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@ -0,0 +1,53 @@
{
"391000111_0": "『prologue』",
"391000111_1": "むかしむかし、遥けき遠し古の時代――。",
"391000111_2": "そこには、虚無が在りました。",
"391000111_3": "その時には、星も空もなく、■も人もなく。",
"391000111_4": "木々も、獣すらも、生まれていませんでした。",
"391000111_5": "ただ、奈落だけが、",
"391000111_6": "ぽっかりと口を開けていて……",
"391000111_7": "世界には、",
"391000111_8": "ひたすらに大きな隔たりの岸があったのです――。",
"391000111_9": "(ン、ンん……。\\n いつの間にか寝ちゃってたみたいだ……",
"391000111_10": "「さむ……」",
"391000111_11": "(ここ、どこだろう。\\n 遺跡……",
"391000111_12": "(わたし、どうしてここにいるんだっけ……?)",
"391000111_13": "(誰かに呼ばれたような気がして、\\n その想いを頼りに、エレクライトで並行世界を渡って……",
"391000111_14": "(……そこからの記憶が曖昧だ。",
"391000111_15": " でも……)",
"391000111_16": "「……どこだって構わないよね。\\n わたしは、わたしにできることをするだけ」",
"391000111_17": "「困っている誰かに、\\n 手を伸ばし続けるって、決めたんだから」",
"391000111_18": "(それは、わたしのやりたいこと。\\n ううん、やるべき<ruby=こと>贖罪</ruby>",
"391000111_19": "(……この旅は、いつまで続くんだろう。\\n いつか、終わる日が来るのかな……",
"391000111_20": "(本当に、来るのかな。\\n わたしの陽だまりに帰れる日が……",
"391000111_21": "(…………)",
"391000111_22": "(……駄目だ。\\n そんなことを考えちゃ",
"391000111_23": "(やり遂げるって決めたのは、\\n わたし自身なんだから……",
"391000111_24": "(でも、それでも……)",
"391000111_25": "「<size=25>会いたいな、未来に……</size>」",
"391000111_26": "「……ん。\\n これ、雨の音だと思ってたけど……」",
"391000111_27": "「雨の音じゃ、ない……?\\n 奥の方から聞こえてくるような……」",
"391000111_28": "(……気になる。\\n 少し、調べてみよう",
"391000111_29": "(――違う。\\n 雨の音じゃない",
"391000111_30": "(これは……\\n 拍手の音だッ",
"391000111_31": "(人の気配はないのに、\\n 拍手の音だけが、奥から聞こえてくる……",
"391000111_32": "「ここが……1番奥?」",
"391000111_33": "(やっぱり誰もいない。\\n 音は聞こえるのに……",
"391000111_34": "「……ん?」",
"391000111_35": "「本……?\\n こんなところに……」",
"391000111_36": "(しかも……、\\n この本から、拍手の音が聞こえてくるような……",
"391000111_37": "「それに触らないでッ!」",
"391000111_38": "「――ッ!?」",
"391000111_39": "「未来ッ!?」",
"391000111_40": "「響ッ!?」",
"391000111_41": "「あなた、どうしてここに――ッ!?」",
"391000111_42": "「――えッ!?\\n 本から光がッ」",
"391000111_43": "「うわあああぁぁぁ――ッ!?」",
"391000111_44": "「響ッ!」",
"391000111_45": "「この光、いったい――ッ!?」",
"391000111_46": "「急に装者たちの反応が消えたぞッ!?\\n どこに行ったんだッ」",
"391000111_47": "「わかりませんッ!\\n この先は、行き止まりのはずなのに――」",
"391000111_48": "――そして、今。",
"391000111_49": "3つの光によって、",
"391000111_50": "世界は、開かれようとしているのです――。"
}

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@ -0,0 +1,22 @@
{
"391000121_0": "(……あれ?\\n わたし、今まで何をしていたんだっけ",
"391000121_1": "(……どうして、\\n こんなところを歩いているんだっけ",
"391000121_2": "(……光?)",
"391000121_3": "(光の中に……\\n 誰か、いる",
"391000121_4": "「――ねえッ!」",
"391000121_5": "(どうしてだろう。\\n 理由はわからないけど……でも、わかる",
"391000121_6": "(わたしを呼んでいたのは、\\n あの光の中にいる人だッ",
"391000121_7": "(でも――どうして?\\n 近付けている気がしない……ッ",
"391000121_8": "「ねぇ、待ってッ!」",
"391000121_9": "「あなただよね、\\n わたしをここに呼んだのは……ッ」",
"391000121_10": "(それなら、わたしはッ!\\n その伸ばされた手を掴んでみせる……ッ",
"391000121_11": "(ううん、掴まなきゃいけないんだッ!\\n それがわたしのやるべきことなんだから――ッ",
"391000121_12": "「――――ッ!!」",
"391000121_13": "「なッ!?」",
"391000121_14": "「おまえは、いったい……ッ!?",
"391000121_15": " さっきの人をどこにやったッ!?」",
"391000121_16": "(さっきと同じだ。\\n 何故だかわかる……",
"391000121_17": "(こいつが……、\\n わたしが戦わなければならない『敵』だってッ",
"391000121_18": "「エレクライト、スイッチオンッ!」",
"391000121_19": "「行くぞ――ッ!!」"
}

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@ -0,0 +1,21 @@
{
"391000122_0": "「おまえを倒して、\\n わたしは……ッ」",
"391000122_1": "「届いたッ!?",
"391000122_2": " ううん、違う――」",
"391000122_3": "「光が、溢れて――\\n うあああああッ」",
"391000122_4": "「う、ううん……」",
"391000122_5": "(ここは……?\\n さっきとは違う場所",
"391000122_6": "(……エレクライトも解除されて……\\n ううん、解除されたわけじゃなさそう",
"391000122_7": "「まさか、さっきのは夢?\\n でも、夢にしては……」",
"391000122_8": "「あ、あの……」",
"391000122_9": "「えッ!?」",
"391000122_10": "「お姉ちゃん、目が覚めたんだね。",
"391000122_11": " その……大丈夫?」",
"391000122_12": "「う、うん……。\\n わたしは大丈夫……だけど……」",
"391000122_13": "(この子……\\n いったい何者",
"391000122_14": "「良かったぁ……ッ!\\n うなされてたみたいだから、心配してたんだよ」",
"391000122_15": "「お姉ちゃんが大丈夫なら……\\n きっとこの人のお姉ちゃんも、大丈夫だよね」",
"391000122_16": "「……え?」",
"391000122_17": "「……」",
"391000122_18": "「……未来ッ!?\\n それに、もう人は……」"
}

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@ -0,0 +1,77 @@
{
"391000131_0": "(2人とも気を失ってるだけだ……\\n けど、頭を打ってたりしたら、揺り動かして起こすのは……",
"391000131_1": "「そうだ……\\n ねえ、キミッ」",
"391000131_2": "「ふ、ふえッ!?\\n ぼく」",
"391000131_3": "「この2人、いつから気絶しているの……ッ!?」",
"391000131_4": "「わ、わかんない。\\n ぼくも、お姉ちゃんより少し前に目が覚めたところで……」",
"391000131_5": "「……キミも?」",
"391000131_6": "「ん……」",
"391000131_7": "「あ……ッ!」",
"391000131_8": "「ンん……。\\n ここ、は……」",
"391000131_9": "「気を失っていたようね……。\\n 少なくとも、わたしたちがいた遺跡ではないようだけど」",
"391000131_10": "「周囲の景色が全然違う。いったい何が……",
"391000131_11": " って、そこにいるのは――ッ!?」",
"391000131_12": "「さっきの遺跡で見かけたときは、一瞬間違えちゃったけど……\\n あなた、並行世界のヒビキだよねッ」",
"391000131_13": "「さすがだね、未来は。\\n すぐに『自分の世界の』<ruby=わたし>響</ruby>じゃないってわかるなんて」",
"391000131_14": "(ううん……\\n 当たり前、かな",
"391000131_15": "「驚いた……久方ぶりになるわね。",
"391000131_16": " けれどあなた、どうしてここに?」",
"391000131_17": "「……わからない。どこかの遺跡で\\n 不思議な本に触れようとして、気付いたらここに」",
"391000131_18": "「そう……」",
"391000131_19": "「……ここしばらく、\\n エレクライトで並行世界を渡っていたけれど」",
"391000131_20": "「着いた世界がどの並行世界なのか、とか。\\n 確かめなくなって久しいから」",
"391000131_21": "「けど、\\n あなたと未来がいるってことは――」",
"391000131_22": "「この世界は、\\n もう人の<ruby=わたし>響</ruby>の世界なの……?」",
"391000131_23": "「一旦、みんなの持っている情報をまとめましょうか。\\n どうやら、わからないことばかりのようだし」",
"391000131_24": "「……そちらの少年のことも含めて、ね」",
"391000131_25": "「…………ぼ、ぼく?」",
"391000131_26": "「ええ。\\n 無視してしまったようになって、ごめんなさいね」",
"391000131_27": "「わたしはマリア・カデンツァヴナ・イヴ。\\n もう少しだけ、先に情報交換をさせてもらってもいいかしら」",
"391000131_28": "「も、もちろんッ!\\n ぼく、おとなしく待ってるよッ」",
"391000131_29": "「――というわけで、わたしとこの子は、\\n S.O.N.G.の任務で、あの遺跡を訪れていたの」",
"391000131_30": "「朽ち果てた遺跡に、\\n 超常の力を秘めたものが眠っているという情報を得てね」",
"391000131_31": "「哲学兵装なのか聖遺物なのかはわからないんだけど、\\n それの回収をしに来ていたんだ」",
"391000131_32": "「超常の力を秘めたもの?",
"391000131_33": " もしかして……わたしが触っちゃったあの本が?」",
"391000131_34": "「確証はないけれど、可能性は大きいわね。\\n ひとまず、現状でわかることは――」",
"391000131_35": "「わたしたちは今、本部との通信も繋がらない場所に、\\n こうして飛ばされたようだ……ということ」",
"391000131_36": "「ご、ごめん……。\\n <ruby=うかつ>迂闊</ruby>だった」",
"391000131_37": "「あ、あの……ッ!」",
"391000131_38": "「ご、ごめんなさいッ!\\n お話の邪魔をしちゃって……」",
"391000131_39": "「でも……ぼく、お姉ちゃんたちに、\\n どうしても聞きたいことがあって……」",
"391000131_40": "「大丈夫よ。むしろお行儀よく待っていてくれてありがとう。\\n わたしたちの話も、おかげで一段落したわ」",
"391000131_41": "「うん。\\n それで、何が聞きたいのかな」",
"391000131_42": "「ありがとう。\\n えっと、えっとね――」",
"391000131_43": "「お姉ちゃんたちは誰?\\n どこから来たの そのカッコイイ装備は何ッ」",
"391000131_44": "「栗色の髪のお姉ちゃんは、\\n どうしてカッコイイ装備を着てないのッ」",
"391000131_45": "「お姉ちゃんたちは怖い人じゃないよね……ッ!?」",
"391000131_46": "「それと――それと――」",
"391000131_47": "「ちょ、ちょっと待ってッ!?\\n そんなに質問されても、一度には答えられないからッ」",
"391000131_48": "「けど、まずは安心してほしいな。\\n わたしたちは、あなたに怖いことなんてしないよ」",
"391000131_49": "「カッコイイって言ってくれたけど……もしかしたら、\\n シンフォギアがちょっと怖く見えるかな それなら……」",
"391000131_50": "「あ……」",
"391000131_51": "「フフ。\\n それじゃ、つずつ順番に答えていくね」",
"391000131_52": "「わたしの名前は、小日向未来。\\n マリアさんはさっき名乗っていたから、あとは……」",
"391000131_53": "「……わたしは、立花響」",
"391000131_54": "「それで、キミの名前は?」",
"391000131_55": "「ぼくの名前?\\n それは――」",
"391000131_56": "「思い出せないんだ」",
"391000131_57": "「……え?」",
"391000131_58": "「じゃあ、何も覚えていないの?」",
"391000131_59": "「うん。\\n 気が付いたら、お姉ちゃんたちの隣で眠っていたみたいで……」",
"391000131_60": "「それまで何をしていたのか、\\n ぼくが誰なのか……ちっとも思い出せないんだ」",
"391000131_61": "「記憶がないこと以外に、身体に異常はない?\\n でも、わたしたちと同じように眠っていたとなると……」",
"391000131_62": "「この子も、わたしたちと同じく、\\n あの本の光に巻き込まれた、と考えられるわね」",
"391000131_63": "(……巻き込まれた?\\n 本当にそうなのかな",
"391000131_64": "(わたしが本に触れたとき、\\n 周りに、こんな子はいなかったと思うけど……",
"391000131_65": "(それよりも、なんだか似てる気がする。\\n あの光の中にいた人影に……",
"391000131_66": "「……ねえ、キミ。\\n わたしのこと、呼んだりしなかった」",
"391000131_67": "「え……?",
"391000131_68": " ……うーん、そんなこと、ぼくはしてないと思うけど……」",
"391000131_69": "「そう……」",
"391000131_70": "「ヒビキ、\\n 何か気になることがあるの」",
"391000131_71": "「ううん、なんでもない。\\n ただの気のせいだと思う」",
"391000131_72": "(さっき見た白昼夢のような何かは……\\n 本当に、ただの夢だったのかな……",
"391000131_73": "「こうしていても、何もわからないままね」",
"391000131_74": "「その子の安全を確保しつつ、\\n 周辺を探索してみましょう」"
}

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@ -0,0 +1,28 @@
{
"391000141_0": "「未来、どうかした?\\n ……さっきから空を見上げてるみたいだけど」",
"391000141_1": "「うん。もしかしたら星座の位置から、\\n ここがどこなのか導き出せないかと思ったんだけど……」",
"391000141_2": "「頭上に見えるのはオリオン座みたいね」",
"391000141_3": "「オリオン座って、冬の星座だっけ?」",
"391000141_4": "「でも、星座の見えかたって世界共通じゃなかった……?\\n いつだったか、授業か何かで聞いた気がする」",
"391000141_5": "「うん。南半球と北半球、場所によっては\\n 見えるものに違いがあるはずだけど……」",
"391000141_6": "「でもこの時期、この場所がいつものあの丘なら……\\n 地平線ギリギリに見える星があるはずで……」",
"391000141_7": "「あッ!\\n あった、カープスッ」",
"391000141_8": "「ということは、ここは日本ということ?」",
"391000141_9": "「せっかく何時間もかけて、あの国まで行ったのに、\\n こんな簡単に戻って来てしまうなんてね……」",
"391000141_10": "(……2人の会話から察するに、さっきわたしがいた場所は、\\n 日本とは違う国だったのかな",
"391000141_11": "(なんだか、最近並行世界を渡るときの感覚が、\\n 今までと変わってきている気がする……",
"391000141_12": "(変わったのは、\\n もう人の<ruby=わたし>響</ruby>や、みんなと一緒にイシムと戦ってから……?)",
"391000141_13": "(ひょっとして、\\n エレクライトに何か起こっているのかな",
"391000141_14": "「あ、あの……」",
"391000141_15": "「あッ、ごめんね。\\n 置いてけぼりにしちゃって」",
"391000141_16": "「でも、大丈夫だよ。\\n この場所について、少しわかったところだから」",
"391000141_17": "「本当?」",
"391000141_18": "「――うん。\\n 安全なところまで一緒に行こう」",
"391000141_19": "「ありがとう」",
"391000141_20": "「でも、お姉ちゃん。\\n 安全なところまで送ってくれるって――」",
"391000141_21": "「じゃあここは……、\\n 安全じゃない、ってこと」",
"391000141_22": "「え、それは……」",
"391000141_23": "「――なッ!?」",
"391000141_24": "「ノイズッ!?\\n どうしてッ」",
"391000141_25": "「考えるのは後にしなさいッ!\\n 来るわよッ」"
}

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@ -0,0 +1,14 @@
{
"391000142_0": "「この程度ッ!",
"391000142_1": " はあああああッ!!」",
"391000142_2": "「……この世界は、\\n どうやら、わたしたちの世界とは異なる世界みたいね」",
"391000142_3": "「そうですね……わたしたちの世界なら、\\n イズはもう現れるはずがないですから」",
"391000142_4": "「ねえッ!\\n またいっぱい出てきたよッ」",
"391000142_5": "「どんどん増えていく……ッ!」",
"391000142_6": "「ひとまず退きましょうッ!\\n その少年を安全なところまでッ」",
"391000142_7": "「わたしが抱えるッ!\\n 迎撃をお願いッ」",
"391000142_8": "「任されたッ!」",
"391000142_9": "「うわわわッ!?」",
"391000142_10": "「絶対に護るから。\\n しっかり掴まっててッ」",
"391000142_11": "「う、うんッ!」"
}

