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@ -0,0 +1,51 @@
{
"398000111_0": "『幽霊屋敷』への誘い",
"398000111_1": "「ハァハァ……ッ!」",
"398000111_2": "「――ッ!」",
"398000111_3": "「くッ――!」",
"398000111_4": "(今度は包丁が飛んできやがったッ!)",
"398000111_5": "(勝手に家具が揺れて食器が割れたり、包丁が飛んできたり\\n なんなんだこの家はッ",
"398000111_6": "「早くなんとかしないとッ!\\n あたし人じゃ手に余る……ッ」",
"398000111_7": "「よッ、定期報告に来たぞ」",
"398000111_8": "「奏……ッ!」",
"398000111_9": "「どうした?\\n 何かあったのか」",
"398000111_10": "「実は……」",
"398000111_11": "「クリスが帰ってこない……ッ!?」",
"398000111_12": "「うん……。並行世界の定期報告任務から戻ってきたかと思ったら、\\n 向こうで仕事を手伝ってくるとトンボ返りしたっきり……」",
"398000111_13": "「向こうの世界の状況や、こちらの任務状況など諸々を鑑みて\\n 承諾したんだが、帰還予定日を過ぎても戻る気配がないんだ」",
"398000111_14": "「もしかしたら、\\n 想定外の事件に巻き込まれている可能性がある」",
"398000111_15": "「そいつは心配だな。\\n ちなみに、どの並行世界へ行ってるんだ」",
"398000111_16": "「了子くんたちの――\\n いや、『装者がいない並行世界』と言った方が通じるか」",
"398000111_17": "「……なるほど、フィーネのいる並行世界か」",
"398000111_18": "「奏はこの前の宇宙人騒動で行ったところだよね。\\n これから、わたしが様子を見に行ってくるつもり」",
"398000111_19": "「ん……行くのは翼1人だけなのか?」",
"398000111_20": "「それは、えっと……」",
"398000111_21": "「ああ、翼1人だけだ。心苦しいが他の装者たちは\\n 他の任務やギアのメンテナンスで出動が難しくてな……」",
"398000111_22": "「だったら、あたしも協力するよッ!」",
"398000111_23": "「すぐに帰って、\\n あたしの世界のダンナに聞いてくるッ」",
"398000111_24": "「奏、それは――」",
"398000111_25": "「何か問題があるのか?」",
"398000111_26": "「問題というか……\\n 前もそう言って、奏に協力してもらったばかりだから」",
"398000111_27": "「これ以上、奏にも奏の世界の人たちにも\\n 迷惑はかけられないよ」",
"398000111_28": "「迷惑なんかじゃないさ。\\n この世界のやつだって、あたしにとって大切な仲間だ」",
"398000111_29": "「翼だって、\\n 逆の立場ならどうする」",
"398000111_30": "「奏……」",
"398000111_31": "「それに前も言ったじゃないか。\\n あたしの世界には錬金術師たちがいる」",
"398000111_32": "「あいつらがいれば、あたしがいなくても\\n しばらくの間ならどうとでもなるさ」",
"398000111_33": "「だから、翼はクリスのことだけ心配していればいい」",
"398000111_34": "「……わかった。\\n ありがとう、奏ッ」",
"398000111_35": "「ああッ!」",
"398000111_36": "「と、いうわけで、あたしの世界の許可が取れたら\\n 参加していいよな」",
"398000111_37": "「フ……ああ。\\n 今回もよろしく頼む」",
"398000111_38": "「そちらの世界の二課に確認が取れたら\\n 翼と共にすぐ並行世界に向かってもらいたい」",
"398000111_39": "「了解。それじゃあ一旦帰るよ。\\n すぐ戻って来る」",
"398000111_40": "「……頼もしい仲間がいて助かったな」",
"398000111_41": "「はい……ッ!」",
"398000111_42": "(ありがとう、奏……)",
"398000111_43": "「待たせたね。\\n 無事に許可が取れたよッ」",
"398000111_44": "「よし、ではさっそく向かってもらう。\\n 並行世界に着いたら、まず二課に話を聞きに行ってくれ」",
"398000111_45": "「了解ッ!」",
"398000111_46": "「2人とも、クリスくんを頼む」",
"398000111_47": "「ああ、任せてくれッ!」",
"398000111_48": "「はいッ!\\n 雪音と共に必ず戻りますッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,89 @@
{
"398000121_0": "数日前――",
"398000121_1": "「おっさん、定期報告に来た――」",
"398000121_2": "「うわぁぁぁぁッ!\\n 血がッ 僕の尊い身体から血がぁぁぁぁッ」",
"398000121_3": "「おわッ!?」",
"398000121_4": "「博士ッ!\\n しっかりしてくださいッ」",
"398000121_5": "「顔面への損傷ッ! 衝撃の度合いによっては\\n 僕の天才的頭脳に影響がぁぁぁぁッ」",
