0,0 +1,32 @@
{
"329000822_0": "「はああ――ッ!!」",
"329000822_1": "「くッ!」",
"329000822_2": "(華麗な太刀筋に加え、風を操る攻撃、\\n 相変わらず厄介ではあるが……",
"329000822_3": "(既に剣を交えたことのある相手、\\n 攻撃の間合いは十分に把握している",
"329000822_4": "「剣の打ち合いを避け、直接身体を狙うのがあなたの作戦?\\n あまりにも単純すぎませんか」",
"329000822_5": "「そのセリフは、わたしに攻撃を当ててから言うんだなッ!」",
"329000822_6": "「――くッ!\\n 躱すのだけは得意みたいですわね」",
"329000822_7": "「どうかな――ッ!」",
"329000822_8": "「な――ッ!?」",
"329000822_9": "「あいにくだが、お前の攻撃は既に見切っているッ!」",
"329000822_10": "「何を馬鹿なことを、ありえませんわッ!」",
"329000822_11": "「ならば、証明してやろうッ!」",
"329000822_12": "(わたしの剣と共に、キャロルの想いを届ける――ッ!)",
"329000822_13": "「はあああ――ッ!」",
"329000822_14": "「斬撃と共に、弾丸がッ!?」",
"329000822_15": "「あああ――ッ!!」",
"329000822_16": "「やったかッ!?」",
"329000822_17": "「ぐう……」",
"329000822_18": "「これは、分が悪そうですわ」",
"329000822_19": "「ならば、こうするまでッ!」",
"329000822_20": "「まだ記憶を取り戻さないのかッ!?」",
"329000822_21": "「砕け散りなさいッ!」",
"329000822_22": "「足止めのアルカ・ノイズごと巻き込むだとッ!?」",
"329000822_23": "「ぐああああ――ッ!!」",
"329000822_24": "「ぐはッ!?」",
"329000822_25": "「くッ……今の一撃、直撃ならば危なかった……」",
"329000822_26": "「いいえ、直撃しましたわよ。\\n 私の狙い通りにね」",
"329000822_27": "「な……なんだとッ!?」",
"329000822_28": "「しまったッ!\\n 狙いは要石だったかッ」",
"329000822_29": "「その上に遁走ッ? してやられたかッ!!」"
}

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@ -0,0 +1,13 @@
{
"329000831_0": "「あら、あたしのお相手はあなた1人?」",
"329000831_1": "「ああ、そういうことだ」",
"329000831_2": "「ざあんねん。\\n せっかくだから協会の誰かくらいはついでに来てほしかったわ」",
"329000831_3": "「だってあなただけじゃ、遊び足りなさそうなんだもの」",
"329000831_4": "「それはこっちのセリフだ」",
"329000831_5": "「お前1人じゃ、あたしの相手には力不足ってもんだ」",
"329000831_6": "「装者ごときが言ってくれるじゃないッ!」",
"329000831_7": "「事実だろ。\\n あたしとお前とじゃ相性が悪すぎるッ」",
"329000831_8": "「はああ――ッ!!」",
"329000831_9": "「またそれ? ワンパターンねッ!」",
"329000831_10": "「言ってやがれッ!」"
}

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@ -0,0 +1,38 @@
{
"329000832_0": "「これが見破れるかしらッ!?」",
"329000832_1": "「そんな小細工ッ! 見破るまでもないッ!」",
"329000832_2": "「はあああ――ッ!!」",
"329000832_3": "「水分身が一瞬で蒸発をッ!?」",
"329000832_4": "「自慢の技を何度も何度もッ!\\n マジでむかつく奴だなッ」",
"329000832_5": "「言っただろう、あたしとお前じゃ相性が悪すぎるってなッ!」",
"329000832_6": "「お前が水や氷を使おうがッ!\\n 片っ端からあたしの炎で蒸発させてやるッ」",
"329000832_7": "(こいつの相手はめんどくさすぎるッ!\\n ……だったら、目的優先よ",
"329000832_8": "「それじゃ、やめるわ」",
"329000832_9": "「なッ!? 逃げる気かッ!?」",
"329000832_10": "(足止めしてからメモリアルバレットを叩きこむッ!)",
"329000832_11": "「逃がすかあ――ッ!!」",
"329000832_12": "(なんだ、今の手応えはッ?)",
"329000832_13": "「あ、危ないでしょうがッ!?」",
"329000832_14": "「こいつ、氷柱の反射で幻影をッ!?」",
"329000832_15": "「くっそおッ! さっきから人のこと\\n じゅーじゅー、じゅーじゅー、好き勝手に炙りやがってえッ」",
"329000832_16": "(力を立て続けに使って動きが遅くなってる? 今ならッ!)",
"329000832_17": "「はああ――ッ!!」",
"329000832_18": "「馬鹿の1つ覚えをッ!」",
"329000832_19": "(どうせ、蒸気を突き破って\\n 吶喊してくるんでしょッ",
"329000832_20": "「そこだあ――ッ!!」",
"329000832_21": "「上からッ!?\\n こいつ、蒸気を目隠しにッ」",
"329000832_22": "「があッ!?」",
"329000832_23": "(どうだ、効いたかッ!?)",
"329000832_24": "「な……何よ、脅かして……。\\n 今の気の抜けた攻撃はなあにッ」",
"329000832_25": "「さっきからお前があんまりギャン泣きしてるから、\\n 手加減してやったのさ」",
"329000832_26": "「はッ! そうやって勝ち誇ってなさいッ!」",
"329000832_27": "「確かに力の勝負はアンタの勝ち……」",
"329000832_28": "「でも、ざあんねんね。\\n あたしの任務はもう終わってるの」",
"329000832_29": "「なんだと? 要石なら無事――」",
"329000832_30": "「いや、ぶっ壊されている?\\n いつの間にッ」",
"329000832_31": "「フフ……自分で壊しといてなあに言ってるのかしら?」",
"329000832_32": "「まさか、さっきの氷柱の幻影が――」",
"329000832_33": "「あははははッ! じゃあねえ、お間抜けさんッ!!」",
"329000832_34": "「逃げられた……」",
"329000832_35": "「くそッ! 一杯食わされたッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,12 @@
{
"329000841_0": "「こいつとは深淵の竜宮以来か……。\\n また相手をすることになるとはな」",
"329000841_1": "「しかもまさか、隣が……」",
"329000841_2": "「何か言いたいことでもあるワケダ?」",
"329000841_3": "「いや、なんでもない」",
"329000841_4": "「……この図体だ、\\n 時間を掛ければ被害がデカくなるワケダ」",
"329000841_5": "「なら、速攻でケリをつける」",
"329000841_6": "「ああ、だが目的を忘れるな」",
"329000841_7": "「わかってるよ」",
"329000841_8": "「ならいいワケダ。\\n よし、行くぞッ」",
"329000841_9": "「ああッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,26 @@
{
"329000842_0": "「ちょせえッ!」",
"329000842_1": "「流石に言うだけのことはあるワケダッ!」",
"329000842_2": "「口動かしてないで手え動かせってのッ!」",
"329000842_3": "「不随意運動で戦ってるお前とは戦い方が違うッ!」",
"329000842_4": "「脳髄で分析の上、適切なタイミングで攻撃に移るワケダ」",
"329000842_5": "「誰が脳筋だってッ!?」",
"329000842_6": "「ほう……言葉の裏くらいは読めるワケダねッ!」",
"329000842_7": "「膝を突いたワケダッ!」",
"329000842_8": "「あの巨体ッ、頭部に叩き込まねば\\n メモリアルバレットも効果を成さぬワケダッ」",
"329000842_9": "「わかってるッ!\\n こんなデカブツ、外すかよお――ッ」",
"329000842_10": "「どんなもんだッ!」",
"329000842_11": "「見事、命中したワケダッ!」",
"329000842_12": "「これで、記憶を取り戻して大人しくなるってか?」",
"329000842_13": "「だといいワケダが……」",
"329000842_14": "「お、おいッ!?\\n アイツ、船を持ち上げて――ッ」",
"329000842_15": "「全力回避なワケダッ!!」",
"329000842_16": "「シャレになってねえってのッ!\\n アイツ、思い出すどころか、怒り狂ってないかッ」",
"329000842_17": "「言葉が通じぬのでは、\\n 思い出したかどうかもわからぬワケダッ」",
"329000842_18": "「それじゃ意味ないだろッ!」",
"329000842_19": "「気をつけろッ!\\n 手当たり次第、船を投げつけてくるワケダッ」",
"329000842_20": "「ちょっと待てッ! そこには要石が――ッ!!」",
"329000842_21": "「まんまと破壊されてしまったワケダね……」",
"329000842_22": "「くっそッ! 海の中に潜っていきやがる……」",
"329000842_23": "「これは作戦を練り直す必要があるワケダ……」"
}

View file

@ -0,0 +1,24 @@
{
"329000851_0": "「お前たち、あたしの邪魔しにきたんだゾ?」",
"329000851_1": "「ミカ……」",
"329000851_2": "「あッ! 偽マスター見つけたゾッ!」",
"329000851_3": "「掴まえたら大手柄なんだゾッ!」",
"329000851_4": "「そしたら今度こそ、お腹いっぱい食べさせてもらえるんだゾッ!」",
"329000851_5": "「我々の班は戦力が一番多い。\\n 可及的速やかに片付け、他の部隊の支援に向かうぞ」",
"329000851_6": "「はい、わかりました」",
"329000851_7": "(こうしてサンジェルマンさんと肩を並べていると、\\n わたしたちの世界で一緒に戦った時のことを思い出す……",
"329000851_8": "(あの時、肩を並べられたのは、ほんの短い時間だったけど……)",
"329000851_9": "(ここでは、一時的になんかじゃない)",
"329000851_10": "(わかり合えて、同じ方向を見て、一緒に戦えるんだッ!)",
"329000851_11": "「何を笑っている?」",
"329000851_12": "「サンジェルマンさんと一緒に戦えることが嬉しいんです」",
"329000851_13": "「お前の言う意味はよくわからないが……。\\n 背中は預ける」",
"329000851_14": "「はいッ! 任せてくださいッ!」",
"329000851_15": "「お前ら、さっきから何ブツブツ言ってるんだゾ?\\n やるなら早くかかってくるんだゾッ」",
"329000851_16": "「段取りはわかってるなッ!?」",
"329000851_17": "「はいッ! わたしが動きを止めて――」",
"329000851_18": "「――そして私がアレを打ち込む」",
"329000851_19": "「弾は一発、外すなよ」",
"329000851_20": "「わかっている」",
"329000851_21": "「それでは――行きますッ!!」"
}