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@ -0,0 +1,43 @@
{
"391000211_0": "銀髪の少年",
"391000211_1": "一方その頃、S.O.N.G.本部――",
"391000211_2": "「状況はどうなっているッ!?」",
"391000211_3": "「マリアさんと、未来ちゃん。2人の装者を取り込んだとされる\\n 『書物』の解析、全力で進めていますッ」",
"391000211_4": "「正直、『書物』を遺跡内から動かすのは賭けでしたが、\\n 回収班が上手くやってくれましたね」",
"391000211_5": "「本部までの空輸は無事完了。\\n あとは、解析の結果次第ですが……」",
"391000211_6": "「……大丈夫かな、2人とも」",
"391000211_7": "「まさか、\\n 本の中に閉じ込められちゃうなんて……」",
"391000211_8": "「楽観はできないとはいえ……あまり思い詰めるな。\\n 現状は、解析の結果を待つしかない」",
"391000211_9": "「はい、わかってます。\\n 心配は……しちゃいますけど、し過ぎるのは良くないって」",
"391000211_10": "「未来も、マリアさんも、きっと大丈夫ッ!\\n そう信じていますッ」",
"391000211_11": "「ああ、そうだな」",
"391000211_12": "「皆さんッ!\\n 解析結果が出ましたッ」",
"391000211_13": "「よしッ!\\n 報告してくれッ」",
"391000211_14": "「はい、懸案であった、\\n 未来さんとマリアさんについてですが――」",
"391000211_15": "「『書物』の内部に形成された空間内に、反応を検知しました。\\n 人ともご無事ですッ」",
"391000211_16": "「良かった、2人とも……」",
"391000211_17": "「でも、内部に形成された空間内……って?」",
"391000211_18": "「詳細は省略しますが……\\n 『書物』の中に特殊な力場が形成されているんです」",
"391000211_19": "「近いとすれば、セレナさんと共存関係にあるヴェイグさんが、\\n かつてミレニアムパズルの中に造っていた空間……」",
"391000211_20": "「この『書物』の中には、\\n 確かに『世界』と呼べるものが存在しているんです」",
"391000211_21": "「……ッ!」",
"391000211_22": "「これが聖遺物であることに間違いはない、\\n けれど、正体がわからない……ッ」",
"391000211_23": "「ボクは引き続き、『書物』の解析を続けます。\\n 響さんたちは、そのまま待機を……」",
"391000211_24": "「待って、エルフナインちゃんッ!\\n その本、わたしにも見せてくれないかなッ」",
"391000211_25": "「えッ!?」",
"391000211_26": "「なんだか、どうしても気になっちゃって……」",
"391000211_27": "「すまないが……\\n 現状での接近は、まだ許可できん」",
"391000211_28": "「『書物』に取り込まれる事態は、あれ以来発生してませんが、\\n 何がトリガーになってるのかは、依然不明ですからね」",
"391000211_29": "「不安なのはわかるが、\\n 今はどうかこらえて欲しい」",
"391000211_30": "「不安……とは、少し違うんです。なんだかわたし、\\n まるで戦っているときみたいに、心がざわざわしていて――」",
"391000211_31": "「けど……わかりました。\\n そうですよね、何がトリガーか、わからない……」",
"391000211_32": "「それなら……エルフナインちゃん、\\n わたしの分もお願いねッ」",
"391000211_33": "「は――はいッ!\\n 必ず、良い報告を届けてみせますッ」",
"391000211_34": "「それではボクは解析に戻って……\\n ――ッ」",
"391000211_35": "「待ってくださいッ!\\n 『書物』内部に、もうつ反応が確認されましたッ」",
"391000211_36": "「何ッ!?\\n 装者以外にも、誰かがいるということかッ」",
"391000211_37": "「しかも、この反応は既知のもの……。\\n これは――ッ」",
"391000211_38": "「間違いありませんッ!\\n エレクライトの反応ですッ」",
"391000211_39": "「っていうことは、もしかして……」",
"391000211_40": "「もう1人のわたしが、\\n 未来たちと一緒にいるってことッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,54 @@
{
"391000221_0": "「――ノイズを倒しつつ、\\n どうにかここまで移動して来たわけだけれど……何か妙ね」",
"391000221_1": "「……道中、\\n 誰にも会いませんでしたね」",
"391000221_2": "「単に夜間だから、\\n というわけじゃないわよね」",
"391000221_3": "「人だけじゃない。動物や虫の姿も……。\\n 生き物の気配が、まるで感じられなかった」",
"391000221_4": "「まさかとは思うけど、\\n この並行世界、生物が死滅した世界とかなんじゃ……」",
"391000221_5": "「――くッ!?\\n よもや、まだイズが残って……ッ」",
"391000221_6": "「ニャー……」",
"391000221_7": "「あ……ネコさん」",
"391000221_8": "(……かわいい)",
"391000221_9": "「あら、かわい……じゃなくて、良かった。",
"391000221_10": " 少なくとも、生物が全くいないというわけではなさそうね」",
"391000221_11": "(恐らくここは、わたしたちが認識していない新たな並行世界……\\n その予測のせいで、少しナーバスになっちゃってたのかも",
"391000221_12": "(年長者として、\\n わたしがしっかりしないと……",
"391000221_13": "「ミャッ!」",
"391000221_14": "「あッ……」",
"391000221_15": "「ネコさん、行っちゃった……」",
"391000221_16": "「大丈夫。\\n きっとまた会えるよ」",
"391000221_17": "「撫でてみたかったな……。\\n きっとふわふわで、あったかいんだろうな……」",
"391000221_18": "「フフ。ネコ、好きなの?",
"391000221_19": " ――あ、ええと……」",
"391000221_20": "「ね。\\n あなたのこと、なんて呼べばいいかな」",
"391000221_21": "「え……\\n ぼくのこと」",
"391000221_22": "「うん。いつまでも、『キミ』とか『あなた』って\\n 呼び続けるのも寂しいでしょ」",
"391000221_23": "「……確かに。\\n 呼び名がないままだと、ちょっと不便かも」",
"391000221_24": "「ね、呼び方を考えてもいいかな?\\n あなたが本当の名前を思い出すまで、少しの間だけ」",
"391000221_25": "「あだ名みたいなものだと思ってくれたらいいかなって、\\n 思うんだけど……」",
"391000221_26": "「うんッ!\\n 名前を考えてもらえるなんて……嬉しいな」",
"391000221_27": "「ぼく、なんて名前になるの?」",
"391000221_28": "「うーん、そうだなぁ……」",
"391000221_29": "「ねぇ、ヒビキ。\\n どんな名前がいいかな」",
"391000221_30": "「ええッ!?\\n 未来が考えるんじゃないのッ」",
"391000221_31": "「う、うーん……\\n そうだなぁ……」",
"391000221_32": "「……」",
"391000221_33": "「ギン……とか?」",
"391000221_34": "「……ギン?」",
"391000221_35": "「う、うん。\\n キミの髪、すごく綺麗な銀色だから」",
"391000221_36": "「…………」",
"391000221_37": "「プラチナシルバーっていうのかな?",
"391000221_38": " ……って、もしかしてそのまんま過ぎる?」",
"391000221_39": "「ギン……。\\n それが、ぼくの名前」",
"391000221_40": "「い、嫌だったら、\\n 他の名前も考えるから――」",
"391000221_41": "「ううん、嬉しいッ!\\n ありがとう、えっと……ヒビキお姉ちゃんッ」",
"391000221_42": "「そ……そっか。\\n 良かった……」",
"391000221_43": "「フフ。\\n ええ、似合いの名前だと思うわよ」",
"391000221_44": "「それじゃあ、\\n 改めてよろしくね、ギンくん」",
"391000221_45": "「うんッ!\\n マリアお姉ちゃんも、ミクお姉ちゃんも、よろしくねッ」",
"391000221_46": "「……ッ!?」",
"391000221_47": "「2人ともッ!\\n 何か近付いてくるッ」",
"391000221_48": "「相も変わらず神出鬼没な……ッ!\\n お呼びじゃないというのにッ」",
"391000221_49": "「ギンくんッ!\\n 少しだけ離れていてッ」",
"391000221_50": "「う、うん……ッ!」",
"391000221_51": "「わたしたちがいる限り、\\n ギンには決して触れさせないッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,21 @@
{
"391000222_0": "「――これで最後ッ!」",
"391000222_1": "「……ふう」",
"391000222_2": "「お疲れ様。\\n やっぱりヒビキは強いね」",
"391000222_3": "「2人が一緒に戦ってくれてるからだよ」",
"391000222_4": "「――すごいッ!\\n すごいよッ」",
"391000222_5": "「わッ!?」",
"391000222_6": "「あんな怖いのをやっつけちゃうなんて、\\n ヒビキお姉ちゃんたち、すっごく強いんだねッ」",
"391000222_7": "「ちょ、ちょっとギンくん。\\n 落ち着いて……」",
"391000222_8": "「フフ……。\\n 災い転じて福と為す、かしら」",
"391000222_9": "「……え?」",
"391000222_10": "「さっきまで、ずっと不安そうな顔をしていたもの。\\n 少し明るくなってホッとしたわ」",
"391000222_11": "「でも、最初に会ったときは、\\n 元気に質問攻めされたような……」",
"391000222_12": "「だってあのときは、待っていた人が、\\n ようやく来てくれたーッ って、思ったんだもん」",
"391000222_13": "「……え?」",
"391000222_14": "「ちょっと待って。\\n 『待ってた人』って、どういうこと」",
"391000222_15": "「わたしたちのこと、\\n 会う前から知っていたの」",
"391000222_16": "「え……?\\n ううん、そんなこと……」",
"391000222_17": "「……あれ、そうだよね、おかしいな。\\n お姉ちゃんたちに会ったのは、ついさっきだよね」",
"391000222_18": "「それなのに……。\\n どうしてぼく、そんなことを思ったんだろ」"
}

View file

@ -0,0 +1,50 @@
{
"391000311_0": "とある世界にて",
"391000311_1": "「エルフナインちゃんッ!\\n 『書物』に、動きがあったって本当ッ」",
"391000311_2": "「はい。『書物』のページに、急に文字が浮かび上がりました。\\n その文字列を、モニターに表示しますね」",
"391000311_3": "「これは……古代シュメール文字?",
"391000311_4": " いえ、似ているようで違う……初めて見る文字だわ……」",
"391000311_5": "「世界中のみならず、\\n 歴史上のあらゆる文字と照合しましたが――」",
"391000311_6": "「該当する文字はなし。\\n 地球上の言語とは考えられません」",
"391000311_7": "「読めない未知の言語……。\\n 暗号解読よりもキツい仕事になりそうだ」",
"391000311_8": "「はい……けれど、これは間違いなく\\n 『書物』を紐解く重大なヒントです」",
"391000311_9": "「未来さんたちを助けるためなら、\\n 未知の言語だろうと、必ず解析してみせますッ」",
"391000311_10": "「ああ、よろしく頼む」",
"391000311_11": "「…………」",
"391000311_12": "「む……どうした?\\n 何か気になることがあるのか」",
"391000311_13": "「あ、いえ……。",
"391000311_14": " さっき、未知の言語って言ってましたよね……?」",
"391000311_15": "「ああ。実際、読めないだろう?\\n まるで出鱈目な記号の羅列のようだ……」",
"391000311_16": "「え、えーと……。\\n その、わたし――」",
"391000311_17": "「そこに書かれている文字、\\n 読めちゃうん……ですけど……」",
"391000311_18": "「な……\\n なんだとぉッ」",
"391000311_19": "「え、ええとですねッ!\\n 最初は、『むかしむかし』って書いてあって……」",
"391000311_20": "「なんて言うんでしょう、\\n 昔話……『物語』みたいな……」",
"391000311_21": "「……続けてください、響さん。\\n これは、重要な手がかりになるはずです……ッ」",
"391000311_22": "「……ふぅ。\\n 今読んだのが、このページに書かれている全部です」",
"391000311_23": "「ありがとうございます」",
"391000311_24": "「未知の言語ではありますが……\\n 文節があるのだろうことは、字列を見ていて予測がつきます」",
"391000311_25": "「そして、響さんが読み上げる内容は、\\n それに即している……」",
"391000311_26": "「内容……っていうより、\\n この文字を理解できるのは、響ちゃんだけみたいだね」",
"391000311_27": "「ほ、本当にみなさんには読めないんですか……?\\n わたし、普通に読めちゃうから、全然実感できないんですけど」",
"391000311_28": "「ええ、まったく謎の記号を見ている気分よ」",
"391000311_29": "「それにしても『むかしむかし』だなんて……\\n この『書物』に書かれているのは物語だとでもいうの……」",
"391000311_30": "「理由や詳細は依然不明ですが……響さんが『読めている』と\\n 仮定して、調査を進めましょう」",
"391000311_31": "「記録をするので、\\n 次のページから、読み上げて頂けますか」",
"391000311_32": "「任せてッ!\\n えーとね――……」",
"391000311_33": "「――ッ!? 待ってくださいッ!\\n 正体不明の反応を検知ッ」",
"391000311_34": "「これは――ッ!?\\n 『書物』の中から、何かが出て来ようとしてますッ」",
"391000311_35": "「そんなッ!?\\n 急にどうしてッ」",
"391000311_36": "「『書物』を読もうとした瞬間に、この反応……?」",
"391000311_37": "「まさか、『読む』という行為が、\\n 何かしらの干渉と判断された……ッ」",
"391000311_38": "「な……ッ!?\\n ス、スサオッ」",
"391000311_39": "「全並行世界の防衛システム……ガーディアンであるスサノオが、\\n どうして『書物』の中からッ」",
"391000311_40": "「――ッ!」",
"391000311_41": "「考えるのは後だッ!\\n 明らかに敵意を感じるッ」",
"391000311_42": "「みんなは下がってくださいッ!」",
"391000311_43": "「Balwisyall nescell gungnir tron――」",
"391000311_44": "(ここで戦うわけにはいかない……ッ!\\n 戦える場所に、誘導しないとッ",
"391000311_45": "「おまえの相手は、わたしだッ!」",
"391000311_46": "「――ッ!」",
"391000311_47": "「おまえがなんだろうと……\\n みんなには、指一本触れさせないッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,22 @@
{
"391000312_0": "「そこだぁぁぁッ!!」",
"391000312_1": "「反応、消失しましたッ!",
"391000312_2": " た、倒せたんですよねッ!?」",
"391000312_3": "「……わからん。\\n しかし恐らく、あのスサオは――」",
"391000312_4": "「はい。\\n 本物のスサオさんではない、と思います」",
"391000312_5": "「手応えが、全然なかった……。\\n まるで霧でも殴ってるみたいでした」",
"391000312_6": "「……やはりか。\\n 発する闘気が、まるで違ったからな……」",
"391000312_7": "「ともかく……このまま読み続けるのは危険です。\\n 『書物』を読むのは一時中断しましょう」",
"391000312_8": "「仮に、描かれ出した物語を読んで語ることが\\n この『書物』の防衛機構のトリガーになっているとしたら……」",
"391000312_9": "「この後にも、響さんに読み進めてもらう中で\\n 脅威が出現する可能性は大いにあり得ます」",
"391000312_10": "「いずれにせよ、内容の解析は必要だ。\\n 響くん」",
"391000312_11": "「は、はいッ!」",
"391000312_12": "「口には出さず確認をしてくれ。\\n 『物語』には……続きがあるんだな」",
"391000312_13": "「……はい」",
"391000312_14": "「であれば、響くんが戦闘可能な場所に、\\n 『書物』の内容をモニタリングできるよう整えよう」",
"391000312_15": "「了解ッ!」",
"391000312_16": "「準備ができ次第、再開しましょう。\\n 響さん、そのときまた、お願いできますか」",
"391000312_17": "「うんッ!\\n 任せてッ」",
"391000312_18": "(謎の『書物』に描かれた物語。\\n それを読むことが、スサオの出現に関係あるとしたら――",
"391000312_19": "(大丈夫なのでしょうか。\\n 本の中にいる、皆さんは……"
}