"398000121_6": "「顔面に損傷って言っても、\\n 戦闘後に転んで鼻血出しただけでしょッ」",
"398000121_7": "「そうですよッ!\\n それより身体の心配をしてくださいッ」",
"398000121_8": "「僕の頭脳は世界の宝なんですよッ!\\n それが損なわれることは、すなわち世界の損失ぅぅぅぅッ」",
"398000121_9": "「わかりましたからッ!\\n ほら、早く医務室に行きましょうッ」",
"398000121_10": "「なんだなんだぁ?\\n やたら忙しそうじゃないか」",
"398000121_11": "「クリスくんッ!」",
"398000121_12": "「ちょうどいいところに来てくれたわね」",
"398000121_13": "「定期報告に来たんだけど……\\n 何かあったのか」",
"398000121_14": "「それが――」",
"398000121_15": "「ノイズの反応を検知ッ!\\n 場所は高速道路付近ですッ」",
"398000121_16": "「了解ッ!」",
"398000121_17": "「僕が向かいます」",
"398000121_18": "「頼んだッ!」",
"398000121_19": "「はい」",
"398000121_20": "「あたしも加勢しようか?\\n まあ、あの人が向かったなら必要ないかもしれないけど」",
"398000121_21": "「もし手伝ってくれるつもりがあるなら、そうだな……\\n できれば別の任務を頼みたい」",
"398000121_22": "「別の任務?」",
"398000121_23": "「ああ。\\n 二課にも関わりのある人物から、直々の依頼だ」",
"398000121_24": "「山川ミユキ博士。\\n 聖遺物研究における一角の人物なのだが……」",
"398000121_25": "「数ヶ月前、研究中の事故に巻き込まれ負傷。\\n 現在も入院中とのことだが、二課に直接連絡を取ってきたんだ」",
"398000121_26": "「しかし、こちらも急務でノイズの対応に追われていて\\n 山川博士の依頼が後回しになっていてな……」",
"398000121_27": "「事情はわかった。\\n それで、その依頼っていうのは、どんな内容なんだ」",
"398000121_28": "「……詳細を伝える前に、1つ確認したい。\\n 君は超常現象に対して抵抗はないか」",
"398000121_29": "「超常現象って……そんなのいつも相手にしてるじゃないか。\\n それとも、何かもっと別のことなのか」",
"398000121_30": "「ああ。\\n 今回は――」",
"398000121_31": "「ノイズの反応を2か所で検知ッ!\\n 場所は市街地と郊外にある工場ですッ」",
"398000121_32": "「了解ッ!\\n 市街地には俺が向かうッ」",
"398000121_33": "「君は、工場の方を頼めるか?」",
"398000121_34": "「仕方ないわね」",
"398000121_35": "「ちょッ、おいッ!\\n 結局、どんな依頼なんだよッ」",
"398000121_36": "「サイキック少女の護衛だッ!」",
"398000121_37": "「サイキック少女ッ!?」",
"398000121_38": "「護衛条件は『女性であること』と\\n 『娘を化け物扱いしないこと』なんだッ」",
"398000121_39": "「ば、化け物扱いだぁ?」",
"398000121_40": "「サイキック少女というからには、\\n 何かしらの超常の力を扱うのだろう。それ故に、おそらく――」",
"398000121_41": "「司令ッ!\\n 急いでくださいッ」",
"398000121_42": "「わかっているッ!!」",
"398000121_43": "「あ、おいッ!」",
"398000121_44": "「すまないッ!\\n 一応検討しておいてくれッ」",
"398000121_45": "「検討ったって……」",
"398000121_46": "(こんな少ない情報でできるかッ!",
"398000121_47": " ……でも、おっさんたちの手はしばらく空きそうにないよな)",
"398000121_48": "(今まで色々と世話になってるし……\\n あたしの世界のおっさんに聞くだけ聞いてみるか……",
"398000121_49": "「仕方ない。一応あたしの世界のおっさんに\\n 行けるかだけ確認してみるッ」",
"398000121_50": "「助かるッ! 護衛対象のいる場所はそこにある資料を\\n 確認してくれッ 気になる点があればいつでも連絡をッ」",
"398000121_51": "「おうッ!」",
"398000121_52": "「……さてと、場所の資料はこれだな。\\n なになに……町はずれの洋館か……」",
"398000121_53": "「戻って、報告して――\\n ったく、やることが一気に増えたな」",
"398000121_54": "クリスが消息を絶って13時間後――",
"398000121_55": "「ここが山川博士に指定された洋館か。\\n 町の中でも、ここだけ雰囲気が違うな……」",
"398000121_56": "「うん。\\n 独特な雰囲気を感じる……」",
"398000121_57": "「でも、棒立ちしているわけにもいかない。\\n 入ってみよう」",
"398000121_58": "「――ごめんください。特異災害対策機動部二課から\\n 派遣された者です。どなたかいらっしゃいませんか」",
"398000121_59": "――――",