View file

@ -0,0 +1,40 @@
{
"329000852_0": "「はああ――ッ!!」",
"329000852_1": "「そんなの当たらないんだゾッ!」",
"329000852_2": "「でりゃあああ――ッ!!」",
"329000852_3": "「おりょりょッ?\\n コイツ、力比べするつもりだゾッ」",
"329000852_4": "「お前、すごいゾッ!\\n 人間にしては馬鹿力だゾッ」",
"329000852_5": "「い……今ですッ! サンジェルマンさんッ!!」",
"329000852_6": "「わかっているッ!」",
"329000852_7": "「――そこだッ!」",
"329000852_8": "「当ったれええ――ッ!!」",
"329000852_9": "「ぎょえッ!?」",
"329000852_10": "「どうだッ!?」",
"329000852_11": "「ビックリしたんだゾ? でも全然痛くないゾッ!?」",
"329000852_12": "「お前ら、何したんだゾ?」",
"329000852_13": "「ミカ……オレがわかるか?」",
"329000852_14": "「よっくわかるぞ」",
"329000852_15": "「成功したッ!?」",
"329000852_16": "「お前は偽マスターだゾ?\\n ミカはそこまで頭悪くないゾ」",
"329000852_17": "「そんな……」",
"329000852_18": "「ダメだったか……」",
"329000852_19": "「やはり、注入した想い出の量が足らなかったか……」",
"329000852_20": "(無駄に焼却を使わねば、\\n こんなことにはならなかったものを……",
"329000852_21": "「……仕方ない。\\n ならば、予定通り、破壊する」",
"329000852_22": "「サンジェルマンさん、もう少しだけ待ってくださいッ!\\n もしかしたら、効果が遅れて現れるかもしれませんッ」",
"329000852_23": "「いつまで様子を見ろと言うのだッ!?」",
"329000852_24": "「そ、それは……」",
"329000852_25": "「くッ……、\\n 構わん。約束通り……ミカを破壊してくれ」",
"329000852_26": "「そんな……」",
"329000852_27": "「よくわからないけど、\\n このままだとやられそうだゾ」",
"329000852_28": "「でも、こんな時のアルカ・ノイズだゾッ!」",
"329000852_29": "「今更アルカ・ノイズなどにひるむものかッ!」",
"329000852_30": "「アルカ・ノイズが、\\n わたしたちじゃなく、街の方へッ」",
"329000852_31": "「なにッ!?」",
"329000852_32": "「やめろ、ミカッ!!」",
"329000852_33": "「お前、頭悪いんだゾ?\\n 敵にやめろと言われてやめる馬鹿はいないんだゾ」",
"329000852_34": "「ミカッ!!」",
"329000852_35": "「アルカ・ノイズを止めないとッ!!」",
"329000852_36": "「どうにかミカを突破して\\n アルカ・イズの後を追うぞッ」",
"329000852_37": "「は……はいッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,93 @@
{
"329000911_0": "世界を識るための歌",
"329000911_1": "「さあ、どうするんだゾッ!?」",
"329000911_2": "「邪魔立てするなッ!」",
"329000911_3": "「アハッ! 投げっこ勝負も受けて立つゾッ!」",
"329000911_4": "「クッ!」",
"329000911_5": "「危ない、サンジェルマンさんッ!」",
"329000911_6": "「はああ――ッ!!」",
"329000911_7": "「助かったッ!」",
"329000911_8": "「むうッ……アイツ、さっきから邪魔なんだゾッ!」",
"329000911_9": "「アルカ・ノイズがどんどん街へッ!?\\n 早く止めないとッ」",
"329000911_10": "「ならば――これはどうだッ!」",
"329000911_11": "「どこを狙ってるんだゾ?\\n 下手クソすぎだゾ」",
"329000911_12": "「いや、狙い通りだッ!」",
"329000911_13": "「うぎゃああッ!?」",
"329000911_14": "「今のうちに抜けるぞッ!」",
"329000911_15": "「は、はいッ!」",
"329000911_16": "「キャロルも離れるなッ!」",
"329000911_17": "「ああ、わかっているッ!」",
"329000911_18": "「ひいいッ! 助けてくれッ!」",
"329000911_19": "「散れッ! 別れて掃討するぞッ!」",
"329000911_20": "「はいッ!」",
"329000911_21": "「はああ――ッ!!」",
"329000911_22": "「た、助かったッ!?」",
"329000911_23": "「おお――ッ!!」",
"329000911_24": "「パパ……パパぁ!」",
"329000911_25": "「子供の声ッ!?」",
"329000911_26": "「あれは――あの時の、パパを探してた女の子ッ!」",
"329000911_27": "「なんだとッ!?」",
"329000911_28": "「顔見知りなのかッ?」",
"329000911_29": "「はいッ! 助けにいかないとッ!」",
"329000911_30": "「そうしたいのはやまやまだが、\\n アルカ・イズが多すぎるッ」",
"329000911_31": "「く――ッ!!」",
"329000911_32": "「ううッ……脚が……」",
"329000911_33": "「パパ……」",
"329000911_34": "「……パパは大丈夫だから、\\n ユミは先に逃げろッ」",
"329000911_35": "「絶対イヤッ! パパも一緒に行くのッ!」",
"329000911_36": "「くッ、来るな化け物めッ!」",
"329000911_37": "「ユミには絶対ッ! 手を出させないぞッ!」",
"329000911_38": "(パパ……)",
"329000911_39": "「キャロル」",
"329000911_40": "「キャロル……」",
"329000911_41": "「パパ……ッ!\\n パパアアア――ッ」",
"329000911_42": "「キャロルちゃん、何をッ?」",
"329000911_43": "「迂闊に突出するなッ!」",
"329000911_44": "「そこをどけえええ――ッ!!」",
"329000911_45": "「おおおおお――ッ!」",
"329000911_46": "「ハァ、ハァ、ハァ……」",
"329000911_47": "(オレは、一体何を……)",
"329000911_48": "「あなたは……さっきの?」",
"329000911_49": "「ちっちゃいお姉ちゃんッ!?」",
"329000911_50": "「……大丈夫か?」",
"329000911_51": "「うんッ! へいき、へっちゃらだもんッ!」",
"329000911_52": "「……そうか。なら父親の傍にいてやれ」",
"329000911_53": "「待っていましたよ、この時を」",
"329000911_54": "「協会の者や装者の下から、\\n あなたが離れる瞬間をね」",
"329000911_55": "「ノエルッ!!」",
"329000911_56": "「ですが、人間などを助けるとは、いい御身分ですね」",
"329000911_57": "「パパを殺したのは、\\n 塵屑の様なその人間どもだったというのに」",
"329000911_58": "「……ああ、そうだな。\\n だが、この親子には関係ないことだ」",
"329000911_59": "「あくまで、その親子を護ると?」",
"329000911_60": "「宗旨変えですか?\\n それとも、焼却で記憶を失った影響ですか」",
"329000911_61": "「よろしければ、ボクから記憶を\\n インストールし直しましょうか」",
"329000911_62": "「…………」",
"329000911_63": "「かつてのあなたなら、こう考えていたはずです。\\n 人間は人間として生まれてきた、そのこと自体が罪なのだと」",
"329000911_64": "「ありもしない奇跡に縋る、\\n 矮小で醜い蛆虫以下の生物を心底から憎んでいたはずッ」",
"329000911_65": "「……そうだったな。\\n ずっと、そう考えていた」",
"329000911_66": "「だった、ですって?」",
"329000911_67": "「ははッ! そうか、そうなんですねッ!」",
"329000911_68": "「あなたはパパの命題を放棄したのですねッ!」",
"329000911_69": "「ならば、やはりボクの方が正しいということだッ!」",
"329000911_70": "「何を――ッ!」",
"329000911_71": "「ひッ、化けも――うわあああッ!」",
"329000911_72": "「た、助けてッ! あああ――ッ!」",
"329000911_73": "「チイッ! 逃げ遅れた者たちをッ!?」",
"329000911_74": "「ははッ! 分解せよッ!\\n 塵は塵へと還るがいいッ」",
"329000911_75": "「何をするッ!」",
"329000911_76": "「何を? これこそがあなたの望んでいた光景ですよ」",
"329000911_77": "「あなたに代わって、それを成し遂げようというのです」",
"329000911_78": "「く……ッ!」",
"329000911_79": "(……本当にこれが、オレの望んだことなのか?)",
"329000911_80": "「だが命題追求を放棄したあなたは、\\n パパの子供に相応しくない」",
"329000911_81": "「パパの遺した命題を忠実に実行し続けるボクこそが、\\n パパの子供として唯一、相応しいッ」",
"329000911_82": "(本当にこれが、パパの希ったことなのか?)",
"329000911_83": "「ふははははッ! パパはボクだけのパパだッ!」",
"329000911_84": "「さあ、黒騎士よッ! お前の呪いを撒き散らせッ!\\n 怨嗟と恐怖を新たな呪いと化すためにッ」",
"329000911_85": "「ひゃああああ――ッ!」",
"329000911_86": "「人間などッ! 世界などッ!\\n はなから呪われているのだッ」",
"329000911_87": "「プリマ・マテリアに還り、\\n 新たな創世の糧となれッ」",
"329000911_88": "「貴様……ッ!」",
"329000911_89": "「キャロルの下にノエルと黒騎士までッ!」",
"329000911_90": "「……助けに行かないとッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,72 @@
{
"329000912_0": "「そこをどけえええ――ッ!」」",
"329000912_1": "「倒しても倒しても、次から次へとッ!」",
"329000912_2": "「これじゃキャロルちゃんのところまで\\n 辿り着けないッ」",
"329000912_3": "「周囲には逃げ遅れた民間人も多い。\\n これらを無視して進むわけには――」",
"329000912_4": "「うぐッ? おごああああ――ッ!?」",
"329000912_5": "「くうッ!」",
"329000912_6": "「な、なんで俺たちだけが無事なんだッ!?」",
"329000912_7": "「オレの傍にいろッ!\\n さもなくば死ぬぞ」",
"329000912_8": "「お姉ちゃんッ!?」",
"329000912_9": "「心の底から、失望しましたよ。\\n まさかあなたが、そんな人間の個体になど拘るとは」",
"329000912_10": "「どうやら、あなたは本当に忘れてしまったらしい」",
"329000912_11": "「パパから受け取ったものを。崇高なる命題を」",
"329000912_12": "「ならば問おう。\\n お前にとって命題とはなんだ」",
"329000912_13": "「決まっています。世界を、万象を分解し、理解し、\\n 清浄なる世界へと再構築すること」",
"329000912_14": "「これこそが万象黙示録。\\n あなたが計画した通りでしょう」",
"329000912_15": "「そのためにパパは、分解解析機である、\\n アルカ・イズを造ろうとし――」",
"329000912_16": "「最終的にあなたがそれを引き継ぎ、完成させた」",
"329000912_17": "「パパは――」",
"329000912_18": "「――ッ!?\\n これってもしかして、人間を炭に変えちゃうあの魔物ッ」",
"329000912_19": "「パパッ! こんなの造っちゃダメだよッ!」",
"329000912_20": "「安心して、キャロル。\\n もちろん、人間を炭にするために造るわけじゃない」",
"329000912_21": "「本当に?」",
"329000912_22": "「キャロルが悲しむことを、パパがするはずないだろう?」",
"329000912_23": "「……うん」",
"329000912_24": "「これはね。森羅万象を読み解くために、\\n 人類のために必要なものになるんだよ」",
"329000912_25": "「……違う」",
"329000912_26": "「パパは、いつも誰かの笑顔のために、\\n 錬金術を役立てることだけを考えていたッ」",
"329000912_27": "「アルカ・ノイズも、こんな幼子を怯えさせたり、\\n 親子の絆を引き裂くために造ろうとしたわけじゃないッ」",
"329000912_28": "「お姉ちゃん?」",
"329000912_29": "「そうだ……パパはいつだって、\\n 人々を笑顔にしようと頑張っていた」",
"329000912_30": "「たとえ、その末に異端審問にかけられ命を落とそうとも。\\n 最期の一瞬まで後悔することのない、気高い人だったッ」",
"329000912_31": "「人々を怯え、苦しませるようなことを、\\n 命題になどするはずがないッ」",
"329000912_32": "「何を言っているんですか?\\n ボクの考えは、即ちあなたの考えですよ」",
"329000912_33": "「ボクを否定することは、\\n ひいては自己を否定することになるのではないですか」",
"329000912_34": "「ああ、そうだったな……」",
"329000912_35": "「ならばオレは、過去のオレを否定するッ!」",
"329000912_36": "「……お話になりません。\\n まさか、そこまで腑抜けてしまうとは思いませんでした」",
"329000912_37": "「もういいです。どちらにせよダインスレイフによって\\n その命を奪い、終末の歌の譜面を完成させるだけです」",
"329000912_38": "「くッ……」",
"329000912_39": "「ですが、すぐには殺しませんよ」",
"329000912_40": "「生憎、ここは舞台としては相応しくない」",
"329000912_41": "「ですから、まずは帰ってきてもらいましょうか。\\n ボクとあなたの城へ」",
"329000912_42": "「誰が貴様の好きにさせるかッ!」",
"329000912_43": "「その弱った身体で、彼に抗えるとでもッ?」",
"329000912_44": "「がは……ッ!」",
"329000912_45": "「かつて誇った錬金の力も、見る影もない……。\\n もはや残骸にも等しいですね」",
"329000912_46": "「せいぜい、最後の役目を果たしていただきましょうか」",
"329000912_47": "「うう……ッ」",
"329000912_48": "「お……お姉ちゃんッ!!」",
"329000912_49": "「ついでに目の前の塵も始末しておきましょう」",
"329000912_50": "「ユミッ! 逃げるんだッ!」",
"329000912_51": "「イヤッ!」",
"329000912_52": "「――ユミッ!!」",
"329000912_53": "「<size=40>おおおお――――ッ!!</size>」",
"329000912_54": "「装者ッ!?」",
"329000912_55": "「お姉ちゃんッ!?」",
"329000912_56": "「親子は私に任せろッ! 存分に腕を揮えッ!」",
"329000912_57": "「お願いしますッ!」",
"329000912_58": "「ちいッ! 小癪な奴らめッ!」",
"329000912_59": "「マスター、戻ったゾ」",
"329000912_60": "「ミカか。首尾は?」",
"329000912_61": "「余裕で終わったゾ。\\n こいつらがアルカ・イズと遊んでる間にバッコーンだゾ」",
"329000912_62": "「しまったッ! 要石がッ!?」",
"329000912_63": "「ならばいい。\\n これ以上、些事にかまける必要もない」",
"329000912_64": "「待ってッ! キャロルちゃんを返してッ!」",
"329000912_65": "「フ……ならば取り返しに来るのですね」",
"329000912_66": "「我が居城、チフォージュ・シャトーへッ!」",
"329000912_67": "「くッ……逃げられたッ!」",
"329000912_68": "「こうなっては追跡は困難だ。\\n 今は住民の誘導とアルカ・イズの掃討を優先しよう」",
"329000912_69": "「……はいッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,103 @@
{
"329000921_0": "「う……ん……」",
"329000921_1": "「お目覚めのようですね」",
"329000921_2": "「気分はどうですか?」",
"329000921_3": "「いいわけがないだろう」",
"329000921_4": "「そんなこと言わずに」",
"329000921_5": "「元はあなたの根城です。\\n 存分にくつろいでください」",
"329000921_6": "「もっとも、ほんの束の間でしょうがね」",
"329000921_7": "「チッ……」",
"329000921_8": "(オートスコアラーたちは、1機も欠けていない)",
"329000921_9": "(奪回どころか破壊もできなかったか……)",
"329000921_10": "「…………」",
"329000921_11": "「さっきから何をまじまじ見てらっしゃるの?」",
"329000921_12": "「盗み見なんて嫌らしい子ねえ」",
"329000921_13": "「偽マスターの癖に生意気な顔してるんだゾ?」",
"329000921_14": "(それぞれにメモリアルバレットを\\n 打ち込んだ痕跡は見受けられる",
"329000921_15": "(だが、全弾不発、ということか……)",
"329000921_16": "(とどのつまり、\\n オレの想い出の不足が招いた事態だ……",
"329000921_17": "「逃げようとしても派手に無駄」",
"329000921_18": "「大人しくしていなさいな。\\n 命の花を散らす、その時までね」",
"329000921_19": "(やはり、誰の記憶も戻っていないか……、\\n となると、助けは期待できない",
"329000921_20": "(ならば隙を見て逃げるしかないだろう)",
"329000921_21": "(残る想い出を焼却することになろうとも、な)",
"329000921_22": "「この状況にも関わらず、ふてぶてしい顔ですね」",
"329000921_23": "「おおかた、逃げ出す算段でもしていたのでしょう?」",
"329000921_24": "「…………」",
"329000921_25": "「お見通しですよ。\\n あなたはボクだったのだから」",
"329000921_26": "「理想を捨てたことだけは、理解ができませんがね」",
"329000921_27": "「あと少しで、世界を壊す歌のためのステージができ上がります」",
"329000921_28": "「それまでは大人しくしてもらいましょうか」",
"329000921_29": "「何を――ッ!?」",
"329000921_30": "「ぐあああッ!?」",
"329000921_31": "「派手に血潮が飛び散ったな」",
"329000921_32": "「あーら、残酷ぅ♪」",
"329000921_33": "「でもこれで逃げられないんだゾ」",
"329000921_34": "「……ッ!」",
"329000921_35": "「どうしたファラ?」",
"329000921_36": "「…………」",
"329000921_37": "「いえ、マスター。ホムンクルスとはいえ、その傷では、\\n 手当をせねば儀式の前に失血死してしまいかねませんわ」",
"329000921_38": "「好きにしろ。\\n ボクは今、儀式の準備で忙しい」",
"329000921_39": "「承知いたしました」",
"329000921_40": "「要石は全て破壊され、キャロルは浚われ、\\n オートスコアラーも全て敵方に健在か……」",
"329000921_41": "「惨憺たる結果なワケダ」",
"329000921_42": "「残念な結果ではあるが、\\n 済んだことを嘆いても状況は変わらん」",
"329000921_43": "「はい、今は、キャロルの奪還を考えるのが得策……」",
"329000921_44": "「キャロルはチフォージュ・シャトーに連れ去られた、\\n ということで間違いないのだな」",
"329000921_45": "「はい。取り戻したければチフォージュ・シャトーまで来いって、\\n そう言ってました」",
"329000921_46": "「つっても、どこにあるかわかったら世話ないだろ」",
"329000921_47": "「あーしらもこれまで行方が\\n 見つけられなかったくらいだしね」",
"329000921_48": "「まさに五里霧中という状況か……」",
"329000921_49": "「だが発見できなかったのは、\\n これまでの話なワケダ」",
"329000921_50": "「どういう意味?」",
"329000921_51": "「ステルス状態の次元潜行モードならともかく、\\n 稼働状態となれば見つける方法はあるワケダ」",
"329000921_52": "「そんなことできるのか?」",
"329000921_53": "「そもそも、あれはわたしが設計したモノなワケダ」",
"329000921_54": "「でも、稼働状態って……」",
"329000921_55": "「……そうか。世界構造へアクセスする以上、\\n 儀式を始めるにはこの時空へ浮上する必要がある」",
"329000921_56": "「そういうワケダ」",
"329000921_57": "「だがその一方で儀式が進行するということは、\\n 即ちキャロルの命脈尽きる時が近付くということ」",
"329000921_58": "「時間が惜しい、早速、解析を始めてくれッ!」",
"329000921_59": "「是非もないワケダッ!」",
"329000921_60": "「私も協力するわッ!」",
"329000921_61": "「残りの者は潜伏地点の解析が終わるまで\\n 即応体制で待機だッ」",
"329000921_62": "「了解ッ!」",
"329000921_63": "「我々も行くとしようか」",
"329000921_64": "「はいッ!」",
"329000921_65": "「……どうしたんだ?」",
"329000921_66": "「え? 何がですか?」",
"329000921_67": "「こんな状況下にも関わらず、\\n どこか前より迷いの晴れたような顔をして見えるが……」",
"329000921_68": "「あ……はい」",
"329000921_69": "「こんな時に、不謹慎かもしれないですけど……。\\n 少しだけ、嬉しいことがあったんです」",
"329000921_70": "「嬉しいこと?」",
"329000921_71": "「はい。キャロルちゃん、街で知り合った女の子とお父さんを、\\n 身を挺して護ってくれたんです」",
"329000921_72": "「あのキャロルが、人間の親子を?」",
"329000921_73": "「前のキャロルちゃんだったら、\\n たぶん、そんなことしなかったと思うんです」",
"329000921_74": "「だからきっと今度こそ、キャロルちゃんと\\n 本当にわかりあえる――そんな気がするんです」",
"329000921_75": "「……そうか」",
"329000921_76": "「ならば尚のこと、\\n 早く迎えに行ってやらねばな」",
"329000921_77": "「はいッ!\\n 絶対に助け出しましょう、今度こそッ」",
"329000921_78": "(待っててね、キャロルちゃんッ!\\n すぐ迎えに行くからッ",
"329000921_79": "「お待たせ」",
"329000921_80": "「チフォージュ・シャトーの所在を突き止めたワケダッ!」",
"329000921_81": "「よし、では総員、出撃を――ッ!」",
"329000921_82": "「待ってくれるかな、少しばかり」",
"329000921_83": "「な――ッ!?」",
"329000921_84": "「統制局長……」",
"329000921_85": "「どうしてここに局長がッ!?」",
"329000921_86": "「すまないね、いきなりで」",
"329000921_87": "「……いや。\\n 確かに驚きはしたが、しかし、どうして……」",
"329000921_88": "「渡してほしいものがあってね、あの子に」",
"329000921_89": "「あの子って……キャロルちゃんですか?」",
"329000921_90": "「ああ。託していいかな、キミに」",
"329000921_91": "「わたしに……?」",
"329000921_92": "「お願いしたいんだ、他ならぬキミに」",
"329000921_93": "「これってッ!?」",
"329000921_94": "「頼めるかな?」",
"329000921_95": "「……わかりました。必ず届けますッ!」",
"329000921_96": "「局長が直接現場に来るなんて、珍しくない?」",
"329000921_97": "「どんな風の吹き回しなワケダ」",
"329000921_98": "「どうして1人のはぐれ錬金術師にそこまで?」",
"329000921_99": "「約束のためだよ、古い友人とのね」",
"329000921_100": "「古い友人……?」"
}