View file

@ -0,0 +1,24 @@
{
"391000321_0": "――現実世界でのスサノオとの戦いから、数時間前――",
"391000321_1": "「ねえ見てッ! あの建物、絵が描かれてるよッ!\\n カッコイイなあ……ッ」",
"391000321_2": "「公園から少し歩いただけで、\\n ここまで景色が様変わりするなんて……」",
"391000321_3": "「どう見ても、日本の街並みではないわね。\\n 米国で見たものに近いかしら」",
"391000321_4": "「星の位置は変わっていないのに……\\n どういうことでしょう」",
"391000321_5": "「少なくとも、わたしたちの知る常識が通用する世界じゃない、\\n ってことは確かね」",
"391000321_6": "「……とにかく、\\n どこかに話を聞ける人がいないか探してみよう」",
"391000321_7": "「わたしは、こっちに行くから――」",
"391000321_8": "「あ、ヒビキお姉ちゃんはそっち行くの?",
"391000321_9": " じゃあぼく、あっちの方を調べに行くねッ!」",
"391000321_10": "「あの建物の隙間は、お姉ちゃんたちは通れなさそうだし……\\n ぼくが行ってちょっと見てくるよッ」",
"391000321_11": "「ギンくんッ!?\\n 人で行ったら危ないよッ」",
"391000321_12": "「大丈夫だよーッ!\\n 何か見つけたら、すぐ戻って来るからッ」",
"391000321_13": "「なんて足の速さなのッ!?",
"391000321_14": " それに、あんな隙間から行かれてしまっては……ッ!」",
"391000321_15": "「1人にはできないッ!\\n 迂回して、急いで追おうッ」",
"391000321_16": "「ギンくーんッ!\\n どこにいるのーッ」",
"391000321_17": "「失態ね……。\\n まさか見失ってしまうなんて」",
"391000321_18": "「早く見つけないと……。\\n どこにイズが潜んでいるか、わからないのに……」",
"391000321_19": "「くッ!?\\n 言ってるそばからッ」",
"391000321_20": "「立ち止まっている暇はないわッ!\\n 迅速に片付けて、ギンを探しましょうッ」",
"391000321_21": "「了解ッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,53 @@
{
"391000322_0": "「…………」",
"391000322_1": "「――見つけたッ!\\n ギンッ」",
"391000322_2": "「…………」",
"391000322_3": "「ここにはノイズが出て危ない……って、",
"391000322_4": " ギン、何を見て――」",
"391000322_5": "「えッ!?\\n これは――ッ」",
"391000322_6": "(これは……崖? \\n こんな深いの、見たことも聞いたこともない……",
"391000322_7": "(向こう岸が、霞んで見えない。\\n まるで、ここで世界が終わっているみたい……",
"391000322_8": "「良かったッ!\\n ギンくん、見つかったんだねッ」",
"391000322_9": "「ちょっと、どうしたの?\\n 人とも立ちすくんで、何を……」",
"391000322_10": "「え――ッ!?」",
"391000322_11": "「いったい全体……\\n なんだというの、これは……ッ」",
"391000322_12": "「あ……\\n ご、ごめんなさい、ぼく、ボーッとしてて……」",
"391000322_13": "「む、無理もないわ。\\n こんな光景を目にしてしまっては……」",
"391000322_14": "「街のすぐ傍に、こんな崖があるなんて……」",
"391000322_15": "「それよりも、ギンくんッ!\\n 駄目でしょッ 人で飛び出したらッ」",
"391000322_16": "「ご、ごめんなさい……。\\n ぼく、お姉ちゃんたちの役に立ちたくて……」",
"391000322_17": "「それは……気持ちは嬉しいけど、\\n それでギンくんが危険な目に遭ったらどうするのッ」",
"391000322_18": "「……ごめんなさい……」",
"391000322_19": "(やっぱり、\\n こっちの未来も、怒ると怖いんだな……",
"391000322_20": "「未来。\\n ギンも反省してるみたいだから」",
"391000322_21": "「……」",
"391000322_22": "「もう、わたしたちから勝手に離れちゃ駄目だよ?\\n どこにイズが潜んでいるか、わからないんだから」",
"391000322_23": "「うん、わかった。\\n でも、イズって、あの怖いののこと」",
"391000322_24": "「ねえ、教えてよッ!\\n あの怖いの、いったいなんなのッ」",
"391000322_25": "「ぼく、あんなの生まれて初めて見たよ……」",
"391000322_26": "「え……?」",
"391000322_27": "「ぼく、さっきからずっと気になってたんだ。",
"391000322_28": " お姉ちゃんたちは知ってるんでしょ? 教えてッ!」",
"391000322_29": "「……それに答えたら、\\n もう勝手に、走り出さないと約束できる」",
"391000322_30": "「うんッ!\\n 約束するッ」",
"391000322_31": "「なら、教えてあげる。\\n あれは認定特異災害――イズ」",
"391000322_32": "「すごくざっくり言えば……\\n わたしたち人類の敵、かな」",
"391000322_33": "「人類の敵……?」",
"391000322_34": "「そうだよ、すごく危険な敵なの。\\n だから、これからは未来の言う通り大人しく……」",
"391000322_35": "「すごい……すごいッ!\\n お姉ちゃんたち、すごいッ」",
"391000322_36": "「……え?」",
"391000322_37": "「だってさッ!\\n 人類の敵を、あんな簡単に倒しちゃえるんでしょ」",
"391000322_38": "「すごいなーッ!\\n カッコイイなーッ」",
"391000322_39": "「ねぇねぇッ!\\n 他には 他にはどんな敵と戦ってきたのッ」",
"391000322_40": "「そ、それは……」",
"391000322_41": "「<size=25>こ、こんなにキラキラした目で見られると……。\\n 助けて、未来ッ</size>」",
"391000322_42": "「<size=25>わ、わたしだってどうしたらいいか……ッ!</size>」",
"391000322_43": "「<size=25>……うーん。ヘソ曲げて、勝手にどこか行かれるよりは、\\n 話して、大人しくしてもらった方がいいかもしれないわね</size>」",
"391000322_44": "「ギン、もう1つ約束してくれる?\\n これはわたしたちの秘密の話。誰にも言わないって」",
"391000322_45": "「秘密の話……ッ!",
"391000322_46": " うん、ぼく、秘密にするよッ!」",
"391000322_47": "「じゃあ……少しだけ話をしてあげるわ」",
"391000322_48": "「本当ッ!?\\n やったぁッ」",
"391000322_49": "「……なんか、すごく年下の扱いに手慣れてる」",
"391000322_50": "「フフ。\\n そうかもしれないね」"
}

View file

@ -0,0 +1,39 @@
{
"391000411_0": "『望み』",
"391000411_1": "「それでそれでッ!?\\n 他には、どんな敵がいたのッ」",
"391000411_2": "「他にはって……、\\n もう、ほとんど喋り尽くしてしまったわ」",
"391000411_3": "「ですね。\\n ギンくん、次々と聞いてくるから……」",
"391000411_4": "「わたしはもう打ち止めかも。\\n あなたは」",
"391000411_5": "「わ、わたし?\\n わたしは、面白く話せるようなことは、何も……」",
"391000411_6": "「えーッ!?\\n ヒビキお姉ちゃんが戦った敵の話、聞きたいなーッ」",
"391000411_7": "(うッ!?\\n このキラキラした目で見られると……弱い",
"391000411_8": "「ええっと……\\n うーん、それじゃあ……」",
"391000411_9": "「うんうんッ!」",
"391000411_10": "「わたしが過去に戦った敵……。",
"391000411_11": " うん、嫌でも頭に残っているのは――」",
"391000411_12": "「やっぱり……、\\n 暴走状態のスサオ」",
"391000411_13": "「炎の中に立つあいつの姿……\\n 今でも、よく覚えてる」",
"391000411_14": "「……ヒビキお姉ちゃん、悲しそうだよ。\\n そいつのこと、嫌いなんだね」",
"391000411_15": "「嫌い……とは、少し違うかな」",
"391000411_16": "「あのときは、\\n あいつを殺すこと以外、何も考えられなかったから」",
"391000411_17": "「未来を喪って、\\n また、ひとりぼっちになったと思って……」",
"391000411_18": "「そんなこと、ない」",
"391000411_19": "「……未来?」",
"391000411_20": "「そんなことないよ、ヒビキ」",
"391000411_21": "「わたしは、\\n 絶対にあなたをひとりぼっちになんてしないから」",
"391000411_22": "「たとえ、\\n 何があろうとも……絶対に」",
"391000411_23": "「未来……」",
"391000411_24": "(うん、今ならわかるよ)",
"391000411_25": "(でも、あのときのわたしは、\\n 本当にひとりぼっちになったと思ってしまったんだ……",
"391000411_26": "(テスラのおかげでどうにかなったけれど、",
"391000411_27": " あのままだったら……わたしの陽だまりは――)",
"391000411_28": "「あ……ああッ!?」",
"391000411_29": "「どうしたのッ!?」",
"391000411_30": "「向こうに、あの怖いのがッ!?",
"391000411_31": " ……あれ? でも、さっきと形が違うよ?」",
"391000411_32": "「まるで、マリアお姉ちゃんが話してくれた、\\n 『れーべんがー』みたいな……」",
"391000411_33": "「あれは……\\n レーベンガーとスサオッ」",
"391000411_34": "「どうして、こんな場所にッ!?\\n スサオだって、最早わたしたちと戦う理由なんて無いはずッ」",
"391000411_35": "「でも、襲いかかってきますッ!\\n ギンくん――離れていてッ」",
"391000411_36": "「う、うんッ!」"
}

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@ -0,0 +1,26 @@
{
"391000412_0": "「もう2度と、\\n 後れを取ったりなんかしないッ」",
"391000412_1": "「これでトドメだッ!\\n くらええええええええッ」",
"391000412_2": "「――なッ!?\\n 消えたッ」",
"391000412_3": "「いったいどこにッ!?」",
"391000412_4": "「……周囲にも、気配はないわ。\\n どうやら、完全に消えてしまったようね」",
"391000412_5": "「そんな……」",
"391000412_6": "「レーベンガーのほうは、\\n ちゃんと倒せたと思うけれど……」",
"391000412_7": "「確かに手応えはありました。",
"391000412_8": " でも、さっきので終わりかどうかは……」",
"391000412_9": "「そうね……ノイズが現れるということは、\\n この世界のバビロニアの宝物庫が閉じていないということ」",
"391000412_10": "「どれだけ倒そうとも、安心はできないわ」",
"391000412_11": "「…………」",
"391000412_12": "「ヒビキ?\\n どうしたの」",
"391000412_13": "「……さっきのスサノオ、\\n ひょっとしたら、本物じゃないかも」",
"391000412_14": "「偽物ってこと?",
"391000412_15": " 確かに、今わたしたちと戦う理由はないはずだけど……」",
"391000412_16": "「偽物か、もっと違うものなのか、\\n わたしにはわからない……」",
"391000412_17": "「……でも、さっきのスサノオは、\\n 本物にはないものを持っていた気がする」",
"391000412_18": "「……どういうこと?」",
"391000412_19": "「上手く言葉にできないけれど……スサノオから\\n 『敵としての意思』みたいなものを感じたの」",
"391000412_20": "「ガーディアンとしての意志じゃない。\\n 暴走状態のそれでもない……」",
"391000412_21": "「ただ、『敵だから戦う』っていう、\\n それだけの感覚……」",
"391000412_22": "「だからなのかな……わたしも思ったの。",
"391000412_23": " あいつは、絶対に倒さなければならない『敵』だって……」"
}

View file

@ -0,0 +1,71 @@
{
"391000421_0": "「はぁ……はぁ……」",
"391000421_1": "「大丈夫?\\n 隠れながらの移動ばっかりで、疲れちゃったよね」",
"391000421_2": "「ううん、ぼくは大丈夫だよ。",
"391000421_3": " お姉ちゃんたちこそ、戦いっぱなしで疲れないの?」",
"391000421_4": "「わたしたちなら平気よ。\\n こんなときのために、普段から鍛えているもの」",
"391000421_5": "「お姉ちゃんたち、\\n やっぱりすごいなぁ……」",
"391000421_6": "「……戦うことに問題はないんだけど。\\n 今の状況は、少し……居心地が悪いかな」",
"391000421_7": "「居心地が悪い?」",
"391000421_8": "「……うん。\\n まるで誰かに、『戦え』って強制されているみたいで」",
"391000421_9": "(『戦え』か……)",
"391000421_10": "(戦うことを強いるような何者かの意志。\\n 確かにわたしも感じている。これは、ともすれば――",
"391000421_11": "(イグナイトモジュール使用時の、\\n 己の内側から湧き上がる衝動と、似ているかもしれないわ",
"391000421_12": "(けれど、わたしたちも、\\n この立花響だって、イグナイトモジュールを持ち合わせていない",
"391000421_13": "(だとしたら、\\n いったい何に語りかけられているというのかしら",
"391000421_14": "「マリアさん?」",
"391000421_15": "「気にしないで、ちょっとした考え事よ。\\n この子の手前強がってみせたけど、わたしも疲れたのかも」",
"391000421_16": "「ぼくも戦えたら、お姉ちゃんたちの役に立てるのに。\\n ごめんね。なんの役にも立てなくて……」",
"391000421_17": "「あ、違うのよ。\\n そういう意味じゃ……」",
"391000421_18": "「役に立ってないなんて、そんなことない」",
"391000421_19": "「……え?」",
"391000421_20": "「確かに、敵はどんどん出てくるし、\\n この世界のことは、わからないままだけど……」",
"391000421_21": "「そんな中でもわたしたちが戦い続けられるのは、\\n ギンがいるからだよ」",
"391000421_22": "「でもぼく……\\n 何もしてないよ」",
"391000421_23": "「ううん。\\n ギンがいてくれるから、ギンを護るために戦える」",
"391000421_24": "「誰かを護るための……助けるための戦いなら。\\n わたしは、いくらでも戦い続けられるんだ」",
"391000421_25": "「ヒビキお姉ちゃん……」",
"391000421_26": "「だから、ギンのことを護って、\\n ギンの戻るべき場所へ、ちゃんと送り届けたい」",
"391000421_27": "「こんなこと、\\n ギンに言うのはおかしいのかもしれないけど……」",
"391000421_28": "「しばらくの間、\\n それを、わたしの戦う理由にしてもいいかな」",
"391000421_29": "「……うんッ!\\n もちろんッ」",
"391000421_30": "「そんな風に言ってもらえるなんて、\\n ぼく、なんだかとっても嬉しいな……」",
"391000421_31": "「ねえ、マリアお姉ちゃんたちもそうなの?\\n 誰かを護るために戦ってるの」",
"391000421_32": "「フフ……。\\n まったく、急に元気になっちゃって」",
"391000421_33": "「そうね、わたしの場合は……誰かを護るというよりも、\\n 自分の望みを貫くために戦っているかもしれないわ」",
"391000421_34": "「……自分の望み?\\n どういう意味」",
"391000421_35": "「わたしが戦うのは、\\n 決して、何かを害したいためじゃないわ」",
"391000421_36": "「そしてそれはきっと、\\n 遍く戦う者たちが、そうだと思う」",
"391000421_37": "「結果として、『敵』とぶつかることはあるし、\\n それを――<ruby=たお>斃</ruby>して、進むことだってあるけれど」",
"391000421_38": "「その根幹にあるのは、誰かの役に立ちたいという望みとか、\\n この世界を平和にしたい、という望みとか……」",
"391000421_39": "「彼女の言うように、\\n 誰かを護りたい、という望みとか」",
"391000421_40": "「……」",
"391000421_41": "「人それぞれに違うかもしれないけど、\\n それでも大切な望みのために、戦っているの」",
"391000421_42": "「そうですね。\\n わたしも、きっとその御多分に洩れず……」",
"391000421_43": "「たとえ、どんなに小さくて、\\n 他の人にとっては価値のない望みだとしても――」",
"391000421_44": "「わたしにとって、何よりも大切な望みだから。\\n 何があろうと、胸の中に抱いていられるんだと思います」",
"391000421_45": "「そして、大事に抱き続ければ……。\\n 今度は、その望みが、自分自身を創っていく――」",
"391000421_46": "「そういう望みのために……自分を貫くために、\\n わたしたちは戦っているのかも……」",
"391000421_47": "「ヒビキなんて、\\n その最たるじゃないかな」",
"391000421_48": "「え……」",
"391000421_49": "「自分が大事に抱き続けた望みが、\\n 自分自身を創っていく……」",
"391000421_50": "「そう……なのかな。\\n わたしは、人ほどそう言い切れないけど……」",
"391000421_51": "「……?」",
"391000421_52": "「えっと……\\n でも、さ」",
"391000421_53": "「もしも、お姉ちゃんたちの言う『望み』同士が\\n ぶつかっちゃったら、どうするの」",
"391000421_54": "「……え?」",
"391000421_55": "「みんなが、自分の望みを持っているんだとしたら、\\n それがぶつかっちゃうこともあるよね」",
"391000421_56": "「どっちも正しくて、どっちも間違ってなくて、\\n それでも片方を砕かないと、自分の望む果てに辿り着けない――」",
"391000421_57": "「そんな『望み』を目の前にしたら、\\n たとえばヒビキお姉ちゃんなら、どうするの」",
"391000421_58": "「わ、わたし?\\n どっちも正しくて片方を砕かないと、辿り着けない、なら……」",
"391000421_59": "「それは――……」",
"391000421_60": "「…………」",
"391000421_61": "「ヒビキお姉ちゃんにも難しいことなんだ……ッ!?」",
"391000421_62": "「ご、ごめんね。\\n ただちょっとだけ気になっちゃっただけなんだッ」",
"391000421_63": "「ええと、……ほらッ! ここら辺はもう何もないみたいだし、\\n 向こうのほうに行ってみようよッ」",
"391000421_64": "「あッ!?\\n ギンくん、ちょっと待ってーッ」",
"391000421_65": "「まったく、落ち着きがないったらッ!」",
"391000421_66": "「……」",
"391000421_67": "(誰かの望みと、わたしの望みが、\\n ぶつかってしまうときが来るとしたら……",
"391000421_68": "(そのとき、わたしは……?)"
}