"398000121_60": "「……返事がないな」",
"398000121_61": "「ん……\\n 鍵が開いているッ」",
"398000121_62": "「何か問題が起こっているのかもしれない。\\n とりあえず中に入ろうッ」",
"398000121_63": "「……玄関には誰もいないみたいだな」",
"398000121_64": "「奥の方にいるのかも。\\n 行ってみよう――」",
"398000121_65": "「いきなりなんだッ!?」",
"398000121_66": "「翼ッ!」",
"398000121_67": "「大丈夫ッ!\\n それより気をつけてッ」",
"398000121_68": "「くッ!\\n 何か飛んできて……ッ」",
"398000121_69": "「果物ナイフ……ッ!?",
"398000121_70": " なんでこんなものが……?」",
"398000121_71": "「――ッ、今度はなんだッ!?」",
"398000121_72": "「見てッ!\\n 周囲の家具が揺れている……ッ」",
"398000121_73": "「地震ってわけでもない……\\n どうなってるんだッ」",
"398000121_74": "「――やめろってッ!」",
"398000121_75": "「この声ッ!\\n ホールの方かッ」",
"398000121_76": "「雪音……ッ!\\n 今行くぞッ」",
"398000121_77": "「翼ッ!」",
"398000121_78": "「雪音ッ!\\n どこだッ」",
"398000121_79": "「……いないみたいだな」",
"398000121_80": "「そんな……。\\n 声は確かに、こっちから聞こえたのに……」",
"398000121_81": "「さっきのあたしたちみたいに、\\n 何かから攻撃を受けて逃げたのかもしれない」",
"398000121_82": "「……そういえば、家具の揺れや攻撃が収まってる。\\n あれはいったいなんだったのかな……」",
"398000121_83": "「あたしにもわからない……けど、\\n あいつがここにいることはわかった」",
"398000121_84": "「他のことは、まだ考えるには材料が足りない、か。\\n 今は合流することを優先しようッ」",
"398000121_85": "「そうだね。\\n この異常事態の中、人で行動するのは避けたい」",
"398000121_86": "「また、さっきのようなことが起こるかもしれない。\\n わたしたちも分断されないよう、気をつけて進もう」"
}

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@ -0,0 +1,46 @@
{
"398000211_0": "はじめましての挨拶",
"398000211_1": "「……ここにもいないみたいだな」",
"398000211_2": "「…………」",
"398000211_3": "「翼、そんなに暗い顔すんなって」",
"398000211_4": "「さっき声を聞いた感じ無事そうだったし、大丈夫さ。\\n でも、早く見つけてやらないとなッ」",
"398000211_5": "「……うんッ!\\n 先を急ご――」",
"398000211_6": "「――」",
"398000211_7": "「え――?」",
"398000211_8": "「どうした?」",
"398000211_9": "「今、誰かに名前を呼ばれたような気が……」",
"398000211_10": "「その感じだと、\\n 探してるあいつってわけじゃなさそうだな」",
"398000211_11": "「うん……」",
"398000211_12": "「……実はあたしも、さっきから妙な気配を感じてるんだ。\\n まるで誰かに見られているような――」",
"398000211_13": "「奏も?\\n ……わたしの気にしすぎかと思っていたけど、この屋敷は――」",
"398000211_14": "「うわッ!?」",
"398000211_15": "「……びっくりした。\\n ホウキが倒れただけか……」",
"398000211_16": "「どうにもこう雰囲気のある屋敷のせいで、\\n ちょっとしたことにでも驚いちまうね……」",
"398000211_17": "「か、奏。\\n この部屋には何もなさそうだし、次に行こう」",
"398000211_18": "「ほら、まだ部屋もたくさんあるみたいだし……ッ!」",
"398000211_19": "「そうだな。\\n 他の場所を探しに行こう」",
"398000211_20": "「……もしかして翼も、\\n 怖がっていたりする」",
"398000211_21": "「――ッ!?\\n そ、そんなことは……」",
"398000211_22": "「この部屋にもいないな」",
"398000211_23": "「次の部屋を探しに――」",
"398000211_24": "「…………」",
"398000211_25": "「雪音ッ!」",
"398000211_26": "「…………」",
"398000211_27": "「では、ないな……。\\n 貴様、何者だ」",
"398000211_28": "「本物はどこにいる?\\n さっき攻撃を仕掛けてきたのもおまえか」",
"398000211_29": "「…………」",
"398000211_30": "「――ッ、素直に答える気はないらしいな……ッ!」",
"398000211_31": "「だったらッ!」",
"398000211_32": "「まずは大人しくなってもらうッ!\\n ――はあああッ」",