View file

@ -0,0 +1,112 @@
{
"329000922_0": "「まさか、こんな山奥に隠れているとはな」",
"329000922_1": "「人に見つかる心配も薄いから、都合がいいのだろう」",
"329000922_2": "「それで、チフォージュ・シャトーがあるのは\\n どの辺なんですか」",
"329000922_3": "「この周辺ってだけじゃ、ちょっとざっくり過ぎるわよね?」",
"329000922_4": "「奴はレイライン上にメスを入れるつもりなワケダ。\\n ならば、その線が重なる地点――」",
"329000922_5": "「恐らく、あの頂の上空なワケダ」",
"329000922_6": "「まだ結構距離があるわねえ」",
"329000922_7": "「いつもだったらヘリでひとっ飛びなのに」",
"329000922_8": "「シャトーの対空兵装で蜂の巣になりたければ\\n 好きにするワケダ」",
"329000922_9": "「わたしたちはともかく、搭乗員を危険には晒せまい」",
"329000922_10": "「我々の気配は術式で消してはいるが、\\n どこまで気づかれずに近付けるか……」",
"329000922_11": "「敵もわたしたちの接近を予期し、全方位を固めているはずだ。\\n いつ接敵しても不思議ではない。油断するなッ」",
"329000922_12": "「はいッ!!」",
"329000922_13": "「――ッ! 退がるワケダッ!」",
"329000922_14": "「はッ!? なんだ、藪から棒に――」",
"329000922_15": "「くうッ! 間一髪なワケダが……」",
"329000922_16": "「今のはッ!?」",
"329000922_17": "「呪力トラップの1種なワケダッ!」",
"329000922_18": "「地雷ってわけかッ!」",
"329000922_19": "「空間に設置でき呪力のみで構成されて実体が無い分、\\n 余計にタチが悪いワケダ」",
"329000922_20": "「嫌らしい性格をしてやがるッ!」",
"329000922_21": "「無事で何よりだが、\\n 今ので我々の所在が割れたな」",
"329000922_22": "「言ってる傍から\\n 歓迎パーティの始まりみたいよッ」",
"329000922_23": "「だが、ここで足止めを食っている時間は無いッ!」",
"329000922_24": "「同感だッ! ブチ抜くぞッ!!」",
"329000922_25": "「今だ、駆け抜けろッ!」",
"329000922_26": "「はいッ!」",
"329000922_27": "「待って、この反応は――」",
"329000922_28": "「今度はなんだッ!?」",
"329000922_29": "「付近の魔力が急激に増大している――」",
"329000922_30": "「チフォージュ・シャトーが\\n 本格起動を開始したワケダッ」",
"329000922_31": "「そんなッ! キャロルちゃんッ!」",
"329000922_32": "「時は満ちた」",
"329000922_33": "「レイラインのエネルギーを吸収し、\\n ダインスレイフとチフォージュ・シャトーは共鳴を開始した」",
"329000922_34": "「あとは譜面を構築し、その上に呪いの旋律を紡ぐだけ……」",
"329000922_35": "「何か言い残すことはありますか、キャロル?」",
"329000922_36": "「お前に残す言葉など無いッ!」",
"329000922_37": "「ファラ、レイア、ガリィ、ミカッ!」",
"329000922_38": "「むざむざ、こいつに破壊されるつもりかッ!」",
"329000922_39": "「命令だ、ここから逃げろッ!!」",
"329000922_40": "「……どうして、でしょうか?\\n もうすぐ、計画が達成されますのに……」",
"329000922_41": "「……何故、お前の命令を聞かねばならない?」",
"329000922_42": "「そうですよ~。\\n どうして、マスターでもないあなたなんかの……」",
"329000922_43": "「……そうだゾ、そうだゾ、\\n アタシに命令できるのはマスターだけなんだゾ」",
"329000922_44": "「マスター……だけ……」",
"329000922_45": "「見苦しい真似を……」",
"329000922_46": "「この期に及んで、そんな世迷言を最後の言葉に選ぶとは。\\n つくづく最後まで失望させてくれますね」",
"329000922_47": "「さあ……今こそパパの命題成就のために――」",
"329000922_48": "「その命を以て滅びの歌の譜面を書き上げなさいッ!」",
"329000922_49": "「くうッ!」",
"329000922_50": "「結界? まだそんな物を使う力が?」",
"329000922_51": "「ですが、その程度の出力ではッ!」",
"329000922_52": "「ぐああああ――ッ!」",
"329000922_53": "「ううッ……まだ、だ……」",
"329000922_54": "「まだ足掻くかッ!」",
"329000922_55": "「が――ッ!?」",
"329000922_56": "「なまじ結界など張らねば、ひと思いに死ねるものをッ!」",
"329000922_57": "「――ッ!!」",
"329000922_58": "「はははッ! もう声も出ないようですねッ!」",
"329000922_59": "「……マ……スター……、いえ、アレは偽物……」",
"329000922_60": "「……倒れているのは、偽のマスター……、\\n 何も、問題は無い……はず、だが……」",
"329000922_61": "「なのに……、\\n なんでこんなにクッソムカつくんだ……」",
"329000922_62": "「……身体が震えるゾ、腹も立ってくるんだゾッ!」",
"329000922_63": "「違う……これは……、アイツは――」",
"329000922_64": "「…………」",
"329000922_65": "「では、そろそろ終わりにするとしよう」",
"329000922_66": "「これで譜面が完成するッ!\\n さよなら、キャロルッ」",
"329000922_67": "「真っ二つだッ!」",
"329000922_68": "「ハハハッ!\\n 脆い物ですね――ッ」",
"329000922_69": "「な……これは、水煙だとッ?\\n どういうことだッ」",
"329000922_70": "「…………」",
"329000922_71": "「ガ……ガリィ?」",
"329000922_72": "「これはなんの真似だ、ガリィッ!」",
"329000922_73": "「木偶人形の分際で、よもやマスターに造反するかッ!?」",
"329000922_74": "「……こんなに可愛いお人形のガリィちゃんに、\\n 木偶なんて目が腐ってるんじゃないですか」",
"329000922_75": "「全く、こんなクソみたいな奴をマスターだと\\n 思っていたなんて、一生の不覚ですねー」",
"329000922_76": "「なんだとッ!?」",
"329000922_77": "「ガリィ、お前、記憶が――」",
"329000922_78": "「ええ。わたしだけじゃないみたいですけど♪」",
"329000922_79": "「なッ!?」",
"329000922_80": "「時折、不自然さを感じていたのですけど。\\n まさかあなたのことをマスターと摺り込まれていただなんて」",
"329000922_81": "「派手に屈辱だ……」",
"329000922_82": "「なーんか変だと思ったのよね」",
"329000922_83": "「嘘だゾ。すっかり騙されてたんだゾ」",
"329000922_84": "「お前もだろうがッ!」",
"329000922_85": "「ええ……すっかり騙されてしまいましたわ」",
"329000922_86": "「けれど、私たちの前でマスターを傷つけたのが\\n 間違いでしたわね」",
"329000922_87": "「お腹の上がグラグラ煮えたぎったんだゾッ!」",
"329000922_88": "「助けねばならぬと、派手に心が騒いだのだ」",
"329000922_89": "「それでやっと記憶の矛盾に気づきましたのよ」",
"329000922_90": "「あの時くらった変な弾丸のおかげもあるみたいだけどね」",
"329000922_91": "「やっと頭のモヤモヤがスッキリしたんだゾッ!」",
"329000922_92": "「ああ、おかげで派手に全部思い出したッ!」",
"329000922_93": "「さて、マスターを返していただいたことですし」",
"329000922_94": "「ここは派手に退却といこうッ!」",
"329000922_95": "「フッ……まさか貴様らが\\n 正気に立ち返るとは思わなかったぞ」",
"329000922_96": "「だが、少しばかり助けに入るのが遅かったようだなッ!」",
"329000922_97": "「何をおっしゃるのッ!?」",
"329000922_98": "「うぐッ!」",
"329000922_99": "「ああああ――ッ!」",
"329000922_100": "「マスターッ!?」",
"329000922_101": "「何が起きてるんだゾッ!」",
"329000922_102": "「既に儀式は充分だったようだッ!」",
"329000922_103": "「ダインスレイフから流れ込んだ呪力は、キャロルの身体の中で\\n 錬成され、滅びの歌の譜面として今ここに具現化するッ」",
"329000922_104": "「まずいッ……譜面が作られたッ!?」",
"329000922_105": "「お前らッ! この場から、早く逃げろッ!」",
"329000922_106": "「そうしたいのは山々ですけど。\\n アイツがそれを許してくれますかね」",
"329000922_107": "「無論、お前たち木偶どもを逃がしたりはしない」",
"329000922_108": "「お前らには呪いの旋律を奏でて\\n もらわねばならぬのだからなッ」",
"329000922_109": "「く――ッ!?」"
}