View file

@ -0,0 +1,92 @@
{
"391000511_0": "かつての痛み",
"391000511_1": "(…………)",
"391000511_2": "「どっちも正しくて、どっちも間違ってなくて、\\n それでも片方を砕かないと、自分の望む果てに辿り着けない――」",
"391000511_3": "「そんな『望み』を目の前にしたら、\\n たとえばヒビキお姉ちゃんなら、どうするの」",
"391000511_4": "(わたしは……)",
"391000511_5": "「こんなところにいたんだ」",
"391000511_6": "「未来……。",
"391000511_7": " うん、ちょっとね……」",
"391000511_8": "「ギンくんに言われたこと、考えてたの?」",
"391000511_9": "「……うん」",
"391000511_10": "「そっか」",
"391000511_11": "「……わたしも、びっくりしちゃったッ! あのくらいの\\n 年頃の子って、たまにハッとするようなこと言うよね」",
"391000511_12": "「……」",
"391000511_13": "「……隣。\\n 座っていい」",
"391000511_14": "「それは……\\n もちろん」",
"391000511_15": "「……」",
"391000511_16": "「誰かの望みと、わたしの望みが、\\n ぶつかっちゃったら……」",
"391000511_17": "「そのときわたしは、\\n ちゃんと答えを出せるのかな」",
"391000511_18": "「……難しいよね。\\n わたしも、経験あるなぁ」",
"391000511_19": "「……未来も?」",
"391000511_20": "「……うん。",
"391000511_21": " わたしね、わたしの世界の『響』に戦ってほしくないって……」",
"391000511_22": "「そう思ってた時期も、あったんだ」",
"391000511_23": "「……」",
"391000511_24": "「わたしはあのとき、自分のことしか見えていなくて……\\n ただ必死で。ひとりで突っ走ろうとした」",
"391000511_25": "「それがどれだけ響を悲しませるかなんて、\\n 考える余裕がなかったんだ」",
"391000511_26": "「もちろん、そうせざるを得ない状況だったっていうか……\\n ……ううん。言い訳かな、これは」",
"391000511_27": "「わたしは増幅された望みを抱えて、響とぶつかって。\\n それで……」",
"391000511_28": "「…………」",
"391000511_29": "「でも、だからかな。\\n これは、今だからわかることなんだけどね」",
"391000511_30": "「わたしの本当の望みは\\n 『響に戦ってほしくない』わけじゃなくて……」",
"391000511_31": "「響と一緒に戦いたかったんだ。\\n 今、ヒビキとこうしているように」",
"391000511_32": "「……」",
"391000511_33": "「それでも確かに、あのときわたしの胸にあったのは、\\n 望みとか、願いとか……祈りとか。そういう、小さな欠片だった」",
"391000511_34": "「響は、そんな欠片に対しても、\\n まっすぐに、一直線に、全力でぶつかってきてくれた」",
"391000511_35": "「だからわたしは、\\n 自分自身が本当に望んでいることを見つけられたんだと思う」",
"391000511_36": "「だから、ヒビキなら大丈夫だと思うな」",
"391000511_37": "「……え?」",
"391000511_38": "「だって、ヒビキは響だもの。",
"391000511_39": " 誰かの望みを前に、迷うこともあるかもしれない。でも――」",
"391000511_40": "「それでも、\\n きっといつだって、自分の中の望みと向き合えるはずだよ」",
"391000511_41": "「……未来」",
"391000511_42": "「……ありがとう。",
"391000511_43": " でも、それはきっと違うと思う」",
"391000511_44": "「どうして?\\n 違わないよ」",
"391000511_45": "「ううん。\\n 違う」",
"391000511_46": "「違わないったら。\\n ヒビキなら大丈夫だよ。だってヒビキは響だもの――」",
"391000511_47": "「違うよッ!」",
"391000511_48": "「…………」",
"391000511_49": "「……未来、わたしね。\\n 旅をする中で、いろんな世界を見てきたんだ」",
"391000511_50": "「手を伸ばそうとしても、間に合わなかった人もいる。\\n 伸ばした手を、振り払われたことだってある」",
"391000511_51": "「この手を掴んでくれたのに、握ってくれた\\n その掌から力が抜け落ちていくことだって……見てきたの」",
"391000511_52": "「ヒビキ……」",
"391000511_53": "「……わかるよ。\\n きっと、『響』も、そんなこと何度もあったんだよね」",
"391000511_54": "「…………」",
"391000511_55": "「…………。",
"391000511_56": " 明日香のことも、考えてたんだ」",
"391000511_57": "「明日香ちゃん……?",
"391000511_58": " イシムをその身に宿してしまった、あの子のことだよね?」",
"391000511_59": "「うん。あのとき、明日香は絶望のミライを回避するために、\\n 自ら命を絶とうとした……」",
"391000511_60": "「自分以外の誰かのために、\\n 自分自身の絶望を受け入れようとしたんだ……」",
"391000511_61": "「わたしは、絶望に沈むのがどれだけ悲しくて、\\n 冷たくて、痛いのかを知ってる……」",
"391000511_62": "「だから、明日香には、\\n わたしと同じ風にはなってほしくなかったんだ」",
"391000511_63": "「あの子を助けたいと想う、\\n わたしの望みは間違いなく本当だったし……」",
"391000511_64": "「もう1人の<ruby=わたし>響</ruby>も、\\n 明日香を助けたいって、本当に望んでいたんだと思う」",
"391000511_65": "「でも、あのとき――」",
"391000511_66": "「わたしたちと同じように\\n 明日香の望みも、本当の望みだったんじゃないかな」",
"391000511_67": "「誰かのために、自分を消そうとする。\\n そんな、どれだけ痛みを伴う望みだったとしても」",
"391000511_68": "「……」",
"391000511_69": "「……未来を喪ったときの絶望を、\\n 今でもたまに思い出すんだ」",
"391000511_70": "「全部が敵に見えるような、あのどうしようもない絶望は、\\n 確かに本物だった……」",
"391000511_71": "「だからわたしは、\\n <ruby=わたし>響</ruby>が助けに来てくれたとき、怒ったんだ」",
"391000511_72": "「お前は何もわかってない、って――」",
"391000511_73": "「…………」",
"391000511_74": "「……ごめん。\\n こんなわけのわからない話をしちゃって――」",
"391000511_75": "「……『<ruby=わたし>響</ruby>』が、わたしを<ruby=たす>救</ruby>けてくれたのは本当。",
"391000511_76": " 未来も、――ほかのみんなも」",
"391000511_77": "「……でも、その救いを得て尚……\\n わたしは、あなたの響ほど、真っ直ぐには望みを持てない」",
"391000511_78": "「ずっとずっと、\\n 悩み続けているんだ」",
"391000511_79": "「小さな男の子の、たった一言で、\\n こんなに揺らいでしまうくらいに……」",
"391000511_80": "「それは……」",
"391000511_81": "「……ごめんね」",
"391000511_82": "「目の前にいる誰かの心を、\\n 覚悟を、想いを手折ってまで……」",
"391000511_83": "「わたしの望みって、貫いていいものなのかな?」",
"391000511_84": "「わたしは、確かに誰かのことを<ruby=たす>救</ruby>けたいと思っている。",
"391000511_85": " でもそれは、自分を赦すための贖罪なのかもしれない……」",
"391000511_86": "「それで……\\n ……そんなので……」",
"391000511_87": "「本当に、それで救われる、\\n 誰かばかりなのかな」",
"391000511_88": "「わたしになんか<ruby=たす>救</ruby>けられたくなんてない、\\n そういう誰かだって、いるんじゃないかな」",
"391000511_89": "「そんなとき、どうすればいいのか……。\\n わたしには、わからないんだ……」"
}

View file

@ -0,0 +1,72 @@
{
"391000521_0": "「届け――ッ!!」",
"391000521_1": "「うーんんん……駄目かぁ。\\n お姉ちゃんの伸びる剣なら、届くと思ったのになぁ……」",
"391000521_2": "「ノセられて試してみたけど、\\n 向こう岸すらも見えない状況では、無謀が過ぎたわね」",
"391000521_3": "(できる限り調査はしてみたけど、\\n この世界から脱出する方法は見つけられなかった……",
"391000521_4": "(可能性が残っているとしたら、この崖の向こう側だけ。",
"391000521_5": " でも、果てすら見えない崖を、どうやって越えれば……)",
"391000521_6": "「ねえ、マリアお姉ちゃん。\\n その剣、もっと伸びないの」",
"391000521_7": "「そうだ、両側から引っ張ってみようよッ!\\n ひょっとしたら、ゴムみたいに伸びるかもッ」",
"391000521_8": "「ちょっと無茶しないでッ!?\\n この銀腕にもできないことはあるのよッ」",
"391000521_9": "「駄目かー、ちぇー」",
"391000521_10": "「まったくもう……",
"391000521_11": " 一旦、休憩にしましょ」",
"391000521_12": "「ねえギン、\\n さっきはどうしてあんなことを言ったの」",
"391000521_13": "「あんなこと……?\\n もしかして、『望み』の話のこと」",
"391000521_14": "「ええ。\\n あの話で、あの子が少し思い悩んでいるみたいなの」",
"391000521_15": "「ぼく、困らせちゃったんだね……。\\n ごめんなさい」",
"391000521_16": "「責めてるわけじゃないから、謝る必要はないわ」",
"391000521_17": "「困ったり、思い悩むことだって、\\n 悪いことじゃないのだから」",
"391000521_18": "「そうなの?」",
"391000521_19": "「だって悩むということは、\\n 自分自身と向き合い、前に進むことでしょう」",
"391000521_20": "「……うーん。\\n なんだか、難しいね」",
"391000521_21": "「そうかもしれないわ。けれど、そうやって考えることで、\\n ギンの中にはいくつも可能性が生まれていく」",
"391000521_22": "「可能性?」",
"391000521_23": "「ええ。\\n 自分がどうしたいか、どうなりたいか……」",
"391000521_24": "「さっき、わたしたちに訊いたことも……\\n ギンだったら、どうするか考えてみたらどうかしら」",
"391000521_25": "「自分のやりたいことと、\\n 誰かのやりたいことが、ぶつかっちゃったらどうする」",
"391000521_26": "「ぼくだったら……?\\n うーん、ぼくだったら……どうするかなあ……」",
"391000521_27": "「うーん……」",
"391000521_28": "「あのね、\\n わたしは、こんな風に思うの――」",
"391000521_29": "「大切なのは、\\n 自分が望んだことを、貫くことなんじゃないかって」",
"391000521_30": "「……貫く、こと?」",
"391000521_31": "「わたしの取った行動は、\\n 他の誰かにとっては、身勝手と映るかもしれない」",
"391000521_32": "「もしかしたら、非道と\\n 思われることだってあるかもしれないわ」",
"391000521_33": "「それでもわたしは、\\n 自分が望んだことに――嘘を吐きたくない」",
"391000521_34": "「信じたことを、\\n 自分自身の望みを貫くことを、決して厭わないわ」",
"391000521_35": "「もしも、その過程で誰かとぶつかって、\\n 折られてしまったのなら、それはわたしの負け」",
"391000521_36": "「だけど、望んだことを、貫き続けること。\\n そこには、勝ち負け以上の意味があると思うの」",
"391000521_37": "「無論、大人しく負けるつもりなんて、\\n さらさらないけれど、ね」",
"391000521_38": "「望んだことを、貫く……。\\n そうすること自体に、意味がある……」",
"391000521_39": "「ええ、わたしはそう思っているの。\\n 自分にとって大切な望みであるなら、尚更ね」",
"391000521_40": "「だから、迷って、悩んで、考えて……\\n 自分の望みを見つけるって、とても大事なこと」",
"391000521_41": "「なんだか、考えごとを見つけるために\\n 悩んじゃいそうだよ……」",
"391000521_42": "「でも……ぼくも、\\n そんなふうに真っ直ぐ追いかけられる『望み』は……」",
"391000521_43": "「ちょっと、ほしいかな」",
"391000521_44": "「フフ。望みを見つけるためには、\\n 世界を知ることも必要だと思うわ」",
"391000521_45": "「いろんな人がいるのだもの。\\n 今わたしが語ったのと真逆のことを言う人だって、きっといるわ」",
"391000521_46": "「世界を知り、他人を知ると……\\n 不思議とね、自分を知ることにも繋がっていくの」",
"391000521_47": "「わたしはそれを、本当に……\\n いろんな人から学んできたわ」",
"391000521_48": "「……」",
"391000521_49": "「難しいことかもしれないけど、\\n きっと、いつかあなたにもわかるときが来るはずよ」",
"391000521_50": "「そうなのかな。",
"391000521_51": " ……そうだといいな」",
"391000521_52": "「そのためにも、\\n まずはこのおかしな世界から脱出しないとね」",
"391000521_53": "「わたしも、あなたも、まだまだ先の人生は長いんだから。\\n こんなところで、立ち止まってなんていられないわ」",
"391000521_54": "「うんッ! ここから脱出する……\\n それが今の、ぼくたちの『望み』だねッ」",
"391000521_55": "「やっぱり、\\n マリアお姉ちゃんはすごいねッ」",
"391000521_56": "「あら、そうかしら?」",
"391000521_57": "「そうだよ。\\n ありのままでいるのに、すっごく強くてさッ」",
"391000521_58": "「……ありがとう。\\n ギンがわたしを、そう見てくれるのは――」",
"391000521_59": "「わたしが、今までに出会ってきた、\\n たくさんの人から、強さを学んできたからに違いないわ」",
"391000521_60": "(わたしは、本当に多くの人に触れて、\\n その度に、自分の弱さを、知ってきた……",
"391000521_61": "(自分が強いだなんて、とても思えはしないけれど。\\n わたしは、自分の弱さなら、誰よりも知っている",
"391000521_62": "(わたしは、わたしの弱さを認めて、力を振るう。\\n わたしの望みを、貫くために……ッ",
"391000521_63": "「――そっか。\\n それが、マリアお姉ちゃんの『強さ』なんだ」",
"391000521_64": "「だったら、マリアお姉ちゃんは、\\n これから、もっともっと強くなれるね」",
"391000521_65": "「ええ、もちろん――」",
"391000521_66": "「なッ!?」",
"391000521_67": "「イシムの眷属ッ!?\\n イシム亡き今、どうしてッ」",
"391000521_68": "(いいえ、\\n 考えている場合じゃないッ",
"391000521_69": "「ギン、下がっていてッ!\\n ここは、わたしだけで、ケリをつけるッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,41 @@
{
"391000522_0": "――マリアとイシムの眷属が戦っている同時刻、",
"391000522_1": "現実世界にて――",
"391000522_2": "「――そうして、\\n マリアは、『イシムの眷属』を倒したのです……」",
"391000522_3": "「……今、書かれているのは、\\n ここまでですね」",
"391000522_4": "「ありがとうございます。",
"391000522_5": " ……それにしても驚きました」",
"391000522_6": "「うん。まさか、『書物』の中の登場人物として、\\n マリアさんと未来、もう人のわたしが出てくるなんて……」",
"391000522_7": "「今読んだのってひょっとして、\\n 人が、実際に遭遇しているってこと……なのかな」",
"391000522_8": "「確証はありませんが。\\n その可能性は高いです……」",
"391000522_9": "「しかし、『物語』の中で登場した敵が、\\n こちらの世界にも顕現するとはな……」",
"391000522_10": "「ノイズ、レーベンガー、スサノオ……。\\n そして、イシムの眷属まで……」",
"391000522_11": "「響さんが『読む』ことがトリガーになり、\\n この世界に顕現するのは事実のようですね……」",
"391000522_12": "「あ、それと……響さんだけが、\\n 『書物』を読める理由がわかったかもしれません」",
"391000522_13": "「えッ!?\\n 読めるわたし自身にわからないのにッ」",
"391000522_14": "「まだ仮説の域を出ないのですが……",
"391000522_15": " 『書物』の中にヒビキさんがいるためではないかと」",
"391000522_16": "「……もしや……\\n 精神的リンクか」",
"391000522_17": "「はい。以前の戦いから、響さんとヒビキさんの間には、\\n 強い繋がりが存在していることが判明しています」",
"391000522_18": "「その繋がりにより、『書物』の中のヒビキさんの体験を、\\n こちらの響さんも『自分のこと』として読むことができる……」",
"391000522_19": "「そして、本来は1つの世界に1人だけの『立花響』さんが\\n 内と外にいることで、この聖遺物が異常を排除しようと……」",
"391000522_20": "「こちらに顕現する『敵』は、\\n バグを排除する防衛機構……といったところか」",
"391000522_21": "「はい。\\n 恐らく、そういった理由ではないかと」",
"391000522_22": "「精神的リンクといえば……以前は酷く体調を崩していたが、\\n 今は大丈夫なのか」",
"391000522_23": "「はいッ!\\n へいき、へっちゃらですッ」",
"391000522_24": "「……それにしても、\\n 響さんが読んでくれた物語の世界は、とても不可解です」",
"391000522_25": "「皆さんがこれまで戦ってきた敵たちが、\\n 無軌道に出現し、襲ってくる世界――」",
"391000522_26": "「――さしずめ、\\n 『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』の世界、といったところでしょうか」",
"391000522_27": "「『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』の世界か……。\\n でも、本から出て来たのは、どれも本物じゃなかったよ」",
"391000522_28": "「姿形はそのままだったけど、本当に手応えがないんだ。\\n まるで、空っぽの敵を相手にしているみたいだった」",
"391000522_29": "「空っぽの敵……。\\n それは、言い得て妙かもしれません」",
"391000522_30": "「……え?」",
"391000522_31": "「『書物』内の反応は未来さん、マリアさん、そしてヒビキさん。\\n 取り込まれた人分の生体反応は観測できています」",
"391000522_32": "「時折、アウフヴァッヘン波形も観測されることから\\n ギアを纏い戦っているということもわかっています」",
"391000522_33": "「ですが、3人が戦っているはずの相手――\\n 『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』については、データ上、存在の確認ができないんです」",
"391000522_34": "「……え?」",
"391000522_35": "「そんなものは、最初から存在していないかのように、\\n 実像も実体も見つけられません」",
"391000522_36": "「今、『書物』の中にいるのは、\\n ヒビキさんたち人だけ、としか考えられないんです」",
"391000522_37": "「……3人?」",
"391000522_38": "「3人だけって――\\n だって、ここに描かれているのは……」"
}