"398000211_33": "「消えたッ!?」",
"398000211_34": "「待てッ!\\n いい加減にしろッ」",
"398000211_35": "「――ッ!?」",
"398000211_36": "「翼ッ!」",
"398000211_37": "「おいッ!\\n 急に走るなッ」",
"398000211_38": "「あッ!」",
"398000211_39": "「先輩たちッ!\\n どうしてここにッ」",
"398000211_40": "「おまえを探しに来たんだよッ!\\n 元気そうでよかったッ」",
"398000211_41": "「…………」",
"398000211_42": "「きみは……?」",
"398000211_43": "「……えーと。\\n とりあえず、お互い自己紹介から始めるとしようか」"
}

View file

@ -0,0 +1,27 @@
{
"398000221_0": "「はじめまして。\\n あたしは天羽奏だ。よろしくな」",
"398000221_1": "「わたしは風鳴翼。\\n よろしく」",
"398000221_2": "「…………」",
"398000221_3": "「あー……\\n この子は今回の依頼主の娘さんみたいでさ」",
"398000221_4": "「みたい、っていうか、確定だけどな。\\n 貰った資料によると『山川<ruby=レイ>玲</ruby>』って名前らしい」",
"398000221_5": "「どうにもあたしは信用されてないのか、\\n ほとんど何も話しちゃくれないが……」",
"398000221_6": "「そうだったのか……\\n ま、そうだとしても、名前が知れてよかったよ、レイ」",
"398000221_7": "「……そうね。\\n 『幽霊』には相応しい呼び名でしょう」",
"398000221_8": "「あなたたちも、そう呼べばいい」",
"398000221_9": "「ゆ、幽霊?」",
"398000221_10": "「幽霊などと……。",
"398000221_11": " <ruby=れいろう>玲瓏</ruby>のレイ。綺麗な名前じゃないか」",
"398000221_12": "「…………」",
"398000221_13": "「えーっと……2人は、あたしの受けた任務について\\n どのくらい把握してるんだ」",
"398000221_14": "「二課の代わりに任務を引き受けた雪音が\\n この場所へ向かった――ということだけ聞いている」",
"398000221_15": "「なるほど。\\n そうだったんだな」",
"398000221_16": "「……あッ!」",
"398000221_17": "「ん?",
"398000221_18": " ――どうしたッ!? おまえ、顔が真っ青に……」",
"398000221_19": "「――来るッ!」",
"398000221_20": "「オバケが来る……ッ!」",
"398000221_21": "「オバケ?」",
"398000221_22": "「まずい――ッ!」",
"398000221_23": "「ちょっ、どこに行くんだッ!?」",
"398000221_24": "「2人はそいつの側にいてやってくれッ!\\n そいつがそう言うときは――イズが出るッ」"
}

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@ -0,0 +1,32 @@
{
"398000222_0": "「雪音。\\n 今のイズは、いったい……ッ」",
"398000222_1": "「窓から見てたぞッ!\\n どうして、あんなところにイズがッ」",
"398000222_2": "「……2人とも、まずは情報共有をしたい」",
"398000222_3": "「あの子に話を聞かれたくない。\\n こっちに来てくれないか」",
"398000222_4": "「……わかった」",
"398000222_5": "「おい」",
"398000222_6": "「……何?」",
"398000222_7": "「ちょっと隅で仕事の話をするから、\\n 部屋から出るときは、あたしに声をかけるんだぞ」",
"398000222_8": "「ん……」",
"398000222_9": "「では、改めていくつか質問をさせてくれ」",
"398000222_10": "「まず最初に、どうして帰る日付を過ぎても\\n 戻ってこなかったんだ」",
"398000222_11": "「うッ。それについては、その、悪い……。\\n 色々あって帰れなかったんだ」",
"398000222_12": "「二課に対して影響力がある人物からの依頼ってことで\\n この館に来たんだが、依頼主は入院中だそうでさ」",
"398000222_13": "「じゃあ、あの子は、\\n この広い館にたった人で……」",
"398000222_14": "「ああ。だからまぁ、\\n 最初は母親も心配して依頼くらいするかなって思ったんだよ」",
"398000222_15": "「けど……」",
"398000222_16": "「だが……資料によると、\\n 依頼内容はあの子の護衛なのだろう」",
"398000222_17": "「二課にわざわざ護衛を頼むなんてよっぽどだぞ。\\n あの子、何か特別な事情があるのか」",
"398000222_18": "「ああ、その通りだ」",
"398000222_19": "「……2人もここに来て、\\n ポルターガイストや何かに襲われたんじゃないのか」",
"398000222_20": "「ということは、そっちも変な影みたいなのに\\n 襲われたのか……ッ」",