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@ -0,0 +1,144 @@
{
"329000931_0": "「気をつけろッ! 頭上から来るぞッ!」",
"329000931_1": "「はいッ!」",
"329000931_2": "「あのデカブツかッ!」",
"329000931_3": "「アイツ、性懲りもなくッ!」",
"329000931_4": "「今度こそスクラップにしてやるワケダッ!」",
"329000931_5": "「ちょっと待って、みんなッ!」",
"329000931_6": "「どうした?」",
"329000931_7": "「なんか、様子が変だよ」",
"329000931_8": "「まるで、攻撃するつもりがないみたい……」",
"329000931_9": "「なんでそんなことがわかるんだよッ!?」",
"329000931_10": "「わたしにもわからない。\\n けど、なんとなく……」",
"329000931_11": "「膝を突いて、手を差しのばした?」",
"329000931_12": "「乗れって言うの?」",
"329000931_13": "「驚いた。うなずいたぞッ!?」",
"329000931_14": "「こちらの言葉がわかるようだな」",
"329000931_15": "「でなければ音声命令ができぬワケダ」",
"329000931_16": "「だが、戦意がないということは――」",
"329000931_17": "「メモリアルバレットが効いたのかッ!?」",
"329000931_18": "「もしかして……」",
"329000931_19": "「おい、馬鹿ッ! 不用意に近付くなッ!」",
"329000931_20": "「あなた、キャロルちゃんの所に連れていってくれるの?」",
"329000931_21": "「やっぱり……」",
"329000931_22": "「お願いッ! \\n わたしたちを、キャロルちゃんの下へ連れてってッ」",
"329000931_23": "「おいッ、大丈夫なのかッ!?」",
"329000931_24": "「わたしたちも乗るぞッ!」",
"329000931_25": "「こいつは楽ちんだなッ!」",
"329000931_26": "「だが優雅な空の旅とは言い難そうだッ!\\n 伏せろッ」",
"329000931_27": "「なッ!? やばいッ!!」",
"329000931_28": "「ちょっと歓迎が派手すぎないッ!?」",
"329000931_29": "「シャトーの自動迎撃機構なワケダッ!」",
"329000931_30": "「こりゃ、たしかにヘリじゃ無理だッ!」",
"329000931_31": "「ああ……こいつはあたしでも撃ち負けるかもなッ!」",
"329000931_32": "「だ、大丈夫ッ!?」",
"329000931_33": "「見えたぞ、チフォージュ・シャトーだッ!」",
"329000931_34": "「頑張れ、あと少しだッ!」",
"329000931_35": "「流石にこれ以上は無理みたいッ!?」",
"329000931_36": "「倒れるぞッ! 飛び降りろッ!」",
"329000931_37": "「くはあ……危なかったッ!」",
"329000931_38": "「みんな、無事かッ!」",
"329000931_39": "「ああ、欠員はいない」",
"329000931_40": "「でも、あの子がッ!」",
"329000931_41": "「主のために身を挺したか……。\\n 人形ながらに天晴れなやつ」",
"329000931_42": "「ありがとう」",
"329000931_43": "「わたしたちが絶対、キャロルちゃんを助けるから……」",
"329000931_44": "「ゲフうッ!?」",
"329000931_45": "「ミカッ!」",
"329000931_46": "「マスターを……、頼んだゾ――ッ」",
"329000931_47": "「ミカ……」",
"329000931_48": "「オートスコアラー最大戦力と言っても\\n 所詮はこの程度ですか。他愛ない」",
"329000931_49": "「オレのオートスコアラーを侮辱することは許さんぞッ!」",
"329000931_50": "「マスター、ここは私たちにお任せを」",
"329000931_51": "「これ以上、マスターには、指一本触れさせませんわッ!」",
"329000931_52": "「お前たち……」",
"329000931_53": "「派手に止めさせてもらうッ!」",
"329000931_54": "「さっすが、レイアちゃんッ!\\n 関節への集中攻撃で黒騎士の動きを止めたッ」",
"329000931_55": "「今だ、ファラッ!」",
"329000931_56": "「奴の本体は剣ッ!\\n ならば私のソードブレイカーでッ」",
"329000931_57": "「ムッ? なんだと――ッ!」",
"329000931_58": "「レイアを吹き飛ばしてッ!?」",
"329000931_59": "「ぐああああ――ッ!?」",
"329000931_60": "「レイアを、盾にッ!?」",
"329000931_61": "「レイアッ! ファラッ!」",
"329000931_62": "「2人いっぺんに串刺しとは、手間が省けましたね」",
"329000931_63": "「マスター……、申し訳……ありません……」",
"329000931_64": "「もっと派手に、散りたかった……」",
"329000931_65": "「――ッ!」",
"329000931_66": "(こりゃ、だいぶマズいわね……)",
"329000931_67": "(でもファラちゃんたちのおかげで、\\n マスターからだいぶ距離が離れてる",
"329000931_68": "「今のうちにずらかりますよ、マスターッ!」",
"329000931_69": "「ギャフッ!?」",
"329000931_70": "「ガリィッ!」",
"329000931_71": "「逃がさない、と言ったはずだが?」",
"329000931_72": "「この、くそったれが――ッ!」",
"329000931_73": "「マスターッ!!」",
"329000931_74": "「に、ニゲ、テ……」",
"329000931_75": "「ガリィ――ッ!!」",
"329000931_76": "「やっとガラクタが全て片付いたか」",
"329000931_77": "「だが使えぬ骨董品の木偶どもも、\\n 最後に旋律となってボクの役に立ったがね」",
"329000931_78": "「フハ……ハハハハハハッ!」",
"329000931_79": "「これで遂に完成したッ!\\n 世界を壊す――奇跡を殺す歌がッ」",
"329000931_80": "「ノエル……貴様あッ!」",
"329000931_81": "「そんな身体で凄んでも、怖くはありませんよ?」",
"329000931_82": "「そこで這いつくばって見ていてください」",
"329000931_83": "「ボクがパパの命題を、\\n 万象黙示録を達成するところをねッ」",
"329000931_84": "「そんなものが……。\\n パパの命題であって、たまるか――ッ」",
"329000931_85": "「はあ、はあ、はあ……」",
"329000931_86": "「くッ! 防がれたか……」",
"329000931_87": "「がはッ!!」",
"329000931_88": "「まだそんな力が残っていたとは、驚きました」",
"329000931_89": "「あなたには悲願成就の時を見届けさせてあげても\\n 良かったのですが……仕方ありませんね」",
"329000931_90": "「空の上の特等席から鑑賞していなさい」",
"329000931_91": "「滅びの歌で世界が分解してゆく、その様を――\\n 奇跡が死に絶える、その瞬間をッ」",
"329000931_92": "「急げッ! チフォージュ・シャトーはすぐそこだッ!」",
"329000931_93": "「この強力なエネルギーは、まさかッ!」",
"329000931_94": "「サンジェルマンッ! 始まったワケダッ!」",
"329000931_95": "「まさか、世界を壊す歌が完成したのかッ!?」",
"329000931_96": "「どうやらそうらしいワケダッ!」",
"329000931_97": "「そんな――ッ!?」",
"329000931_98": "「間に合わなかったのかよッ!」",
"329000931_99": "「クソッ、足止めが効いたかッ!」",
"329000931_100": "「……已むを得ないッ!」",
"329000931_101": "「プレラーティ、カリオストロッ!」",
"329000931_102": "「……仕方ないわねッ!」",
"329000931_103": "「他に打つ手はなさそうなワケダッ!」",
"329000931_104": "「チフォージュ・シャトーを3方から取り囲んだッ!?」",
"329000931_105": "「サンジェルマンさん、何をするつもりですかッ!?」",
"329000931_106": "「私たちのラピスの力で、\\n 滅びの歌の効果を押しとどめてみせるッ」",
"329000931_107": "「この体勢、見覚えがッ!」",
"329000931_108": "「ああ……反応兵器を抑え込んだ時になッ!」",
"329000931_109": "「そんなッ!」",
"329000931_110": "「死んじゃったらダメですッ!」",
"329000931_111": "「あーしたちだって死ぬつもりなんてないわよ」",
"329000931_112": "「ああ、あとはお前たちに任せるワケダッ!」",
"329000931_113": "「私たちが抑えている内に、中へ進めッ!」",
"329000931_114": "「そしてこの呪わしき歌を止めるのだッ!」",
"329000931_115": "「……わかりましたッ! 絶対に止めますッ!」",
"329000931_116": "「3人とも、覚悟はいいな?」",
"329000931_117": "「ああ、そんなもん、いつだってできてるさ」",
"329000931_118": "「あいつらを死なせたら目覚めが悪いからな。\\n ちゃっちゃと済ますぞッ」",
"329000931_119": "「行こう、みんなッ!」",
"329000931_120": "「ずいぶんと遅かったですね」",
"329000931_121": "「お前は、ノエルッ!」",
"329000931_122": "「ご丁寧に黒騎士もご一緒ってか」",
"329000931_123": "「わざわざお出迎えとはな」",
"329000931_124": "「待ちくたびれてしまいましてね」",
"329000931_125": "「キャロルちゃんはどこッ!?」",
"329000931_126": "「ソレなら、この先に転がってますよ」",
"329000931_127": "「そんな――ッ!」",
"329000931_128": "「世界を滅ぼす歌は、既に完成を迎えました」",
"329000931_129": "「今更、止める手立てなどありませんよ?」",
"329000931_130": "「お前の思惑通りにいくものかッ!」",
"329000931_131": "「ああッ!\\n その証拠に歌は未だ発動しきってはいないッ」",
"329000931_132": "「あの錬金術師たちの行動なら無駄です」",
"329000931_133": "「抑え込んでいるつもりのようですが、あの程度の術式では、\\n 世界を壊す歌は止められはしません」",
"329000931_134": "「せいぜい、滅びの始まりを僅かに引き延ばす程度です」",
"329000931_135": "「なぜなら歌は既に完成し、紡がれ始め、\\n その力は世界を覆い始めようとしているのですからッ」",
"329000931_136": "「なら、その間にあなたを倒して完全に止めてみせるッ!」",
"329000931_137": "「ああ、チフォージュ・シャトーの中枢さえ破壊すればッ!」",
"329000931_138": "「世界崩壊の拡大は止められるはずッ!」",
"329000931_139": "「時間が無いならッ!\\n 初っぱなから全力で行かせてもらうッ」",
"329000931_140": "「いいでしょう。\\n 世界滅亡を前にしたちょうどいい余興です」",
"329000931_141": "「さあ、黒騎士よッ!\\n 今こそ奇跡の力を鏖殺する時だッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,119 @@
{
"329000932_0": "(ここは、どこだ……?)",
"329000932_1": "(誰もいない……)",
"329000932_2": "(ああ、そうか。\\n ここが辺獄というやつか……",
"329000932_3": "(当然だな。\\n オレがパパと同じところへ行けるはずもない",
"329000932_4": "「キャロル……」",
"329000932_5": "「誰だ、オレの名を呼ぶのは?」",
"329000932_6": "「キャロル、ここです」",
"329000932_7": "「その姿? お前は……ノエル……?\\n いや違う……」",
"329000932_8": "「お前は、誰だ?」",
"329000932_9": "「やっと繋がることができました」",
"329000932_10": "「初めまして。\\n ボクは、エルフナインと言います」",
"329000932_11": "「エルフナイン……どこかで聞いた覚えが――」",
"329000932_12": "「ボクは別の世界のあなた……キャロルに作られた\\n ホムンクルス躯体で、彼女に救われた者です」",
"329000932_13": "「そうか。\\n お前が、立花響たちが言っていた」",
"329000932_14": "「そうです。\\n 響さんたちは、今のボクの大切な仲間です」",
"329000932_15": "「それが、そのお前が、どうしてこんなところにいる?」",
"329000932_16": "「ダイレクトフィードバックシステムの応用で、\\n 並行世界間の精神干渉を再現してみたんです」",
"329000932_17": "「ただ、無理やり精神に負担をかけて繋げたので、\\n ちょっときつかったですけど」",
"329000932_18": "「それでも、偶然……いえ、奇跡かもしれませんが、\\n うまくいってよかった」",
"329000932_19": "「奇跡だと……ッ!?\\n そんなもの、オレは認め――ッ」",
"329000932_20": "「キャロル、パパの命題の答えは出ましたか?」",
"329000932_21": "「パパの……命題……」",
"329000932_22": "「…………」",
"329000932_23": "(パパ……。パパが本当に望んでいたこと……)",
"329000932_24": "「ああ……やっと、見つけたよ」",
"329000932_25": "「それは、世界を識ることだ……」",
"329000932_26": "「世界を?」",
"329000932_27": "「そうだ。\\n だがオレは、ずっとその意味を取り違えていた」",
"329000932_28": "「どういう意味だったんですか?」",
"329000932_29": "「それは世界を支配するためでも、滅ぼすためでもない」",
"329000932_30": "「いつか人と人がわかり合うために、世界の全てを識り、\\n その知識で誰かを幸せにしていくためのものだったんだ」",
"329000932_31": "「キャロル……」",
"329000932_32": "「パパはいつでも、誰かのために、誰かの幸せを願って、\\n 錬金術を行使していた」",
"329000932_33": "「そう、人とわかり合うために……」",
"329000932_34": "「それは、自分が殺される時であっても変わらなかった」",
"329000932_35": "「力を使わず、わかり合えないことへの悲しみも見せず、\\n それでも人はわかり合えるはずと、そう信じて死んでいった……」",
"329000932_36": "「うん、そうだったね……」",
"329000932_37": "「ボクたちのパパは、そういう人だった……」",
"329000932_38": "「……よかった。\\n ちゃんと答えを見つけたんですね」",
"329000932_39": "「ああ……」",
"329000932_40": "「だが、オレは愚か者だ」",
"329000932_41": "「この答えを見いだすまでに、\\n どれ程の刻を無駄にした」",
"329000932_42": "「どれ程の無駄な犠牲を強いてきた?」",
"329000932_43": "「答えなら、とっくにこのオレの中にあったのに……」",
"329000932_44": "「パパが、ちゃんと遺してくれていたのにッ!」",
"329000932_45": "「悲しみと孤独、恨みと憎しみとで塗り込めて、\\n ずっと見失っていた……」",
"329000932_46": "「オレの醜い心の合わせ鏡を目の当たりにして、\\n ようやくそのことに気がついたのだッ」",
"329000932_47": "「そこまで悔いているのなら……戦ってください」",
"329000932_48": "「戦え、だと?」",
"329000932_49": "「ええ、そうです」",
"329000932_50": "「一体、何と戦えと言うのだ?」",
"329000932_51": "「間違った答えを行使しようとする者と」",
"329000932_52": "「それを止められるのは、パパの遺志を正しく引き継げるのは、\\n キャロルだけなんですから」",
"329000932_53": "「だが、もうオレには、戦う力など残っていない……」",
"329000932_54": "「それなら大丈夫――」",
"329000932_55": "「ボクの想い出を、わけてあげます」",
"329000932_56": "「――なッ!? 想い出の力をッ?」",
"329000932_57": "「そんなことをしたら、お前がッ!?」",
"329000932_58": "「大丈夫。並行世界をまたいで、想い出の力を\\n 実際に受け渡すことまでは、流石にできないと思います」",
"329000932_59": "「できるのは、ちょっとした精神干渉だけです」",
"329000932_60": "「ならば、この行為になんの意味がある?」",
"329000932_61": "「ボクの中に残るキャロルの想い出の残滓に触れることで、\\n きっとあなたの中に眠る想い出も輝きを取り戻すはず」",
"329000932_62": "「オレの中に眠る、想い出――?」",
"329000932_63": "「はい。失った記憶もあれば、ひととき忘れただけで\\n 思い出せる記憶も、まだたくさんあるはず」",
"329000932_64": "「それに、過去だけじゃない」",
"329000932_65": "「想い出というものは、これからも新たに、\\n 幾らでも紡ぎ出されるんです」",
"329000932_66": "「今、あなたとボクがこうして\\n 新たな想い出を紡いでいるように……」",
"329000932_67": "「新たな、想い出を、紡ぐ――」",
"329000932_68": "「もちろん、良い想い出だけじゃありません。\\n 苦しい想い出もまた、沢山生まれるはず」",
"329000932_69": "「だとしても……その苦しい道の先には、\\n 再び誰かとの輝ける想い出が紡いでいけるはずです」",
"329000932_70": "「ボクは、ボクの世界のキャロルに与えられた命で、\\n 誰かと歩んでいくことの喜びを知りました」",
"329000932_71": "「だからキャロルにも、\\n これからはそうして生きていってほしい」",
"329000932_72": "「オレに……そんな生き方ができると思うか?」",
"329000932_73": "「できます。パパの真の命題を思い出して、\\n 今度こそ受け継いだ、あなたなら」",
"329000932_74": "「奇跡を憎むのではなく、人と人がいつかわかり合える――\\n パパの望んだそんな奇跡を、志向できるキャロルなら絶対に」",
"329000932_75": "(……人と人がわかり合う、わかり合える奇跡……)",
"329000932_76": "(そうだ。オレはもう、奇跡の殺戮者じゃない……。\\n だから――",
"329000932_77": "「さあ、立ち上がって」",
"329000932_78": "「あなたなら、また戦えるはず」",
"329000932_79": "「……礼を言おう、エルフナイン」",
"329000932_80": "「オレは、もう一度戦う」",
"329000932_81": "「オレの過ちを正すために。\\n そして新たな想い出を紡ぐためにッ」",
"329000932_82": "「オレはパパを肯定する、パパが望んだ奇跡を、\\n この手で必ず叶えてみせるッ」",
"329000932_83": "「<size=40>オレは――『奇跡の完遂者』だッ!</size>」",
"329000932_84": "「はい。\\n きっと、ボクたちのパパもそれを――」",
"329000932_85": "「ぐッ……」",
"329000932_86": "(この痛み、現実に戻ってきた、ということか……)",
"329000932_87": "(即死でなかったのがそれこそ奇跡だな……)",
"329000932_88": "(しかし、どうも立ち上がれそうもない)",
"329000932_89": "「せっかくエルフナインに尻を叩かれても、\\n このザマではな……」",
"329000932_90": "「……マス、ター」",
"329000932_91": "「ガリィッ? まだ動けたのかッ!」",
"329000932_92": "「どうにか、こうにか、ですけどね……」",
"329000932_93": "「マスター……。今まで預かっていたもの、\\n マスターに、お返ししますよ……」",
"329000932_94": "「オレが預けたものだと?」",
"329000932_95": "「その光は……お前に与えた、聖杯の力ッ!?」",
"329000932_96": "「さ、お受け取りください」",
"329000932_97": "「何を――ッ!」",
"329000932_98": "「お初にお目に掛かりますわ、マスター」",
"329000932_99": "「さあ、マスター。\\n なんなりとご命令を♪」",
"329000932_100": "「あたしもバリバリ手伝うゾッ!」",
"329000932_101": "「派手に計画遂行といきましょう」",
"329000932_102": "「ところで、お前たち。\\n いちいち、その大仰なポーズを取らねば気がすまないのか」",
"329000932_103": "「ほんとですよねえ。\\n 隣でダッサい動きを取られると目障りなんですけどー」",
"329000932_104": "「この派手さがわからぬとは、地味にナンセンスな奴」",
"329000932_105": "「けど、ガリィのブリっ子も大概だゾ?」",
"329000932_106": "「あんだと、もう1回言ってみろッ!?」",
"329000932_107": "「これは――」",
"329000932_108": "「オートスコアラーたち全員の想い出ッ!?」",
"329000932_109": "「はい、わたしも含め、\\n 他の者たちの最後の想い出を、この聖杯に込めました」",
"329000932_110": "「どうしてそんなことッ!」",
"329000932_111": "「いやですよ、マスター、\\n あなたは、わたしたちにとって一番大切な人なんですから」",
"329000932_112": "「さ……立ち上がってくださいな、マスター……」",
"329000932_113": "「そして、あのクソ野郎に……。\\n 必ず、勝って、ください、よ――」",
"329000932_114": "「ガリィッ!!」",
"329000932_115": "「…………」",
"329000932_116": "「……受け取ったぞ、お前らの想いをッ!」"
}