View file

@ -0,0 +1,89 @@
{
"391000611_0": "迷子たち、かく語りき",
"391000611_1": "「この崖の向こう岸に、\\n お姉ちゃんたちの世界があるのかな」",
"391000611_2": "「……どうかな。\\n わたしの世界とは、多分違うかも」",
"391000611_3": "「どういうこと?」",
"391000611_4": "「えっと……世界は1つだけじゃない。\\n 色んな世界があるんだよ」",
"391000611_5": "「この先にあるかもしれないのは、数多の世界の中の1つ。\\n わたしたちがいるこの世界も、その中の、つなんだ」",
"391000611_6": "「うーん……?\\n ヒビキお姉ちゃんって、難しいこと言うよね」",
"391000611_7": "「そうかな……ごめん」",
"391000611_8": "「でも、わたしの話が難しいというより、\\n 並行世界ってもの自体が難しいっていうか……」",
"391000611_9": "「……正直、わたしもよくわかってないのかも。\\n とにかく、色んな世界があるとしか……」",
"391000611_10": "「うーん……? それってさ、\\n ヒビキお姉ちゃんにはヒビキお姉ちゃんの世界があって」",
"391000611_11": "「マリアお姉ちゃんには、マリアお姉ちゃんの世界。\\n ミクお姉ちゃんには、ミクお姉ちゃんの世界があるってこと」",
"391000611_12": "「え、えーと……、\\n そういうことじゃなくって……」",
"391000611_13": "(いや、違わないのかな……?)",
"391000611_14": "(わたしの世界……それは単に、\\n わたしが生まれた世界を指す意味じゃなくて……",
"391000611_15": "「んー……じゃあさ、やっぱり……」",
"391000611_16": "「やっぱりヒビキお姉ちゃんは、\\n ヒビキお姉ちゃんの世界に帰りたいと思ってるの」",
"391000611_17": "「他の誰かの世界じゃなくて、\\n ヒビキお姉ちゃんの世界に」",
"391000611_18": "「――え?",
"391000611_19": " そうだね。帰りたい……かな」",
"391000611_20": "「そっか……。\\n じゃあ、帰らなきゃだねッ」",
"391000611_21": "「……ストレートに言うなぁ」",
"391000611_22": "「帰れないこともあるんだよ」",
"391000611_23": "(……帰れるものなら、帰りたい。\\n わたしの陽だまりが待っている、あの世界へ。でも――",
"391000611_24": "(わたしは、贖罪を終えるまで、\\n 帰ることはできないんだ",
"391000611_25": "(投げ出しちゃいけない。\\n 投げ出すもんか……",
"391000611_26": "「わかんないよ。\\n なんで帰りたいのに帰れないの」",
"391000611_27": "「あッ!\\n わかった、ヒビキお姉ちゃん、迷子なんでしょッ」",
"391000611_28": "「はぁ。\\n そうじゃなくて……ええとね」",
"391000611_29": "「わたしは、自分がやるべきことをやり遂げるまでは、\\n 自分の世界に帰らないって、そう決めたんだ」",
"391000611_30": "「でも、わたしは弱いから。やるべきことが、\\n 本当に正しいのか、わからなくなるときがあって……」",
"391000611_31": "「そんなときは、\\n 進むことができずに、立ち止まってしまうんだ」",
"391000611_32": "「だから、いつまでも帰れない。\\n わたしの弱さが、わたしを邪魔してるから」",
"391000611_33": "(……わたし、どうしてこんな小さな子に\\n こんなこと話してるんだろう",
"391000611_34": "「…………」",
"391000611_35": "「ギン?」",
"391000611_36": "「んっと……あのね? \\n たとえばぼくが、お菓子屋さんに行きたくなったとするよね」",
"391000611_37": "「……え?\\n う、うん」",
"391000611_38": "「そのお菓子屋さんには究極のアイスが売ってるんだッ!\\n ぼくはお菓子屋さんに行くための道を調べて、覚えて……」",
"391000611_39": "「早く行きたくなっちゃって、ヒビキお姉ちゃんたちを待たずに、\\n 人で飛び出して行っちゃって……」",
"391000611_40": "「そのとき、もしも途中で、\\n ぼくが迷子になっちゃったとしたら――」",
"391000611_41": "「ぼくはどうしたらいいんだろう?」",
"391000611_42": "「そんなの、迎えに――」",
"391000611_43": "「そのときのぼくは、お姉ちゃんたちがお迎えに来られないくらい、\\n すごーく難しい迷子になってるんだッ」",
"391000611_44": "「……フフッ。\\n 難しい迷子って、何」",
"391000611_45": "「でも、そうだな。\\n それなら……」",
"391000611_46": "「地図で、今いる場所を確かめて、\\n お菓子屋さんへのルートをもう度確認する、とか」",
"391000611_47": "「うん、ぼくもそうすると思うな。\\n だって、度は覚えたんだからッ」",
"391000611_48": "「その場に立ち止まって、\\n ゆっくり、じっくり思い出そうとするッ」",
"391000611_49": "「……」",
"391000611_50": "「だからさ、なんていうか……\\n いいじゃん、立ち止まったって」",
"391000611_51": "「ぼくもきっと、迷子になったら、すごく、",
"391000611_52": " すごく不安になるけど……」",
"391000611_53": "「立ち止まって一生懸命考えてることって、行きたい場所に\\n 行くためには、どうすればいいのかってことでしょ」",
"391000611_54": "「行きたい場所に……」",
"391000611_55": "「もちろん、地図を見る以外にも方法はあると思うんだ。",
"391000611_56": " たとえば……手当たり次第に走り回ってみるとかッ!」",
"391000611_57": "「お菓子屋さんは案外近くにあって、\\n 走り回ってたら、すぐ見つかるかもしれないもんね」",
"391000611_58": "「それに、ヒビキお姉ちゃんたちみたいな優しい人に会えれば、\\n 道を訊くことだってできるかも」",
"391000611_59": "「だからさ、えっとね、ぼくが言いたいのは……",
"391000611_60": " んーと、えーっと……」",
"391000611_61": "「お菓子屋さんに着く方法はたくさんあるッ!\\n ……っていうコトッ」",
"391000611_62": "「……ギン」",
"391000611_63": "「エヘヘ。ヒビキお姉ちゃんなら、\\n いつか絶対にお菓子屋さんに着けるよッ」",
"391000611_64": "「……フフ。わたし、いつの間にか\\n お菓子屋さんに行きたかったことになってる」",
"391000611_65": "「うーん……あれ?",
"391000611_66": " そうかも……なんでだろう……」",
"391000611_67": "「んー……でも、ヒビキお姉ちゃんはカッコイイから、\\n お菓子屋さんになんて行かなかったりする」",
"391000611_68": "「か、カッコイイかは別として……",
"391000611_69": " お菓子屋さんくらいは、行く……んじゃないかな」",
"391000611_70": "「別じゃないよッ! その紫色の服、すごくカッコイイッ!",
"391000611_71": " ヒビキお姉ちゃんにすっごく似合ってると思うよッ!」",
"391000611_72": "(なんだ、エレクライトのことか。",
"391000611_73": " 似合っているなんて、初めて言われたかも……)",
"391000611_74": "「そんなにカッコイイんだしさ、\\n この崖とか、ビューンッ って越えることはできないの」",
"391000611_75": "「それで、ヒビキお姉ちゃんが\\n 帰りたいところに帰るんだ」",
"391000611_76": "「いやいや、それこそカッコイイとは別問題だよ。\\n 対岸も見えないくらいに距離があるし……」",
"391000611_77": "「むう……そっか。\\n それじゃあ――」",
"391000611_78": "「ぼくがヒビキお姉ちゃんを、\\n 帰りたいところに帰らせてあげなきゃだねッ」",
"391000611_79": "「えッ!?」",
"391000611_80": "(ギン……。\\n 悩んでいるわたしを励まそうとして……",
"391000611_81": "「……フフ」",
"391000611_82": "「え、どうして笑うのッ!?\\n ぼくは本気で言ってるのにッ」",
"391000611_83": "「あー、わかったッ! ぼくには無理だって思ってるんでしょッ!\\n 本当に本当なんだからねッ」",
"391000611_84": "「ごめんごめん。\\n でも、ありがとうね」",
"391000611_85": "「……そうだよね。\\n 今は、この世界から無事に脱出することを考えないと」",
"391000611_86": "「わたしたち、\\n 人全員揃って――」"
}

View file

@ -0,0 +1,13 @@
{
"391000621_0": "「3人だけって――",
"391000621_1": " だって、ここに描かれているのは……」",
"391000621_2": "「もう1人のわたしと一緒にいる男の子はッ!?」",
"391000621_3": "「ギンくんはッ!?\\n あの子はッ」",
"391000621_4": "「……遺跡の半径10キロ以内に\\n 住居や集落は存在していませんでした」",
"391000621_5": "「そして、『書物』の回収以前と以後で、\\n 付近での行方不明者は報告されていません」",
"391000621_6": "「つまり、この『ギン』という少年は、\\n 外部から取り込まれた人間ではない可能性が高い――」",
"391000621_7": "「で、でもッ!\\n わたしが読んだ物語の中では、確かに人一緒に……」",
"391000621_8": "「ですが……どれだけ数字を見ても、\\n データ上、ギンという少年は存在が観測されないんです」",
"391000621_9": "「恐らく、ギンという少年は、\\n 『書物』自らが内部に生み出した存在だと考えられます」",
"391000621_10": "「この『書物』の中でヒビキさんたちが戦っている、\\n 『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』と同じように」"
}