"398000222_21": "「影ッ!?\\n あいつ、そんなことまでできんのかッ」",
"398000222_22": "「その反応を見るに、影については知らなかったようだな」",
"398000222_23": "「ああ。あたしが体験したのは家具が勝手に揺れたり、\\n 刃物が飛んできたりだ」",
"398000222_24": "「結論から言うと、ポルターガイストや影は\\n ……あの子が生み出してるんだ」",
"398000222_25": "「なんだって……ッ!?」",
"398000222_26": "「あの子はいったい何者なんだ?」",
"398000222_27": "「サイキック少女……。\\n 要するに『超能力』が使えるってことらしい」",
"398000222_28": "「他に書いてあったのは、\\n この屋敷でひとりぼっちで過ごしていること」",
"398000222_29": "「そして、どういうわけか……あいつの周りで\\n イズが頻繁に出現するってことだ」"
}

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@ -0,0 +1,119 @@
{
"398000311_0": "ノイズを呼ぶ幽霊",
"398000311_1": "「事情はわかった……。",
"398000311_2": " だが、にわかには信じがたいな……」",
"398000311_3": "「ああ。ポルターガイストを操ったり、特定の人物の周りで\\n 頻繁にイズが現れるなんて話、聞いたことがない」",
"398000311_4": "「あたしも資料を見たときはそう思ったよ。",
"398000311_5": " だけど、身をもって体験しちゃったからな」",
"398000311_6": "「あたしが屋敷に入ったときも、明らかにあたしを狙って\\n ポルターガイストをけしかけてきたし……」",
"398000311_7": "「2人のときもそうだったんじゃないのか?」",
"398000311_8": "「それはまぁ、確かにそうだな。\\n そこを前提に色々考えた方が早い……ってことか」",
"398000311_9": "「……1つ聞いてもいいか?」",
"398000311_10": "「ん?」",
"398000311_11": "「あの子を見た手前、\\n こう言うのは憚られるのだが……」",
"398000311_12": "「明確な『攻撃』を受けた以上、\\n 一旦退くべきだったのではないか」",
"398000311_13": "「普段の雪音であれば、わたしに言われるまでもなく\\n そうしていただろう」",
"398000311_14": "「なのに、なぜ今回は帰還日を過ぎても\\n 戻ってこなかったんだ……」",
"398000311_15": "「そりゃ、そうなんだけど……」",
"398000311_16": "「……あいつを見てたら、\\n なんつーか……昔の自分を思い出したんだ」",
"398000311_17": "「…………」",
"398000311_18": "(この広い屋敷の中、ひとりぼっちで過ごす少女……)",
"398000311_19": "(そんな彼女の孤独を、\\n 雪音は感じ取ったのか……",
"398000311_20": "「……そうか。\\n 話してくれて助かった」",
"398000311_21": "「……おう」",
"398000311_22": "「とりあえず、情報の共有はこんなところだ。\\n 他に聞きたいことはあるか」",
"398000311_23": "「ひとまず大丈夫だ。\\n ありがとな」",
"398000311_24": "「それにしても、不思議な力か。……うーん、\\n どんな原理なのかわかれば対処できそうだけど――」",
"398000311_25": "「そうだッ! あの子とスキンシップを取って\\n 確かめるってのはどうだ」",
"398000311_26": "「はぁッ!?\\n なんでそうなるんだよッ」",
"398000311_27": "「不思議な力を持ってるなら、\\n 他人を操るような力とかを持ってる可能性もあるだろ」",
"398000311_28": "「危険視してるってわけじゃないが……\\n あたしたちは実際おまえの『影』も見てるしな」",
"398000311_29": "「合流するまで単独行動を取ってたんだ。\\n 何かしら影響を受けてるかもしれない」",
"398000311_30": "「そんなわけ――」",
"398000311_31": "「確かに……ッ!」",
"398000311_32": "「先輩までッ!?」",
"398000311_33": "「ってなわけで、確かめるために\\n ちょっと行ってくるなッ」",
"398000311_34": "「雪音はそこで待っていてくれッ!」",
"398000311_35": "「……案ずるな、奏もわたしも、\\n あの子をいたずらに傷つけるような真似はしないつもりだ」",
"398000311_36": "(……ったく、先輩ってあの人が絡むと\\n いつもと調子が変わるんだよなぁ",
"398000311_37": "(大事な人ってのは、\\n ……ま、影響を受けるもんか",
"398000311_38": "「…………」",
"398000311_39": "(本を読んでいる……)",
"398000311_40": "(机の上にもたくさん本が置いてあるし、\\n 読書が好きなのだろうか ……よしッ",
"398000311_41": "「やあ」",
"398000311_42": "「――ッ!」",
"398000311_43": "「わたしも隣で本を読んでもいいだろうか?」",
"398000311_44": "「…………」",