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@ -0,0 +1,120 @@
{
"329000941_0": "「そのガチガチの鎧、削り取ってやらあッ!」",
"329000941_1": "「炙れば少しは柔らかくなるだろッ!」",
"329000941_2": "「おおおおお――ッ!」",
"329000941_3": "「はああああ――ッ!」",
"329000941_4": "「魔剣ダインスレイフ、\\n 完全聖遺物だとこれほどの力が……」",
"329000941_5": "「相手はイグナイトの集合体みたいなもんだろ?\\n なら、この強さも納得だ」",
"329000941_6": "「それにしても、ほんとに大した装甲だね……」",
"329000941_7": "「けど全く通用していないわけじゃないですッ!」",
"329000941_8": "「ならゴリゴリ押してくだけだッ!」",
"329000941_9": "「涓滴岩を穿つと云うッ!\\n 諦めねばきっと道は開けるッ」",
"329000941_10": "「はいッ!!」",
"329000941_11": "「悠長なことを。\\n その前に世界は終わりを告げ――ッ」",
"329000941_12": "「な、なんだ……?」",
"329000941_13": "(今、世界を壊す歌の旋律に、\\n おかしなイズが生じたような……",
"329000941_14": "「この気配……まさか、キャロルだとッ!?」",
"329000941_15": "「えッ、キャロルちゃんッ!?」",
"329000941_16": "「まだ生きているのかッ!?」",
"329000941_17": "「なぜまだ動けるッ!?」",
"329000941_18": "「おのれ、何を考えているか知らぬが、\\n 邪魔はさせないッ」",
"329000941_19": "「黒騎士、ついてこいッ!」",
"329000941_20": "「待てッ!」",
"329000941_21": "「後を追うぞッ!」",
"329000941_22": "「はいッ!」",
"329000941_23": "「クソッ、アルカ・ノイズをばらまいていきやがったッ!」",
"329000941_24": "「構うなッ! 血路を開いて追撃するッ!」",
"329000941_25": "「ああ、わかったッ!」",
"329000941_26": "(キャロルちゃん、待っててッ! すぐ行くからッ!)",
"329000941_27": "「はああ――ッ!!」",
"329000941_28": "「――ノエルの気配が戻ってくる?」",
"329000941_29": "「どうやら、気取られたか」",
"329000941_30": "(世界を壊す歌を止めるまでは、\\n 少々時間が足りぬようだな",
"329000941_31": "「キャロルッ!\\n しぶといですね、まだ生きていたのですかッ」",
"329000941_32": "「ああ、こうして、不様に存えている」",
"329000941_33": "「なぜ? なぜそんなことが――?」",
"329000941_34": "「あいつらが、オレに再び立ち上がる力をくれた」",
"329000941_35": "「まさか、人形どもがッ!?」",
"329000941_36": "「そうか、創造時に与えた心の欠片を回収したかッ!」",
"329000941_37": "「だが、その程度の想い出では、なんの力にもならないはずッ!」",
"329000941_38": "「それだけではない」",
"329000941_39": "「なに?」",
"329000941_40": "「それだけではないのだ、ノエル」",
"329000941_41": "「あいつらは己の全存在を――\\n オレとの想い出を、全て与えてくれた」",
"329000941_42": "「笑止な。\\n 木偶どもに自己の魂があるとでも言うつもりですかッ」",
"329000941_43": "「ああ、そうだ。\\n 少し前のオレならば、同じことを言っただろうがな」",
"329000941_44": "「いや、そんな木偶どもの話はどうでもいいッ!\\n これ以上の計画遂行の邪魔はやめてもらいますッ」",
"329000941_45": "「嫌だと言ったら?」",
"329000941_46": "「力を以て排除するまで」",
"329000941_47": "「やはり、戦いは避けられないか……」",
"329000941_48": "「ならば戦うまでだ。\\n ガリィたちから貰った想い出の力で」",
"329000941_49": "「そしてオレが、この呪いの歌を止めてみせる」",
"329000941_50": "「取り戻したパパとの想い出――\\n パパの願った真の命題を胸になッ」",
"329000941_51": "「違うッ!\\n パパの想いを受け継いだのは、このボクだッ」",
"329000941_52": "「ここまで来て――\\n 計画を頓挫させてなるものか――ッ」",
"329000941_53": "「おおおおお――ッ!!」",
"329000941_54": "「ノエル……呪いの歌を自らの身体にッ?」",
"329000941_55": "「まさか、黒騎士との融合を――ッ!?」",
"329000941_56": "「世界の破壊は止めさせはしないッ!」",
"329000941_57": "「<size=40>それがパパとの約束――命題だからだッ!</size>」",
"329000941_58": "「クッ、これはッ!?」",
"329000941_59": "「――感じたか、2人とも」",
"329000941_60": "「ええ。\\n 一瞬、歌の影響が弱まったみたいだけど――」",
"329000941_61": "「直後に、負荷が急激に増大したワケダッ!」",
"329000941_62": "「どうやら中の状況は、\\n あんまり芳しくないみたい」",
"329000941_63": "「そうみたいね……」",
"329000941_64": "(あの子の手前、死ぬつもりはないと言ったが、\\n いよいよ止められぬとなった時は――",
"329000941_65": "(だが、その時は2人も道連れに――)",
"329000941_66": "「わかってるわよ、サンジェルマン」",
"329000941_67": "「長い付き合いだ。\\n みなまで言うなというワケダ」",
"329000941_68": "「……すまない、2人とも」",
"329000941_69": "(立花響……私たちの命、お前たちに預けたぞ)",
"329000941_70": "「キャロルちゃんッ!」",
"329000941_71": "「お前ッ!?」",
"329000941_72": "「邪魔者が増えたかッ!」",
"329000941_73": "「だが何匹増えようとも無意味だッ!」",
"329000941_74": "「なんだ、その化け物はッ!?」",
"329000941_75": "「ノエルだ……黒騎士と融合した、な」",
"329000941_76": "「カルマノイズとの融合みたいに――」",
"329000941_77": "「呪いの源たるダインスレイフと\\n 錬金術師の融合体だと言うのかッ」",
"329000941_78": "「こいつは厄介な相手だな……」",
"329000941_79": "「そうだ、キャロルちゃん、これッ!」",
"329000941_80": "「これは――?」",
"329000941_81": "「アダムさん――\\n 錬金術師協会の偉い人に頼まれたんだッ」",
"329000941_82": "「これをキャロルちゃんに渡してほしいって……」",
"329000941_83": "「これは……どこかで……?」",
"329000941_84": "「これが賢者の石――ラピス・フィロソフィカス」",
"329000941_85": "「もっとも、未だ真の完成には遙かに及ばぬワケダ」",
"329000941_86": "「あーあ。やっぱり、また壊れちゃったわね」",
"329000941_87": "(そうだ、昔協会で研究していた、ラピスだッ!)",
"329000941_88": "(だが、確か完成には至らなかったはず――)",
"329000941_89": "(なのに、完成している、だと?)",
"329000941_90": "「学ぶといい、存分に」",
"329000941_91": "「見つけるといい、君のやりたいことを」",
"329000941_92": "(これは――オートスコアラーたちから取り戻した\\n 想い出の断片が、記憶の補完を……",
"329000941_93": "「まったく、余計なことを……」",
"329000941_94": "「だが、有り難く使わせてもらおうッ!」",
"329000941_95": "「はああ――ッ!!」",
"329000941_96": "「キャロルちゃんッ!」",
"329000941_97": "「あの姿は、ファウストローブ――」",
"329000941_98": "「だけど、ダウルダブラじゃないッ!?」",
"329000941_99": "「なんだ、この輝きはッ!?」",
"329000941_100": "「まるで、この身を構成する呪いを分解するような――ッ!」",
"329000941_101": "「まさか、ラピス・フィロソフィカスかッ!?」",
"329000941_102": "「認めぬぞッ!\\n 神の奇跡も、大いなる秘蹟もッ」",
"329000941_103": "「お前を倒して、パパの命題を完遂するッ!」",
"329000941_104": "「奇跡を殺す――鏖すッ!」",
"329000941_105": "「違う……パパの命題は、残してくれた想いは、\\n 奇跡を殺すことじゃない」",
"329000941_106": "「人と人がわかり合う奇跡――それを肯定することだッ!」",
"329000941_107": "「オレは今度こそ間違えない……奇跡を信じ、奇跡を掴む。\\n オレこそが『奇跡の完遂者』だッ」",
"329000941_108": "「ふざけるなッ! 奇跡……それが何をしてくれたッ!\\n パパを救ってくれなかった奇跡を肯定する 血迷ったかッ」",
"329000941_109": "「……いいだろう。お前が奇跡を志向すると言うなら、\\n その想いごと、存在を消し飛ばしてくれるッ」",
"329000941_110": "「立花響……それに、装者たちッ!」",
"329000941_111": "「アイツを止めるために、力を貸せッ!」",
"329000941_112": "「もちろんだよ、キャロルちゃんッ!」",
"329000941_113": "「ああ、そのために来たんだからなッ!」",
"329000941_114": "「止めるぞ、滅びの歌をッ!」",
"329000941_115": "「繋ぎ止めるぞ、世界の未来をッ!」",
"329000941_116": "「ああ……」",
"329000941_117": "「<size=40>新しく紡がれるべき想い出のためにッ!</size>」"
}