View file

@ -0,0 +1,95 @@
{
"391000711_0": "あの子の好きなアイスクリーム",
"391000711_1": "「結局、わたしたちは\\n この世界からの脱出方法を見つけられず……」",
"391000711_2": "「ギンの提案で、街に戻ってみることにしたけれど――」",
"391000711_3": "「これは……\\n どういうことでしょう……」",
"391000711_4": "「うわぁ、人がいっぱいいるッ!」",
"391000711_5": "「夜は明けたばかり……\\n 時間がわからないけれど、そんな早朝にこれだけの人が」",
"391000711_6": "「夜の間は閉まってたけど、\\n お菓子屋さんがこんなにたくさん……ッ」",
"391000711_7": "「アイスクリーム屋さんに、チュロス屋さん……",
"391000711_8": " あッ、クレープ屋さんもあるよッ!」",
"391000711_9": "(そして、街の店全てが『お菓子屋さん』ばかり?\\n そんな馬鹿な……",
"391000711_10": "(やっぱり……。\\n この世界、油断できない……",
"391000711_11": "「……どうする?\\n 一応、街の人に話を聞いてみる」",
"391000711_12": "「え? あ、はいッ!",
"391000711_13": " マリアさんとヒビキが、それでいいなら……」",
"391000711_14": "「……わたしも。\\n あなたと未来がそうするべきだと思うなら……」",
"391000711_15": "「……」",
"391000711_16": "(……はぁ。\\n 見事なまでに、何かあったと言外に語ってくれるものだわ",
"391000711_17": "(やれやれ……。\\n お節介なのは百も承知だけど……",
"391000711_18": "「ねえ。\\n 向こうのアイスクリーム屋さんで話を聞いてきてくれない」",
"391000711_19": "「え?\\n わ、わかりました」",
"391000711_20": "「そうだ、ギンも一緒に連れて行ってあげて。\\n ついでにアイスでも食べてくるといいわ」",
"391000711_21": "「はい、これ。どれが使えるかわからないから。\\n 日本円と、ドルと……少しだけどユーロもあるわ」",
"391000711_22": "「アイスクリームッ!?\\n いいのッ」",
"391000711_23": "「ええ。途中、休憩はしたとはいえ\\n ほとんど夜通しで歩いたのだもの。疲れたでしょう」",
"391000711_24": "「ぼくはまだまだ平気だけど……でも、嬉しいやッ!",
"391000711_25": " ミクお姉ちゃん、早く行こうッ!」",
"391000711_26": "「う、うん……。",
"391000711_27": " あッ、待ってギンくん、引っ張らないでーッ!?」",
"391000711_28": "「さて。\\n それじゃあ、話してもらいましょうか」",
"391000711_29": "「……何を?",
"391000711_30": " 別に、話さなきゃいけないことなんて、何も……」",
"391000711_31": "「そんなわかりやすい誤魔化しに付き合ってあげるほど、\\n わたしは優しくないわ」",
"391000711_32": "「あの子との間に、何があったの?」",
"391000711_33": "「…………ごめん。\\n 気を遣わせちゃって」",
"391000711_34": "「でも大丈夫。\\n 自分でなんとかするから……」",
"391000711_35": "「そうはいかないわ」",
"391000711_36": "「……え」",
"391000711_37": "「そりゃ、わたしだって、本当なら黙って見守りたいところだけど。\\n 今はみんなで一致団結しなければならないときじゃないかしら」",
"391000711_38": "「あなたも感じているでしょう?\\n この世界は、何かが決定的に破綻している……」",
"391000711_39": "「一刻も早く、脱出するべきだわ」",
"391000711_40": "「……」",
"391000711_41": "「何があったか話して。",
"391000711_42": " たまには、歳上のいうことを聞くものよ?」",
"391000711_43": "「なるほどね。\\n わたしたちの世界の『立花響』と、あなたという『立花響』……」",
"391000711_44": "「『響』なら大丈夫だと、\\n そう言われたのを突っ撥ねてしまったと……」",
"391000711_45": "「未来が励まそうとしてくれたのはわかるよ。\\n わかるんだ、でも……ッ」",
"391000711_46": "「それでも、仕方がないんだ……ッ!\\n だってわたしは、もう人の<ruby=わたし>響</ruby>とは違うからッ!」",
"391000711_47": "「ええ、そうね。\\n その通りよ」",
"391000711_48": "「……え?」",
"391000711_49": "「まったく……何を驚いているのかしら。\\n それって、ごく当たり前のことでしょう」",
"391000711_50": "「でも……」",
"391000711_51": "「でももヘチマもないわ。\\n あなた、他の並行世界のわたしにも会ったことがあるわよね」",
"391000711_52": "「……うん。\\n 確かあの、小さな――」",
"391000711_53": "「そうよ。本人が聞いたら怒るかもしれないけど……\\n 並行世界の『わたし』は、わたしよりずっと、見た目は子供」",
"391000711_54": "「けれど、APPLEという艦を率いる立派なリーダーよ。",
"391000711_55": " フフ、たしか、ドーナツが好きという話も聞いたわ」",
"391000711_56": "「それで、あなたは彼女を見て――\\n わたしと、並行世界の小さなマリア・カデンツァヴナ・イヴが」",
"391000711_57": "「『同じ』だと思ったかしら?」",
"391000711_58": "「……」",
"391000711_59": "「あなたは、\\n わたしたちの世界の『立花響』とはまるで違う」",
"391000711_60": "「たとえ始まりが、\\n 同じ花の種だったとしても――」",
"391000711_61": "「育った土壌や肥料、得てきた水の量が違えば咲きかたは変わる。\\n 全く同じ咲きかたをする花なんて、きっとどこにも存在しない」",
"391000711_62": "「あなたと『立花響』も、\\n まったく違った、別々の咲きかたをしている花だわ」",
"391000711_63": "「……ッ」",
"391000711_64": "「まったく、なんて顔をしているの。\\n シャンとしなさいッ、立花響ッ」",
"391000711_65": "「だ、だって……ッ!」",
"391000711_66": "「……なんて、偉そうに言ってもね」",
"391000711_67": "「わたしも、少なからず\\n <ruby=未来>あの子</ruby>に共感してしまうところはあるのよ」",
"391000711_68": "「……?」",
"391000711_69": "「頭では『違う』って理解していても。\\n 『その人』だって思いたくなる気持ちは、わかってしまう」",
"391000711_70": "「なまじ、想う誰かに似ている部分を、\\n もう人の『その人』の中に見てしまったら……駄目なのよね」",
"391000711_71": "「……」",
"391000711_72": "(……わたしは、本当に僥倖だった)",
"391000711_73": "(わたしの世界で喪ったセレナが、\\n 今、わたしを慕ってくれるセレナじゃないのはわかってる",
"391000711_74": "(セレナも同じように、セレナの世界で<ruby=わたし>姉</ruby>を亡くして――\\n たまたま、本当にたまたま、『わたし』と想いが噛み合っただけ",
"391000711_75": "(あの子も……小日向未来もまた、『ヒビキ』の向こう側に、\\n 『立花響』を見出しているのかもしれない……",
"391000711_76": "「ねえ、それって……」",
"391000711_77": "「……」",
"391000711_78": "「……お互いに特別過ぎるっていうのも、\\n 考えものよね」",
"391000711_79": "「――……」",
"391000711_80": "(お互いに、か。\\n そうか、わたしも……",
"391000711_81": "(あの未来の向こうに、\\n わたしにとっての未来を、見ていたのかも……",
"391000711_82": "(それだから、わたしを通して『響』を見ている\\n 『未来』に、わたしを否定されたような気がして……",
"391000711_83": "「……少しは、気が楽になったみたいね?」",
"391000711_84": "「うん、ありがとう。\\n 未来ともう回、ちゃんと話してみる」",
"391000711_85": "「お節介を焼いた甲斐があるというものよ。",
"391000711_86": " さて、そろそろ戻ってきてもいい頃合いだけど……」",
"391000711_87": "「噂をすれば……戻ってきたみたい。",
"391000711_88": " ……って、何か叫んでる?」",
"391000711_89": "「――ッ!」",
"391000711_90": "「ヒビキッ! マリアさんッ!\\n こっちに……ッ」",
"391000711_91": "「ノイズに追われているッ!?」",
"391000711_92": "「待ってて未来ッ!\\n すぐに行くから――ッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,101 @@
{
"391000721_0": "時間は少しばかり遡り――",
"391000721_1": "「色んな種類のアイスがあるね。\\n ギンくん、何味のアイスが食べたい」",
"391000721_2": "「…………」",
"391000721_3": "「……ギンくん?」",
"391000721_4": "「ねえ、ミクお姉ちゃん。\\n ヒビキお姉ちゃんと喧嘩しちゃったの」",
"391000721_5": "「えッ!?",
"391000721_6": " ……ヒビキから、聞いたの?」",
"391000721_7": "「ううん、聞いてないよ。\\n でも、見てたらわかるよ」",
"391000721_8": "「そっか……」",
"391000721_9": "(わからないようにしていたつもりだったけど、\\n よっぽど顔に出てたのかな……",
"391000721_10": "「えっとね。\\n わたしたちは、喧嘩をしてるんじゃないよ」",
"391000721_11": "「ただ、少しだけ……\\n わからなくなっちゃっただけなんだ……」",
"391000721_12": "「違わないったら。\\n ヒビキなら大丈夫だよ。だってヒビキは響だもの――」",
"391000721_13": "「違うよッ!」",
"391000721_14": "「わたし、ヒビキが……\\n <ruby=ふたり>響</ruby>が大事にしていること、わかるはずなのに……」",
"391000721_15": "「なんて言ったら、\\n 伝わったのかな……」",
"391000721_16": "「わたし……、\\n どうしたら、いいんだろ……」",
"391000721_17": "「ミクお姉ちゃん……」",
"391000721_18": "「――って、ごめんねッ!?",
"391000721_19": " ギンくんにこんなこと話すなんて……」",
"391000721_20": "「えっと……あのね。\\n ぼく、ミクお姉ちゃんと一緒にアイスを食べるの、楽しいよ」",
"391000721_21": "「でもね、ヒビキお姉ちゃんとは一緒に食べたことない。\\n マリアお姉ちゃんとも、食べたことないよ」",
"391000721_22": "「きっと楽しいだろうなぁって思うけど……」",
"391000721_23": "「まだ、ヒビキお姉ちゃんやマリアお姉ちゃんが\\n どんな味が好きかもわかんないんだ」",
"391000721_24": "「え……」",
"391000721_25": "「ヒビキお姉ちゃんは何味のアイスが好きかな?\\n パチパチするやつかな それとも果物のやつかな」",
"391000721_26": "「え、ええと……。\\n 響が好きな味ならわかるけど、ヒビキが好きな味は……」",
"391000721_27": "「アハハ、変なのーッ!\\n わかるのに、わからないの」",
"391000721_28": "「う、ううん、違うのッ!\\n 音は……名前は同じなんだけど、響とヒビキ、人いてね」",
"391000721_29": "「よく似てるんだけど、違ってて。\\n わたしにとっては、人とも大事なんだけど……」",
"391000721_30": "「ミクお姉ちゃんにとっては、\\n どっちの『ひびきお姉ちゃん』が一番大切なの」",
"391000721_31": "「えッ!?」",
"391000721_32": "(わたしが一番大切に思っているのは……響。\\n それは間違いない……",
"391000721_33": "(でも、ヒビキのことも、大切に思ってる。\\n それも、間違いない……",
"391000721_34": "(でも、それはヒビキが『響』だからじゃない。\\n わたしは、ヒビキとして……",
"391000721_35": "(だから、どっちかなんて――)",
"391000721_36": "「すごいねッ!」",
"391000721_37": "「……え?」",
"391000721_38": "「だって、\\n そんなに悩むってことはさッ」",
"391000721_39": "「2人の『ひびきお姉ちゃん』を\\n 人とも、一番大切にしたいってことでしょ」",
"391000721_40": "「2人……とも……」",
"391000721_41": "「…………」",
"391000721_42": "「……うん。\\n そうッ そうだよッ」",
"391000721_43": "「やっぱりッ!\\n それだけ『ひびきお姉ちゃん』のことが、大切なんだねッ」",
"391000721_44": "「うん……」",
"391000721_45": "(そうか……。\\n それで良かったんだ",
"391000721_46": "(わたしにとっては、\\n 響も、ヒビキも、大切",
"391000721_47": "(でも、響を大切に想う気持ちを、\\n そのままヒビキに当てはめたらいけない",
"391000721_48": "(だってわたしは、\\n まだヒビキの好きなアイスの味だって、知らないから",
"391000721_49": "(響と同じかもしれないし、\\n 違うかもしれない",
"391000721_50": "(それを今知っているのは、『わたし』じゃないんだ。\\n ヒビキの世界の、<ruby=わたし>未来</ruby>なんだ……)",
"391000721_51": "(貫きたい想いが、同じだったとしても。\\n ヒビキがそこに至った道程は、きっと響とは違った",
"391000721_52": "(ヒビキは、響じゃない)",
"391000721_53": "(わたし、ヒビキが歩こうとしている道を……、ううん、\\n 今まさに歩いている道を、否定しちゃうところだったんだ――",
"391000721_54": "(わたし自身が、向き合わなきゃ。\\n 思い込んで決め付けて、勝手に悩んでちゃ駄目なんだッ",
"391000721_55": "「ね、ギンくん。\\n 待ってる人に、お土産を買っていこっか」",
"391000721_56": "「わあ、きっと2人とも喜ぶよッ!",
"391000721_57": " でも、何味のアイスを買うの?」",
"391000721_58": "「うーん……そうだなぁ、",
"391000721_59": " このお店のアイス、全種類なんてどうかな?」",
"391000721_60": "「ぜ、全種類ッ!?」",
"391000721_61": "「うんッ!",
"391000721_62": " だってわたし、ヒビキの好きなアイスの味、知らないから」",
"391000721_63": "「だから、全種類買っていって……\\n 何味が好きなのか、訊いてみようと思うんだ」",
"391000721_64": "「それ、いいねッ!",
"391000721_65": " でも袋がいっぱいになっちゃうね。持ちきれるかな?」",
"391000721_66": "「大丈夫だよ。\\n わたしとギンくん、人で持てば――」",
"391000721_67": "「ノイズ……ッ!?」",
"391000721_68": "「しかも、こんなに沢山――ッ!?」",
"391000721_69": "(どうしよう、これだけの数……。\\n わたし、人だけじゃ――",
"391000721_70": "「ギンくんッ!\\n 急いでここから離れてッ」",
"391000721_71": "「う、うんッ!」",
"391000721_72": "(ギンくんの動きに、\\n イズが反応していない――ッ",
"391000721_73": "(そういえば、最初に襲われたときも、\\n イズは、わたしたちだけを狙って襲ってきた……",
"391000721_74": "「――それならッ!」",
"391000721_75": "「ギンくんッ!\\n そのままそこに隠れていてッ」",
"391000721_76": "「そんな、ミクお姉ちゃんはどうするのッ!?」",
"391000721_77": "「わたしはこのまま、\\n イズを連れて、ヒビキたちと合流するッ」",
"391000721_78": "「後で迎えに来るから、\\n そこに隠れて動かないでねッ」",
"391000721_79": "「わ、わかったッ!\\n 気をつけてねッ」",
"391000721_80": "(ノイズは人類のみを殺戮するために作られた、\\n 自律兵器……",
"391000721_81": "(何をセンサーにしているのかわからないけど、\\n 本来なら、隠れたりしたって無駄なはず……でも……",
"391000721_82": "「くッ、考えるのは後ッ!",
"391000721_83": " このまま、さっきいた場所まで誘導して――」",
"391000721_84": "「確か……こっちの道で合ってるはずだけど、",
"391000721_85": " ――いたッ!」",
"391000721_86": "「ヒビキッ! マリアさんッ!\\n こっちに……ッ」",
"391000721_87": "「ノイズに追われているッ!?」",
"391000721_88": "「待ってて未来ッ!\\n すぐに行くから――ッ」",
"391000721_89": "「わたしの攻撃に合わせてッ!」",
"391000721_90": "「うんッ!\\n やあ――ッ」",
"391000721_91": "「びっくりするくらい息ぴったりじゃない。",
"391000721_92": " これは、余計なお節介をしちゃったかしら……?」",
"391000721_93": "「ううん、そんなことない。\\n ……ありがとう」",
"391000721_94": "「ギンくんにも、\\n あとでちゃんとお礼を言わなきゃね」",
"391000721_95": "「うん。でも、油断しないでッ!\\n まだ終わりじゃないッ」",
"391000721_96": "「大丈夫ッ!\\n わたしたちが一緒ならッ」",
"391000721_97": "「――うんッ!",
"391000721_98": " 戦おう、一緒にッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,25 @@
{
"391000722_0": "「最後ッ!\\n 一気に畳みかけようッ」",
"391000722_1": "「これで――」",
"391000722_2": "「「<size=40>終わりだあああ――ッ!!</size>」」",
"391000722_3": "「お疲れ様。\\n どうやら打ち止めのようね」",
"391000722_4": "「ねえ未来ッ!\\n ギンは一緒にいないのッ」",
"391000722_5": "「大丈夫。\\n ギンくんには、向こうの方で隠れてもらっているから」",
"391000722_6": "「隠れてって……、",
"391000722_7": " ギンを置いてきたのッ!?」",
"391000722_8": "「うん。ノイズは、ギンくんを狙っていなかったから。\\n 大丈夫だって確信したから、人との合流を優先したの」",
"391000722_9": "「ちゃんと本人を見て、\\n そう判断したの」",
"391000722_10": "「……わかった。\\n 未来がそう判断したなら、それを信じるよ」",
"391000722_11": "「なら、早く迎えに行ってあげましょう。\\n 人で寂しがってるかもしれないわ」",
"391000722_12": "「ええと……、\\n この辺の建物の中に……」",
"391000722_13": "「待ってッ!\\n あそこにいるのは――ッ」",
"391000722_14": "「そんなッ!?\\n まだ残っていたの――ッ」",
"391000722_15": "「あッ、ミクお姉ちゃーんッ!",
"391000722_16": " ヒビキお姉ちゃんたちもッ! お帰りなさーいッ!」",
"391000722_17": "「駄目ッ!\\n そこから出てきちゃ……ッ」",
"391000722_18": "「どうしてッ!?\\n 確かに、イズは反応していなかったのにッ」",
"391000722_19": "(わたし、また見誤ったの……ッ!?)",
"391000722_20": "「いけない、ギンッ!」",
"391000722_21": "「ギンくんッ!!」",
"391000722_22": "「間に合え――ッ!!!」"
}

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@ -0,0 +1,64 @@
{
"391000811_0": "役割(キャラクター)",
"391000811_1": "「いけない、ギンッ!」",
"391000811_2": "「ギンくんッ!!」",
"391000811_3": "「間に合え――ッ!!!」",
"391000811_4": "「――なッ!?\\n 急にイズの動きが変化したッ」",
"391000811_5": "「ギンくんを襲うのをやめて、\\n こっちに攻撃をッ」",
"391000811_6": "「ううん、違うッ。\\n これは、このイズの動きは――ッ」",
"391000811_7": "「ギンを……護ろうとしているッ!?」",
"391000811_8": "「3人とも安心して。\\n ぼくは平気だよ」",
"391000811_9": "「『この世界』に、お姉ちゃんたちと一緒に触れてみて、\\n たくさん考えて……ぼくにも段々、わかってきたんだ」",
"391000811_10": "「最初は怖かったよ。",
"391000811_11": " でも――」",
"391000811_12": "「『これ』は、\\n ぼくにとって怖いものじゃないって、わかったんだ」",
"391000811_13": "「そんな……\\n イズに触れて、どうして……ッ」",
"391000811_14": "「だって、『これ』は\\n 『お姉ちゃんたちのため』に存在してるんだ」",
"391000811_15": "「んっと……このカタチは、『ノイズ』だったっけ。",
"391000811_16": " 『レーベンガー』も『スサノオ』も同じだよッ!」",
"391000811_17": "「ギンくん、何を言ってるの……?」",
"391000811_18": "「うーんと……ミクお姉ちゃんが2人の『ひびきお姉ちゃん』を\\n 大事にしてるのとは違って……」",
"391000811_19": "「ぼくと『これ』は同じものなんだ」",
"391000811_20": "「そんなわけないでしょッ!?」",
"391000811_21": "「マリアお姉ちゃんも、ヒビキお姉ちゃんも、\\n ミクお姉ちゃんも、ぼくに話してくれたよね」",
"391000811_22": "「今までに戦ってきた、『敵』のこと。\\n そして、『敵』を超えて手にした『望み』のことを……」",
"391000811_23": "「ぼくは、お姉ちゃんたちのことが、\\n 本当に、とっても大好きなんだよ。だから――」",
"391000811_24": "「お姉ちゃんたちの『望み』を、\\n ぼくが叶えてあげたいんだ」",
"391000811_25": "「ギン、冗談はよしてッ!\\n 早くこっちに来なさいッ」",
"391000811_26": "「ギンくんッ!」",
"391000811_27": "「お姉ちゃんたちの戦っている姿、\\n すっごくカッコ良かった……」",
"391000811_28": "「マリアお姉ちゃんも、ミクお姉ちゃんも、言葉は違っても……\\n ぼくに伝えてくれたことは同じだった」",
"391000811_29": "「『想いを貫け』って」",
"391000811_30": "「ぼくも、そんな風になりたいって、\\n 本気で思ったんだ――」",
"391000811_31": "「みんなッ!\\n 気を付けて――ッ」",
"391000811_32": "「この光……ッ!?\\n あのとき、本から溢れ出たのと同じ――ッ」",
"391000811_33": "「――なッ!?\\n エレクライトに、変化が……ッ」",
"391000811_34": "「わたしたちのギアも変わって――、",
"391000811_35": " ううん、まさか、強制的に変化させられたッ!?」",
"391000811_36": "(このギア、\\n なんだか響のものに似てる……",
"391000811_37": "「それはね。\\n 『<ruby=ぼくら>敵対者</ruby>』に対抗するための力だよ」",
"391000811_38": "「ミクお姉ちゃんには、\\n 大切な『響』お姉ちゃんと共に戦える力を」",
"391000811_39": "「……ッ!?」",
"391000811_40": "「マリアお姉ちゃんは、\\n ありのまま、想いを貫き通すカタチを」",
"391000811_41": "「な……ッ!」",
"391000811_42": "「そして、ヒビキお姉ちゃんにも……。\\n ヒビキお姉ちゃんが望んでいる姿、そのものを」",
"391000811_43": "「……迷ってるなんて言ってても、\\n 心の底じゃ決まってるんだもん。カッコイイよね」",
"391000811_44": "「そんな、わたしは――ッ!」",
"391000811_45": "「……お姉ちゃんたちのその姿はね」",
"391000811_46": "「この『<ruby=せかい>物語</ruby>』を求めていた誰かが、\\n お姉ちゃんたちに、そうあれと望んだ結果だよ」",
"391000811_47": "「そう……。\\n 『<ruby=プロタゴニスタ>主人公</ruby>』であれ、ってねッ!」",
"391000811_48": "「ち――違うよッ!\\n わたしたちはそんなこと、望んでないッ」",
"391000811_49": "「元の姿に戻してッ!\\n 一緒にアイスを食べようッ」",
"391000811_50": "「駄目だよ。\\n 『<ruby=プロタゴニスタ>主人公</ruby>』と『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』は、戦わなければいけないんだ」",
"391000811_51": "「お姉ちゃんたちは、\\n そうやって今日まで歩いてきたんでしょ」",
"391000811_52": "「今回だってそうやって、\\n 頁、倒した『敵』が増えるだけだよ」",
"391000811_53": "「さあ、思い出して。\\n ぼくに教えて」",
"391000811_54": "「お姉ちゃんたちの前に立ち塞がった、\\n 『いちばん』強かったダレカを――」",
"391000811_55": "「――」",
"391000811_56": "「これは――ッ!?」",
"391000811_57": "「――」",
"391000811_58": "「そんな――ッ!?」",
"391000811_59": "「――ッ!!」",
"391000811_60": "「もう1人の<ruby=わたし>響</ruby>ッ!?\\n これが、わたしたちにとっての『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』なのッ!?」",
"391000811_61": "「さあッ! 『<ruby=お姉ちゃんたち>主人公</ruby>』と『<ruby=ぼくたち>敵対者</ruby>』で、\\n この『<ruby=せかい>物語</ruby>』の終わりを始めようよッ!!」"
}