"398000311_45": "「あ、あの、きみ……」",
"398000311_46": "(これは、わたしを警戒して離れているのか……?\\n それとも隣を空けてくれているのだろうか……",
"398000311_47": "(できれば後者であってほしい……ッ!)",
"398000311_48": "「おッ、この本懐かしいなッ!\\n あたしも読んだことあるよ」",
"398000311_49": "「主人公3人組のかけあいが面白いんだよな。\\n ストーリーもシンプルな冒険モで、わくわくするしッ」",
"398000311_50": "(奏ッ!)",
"398000311_51": "「…………。\\n ……好きなの」",
"398000311_52": "「ああッ!\\n このシリーズ面白いよなッ」",
"398000311_53": "「…………うん……」",
"398000311_54": "「だよなーッ!」",
"398000311_55": "「レイ、だっけ?\\n おまえ、頭に糸屑が――」",
"398000311_56": "「――ッ!」",
"398000311_57": "「うわわッ!」",
"398000311_58": "「ポルターガイスト……ッ!\\n どうしてッ」",
"398000311_59": "「――ッ、\\n ご、ごめん……なさいッ」",
"398000311_60": "「……収まった」",
"398000311_61": "「…………」",
"398000311_62": "「<size=25>あたし、\\n なんか気に障るようなことしちゃったかな……</size>」",
"398000311_63": "「<size=25>奏のせいじゃない。\\n たぶん、わたしが不用意だったせいで……</size>」",
"398000311_64": "「<size=25>違う違うッ!\\n ったく、先輩ってなんでこの人相手だとそうなるんだ</size>」",
"398000311_65": "「<size=25>たぶん、撫でられたのに驚いて\\n 暴発しちゃったんだと思う</size>」",
"398000311_66": "「<size=25>撫でられたのに……?",
"398000311_67": " ……なるほど、そういったことに慣れてないってことか</size>」",
"398000311_68": "「<size=25>ああ。あいつは人馴れしてないタイプだと思う。\\n 過度なスキンシップは控えた方がいい</size>」",
"398000311_69": "「<size=25>了解だ。",
"398000311_70": " ……悪いことしちゃったな</size>」",
"398000311_71": "「<size=25>あとで謝りにいこう。",
"398000311_72": " それと……</size>」",
"398000311_73": "「<size=25>接した感じ、操られているような感覚はないが、彼女が\\n ポルターガイストを起こしている信憑性は高まったな</size>」",
"398000311_74": "「<size=25>ポルターガイストや影を生み出す謎の能力か……。\\n 説明を受けたときは『サイキック少女』とだけ</size>」",
"398000311_75": "「<size=25>ああ。\\n 資料にも生まれつきの能力だって記載があった</size>」",
"398000311_76": "「<size=25>けど、ノイズとも関係がある感じなら……\\n もしかしたら聖遺物が関わってる可能性だってある</size>」",
"398000311_77": "「<size=25>……ありえるかもな</size>」",
"398000311_78": "「<size=25>彼女自身の力、そして聖遺物……\\n 両方の線で探っていこう</size>」",
"398000311_79": "「あ……ああ……ッ!\\n 嫌だ、来ないでッ」",
"398000311_80": "「どうしたんだッ!?」",
"398000311_81": "「いや、いやぁぁぁッ!」",
"398000311_82": "「きゃあああッ!」",
"398000311_83": "「外からも悲鳴がッ!?」",
"398000311_84": "「あッ、窓の外ッ!」",
"398000311_85": "「ノイズッ!?\\n また湧きやがったかッ」",
"398000311_86": "「急ごうッ!」",
"398000311_87": "「うんッ!」",
"398000311_88": "「あたしも……ッ!」",
"398000311_89": "「もうイヤだ……。\\n 来ないで……来ないでよ……ッ」",
"398000311_90": "「――ッ!」",
"398000311_91": "(こんなに怯えてる子を1人にゃできないッ!)",
"398000311_92": "「――ッ、あたしはこいつの側にいるッ!\\n 人に任せてもいいか」",
"398000311_93": "「もちろんッ!」",
"398000311_94": "「その子と一緒にいてやってくれッ!」",
"398000311_95": "「頼んだッ!」",
"398000311_96": "「ああッ!\\n 行くぞ翼ッ」",
"398000311_97": "「うんッ!」",
"398000311_98": "「そ、その姿……\\n やっぱり、あなたたちも戦えるの」",
"398000311_99": "「いかにもッ!\\n どんな毒牙をも、きみに届かせないと約束しようッ」",
"398000311_100": "「わたしを……護って、くれるっていうの……?\\n あなたたちが……」",
"398000311_101": "「――ッ!?」",