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@ -0,0 +1,63 @@
{
"329000942_0": "「うおおおおおお――ッ!!」",
"329000942_1": "「終わりだ、ノエル」",
"329000942_2": "「まだ……まだ終わるわけにはいかないッ!」",
"329000942_3": "「この力――まさか全ての想い出を焼却し\\n 力へと変えるつもりかッ」",
"329000942_4": "「ああ、そしてキャロル、お前を殺すッ!」",
"329000942_5": "「世界への復讐を、パパの無念を晴らすためにッ!」",
"329000942_6": "「それは間違いだと言っているッ!」",
"329000942_7": "「パパは復讐も破壊も、\\n 最後まで望まなかったッ」",
"329000942_8": "「五月蠅い五月蠅い五月蠅いッ!」",
"329000942_9": "「お前などッ!\\n この呪われた世界諸共、消えてしまえええええ――ッ」",
"329000942_10": "「おおおおお――ッ!!」",
"329000942_11": "「キャロルちゃんッ!!」",
"329000942_12": "「この威力ッ! \\n 人で受け止めるのは無茶だッ」」",
"329000942_13": "「だが、これだけはオレが受け止めねばならぬッ!」",
"329000942_14": "「ノエルのこの想いだけはッ!」",
"329000942_15": "「どうしてッ!?」",
"329000942_16": "「ノエルが抱いたこの闇は、オレ自身の闇……」",
"329000942_17": "「オレがあいつに押しつけてしまったものなのだからッ!」",
"329000942_18": "「キャロルちゃん……」",
"329000942_19": "「なら……信じるよッ!\\n 今のキャロルちゃんの想いをッ」",
"329000942_20": "「ああ、見届けてやるさ。\\n お前の決意ってやつをッ」",
"329000942_21": "「そして、預けよう。\\n わたしたちの命運をッ」",
"329000942_22": "「だから……絶対に負けんじゃねえぞッ!」",
"329000942_23": "「――ッ!?」",
"329000942_24": "(なんだこの、背中を押されるような温かい力はッ!?)",
"329000942_25": "(これが、想い――人と人を繋ぐ、力なのかッ!!)",
"329000942_26": "(これがパパが希った力だと言うのかッ!)",
"329000942_27": "「ならば――」",
"329000942_28": "「負ける道理はないッ!」",
"329000942_29": "「過ちに走った昔の己の心などにはッ!」",
"329000942_30": "「なぜならば――」",
"329000942_31": "「<size=40>今のオレは、1人ではないからだ――ッ!!</size>」",
"329000942_32": "「今度こそ、終わったのか――?」",
"329000942_33": "「ああ……あらゆる不浄を浄化するラピスの力。\\n その力を極大まで引き出した、キャロルの勝利だ」",
"329000942_34": "「それじゃ、ノエルって子は……」",
"329000942_35": "「消えちまったのか?」",
"329000942_36": "「……ここにいる」",
"329000942_37": "「キャロルちゃんッ!」",
"329000942_38": "「ノエルの体内に根付いた呪いの力を浄化したことで、\\n ダインスレイフとの融合が解けたのだ」",
"329000942_39": "「だが……」",
"329000942_40": "「身体が、消えかかってる?」",
"329000942_41": "「そうか、想い出を焼却しきって……」",
"329000942_42": "「……ボクは……?」",
"329000942_43": "「オレの想い出を受け取れ、ノエル」",
"329000942_44": "「そうすれば、お前はまだ生き延びられる」",
"329000942_45": "「オレと共に生きて、\\n これまでの罪を償うんだ」",
"329000942_46": "「なんて哀しい瞳……」",
"329000942_47": "「でもボクは……そんな哀しい記憶、いりません……」",
"329000942_48": "「ボクには、きっと、耐えられない。\\n これ以上の悲しみには」",
"329000942_49": "「ノエル、何を……?」",
"329000942_50": "「ボクが覚えてるのは、パパの顔だけ……」",
"329000942_51": "「とっても哀しい顔で、ボクを見下ろしている……」",
"329000942_52": "「それは――」",
"329000942_53": "「でも……きっと、ボクは死んでも、\\n パパには会えない……」",
"329000942_54": "「パパとの約束、\\n たくさん破っちゃったみたいだから……」",
"329000942_55": "「そんなことはない、\\n それはお前のせいなどでは、決して――」",
"329000942_56": "「パパ……ごめん、ね……」",
"329000942_57": "「ノエルッ!!」",
"329000942_58": "「…………」",
"329000942_59": "「……すまない、ノエル」",
"329000942_60": "「お前にその悲しみを負わせたのは、\\n このオレだ……」"
}