View file

@ -0,0 +1,26 @@
{
"391000812_0": "「誰かに作られただけの『立花響』が、\\n わたしたちに勝てると思わないでッ」",
"391000812_1": "「本物の『立花響』は――\\n もっと、ずっと、腹が立つくらい強かったわよッ」",
"391000812_2": "「……ッ!」",
"391000812_3": "「――ギンはッ!?」",
"391000812_4": "「駄目ですッ!\\n どこにもいない……ッ」",
"391000812_5": "「――待ってッ!\\n エレクライトが……反応してるッ」",
"391000812_6": "「この感じ……最初に感じたものと同じだ。\\n 『戦うべき相手が、そこにいるぞ』って……」",
"391000812_7": "「本当だ……。",
"391000812_8": " かすかに、だけど……わたしのギアも」",
"391000812_9": "「ひょっとして……、\\n この反応の先にギンくんがいるのかな……」",
"391000812_10": "「……無い話じゃないわね」",
"391000812_11": "「あの子の言葉を借りれば、『<ruby=プロタゴニスタ>主人公</ruby>』たるギアが、\\n 『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』の居場所を、伝えようとしているのかも……」",
"391000812_12": "「行こうッ!\\n ギンが待っている場所にッ」",
"391000812_13": "「でも、このままじゃ……\\n ギンくんに会ったら、きっと戦いになる」",
"391000812_14": "「『<ruby=プロタゴニスタ>主人公</ruby>』と『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』。\\n その役割の通りに、戦うしかないの」",
"391000812_15": "「……そんなのは違うよ。",
"391000812_16": " ううん、違うんじゃない……」",
"391000812_17": "「『物語』だから、決められた役割だから、\\n 戦わないといけないなんて……そんなの、嫌だッ」",
"391000812_18": "「ヒビキ……」",
"391000812_19": "「だからわたしたちは、\\n このチカラを御さなきゃいけないんだ」",
"391000812_20": "「わたしたちは『<ruby=プロタゴニスタ>主人公</ruby>』なんかじゃない。\\n ただの立花響に、小日向未来。マリア・カデンツァヴナ・イヴだって」",
"391000812_21": "「それを改めて教えてくれた『ギン』に、\\n それを伝えなきゃいけないんだ……ッ」",
"391000812_22": "「だから、行こうッ!\\n ギンが待っている場所にッ」",
"391000812_23": "「この<ruby=想い>胸の歌</ruby>を、届けにッ!!」"
}

View file

@ -0,0 +1,56 @@
{
"391000911_0": "斯くて、黄昏は謳われず",
"391000911_1": "「――いたッ!\\n ギンッ」",
"391000911_2": "「待ってたよッ!\\n お姉ちゃんたち……」",
"391000911_3": "「ギン……\\n もうやめよう、こんなこと」",
"391000911_4": "「わたしたちが戦ったって、\\n なんの意味もないよ」",
"391000911_5": "「ううん、あるんだよ。\\n ヒビキお姉ちゃんの世界では意味が無くてもね」",
"391000911_6": "「マリアお姉ちゃんの世界では意味が無くても、\\n ミクお姉ちゃんの世界では意味が無くても――」",
"391000911_7": "「ぼくの世界では、意味があるんだ」",
"391000911_8": "「……ギン。\\n あなた、いったい何者なの」",
"391000911_9": "「…………」",
"391000911_10": "「――何も無い世界だったんだ」",
"391000911_11": "「途方もなく、何も……\\n それこそ、『無』すらないような、そんな世界」",
"391000911_12": "「その世界で、ぼくは<ruby=ひと>独</ruby>り……、\\n ううん、孤独という感覚すらなく、ただ『在った』」",
"391000911_13": "「そのことに対して何かを感じることだって、なかった。\\n 寂しいとも、辛いとも、感じなかった……」",
"391000911_14": "「幾億年……\\n どれほどの時をそうして過ごしたのかもわからないくらいに」",
"391000911_15": "「ぼくは、ただの空虚だったんだ」",
"391000911_16": "「それを変えてくれたのは、\\n ヒビキお姉ちゃんだったんだよ」",
"391000911_17": "「……え?」",
"391000911_18": "「嬉しかった……。\\n 本当に、嬉しかったんだ」",
"391000911_19": "「どうして、\\n ヒビキお姉ちゃんがぼくを見つけてくれたのかはわからない」",
"391000911_20": "「けど……きっと、\\n 本を見つけてくれたんじゃないかな」",
"391000911_21": "「それは、ぼくが『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』である<ruby=せかい>物語</ruby>そのもの」",
"391000911_22": "「――ッ!」",
"391000911_23": "「<ruby=せかい>物語</ruby>が『<ruby=プロタゴニスタ>主人公</ruby>』足りうると認めるお姉ちゃんたちが、\\n ぼくを見つけてくれた。探してくれた――」",
"391000911_24": "「――そのとき、この物語の幕は上がったんだよ」",
"391000911_25": "(なんて、静かな目を……)",
"391000911_26": "(わたしの目の前にいるのは、\\n 本当にあの無邪気だったギンなの……",
"391000911_27": "「違うよ、マリアお姉ちゃん。\\n ぼくは『ギン』じゃない」",
"391000911_28": "「ッ!?」",
"391000911_29": "「そんな……ッ!",
"391000911_30": " そんな悲しいことを言わないでッ!」",
"391000911_31": "「悲しくなんてないよ、ミクお姉ちゃん。\\n ぼくは、そのためにこの世界に創られたのだもの」",
"391000911_32": "「ぼくは、自分がなんなのかようやくわかったんだ。\\n お姉ちゃんたちが、考えることを教えてくれたから」",
"391000911_33": "「そうしたら、世界が読めるようになったんだ。\\n ぼくがどう動くべきなのか、手にとるように理解できた――」",
"391000911_34": "「誰が為か、遙けき昔に生み出された、\\n 全ての『物語』の根幹――」",
"391000911_35": "「ぼくこそが、\\n 『神話』によって創られた『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』だッ!」",
"391000911_36": "「だからね。\\n ぼくは、この世界に与えられた力を振るうッ」",
"391000911_37": "「この力こそが、\\n ぼくの在りかた、そのものなんだから――ッ」",
"391000911_38": "「<size=40>あああああぁぁぁぁあああぁぁぁぁ――ッ!!</size>」",
"391000911_39": "「ギンッ!\\n 駄目だ、それ以上は……ッ」",
"391000911_40": "「崖から落ちたッ!?",
"391000911_41": " いけない、すぐ助けに――」",
"391000911_42": "「待ってッ!\\n 何か来るわッ」",
"391000911_43": "「ぼくは――、\\n 君たちの『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』――」",
"391000911_44": "「世界より与えられし在りかたは――、\\n 『ギンヌンガガプ』――」",
"391000911_45": "「ギンの声……ッ!\\n そんな、これがギンだっていうの……ッ」",
"391000911_46": "「『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』は……、\\n 倒されてこそ、物語が終わりを迎える」",
"391000911_47": "「『<ruby=プロタゴニスタ>主人公</ruby>』は……、\\n 『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』を倒してこそ、帰るべき場所へと帰れるんだ」",
"391000911_48": "「……ッ!?」",
"391000911_49": "「言ったよね、お姉ちゃん。\\n 帰りたいって」",
"391000911_50": "「それなら、ぼくは……\\n 空虚に『ぼく』を与えてくれたお姉ちゃんたちの、望みを叶える」",
"391000911_51": "「その役割を果たすことこそが、\\n ぼくの『望み』――」",
"391000911_52": "「だから――『<ruby=プロタゴニスタ>主人公</ruby>』たちよッ!」",
"391000911_53": "「『<ruby=ぼく>敵対者</ruby>』を、\\n 倒しておくれ――ッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,41 @@
{
"391000912_0": "「く――ッ!?」",
"391000912_1": "「ギンッ!\\n 聞いて、わたしたちの話を――ッ」",
"391000912_2": "「ギンッ!\\n あなたが『敵』だなんて、信じないわッ」",
"391000912_3": "「お願い――ッ!\\n 止まって、ギンくんッ」",
"391000912_4": "「ぐぁッ!?」",
"391000912_5": "「ヒビキ、大丈夫ッ!?」",
"391000912_6": "「避けなさいッ!!\\n 上から――ッ」",
"391000912_7": "「……くッ、間に合うかッ!?",
"391000912_8": " いや――間に合わせるッ!!」",
"391000912_9": "「うあああぁ……ッ!」",
"391000912_10": "「そんな、マリアさんッ!?\\n わたしたちを庇って……ッ」",
"391000912_11": "「ギンッ!\\n もうやめて、こんなこと――ッ」",
"391000912_12": "「……間違えないで、ぼくの名前は『ギンヌンガガプ』。\\n 『ギン』なんて……いなかったんだよ」",
"391000912_13": "「そんな名前、\\n いくら呼んでも、意味なんてない――」",
"391000912_14": "「違うッ!\\n ギンはギンだッ」",
"391000912_15": "「ほんの少しの間だったけど――\\n ギンは、確かにわたしたちと一緒にいたッ」",
"391000912_16": "「そうだよッ!\\n ギンくんがいなかったなんて……嘘だッ」",
"391000912_17": "「ギンくんはここに――\\n 確かに、わたしたちの胸の中にいるッ」",
"391000912_18": "「……フフ」",
"391000912_19": "「お互いがお互いに『ひびき』と『みく』の役割を\\n 押し付けあっていた君たちが……それを言うのか」",
"391000912_20": "「――ッ!」",
"391000912_21": "「迷子になって立ち竦む幼子より、\\n よほど滑稽だったよ」",
"391000912_22": "「……そうだね。\\n 確かに、ギンの言う通りだ」",
"391000912_23": "「わたしだって、本当はわかっていたんだ。\\n ここにいる未来が、わたしの未来ではないってことを」",
"391000912_24": "「それなのに、わたしの弱さが、\\n 未来に、わたしの未来を押しつけた……」",
"391000912_25": "「……ヒビキ、\\n わたしも同じだよ」",
"391000912_26": "「わたしも、ヒビキに響を押しつけた。\\n ヒビキと響は違うのに……」",
"391000912_27": "「そんなわたしたちに、\\n ギンはギンだって言う資格はないかもしれない。でも――」",
"391000912_28": "「それでもッ!\\n ギンはギンだッ」",
"391000912_29": "「随分と……自分勝手な言い分だね?」",
"391000912_30": "「そうだよッ! 勝手だよッ!\\n けど……ッ」",
"391000912_31": "「ギンが、立ち止まって出した答えは無駄じゃないって、\\n わたしに教えてくれたんじゃないかッ」",
"391000912_32": "「――ッ!?」",
"391000912_33": "「想いを貫いて戦う姿がカッコイイって、\\n 言ってくれたんじゃないかッ」",
"391000912_34": "「相変わらず、わたしにはコレがカッコイイだなんて思えない。\\n わたしのこれは、我儘なんだからッ」",
"391000912_35": "「でも……ッ!\\n その先に、ギンが<ruby=たす>救</ruby>かる道があるって信じてるッ!!」",
"391000912_36": "「そう、わたしたちは勝手に望んでるだけ……ッ!\\n ギンくんは、ギンくんだって……」",
"391000912_37": "「その先で、笑っていてほしいって、想ってる……ッ!!」",
"391000912_38": "「だからわたしたちは、\\n この想いを、貫くんだぁぁぁあッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,61 @@
{
"391000921_0": "「聞いて、ギンッ!」",
"391000921_1": "「わたしたちは、\\n ギンのこと、『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』だなんて思えない、思わないッ!」",
"391000921_2": "「だってギンは、確かにここにいて。\\n わたしの話を聞いて、考えてくれた――ッ」",
"391000921_3": "「当たり前過ぎて見えなくなっていたこと、\\n ギンくんが気付かせてくれた」",
"391000921_4": "「……フフ。わたしのアガートラームを、\\n 引っ張って伸ばそうなんてことも言ってくれたわよね」",
"391000921_5": "「マリアさんッ!",
"391000921_6": " 傷は……ッ!?」",
"391000921_7": "「まったく、悲しくなるわね。\\n このギアのせいか、おかげか……ピンシャンよ」",
"391000921_8": "「ギン、あなたはもう、\\n わたしたち、みんなの世界の中にいるんだよ」",
"391000921_9": "「『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』なんかじゃない。\\n ただの『ギン』として、一緒にいるんだッ」",
"391000921_10": "「だから、一緒に行こうッ!\\n ここを出て、わたしたちと一緒に――ッ」",
"391000921_11": "「そんなこと――\\n 望むべくもないじゃないか」",
"391000921_12": "「――ッ!?」",
"391000921_13": "「…………」",
"391000921_14": "「望んだことを貫け、\\n そう教えてくれたのは君たちだ」",
"391000921_15": "「だからぼくは、ぼく自身の望みのために、\\n 戦って、<ruby=たお>斃</ruby>されなくてはならないッ!」",
"391000921_16": "「<ruby=たお>斃</ruby>された<ruby=ギンヌンガガプ>ぼく</ruby>の血肉で、\\n この崖――世界の隔たりを、埋めなくてはいけないんだ」",
"391000921_17": "「ぼくが、\\n 初めて手にした望みのために……」",
"391000921_18": "「君たちを帰るべき場所に帰すという、\\n 望みを叶えるために――ッ」",
"391000921_19": "「――ッ!!」",
"391000921_20": "「ヒビキーッ!!」",
"391000921_21": "「直撃……ッ!?」",
"391000921_22": "「……わかったよ、ギン」",
"391000921_23": "「……え?」",
"391000921_24": "「ギンの望みはわかった。\\n なんの迷いもないってことも」",
"391000921_25": "「だから――\\n わたしが、受け止めてみせる」",
"391000921_26": "「……ッ!」",
"391000921_27": "「ごめんね。あのとき、笑っちゃって。\\n ギンには本当に、それだけの力があったんだね」",
"391000921_28": "「ぼくがヒビキお姉ちゃんを、\\n 帰りたいところに帰らせてあげなきゃだねッ」",
"391000921_29": "「え、どうして笑うのッ!?\\n ぼくは本気で言ってるのにッ」",
"391000921_30": "「あー、わかったッ! ぼくには無理だって思ってるんでしょッ!\\n 本当に本当なんだからねッ」",
"391000921_31": "「ギンの覚悟……。\\n わたし、少し羨ましいな」",
"391000921_32": "「……え?」",
"391000921_33": "「ギンや……『響』みたいに、\\n 『迷わない』という強さを、わたしはまだ持てないから」",
"391000921_34": "「……ううん、そうじゃないな。",
"391000921_35": " 『響』だって、きっといっぱい迷ったはずだ」",
"391000921_36": "「ヒビキ……」",
"391000921_37": "「迷って迷って、いっぱい迷って、立ち竦むことだってあって。\\n それでも最後は迷いを振り切って……信じたんだ」",
"391000921_38": "「誰かを<ruby=たす>救</ruby>けることが、\\n たとえ、その誰かを傷付けるとしても――」",
"391000921_39": "「その誰かが抱えていた望みを、\\n 手折るとしても――」",
"391000921_40": "「少しでも、幸せにすることができるならいいって、\\n そう、信じると決めたんだ……」",
"391000921_41": "「わたしは、まだ迷ってる。\\n きっと、これからも迷い続ける」",
"391000921_42": "「答えを出すのに、ぐるぐると同じところを回るかもしれない。\\n 何度も立ち止まってしまうかもしれない」",
"391000921_43": "「でも、きっと――\\n そんなわたしだから、ギンは呼んでくれたんだよね」",
"391000921_44": "「何を……?\\n ぼくは、君を呼んでなんて……」",
"391000921_45": "「ううん。\\n わたしは、ギンに呼ばれたんだよ」",
"391000921_46": "「いろんな並行世界を渡るうちに、迷子になったわたしを……」",
"391000921_47": "「何もない世界で、\\n 同じように迷子だったギンが呼んでくれたんだ」",
"391000921_48": "「違う……」",
"391000921_49": "「違わないよ。",
"391000921_50": " 迷いながら、それが正しいのかわからなくても――」",
"391000921_51": "「誰かを<ruby=たす>救</ruby>けたくて、\\n 誰かに<ruby=たす>救</ruby>けてもらいたかった、わたしたちだからッ!」",
"391000921_52": "「違うッ!\\n ぼくは、<ruby=たす>救</ruby>けられたいなんて思っていない――ッ!」",
"391000921_53": "(……今なら、あのときわたしに手を伸ばしてくれた、\\n 響の気持ちがわかるよ",
"391000921_54": "(……目の前の絶望が本物だって、\\n わからないはずがないんだ",
"391000921_55": "(だからこそ、手を伸ばさずにいられないんだ……ッ!)",
"391000921_56": "「だから……\\n ごめんね」",
"391000921_57": "「わたしは戦うよ。戦って、ギンの望みを打ち砕く。\\n でも、それは倒したいからじゃない――」",
"391000921_58": "「ギンを<ruby=たす>救</ruby>けるって、\\n わたしが、決めたからだッッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,52 @@
{
"391000922_0": "「この想い、\\n 必ず届けてみせるからッ」",
"391000922_1": "「撃ち抜くんだッ!\\n 揺るがない、最速の歩で――ッ」",
"391000922_2": "「アァアアアアアアアア――……ッ!!」",
"391000922_3": "「ギンの……いいえ、",
"391000922_4": " ギンヌンガガプの身体が、崩れて……ッ!」",
"391000922_5": "「対岸にかかる橋を作り上げていく……ッ!?」",
"391000922_6": "「ギンくんは――ッ!?」",
"391000922_7": "「いたッ!",
"391000922_8": " あそこ――ッ!」",
"391000922_9": "「わたしたちもッ!」",
"391000922_10": "「はいッ!」",
"391000922_11": "「ギンッ!\\n ギンッ 返事してッ」",
"391000922_12": "「……。\\n …………」",
"391000922_13": "「ギンくん、怪我はッ!?\\n 大丈夫ッ」",
"391000922_14": "「ぼくは……\\n 負けたんだね……」",
"391000922_15": "「……うん」",
"391000922_16": "「ふ……フフ、ハハハッ!\\n アハハハハハハッ」",
"391000922_17": "「ぎ、ギン……?」",
"391000922_18": "「なんて顔してるのさ、\\n お姉ちゃんたち」",
"391000922_19": "「もう……どうせ負かすなら、徹底的に<ruby=たお>斃</ruby>してよ……。\\n 本来なら、ぼくの血肉で、世界の隔たりを埋めるはずなのに……」",
"391000922_20": "「それが……『神話』に描かれる、\\n 『ギンヌンガガプ』の最期なのに……」",
"391000922_21": "「それで、『<ruby=プロタゴニスタ>主人公</ruby>』たちの凱旋で……\\n この<ruby=せかい>物語</ruby>の幕が降りるはずだったのに……」",
"391000922_22": "「中途半端にぼくを残したりするから、\\n こんな、カッコ悪い橋しかできなかったじゃないか……」",
"391000922_23": "「……カッコ悪くなんて、ないよ」",
"391000922_24": "「――……」",
"391000922_25": "「……この橋も、長くは保たないから。\\n せめて、橋のカタチをしている間に、向こう岸に渡っちゃってよ」",
"391000922_26": "「そうすれば、\\n ここに来る前にいた世界に、戻れるはずだから……」",
"391000922_27": "「『誰か』と触れることで、知ることで、想うことで、\\n 世界はいくらでも拡がっていく――」",
"391000922_28": "「そう教えてくれたお姉ちゃんたちが、\\n いつまでも、こんな閉じた世界にいちゃいけないよ……」",
"391000922_29": "「……ほら、もう橋が崩れ始める。\\n 走り出したら、振り返らずに行くんだ。約束だよ」",
"391000922_30": "「ギンッ!\\n あなたも一緒に――ッ」",
"391000922_31": "「……一緒には行けない。\\n ぼくはそういう存在だから」",
"391000922_32": "「あ……ッ!\\n 橋の根元が、崩れて……ッ」",
"391000922_33": "「これじゃあ、\\n ギンくんに手が届かない……ッ」",
"391000922_34": "「諦めの悪いお姉ちゃんたちに、\\n つだけ、いいかな……」",
"391000922_35": "「……え?」",
"391000922_36": "「ぼくは、負けるために戦ったんだ。\\n お姉ちゃんたちを、帰るべき場所に帰すために戦ったんだ……」",
"391000922_37": "「そのためなら、ぼくは消えても、悔いはない。\\n ううん、消えなきゃいけないって思ってたんだ……」",
"391000922_38": "「でも、今こうして、\\n 無様に、消えずに残っている……」",
"391000922_39": "「ぼくは、『<ruby=アンタゴニスタ>敵対者</ruby>』として、\\n 果たすべき『役割』を全うできなかった……」",
"391000922_40": "「それは、とても悔しいこと。\\n そのはず、なのに……」",
"391000922_41": "「……どうしてかな」",
"391000922_42": "「ぼくは今、\\n すごく、嬉しいんだ」",
"391000922_43": "「だって、\\n お姉ちゃんたちの顔を、また、見られたから……」",
"391000922_44": "「ギンッ!」",
"391000922_45": "「ありがとう、『   』――」",
"391000922_46": "「ううん。違うね、そうじゃ、ない……\\n ぼくが、この想いを、伝えたいのは……」",
"391000922_47": "「……ヒビキ、ミク、マリア」",
"391000922_48": "「ありがとう。",
"391000922_49": " 『ぼく』を、倒してくれて」"
}