"398000311_102": "「おい、どうしたッ!?」",
"398000311_103": "「わ、わからないッ!\\n おまもりが、急に熱く……ッ」",
"398000311_104": "「ダメ……ッ! これが、わたしの力なら収まってよッ!\\n ママがくれた大事なおまもりなのッ 変なことしないでッ」",
"398000311_105": "「力を制御できてないのか……ッ!?\\n 落ち着け、あたしが側にいるッ」",
"398000311_106": "「これは……ッ!?」",
"398000311_107": "「ギアが、変化した……ッ!?」",
"398000311_108": "――――",
"398000311_109": "「――ッ!?」",
"398000311_110": "「翼、今のって……」",
"398000311_111": "「うん、わたしにも聞こえた……\\n 何を言っていたかまでは聞き取れなかったけれど……」",
"398000311_112": "「この力はきっと、レイを護るための――」",
"398000311_113": "「え……?」",
"398000311_114": "「ヤダヤダ、来ないでよッ!\\n 誰か、助けて……ッ」",
"398000311_115": "「――ッ!!\\n どうやら、戸惑ってる時間は無さそうだッ」",
"398000311_116": "「あ、ああ……。\\n 行こう、奏ッ」"
}

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@ -0,0 +1,22 @@
{
"398000312_0": "「大丈夫かッ!?」",
"398000312_1": "「は、はい……ッ!」",
"398000312_2": "「助けてくれてありがとうございますッ!」",
"398000312_3": "「いえ、無事で何よりです」",
"398000312_4": "「うう……ッ、\\n やっぱり、この屋敷の近くを通るんじゃなかった……ッ」",
"398000312_5": "「だから言ったのよ……ッ!\\n 他の人たちみたいに、遠回りして帰ろうって……ッ」",
"398000312_6": "「最近も、この辺りでノイズが出たって聞いたわ……ッ!\\n やっぱり、ここにはイズを呼ぶ幽霊がいるのよッ」",
"398000312_7": "「ノイズを呼ぶ……幽霊……?」",
"398000312_8": "「その話、もう少し詳しく教えてもらえないか?」",
"398000312_9": "「む、無理ですッ!\\n 喋ったら呪われるかもしれない……ッ」",
"398000312_10": "「そうですよッ!\\n あなたたちも早くここから離れないとッ」",
"398000312_11": "「……ご心配、痛み入ります。\\n しかし、わたしたちは大丈夫ですから、お話を聞かせて――」",
"398000312_12": "「ぼ、僕たち急いでるのでッ!\\n それじゃあッ」",
"398000312_13": "「あッ、ちょっとッ!",
"398000312_14": " ……行っちまった」",
"398000312_15": "「話すらできないなんて……。\\n そんなに、この屋敷が恐れられている……」",
"398000312_16": "「あの様子じゃ、町の人から得られる情報は\\n 期待できないかもな」",
"398000312_17": "「幽霊の話も気になるけど、\\n 今は屋敷にいる人のことが心配だ」",
"398000312_18": "「このギアのことも、事態を解決するヒントになるかもしれないし、\\n 戻ったら、あの子に話を聞いてみよう」",
"398000312_19": "「そうだね。\\n 話をしてもらえるよう、わたしたちにできることは――」"
}

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@ -0,0 +1,62 @@
{
"398000321_0": "「2人とも大丈夫かッ!?」",
"398000321_1": "「ああ、こっちはなんともない。\\n 任せちゃって、悪いな」",
"398000321_2": "「気にするな。",
"398000321_3": " それに雪音、そのギアは……ッ!」",
"398000321_4": "「あたしも変身したらこうなってた。この力、なんだってんだ……?\\n 悪いモじゃないように感じるけど……」",
"398000321_5": "「わたしたちも判断しかねる。",
"398000321_6": " だがひとまず、2人が無事で何よりだ」",
"398000321_7": "「すごい……。\\n 本当にあのオバケをやっつけられるんだ」",
"398000321_8": "「オバケとは……。\\n イズのことか ",
"398000321_9": "「うん……ママがオバケって呼んでたから、\\n わたしも、そう呼ぶようになったんだ」",
"398000321_10": "「そういうことなら、ノイズは――\\n オバケはあたしたちに任せとけッ」",
"398000321_11": "「……でも、今は上手くいってるだけで、\\n これからどうなるかわからないし……」",
"398000321_12": "「大丈夫、おまえは何が出たって、\\n 安心してあたしたちの後ろにいればいい」",
"398000321_13": "「なんてったって、あたしたちはあのオバケをやっつける\\n プロフェッショナルだからなッ」",
"398000321_14": "「なッ、2人ともッ!」",
"398000321_15": "「えッ……\\n ま、まあ、プロといえばプロ……なのか」",