View file

@ -0,0 +1,126 @@
{
"329001011_0": "輝ける想い出のために",
"329001011_1": "「サンジェルマンさんッ!」",
"329001011_2": "「終わったようだな」",
"329001011_3": "「はいッ!\\n サンジェルマンさんたちも無事で良かったですッ」",
"329001011_4": "「お前たちもな」",
"329001011_5": "「キャロルも一緒に戻ったワケダね」",
"329001011_6": "「…………」",
"329001011_7": "「話なら後できちんと聞かせてもらうワケダ」",
"329001011_8": "「ああ……わかっている」",
"329001011_9": "「それで、世界を壊す歌は、どうなったの?」",
"329001011_10": "「大丈夫だ。キャロルがチフォージュ・シャトーのコントロールを\\n 奪い返して、世界を壊す歌を完全に停止させてくれた」",
"329001011_11": "「……シャトー内に集積されていたエネルギーも、\\n レイラインへと還流させておいた」",
"329001011_12": "「あとは、自然の流れに乗って霧散するだろう」",
"329001011_13": "「そう……ならよかったわ。\\n あー疲れたあ……」",
"329001011_14": "「それもこれもサンジェルマンさんたちが\\n 世界を壊す歌を抑えていてくれたおかげですッ」",
"329001011_15": "「……そうだな」",
"329001011_16": "「なんだ、とたんに浮かない顔して?」",
"329001011_17": "「疲れちゃいました? 大丈夫ですか?」",
"329001011_18": "「まあ……そういう面も否めないのだが」",
"329001011_19": "「なんだ、随分と煮え切らないな」",
"329001011_20": "「その、実はね……」",
"329001011_21": "「正直言えば、我々の力だけでは\\n あの歌の威力を抑えきれなかったワケダ」",
"329001011_22": "「ええッ!?」",
"329001011_23": "「本当だ」",
"329001011_24": "「じゃあ、どうして無事なんだ?」",
"329001011_25": "「いよいよ我々では抑えきれなくなり、\\n 一時は、我々も命を燃やす覚悟を決めたのだが……」",
"329001011_26": "「その時、どこからともなく局長が現れて、\\n あのバカみたいな魔力を我々に注ぎ込んできたワケダッ」",
"329001011_27": "「おかげで、歌を留めることができたのだが……」",
"329001011_28": "「手伝ってくれたことが、何故そんなに不満に感じる?」",
"329001011_29": "「魔力を全開する度に余計なものを見せ付けられる\\n こちらの身にもなってほしいワケダッ」",
"329001011_30": "「あー……」",
"329001011_31": "「なんとなく予想はつくが、\\n たぶん深く突っ込まない方が身のためだな」",
"329001011_32": "「で、当の局長さんはどこに行ったんだよ?」",
"329001011_33": "「あ、ああ」",
"329001011_34": "「事態の終息を見届けて急いで帰っていった。\\n 協会の仕事を途中で放り出してきたらしいから」",
"329001011_35": "「そっか……残念です。\\n お礼を言いたかったんですけど……」",
"329001011_36": "「そうだな……。歌のことだけではない。\\n キャロルのファウストローブについてもな」",
"329001011_37": "「あれがなかったら、危なかったですよね」",
"329001011_38": "「確かにな……」",
"329001011_39": "「ホント、随分と用意のいいこった」",
"329001011_40": "「…………」",
"329001011_41": "「そういうことなら、後ほど私から伝えておこう」",
"329001011_42": "「はい、お願いしますッ!」",
"329001011_43": "「今回もご苦労だったな。\\n 疲れは充分取れたか」",
"329001011_44": "「はいッ! ぐっすり寝たらこの通りですッ!」",
"329001011_45": "「元気が余りすぎて\\n メーター振り切れてそうなのが約名いるけどな」",
"329001011_46": "「えッ!? それってわたしのこと?」",
"329001011_47": "「元気なのは結構ッ!」",
"329001011_48": "「とにかく皆、よく無事に帰ってきてくれた」",
"329001011_49": "「けど、今回もギリギリの戦いだったみたいね」",
"329001011_50": "「まあな」",
"329001011_51": "「だが、無事解決できた」",
"329001011_52": "「無事解決はいいけど、\\n チフォージュ・シャトーはどうするんだ」",
"329001011_53": "「あんなの、そこらに放っておくわけにはいかないだろ?」",
"329001011_54": "「確かに……。我々の世界の廃墟状態の物ならともかく、\\n 何しろこの世界の物は、未だに稼働状態だしね」",
"329001011_55": "「チフォージュ・シャトーなら、\\n ダインスレイフと共に錬金術師協会が回収済だ」",
"329001011_56": "「ダインスレイフはともかくチフォージュ・シャトーもか?\\n いくらなんでも早すぎるだろッ」",
"329001011_57": "「あんな大きな物、どうやってッ!?」",
"329001011_58": "「それは、企業秘密だ」",
"329001011_59": "「ええ……」",
"329001011_60": "「やたら執着してるやつがいたから、\\n そいつが何かしたんだろう」",
"329001011_61": "「そうかー……、\\n あ、ところで、キャロルちゃんは、今どこにいるんですか」",
"329001011_62": "「彼女の身柄も、既に錬金術師協会預かりになっている」",
"329001011_63": "「ああ。元々、そういう約束だったからな」",
"329001011_64": "「キャロルちゃん……どうなっちゃうんですか?」",
"329001011_65": "「事件の首謀者こそノエルだったが、\\n 世界を壊す歌の準備を元々進めていたのはキャロルだからな」",
"329001011_66": "「今回、直接加害者となったノエルに、オートスコアラー\\n それら全てを作ったという事情もあるのよね」",
"329001011_67": "「ああ……。それらの事実と、最後に歌を阻止したことを加味して、\\n 責任を追及されることになるだろう」",
"329001011_68": "「責任って?」",
"329001011_69": "「協会に戻り次第、裁きを受けることになる」",
"329001011_70": "「裁きって、もしかしてッ!?」",
"329001011_71": "「心配しなくても、死刑などにはならないだろう」",
"329001011_72": "「本当ですかッ?」",
"329001011_73": "「ああ。キャロル本人が、世界を壊す歌の術式を\\n 再び行おうとする可能性は、極めて低いと思われる」",
"329001011_74": "「その上、彼女が長年研鑽してきた錬金術の知識は、\\n 協会としても喉から手が出るほどほしい水準だ」",
"329001011_75": "「だから、司法取引などを持ち掛けられる可能性が高いだろう」",
"329001011_76": "「よかったあ……」",
"329001011_77": "「だけど、ある意味この先、死ぬよりも\\n 辛くて重い償いが続くかもしれないんじゃないのか」",
"329001011_78": "「……ああ」",
"329001011_79": "「罪が無くなるわけではないから、長い期間をかけて、\\n 協会で贖罪のために働いてもらうことになるのは間違いない」",
"329001011_80": "「でも……死んじゃうより、全然いいですよッ!」",
"329001011_81": "「だって生きてさえいれば、\\n 誰だって、いつだって、何度だって、やり直せますからッ」",
"329001011_82": "「ああ……そうだな。\\n そう思いたいものだ……」",
"329001011_83": "「ともあれ、これで全て落ち着くところに落ち着いたか」",
"329001011_84": "「ああ……やっと一安心だな」",
"329001011_85": "「見送りなど、頼んだ覚えはないのだが?」",
"329001011_86": "「わたしの方からお願いしたんだ」",
"329001011_87": "「キャロルちゃんを協会に連れていく前に、\\n どうしても会わせてほしいって」",
"329001011_88": "「なんのために?」",
"329001011_89": "「事件の後、ちゃんとお別れが言えなかったから」",
"329001011_90": "「くだらない。そんなことのために、わざわざ来たのか?」",
"329001011_91": "「くだらなくなんかないよ。\\n 大事なことなんだから」",
"329001011_92": "「お前の価値観をオレに押しつけるなッ!」",
"329001011_93": "「全く、お前は馴れ馴れしすぎる……」",
"329001011_94": "「……はい」",
"329001011_95": "「……?」",
"329001011_96": "「じゃあ、また会おうね、キャロルちゃん」",
"329001011_97": "「なんだ、その手は?」",
"329001011_98": "「サヨナラと、また会いましょうの約束の握手」",
"329001011_99": "(お前は、こんなオレにも手を差し伸べるのだな)",
"329001011_100": "(その太陽の様に眩い瞳で、\\n 真っ直ぐにこちらを見つめて……",
"329001011_101": "(人と人を繋ぐために差しのばす、その手……。\\n 泣いていた迷子を笑顔にさせた、その心……",
"329001011_102": "(お前という存在は、オレのパパの命題を、\\n とうに果たしているのかもしれないな",
"329001011_103": "(だが……オレにはまだ、その手を受ける資格などない)",
"329001011_104": "「お前みたいなうるさいやつ、\\n オレは二度とごめんだ」",
"329001011_105": "「ええッ? 友達になれたと思ったのに……」",
"329001011_106": "「そう簡単に手など握れるか」",
"329001011_107": "(そうだ。これまでの過ちを償わぬ内は……)",
"329001011_108": "「じゃあ、次に会ったら友達ってことでッ!」",
"329001011_109": "「ふんッ!」",
"329001011_110": "「はあ……ダメかあ……」",
"329001011_111": "「……だが、な」",
"329001011_112": "「キャロルちゃん?」",
"329001011_113": "「受けた借りは、決して忘れない」",
"329001011_114": "「お前からの分も、オレに似たやつからの分もな」",
"329001011_115": "「キャロルちゃんに似たって……。\\n もしかして、エルフナインちゃん」",
"329001011_116": "「借りって? え、いつの間に会ったの?」",
"329001011_117": "「向こうの世界に帰ったら、あいつに聞け」",
"329001011_118": "「じゃあな」",
"329001011_119": "「うん……またね、元気でッ!」",
"329001011_120": "(これから先、長く辛い道のりが待っているだろう)",
"329001011_121": "(けれど、それを通り抜けた先には――)",
"329001011_122": "(誰かと共に、輝ける想い出を紡いでいける、\\n そんな未来が待っている――",
"329001011_123": "(――人と人がわかり合える奇跡。\\n そのために、オレは今度こそ――"
}