View file

@ -0,0 +1,47 @@
{
"391000931_0": "「必死で橋を駆けていたら、\\n また光に包まれたけど……ここは……」",
"391000931_1": "「……どうやら、S.O.N.G.本部内のトレーニングルームのようね。",
"391000931_2": " 無事に戻って来られたのかしら……」",
"391000931_3": "「良かったッ!",
"391000931_4": " わたし、急いで無事を報告して来ま――」",
"391000931_5": "「――ッ!!」",
"391000931_6": "「――えッ!?」",
"391000931_7": "「なッ!?」",
"391000931_8": "「……どうしたの、響。\\n そんなに強く抱き締められると、少し痛いよ」",
"391000931_9": "「……抱き締めるなら未来1人じゃないの?",
"391000931_10": " どうしてわたしまで……って本当に痛いんだけど?」",
"391000931_11": "「ごめんッ! ごめんねッ!\\n わたし、今まで人を困らせちゃってた……」",
"391000931_12": "「え……?」",
"391000931_13": "「わたしとヒビキは、\\n 同じだけど、違うんだ……ッ」",
"391000931_14": "「そんな当たり前のことが、見えてなかった。\\n ヒビキのこと、『もう人のわたし』があんなに追い詰めてた」",
"391000931_15": "「……違うよ。\\n 響がわたしを追い詰めたんじゃない」",
"391000931_16": "「わたしは響より、\\n ちょっと迷子になりやすいってだけ」",
"391000931_17": "「あのさ。\\n ……もしかしてなんだけど、ずっと見てた」",
"391000931_18": "「はい。響さんが読んで、教えてくれていました。\\n 『<ruby=せかい>物語</ruby>』に刻まれていく、皆さんの軌跡を……」",
"391000931_19": "「そ、そうなの……?」",
"391000931_20": "「うんッ!\\n ずっと読んでたよッ」",
"391000931_21": "「未来と、マリアさんと、ヒビキが……。\\n そしてギンくんが必死に戦って、頑張った物語をッ」",
"391000931_22": "「……それって、ちょっと恥ずかしいんだけど」",
"391000931_23": "「な、なんでッ!?\\n どうしてそっぽ向いちゃうのーッ」",
"391000931_24": "「……ずっと、誰かに見られているような気はしてたけど……」",
"391000931_25": "「まさか、響に読まれてるなんて思ってなかったし。\\n 結構、恥ずかしいこと言ってたかもしれないし……」",
"391000931_26": "「恥ずかしくなんてないよッ!\\n ヒビキの気持ち、すっごく伝わってきたッ」",
"391000931_27": "「だから、それが……ッ!」",
"391000931_28": "「諦めなさい。\\n この立花響は、こういうことを平気でするのよ」",
"391000931_29": "「ア、アハハハハ……」",
"391000931_30": "「わたし、思ったんだ」",
"391000931_31": "「わたしたちは、別々の立花響だから、\\n こうして、今ここにいられるんだね」",
"391000931_32": "「うん。\\n わたしも、そう思った」",
"391000931_33": "「1人だったら、\\n きっと、色々なことに気付けなかった」",
"391000931_34": "「今回も、ちゃんと戻って来られたのは、\\n 未来がいて、マリアが支えてくれたから……」",
"391000931_35": "「こちらこそ。\\n あなたには随分助けられたわよ」",
"391000931_36": "「……ね、2人に改めて言わせてくれるかな」",
"391000931_37": "「どれだけ伝えても、きっと足りないから。\\n だから、何度だって伝えたいんだ」",
"391000931_38": "「……え?」",
"391000931_39": "「ごめん。",
"391000931_40": " それに、ありがとう」",
"391000931_41": "「あのとき、\\n 響が伸ばしてくれた手を、振り払ってごめん」",
"391000931_42": "「あのとき、\\n 未来が寄り添ってくれた優しさを、傷付けてしまってごめん」",
"391000931_43": "「それでも……」",
"391000931_44": "「ありがとう。\\n わたしに、手を伸ばしてくれて」"
}

View file

@ -0,0 +1,50 @@
{
"391001011_0": "『epilogue』",
"391001011_1": "「……もう行っちゃうの?」",
"391001011_2": "「うん。今回の件の報告は、あらかた終わったし。\\n 残りの細かいところは、そっちに任せるよ」",
"391001011_3": "「わたしには、\\n まだまだ、やるべきことがあるから」",
"391001011_4": "「……そっか」",
"391001011_5": "「うん。",
"391001011_6": " ……ねえ未来、聞いてくれる?」",
"391001011_7": "「ん?」",
"391001011_8": "「わたしの旅は、\\n きっと終わらない」",
"391001011_9": "「けど、この道行はきっと……贖罪だけじゃなくて。\\n わたしが、本来やりたかったこと――」",
"391001011_10": "「誰かを、<ruby=たす>救</ruby>けること。\\n わたし自身の、最初の望みだったんだと思う」",
"391001011_11": "「……そっか。\\n やっぱりヒビキは、大変な道を進むつもりなんだね」",
"391001011_12": "「うん。\\n 『未来』が望んだ『響』の在りかたじゃないかもしれないけど」",
"391001011_13": "「でも、紛れもなく、\\n 『<ruby=わたし>響</ruby>』が選んだ道だから……」",
"391001011_14": "「そっか……」",
"391001011_15": "「……あのね、ヒビキ」",
"391001011_16": "「うん?」",
"391001011_17": "「わたしは、ヒビキにとっての\\n 『陽だまり』じゃないけど……」",
"391001011_18": "「……うん」",
"391001011_19": "「それでも、『止まり木』ぐらいにはなれたらいいなって。\\n そう思ってるから」",
"391001011_20": "「うん、ありがとう」",
"391001011_21": "「だからこれは、\\n ヒビキの、人の友達としてのお願い」",
"391001011_22": "「……?」",
"391001011_23": "「1番会いたい人のところには、\\n 時々でもいいから、会いに行ってあげて」",
"391001011_24": "「ヒビキの道行が、\\n 罪滅ぼしだけじゃないって気付いたなら、なおのこと」",
"391001011_25": "「あなたの『陽だまり』が本当はどう思っているかなんて、\\n わたしにはわかりようがないけれど……」",
"391001011_26": "「大事な誰かを心配し続けることが辛いのは、\\n きっと、誰だって同じだと思うから……」",
"391001011_27": "「…………。",
"391001011_28": " ……考えておく」",
"391001011_29": "(……まったく、もう)",
"391001011_30": "(大変だなぁ、この子の『ミク』も……)",
"391001011_31": "「そろそろ行くよ。\\n 響やマリア、他のみんなにも、よろしく言っておいて」",
"391001011_32": "「うん。\\n 伝えておく」",
"391001011_33": "「ありがとう。\\n じゃあ……また」",
"391001011_34": "「……行ってらっしゃい、ヒビキ」",
"391001011_35": "(そういえば――。\\n ギンくんは、わたしたちを『帰るべき世界へ』帰してくれた",
"391001011_36": "(それが望みだって、全力でぶつかってきてくれた。",
"391001011_37": " それなら、もしかしたら……)",
"391001011_38": "「大事な誰かを心配し続けることが辛いのは、\\n きっと、誰だって同じだと思うから……」",
"391001011_39": "(…………)",
"391001011_40": "(次の世界がどんな世界でも、わたしは進もう。\\n 進み続けるんだ",
"391001011_41": "(迷いながらでもいい。\\n 必要なら立ち止まって、考えながら",
"391001011_42": "(そうして、答えを出しながらまた歩き出せばいい。\\n それが、どうしようもなく、わたしだから――",
"391001011_43": "(――見えてきた。\\n あれが、次の世界だ",
"391001011_44": "(……あれ?)",
"391001011_45": "(次の世界から、\\n 懐かしい匂いがするような……",
"391001011_46": "(それに……温かい。\\n この、温かさ、は……",
"391001011_47": "(まさかッ!?\\n 次の世界って――"
}

View file

@ -0,0 +1,36 @@
{
"391001111_0": "カーテンコールはまたいつか",
"391001111_1": "(ンん……雨?)",
"391001111_2": "(ン……違う。\\n これは、拍手の音だ……",
"391001111_3": "(あ、あれ、身体が動かないッ!?\\n 金縛りッ",
"391001111_4": "(ううん、違う。\\n これ、まだ夢の中なんだ……",
"391001111_5": "(明晰夢っていうんだっけ?\\n 意識は、はっきりしてるけど……",
"391001111_6": "(この街は――)",
"391001111_7": "(知ってる……。\\n 来たのは初めてだけど、わかる",
"391001111_8": "(ここは、あの『物語』の中にあった街。\\n 物語の中で……ヒビキたちが過ごした街だ",
"391001111_9": "「ネコさん、待ってーッ!」",
"391001111_10": "(――えッ!?)",
"391001111_11": "「ンニャッ!」",
"391001111_12": "「あぁッ!",
"391001111_13": " また逃げられちゃった……いつ撫でさせてくれるのかなあ」",
"391001111_14": "(綺麗な銀色の髪……。\\n ひょっとして今の子って――ッ",
"391001111_15": "「ちぇー。",
"391001111_16": " しょうがない、アイスでも食べに行こっかなー」",
"391001111_17": "(やっぱり、あの子だッ!)",
"391001111_18": "(笑ってる……)",
"391001111_19": "(そっか、ちゃんと笑えてるんだ。",
"391001111_20": " あの<ruby=せかい>物語</ruby>じゃない、どこか、別の<ruby=せかい>物語</ruby>で……)",
"391001111_21": "(あ……あれれッ!?\\n どうして、涙が勝手に……ッ",
"391001111_22": "「……」",
"391001111_23": "「きっとまた会えるよ。\\n 誰かが、そう望んだときに――」",
"391001111_24": "「今、確かに、目があった……",
"391001111_25": " 笑ってた、ギンくん……」",
"391001111_26": "「ン……響、どうしたの……?\\n まだ夜中だよ……」",
"391001111_27": "「……あのね。\\n 夢を見たんだ」",
"391001111_28": "「とても素敵な夢。\\n ううん、物語の続き……かな」",
"391001111_29": "「もの……がた……り?」",
"391001111_30": "「ごめんね、起こしちゃって。",
"391001111_31": " 寝ていいよ。続きはまた、起きてから話すから」",
"391001111_32": "「う……ん」",
"391001111_33": "「おやすみ、未来。\\n また、明日――」"
}