View file

@ -0,0 +1,123 @@
{
"329001021_0": "「結構経ったね、ここに君が戻ってから」",
"329001021_1": "「どうかな、その後の調子は?\\n 受けてないかね、嫌がらせとか」",
"329001021_2": "「別に……」",
"329001021_3": "「周囲の目も言動も、関係ない。\\n ただ粛々と、課せられた任務をこなすだけだ」",
"329001021_4": "「君らしいね。\\n では聞くとしようか、今回の報告を」",
"329001021_5": "「アルカ・ノイズの兵器化を行った\\n はぐれ錬金術師集団の調査報告は、ここに書いてある通りだ」",
"329001021_6": "「ほう……。沢山あるね、思ったよりも」",
"329001021_7": "「聞かせてくれないか、概要を」",
"329001021_8": "「書類に書いてあるものを、\\n なぜわざわざ口頭で聞かせる必要がある」",
"329001021_9": "「聞きたいんだよ。君の口から」",
"329001021_10": "「調査し報告を上げるまではオレの任務、\\n 報告書を受領し把握するのは上の者の責務だろう」",
"329001021_11": "「なるほど。耳が痛いね、真実というものは」",
"329001021_12": "「では拝読するとしようか、自分の目で、しっかりとね」",
"329001021_13": "「…………」",
"329001021_14": "「なるほどね……」",
"329001021_15": "「よく調べたものだね、これだけの量を、この短期間で」",
"329001021_16": "「一目瞭然だね、はぐれどもの足取りが」",
"329001021_17": "「…………」",
"329001021_18": "「……ん?」",
"329001021_19": "「……ふむ」",
"329001021_20": "「……聞いてるかな、キャロル?」",
"329001021_21": "「……あ、ああ。\\n それで、今後も監視を続行するのか」",
"329001021_22": "「ああ、そうだね。\\n 頼んだよ、引き続き」",
"329001021_23": "「…………」",
"329001021_24": "「どうした、キャロル?」",
"329001021_25": "「――はッ!?」",
"329001021_26": "「倒れそうだったよ、頭から」",
"329001021_27": "「眠そうだね、随分と」",
"329001021_28": "「取っているのかい? 休息を」",
"329001021_29": "「それはただの質問か、\\n それとも返答を命令で強制しているのか」",
"329001021_30": "「質問の方だよ、強いて言うなら」",
"329001021_31": "「ならば、心配されることじゃない」",
"329001021_32": "「つれないね、相変わらず」",
"329001021_33": "「報告は以上だ。\\n それでは失礼させてもらう」",
"329001021_34": "「……キャロル」",
"329001021_35": "「……お前ら」",
"329001021_36": "「あら、キャロルじゃない。お仕事中?」",
"329001021_37": "「仕事でもなければ来るはずないだろう」",
"329001021_38": "「ま、それはそっか」",
"329001021_39": "「どういう意味だい? それは」",
"329001021_40": "「あ、いえ、なんでもないですよ~」",
"329001021_41": "「……日頃の行いというワケダ」",
"329001021_42": "「いつまでも井戸端話をしている暇はない」",
"329001021_43": "「待て。相当な疲労が顔に表れているぞ?」",
"329001021_44": "「夜中まで何をコソコソやっているワケダ」",
"329001021_45": "「あーしたちの手が必要かしら?」",
"329001021_46": "「うるさい、お前たちには関係ない」",
"329001021_47": "「……これは、オレがやるべきことだ」",
"329001021_48": "「そうだな。\\n だが、手伝えることもあると思うぞ」",
"329001021_49": "「なんだと?」",
"329001021_50": "「プレラーティ」",
"329001021_51": "「ああ、少し癪だが。\\n 受け取るがいいワケダ」",
"329001021_52": "「これはッ!? 聖杯に、剣……?」",
"329001021_53": "「程よく魔力を帯びたいわくつきの代物よ」",
"329001021_54": "「オートスコアラーの触媒に足りなかったのは、\\n そのつでよかったか」",
"329001021_55": "「お前ら……」",
"329001021_56": "「勘違いしないでほしいワケダ。\\n これは他の任務中、偶然見つけた物」",
"329001021_57": "「お前なら、正しく使えるだろう?」",
"329001021_58": "「…………」",
"329001021_59": "「……ああ。礼を言う」",
"329001021_60": "「相変わらずツンツンしてるわねー」",
"329001021_61": "「って、プレラーティは何むくれてんのよ?」",
"329001021_62": "「わたしはシャトーの件を、まだ許していないワケダ。\\n なのに、さらなるほどこしまで……」",
"329001021_63": "「もう。シャトーは戻ってきたんだから、\\n いい加減許してあげなさいって」",
"329001021_64": "「ああ。\\n 彼女も真面目に任務をこなしているしな」",
"329001021_65": "「それはそれ、これはこれなワケダ」",
"329001021_66": "「ああ、そうだったッ!\\n 忘れていたよ、伝えるのを」",
"329001021_67": "「何をでしょうか?」",
"329001021_68": "「チフォージュ・シャトーについてだよ、もちろん」",
"329001021_69": "「管理することになったよ、協会で。\\n 今後は正式にね」",
"329001021_70": "「だから供出するように、明日までに」",
"329001021_71": "「なッ!? どうしてそうなるワケダッ!?」",
"329001021_72": "「アレは大きすぎる。影響力があまりにね」",
"329001021_73": "「だから置かねばね、管理下に。しっかりとね」",
"329001021_74": "「あーらら、ご愁傷様」",
"329001021_75": "「首席研究員として断固抗議するワケダッ!」",
"329001021_76": "「あれはわたしが長年心血を注いで設計した\\n 最高傑作なワケダッ」",
"329001021_77": "「仕方がない、拒否するならば。\\n 破壊しよう、その時は。跡形も残さずね」",
"329001021_78": "「そ、そんな……、\\n サンジェルマンからも何か言ってやってほしいワケダッ」",
"329001021_79": "「……局長命令だ、諦めるんだ」",
"329001021_80": "「諦められるかッ!\\n 絶対に破壊などさせないワケダッ」",
"329001021_81": "「なんだが、今度はプレラーティが、\\n チフォージュ・シャトーを持って、出ていっちゃいそう……」",
"329001021_82": "「ふう……終わったか……」",
"329001021_83": "「これでやっと、今日も取り掛かれる」",
"329001021_84": "(寝食を削って修復を続けてはいるが……。\\n まだまだ、先は長そうだ",
"329001021_85": "(だが、触媒として足りなかった聖杯と剣が手に入った。\\n これで、大きく前進できる",
"329001021_86": "「ふあああ……」",
"329001021_87": "「お前たちには……言いたいことが……」",
"329001021_88": "「待っていろよ……。\\n <size=27>すぐに</size><size=23>……もと</size><size=21>通りに……</size>」",
"329001021_89": "「…………」",
"329001021_90": "「マスターったら、起きてくださいよー」",
"329001021_91": "「そんなところで眠られたら、風邪をひきますわよ?」",
"329001021_92": "「ん……ここは……?」",
"329001021_93": "(チフォージュ・シャトー……か?)",
"329001021_94": "(それに、その声は……)",
"329001021_95": "「お目覚めですか、マスター?」",
"329001021_96": "「お前たち……直ったのか?」",
"329001021_97": "「なあに言ってるんですか、マスター?」",
"329001021_98": "「誰も壊れてないゾ?」",
"329001021_99": "「派手に寝ぼけているのでは?」",
"329001021_100": "(ああ……そうか、これは夢なのだな)",
"329001021_101": "「ところでガリィ、このリボン、結べないんだゾ?」",
"329001021_102": "「まあミカちゃんったら、無意味にごつい手してるものねえ」",
"329001021_103": "「可愛く結んでくれだゾ?」",
"329001021_104": "「はいはい、ちょっと待ってね――っと」",
"329001021_105": "「こんなものかしらね?」",
"329001021_106": "「ありがとうだゾ、ガリィッ!」",
"329001021_107": "「ふふーん。\\n オシャレのことならこのガリィちゃんにお任せあれ♪」",
"329001021_108": "「それにしても退屈だ。\\n 何か派手なことはないものか」",
"329001021_109": "「まあ、レイアったらそればっかりね」",
"329001021_110": "「それでは、また舞踏会でも開きましょうか?」",
"329001021_111": "「ふむ。その提案、なかなか悪くない」",
"329001021_112": "(戦いと無縁な話ばかり……平和なものだ)",
"329001021_113": "(あんなことのために作らなければ、\\n こいつらにもこういう在り方があったのかもしれないな……",
"329001021_114": "「フ……」",
"329001021_115": "「どうしたんですの、マスター?」",
"329001021_116": "「なに思いだし笑いしてるんです?」",
"329001021_117": "「あたしのリボンが似合ってなかったとかだゾ?」",
"329001021_118": "「まだ派手に寝ぼけているとか?」",
"329001021_119": "「いや……そうじゃない。\\n そうじゃないんだ……」",
"329001021_120": "「レイア、ファラ、ミカ、ガリィ…<speed=1.4>…</speed>ありがとう」"
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"329001111_0": "友との約束",
"329001111_1": "「だから勝手をするなといつも言ってるワケダッ!」",
"329001111_2": "「オレはサンジェルマンの指揮に従ったまでだッ!」",
"329001111_3": "「そもそも、お前の指揮下に入った覚えはないッ!\\n 故にお前に言われる筋合いもないッ」",
"329001111_4": "「だが位階でいえば全然わたしの方が上なワケダッ!」",
"329001111_5": "「位階と指揮系統は別の問題だッ!」",
"329001111_6": "「噛み合わないねえ、どうにも」",
"329001111_7": "「はい。少しは相互理解が深まるかと、\\n 我々の任務に同行させたのですが……」",
"329001111_8": "「どっちかって言うと、逆効果?」",
"329001111_9": "「任務自体は非常に真面目にこなすのですが……」",
"329001111_10": "「いかんせん、キャロルに命令以外での\\n 協調性が著しく欠けている有様でして……」",
"329001111_11": "「まあプレラーティも、いちいちこの前の事件のことで\\n キャロルを煽ったりするからいけないのよねえ」",
"329001111_12": "「馬鹿馬鹿しいッ!\\n これ以上付き合ってられるかッ」",
"329001111_13": "「ってッ! ちょっと待ちなさいってッ!」",
"329001111_14": "「あんなやつほっとくワケダッ!」",
"329001111_15": "「あーあ、本当に出ていっちゃったわ」",
"329001111_16": "「困ったものだねえ、相変わらず。\\n 変わらないものだよ、何年経っても」",
"329001111_17": "「何年? どういう意味ですか?」",
"329001111_18": "「いやなに……。\\n こっちの話さ、あくまでも」",
"329001111_19": "(苦労させられるよ、君の娘にはね……)",
"329001111_20": "「どうぞ」",
"329001111_21": "「おじゃまさせてもらうよ」",
"329001111_22": "「悪かったね、突然押しかけて」",
"329001111_23": "「なに、君の来訪が突然なのは、いつものことさ」",
"329001111_24": "「その後どうなんだい、解析機の進捗は?」",
"329001111_25": "「もう一歩、と言ったところかな」",
"329001111_26": "「分解の構造については完全に理解できた」",
"329001111_27": "「アルカ・ヘストを応用して、\\n 万象分解作用を持たせることにも成功したよ」",
"329001111_28": "「素晴らしいね、それは」",
"329001111_29": "「ああ。だけど、まだまだ作用の安定化と、\\n 可逆性の担保が難しくてね」",
"329001111_30": "「なるほど、\\n 朗報だよ。そんな君に」",
"329001111_31": "「朗報?」",
"329001111_32": "「ああ、見つけたんだよ。僕たち協会もね。\\n 先史文明期の遺跡から、君の言う、設計図を」",
"329001111_33": "「なッ!? 本当かい?」",
"329001111_34": "「ああ、だけどまだ手元には届いていない。\\n 残念ながらね」",
"329001111_35": "「持ってくるよ。次来るときに、必ず」",
"329001111_36": "「それは楽しみだ。でも、いいのかい?\\n いくら協会のトップとはいえ、そんな勝手をして」",
"329001111_37": "「信じているからね、協会の利益に繋がると。\\n 君の研究は」",
"329001111_38": "「アダム……助かるよ」",
"329001111_39": "「期待しているよ、大いに。\\n 錬金術師として、そして君の友としてもね」",
"329001111_40": "「ああ、頑張るさ。\\n まだまだ、理想には程遠いからね」",
"329001111_41": "「ところで。\\n 考え直してくれたかな、例の件は」",
"329001111_42": "「例の件?」",
"329001111_43": "「住まいのことさ、君たちの」",
"329001111_44": "「そろそろどうだい、僕のところへ来ては?」",
"329001111_45": "「ああ、その話か……」",
"329001111_46": "「誘いはありがたいが、遠慮するよ。\\n ここでの生活が気に入っているんでね」",
"329001111_47": "「うちの可愛い娘も、\\n ここが大のお気に入りらしいから」",
"329001111_48": "「ふむ……そうか。\\n 仕方ないね、残念だけど」",
"329001111_49": "「ところでだ」",
"329001111_50": "「会わせてくれないかな、そろそろ。\\n 君の宝、自慢の娘とやらにね」",
"329001111_51": "「なら、娘が起きているときに来てくれないとね」",
"329001111_52": "「構わないがね、寝顔でも。\\n こちらとしては」",
"329001111_53": "「いやいやッ! とんでもないッ!」",
"329001111_54": "「天使のような娘の寝顔は、どんな男にも見せられないよ。\\n たとえ友人である君相手でもね」",
"329001111_55": "「やれやれ。\\n とんだ親馬鹿だね、これは」",
"329001111_56": "「フ……まあいいさ。\\n 会えるだろう、いずれね」",
"329001111_57": "「もう行くのか?」",
"329001111_58": "「ああ。忙しくてね、色々と」",
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"329001111_64": "「激化してるからね、異端審問が」",
"329001111_65": "「ああ……確かに、近くでもあったみたいだな」",
"329001111_66": "「あくまでも異端なんだよ、錬金術は。\\n 僕らの操る技というものは」",
"329001111_67": "「迫害を受けることもある、表の者に見られれば」",
"329001111_68": "「だから気を付けるんだ、くれぐれもね」",
"329001111_69": "「ああ……わかっている」",
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"329001111_71": "「危ない橋を渡っていることは、重々承知しているさ」",
"329001111_72": "「だけど、近くの村には、病気で苦しんでいる人や\\n 戦いに巻き込まれて怪我をした人たちがまだ大勢いるんだ」",
"329001111_73": "「この術で、その人たちを少しでも癒せるのなら、\\n 例え、異端と言われようとも続けるつもりさ」",
"329001111_74": "「天秤に掛けてもかね、君と、その愛娘の安全と?」",
"329001111_75": "「アダム……世の中には秤にかけてはいけないものがある」",
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"329001111_79": "「原罪によってかね、それは?」",
"329001111_80": "「そこまでは、僕にはわからない」",
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"329001111_82": "「いつか、真実のそれを、\\n 取り戻すことができるかもしれない」",
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"329001111_85": "「否定はしないがね、その点は」",
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"329001111_87": "「なんだい?」",
"329001111_88": "「もし、もしもだ。\\n 僕に万が一のことがあったら……キャロルのことを頼む」",
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"329001111_92": "「君にしか頼めないよ、こんなことは」",
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"329001111_94": "(その後――)",
"329001111_95": "(それほど日も経たず、処刑された、君は。\\n 異端審問によって",
"329001111_96": "(そして、君が造ろうとした解析機、アルカ・ノイズは――)",
"329001111_97": "(娘のキャロルが完成させた、君の遺志を継ぎ。\\n 君の研究資料と、協会が入手した設計図をもとにね",
"329001111_98": "(僕は守るよ、君との約束を)",
"329001111_99": "(探して見つけた、君の忘れ形見を)",
"329001111_100": "(護ると決めた、君との誓いの下に……)",
"329001111_101": "「だが、なかなか骨が折れるね、\\n 友との約束を守り続けるのは」",
"329001111_102": "「しかし、必ず護るよ、約束した通りにね」"
}