"398000321_16": "「確かに、そう言えなくもない……」",
"398000321_17": "「……本当……?」",
"398000321_18": "「ああッ! あたしたちがいれば大丈夫だッ!\\n 大船どころか豪華客船に乗った気分でいていいぞッ」",
"398000321_19": "「…………」",
"398000321_20": "「……だからさ、困ってることがあったら教えてくれないか?」",
"398000321_21": "「……あのオバケ、\\n 気がついたら、わたしの周りに出るようになったんだ」",
"398000321_22": "「それに、\\n いつオバケが出てくるか……わたし、わかるの」",
"398000321_23": "「出てくるのがわかるようになったのは、最近。\\n ……ママが死んじゃってからだけど」",
"398000321_24": "「……ありがとな、思い出すのもキツいだろ。\\n 無理のない範疇で話してもらえるか……」",
"398000321_25": "「ん……」",
"398000321_26": "「……わたしは、その……小さい頃から不思議な力があって。\\n それでママ、わたしの力を研究してくれてた」",
"398000321_27": "「ママは元々、オバケや、\\n 不思議な道具の研究者をしてたんだ」",
"398000321_28": "「不思議な道具には、壊れちゃっても無限に再生するものとか、\\n 天気を操れるようなものとかもあるんだって」",
"398000321_29": "(それって……)",
"398000321_30": "(ああ、おそらく資料にあったように、\\n この子の母親は聖遺物の研究者。そして……",
"398000321_31": "「でも、ママはお仕事中の事故で死んじゃった」",
"398000321_32": "「――ッ!」",
"398000321_33": "(あれ……?\\n だけど、こいつの母親から依頼がきたんじゃなかったか……",
"398000321_34": "(バタついてたから、\\n おっさんたちがあたしに対して、ミスって伝達したのか",
"398000321_35": "「わたしの力が強くなったのは、それから……」",
"398000321_36": "「ママがいなくなってからは、ママがくれたおまもりを持って\\n 親戚のお家にお邪魔させてもらってたの」",
"398000321_37": "「でも、わたしの周りでオバケが出るようになっちゃったから\\n わたしはここで人で過ごすことになっちゃった……」",
"398000321_38": "「仕方ないよね。\\n みんな、オバケは……イズは怖いもの」",
"398000321_39": "「それは……」",
"398000321_40": "「わたしが住み出してから、ここは『ノイズを呼ぶ幽霊』の\\n お屋敷だって、町で認識されてるみたい」 ",
"398000321_41": "「……実際、変な力も使えるし、\\n 友達だっていない」",
"398000321_42": "「あなたたちの、そのヘンテコな鎧だってそう。\\n 最初に変身したときは、そんな形じゃなかったのに……」",
"398000321_43": "「……ごめんなさい。\\n きっと、わたしのせい」",
"398000321_44": "「それは……",
"398000321_45": " まだ、そうと決まったわけじゃない」",
"398000321_46": "「……」",
"398000321_47": "「だとしても、\\n 疑うのには十分……でしょ」",
"398000321_48": "「わたしは、災いを呼ぶ幽霊。\\n そう扱われるのに、ふさわしい……」",
"398000321_49": "「幽霊には、人間の世界に居場所なんてない……。\\n だから、わたしの居場所だってないんだよ」",
"398000321_50": "「……おまえは幽霊なんかじゃない。\\n あたしたちとだって普通に喋ってるじゃないか」",
"398000321_51": "「…………」",
"398000321_52": "「オバケを倒してくれるなら、この屋敷は\\n 好きに使ってくれていいよ。……ちょっとお水飲んでくる」",
"398000321_53": "「あ、おいッ!」",
"398000321_54": "「……すぐそこの部屋だから。\\n ドアを開けておけば見えるよ」",
"398000321_55": "「…………」",
"398000321_56": "「あの子をこのままにはしておけないな……」",
"398000321_57": "「あたしも……いや、きっと3人とも同じ気持ちだ。\\n そうだろ」",
"398000321_58": "「ああ。\\n あいつを、あんなに悲しい顔させたままでいられるか」",
"398000321_59": "「あいつの不思議な力の原因を見つけて、\\n 自分を幽霊だなんて、度と言わせないようにしてやる」"
}

View file

@ -0,0 +1,76 @@
{
"398000411_0": "『レイ』",
"398000411_1": "「……よしッ!\\n それじゃあ、まずは腹ごしらえからだッ」",
"398000411_2": "「腹が減っては戦はできぬ、だからなッ!\\n 町で何かうまそうなもんを買ってくるよッ」",
"398000411_3": "「なるほど。食べ物で釣るといえば聞こえは悪いけど……\\n 食事を共にすることで、あの子との距離も縮まるかもしれない」",
"398000411_4": "「そんなに簡単にいくかぁ?\\n 食べて語ってとなると、どうにもあのバカを思い出すな……」",
"398000411_5": "「おッ、戻ってきたッ!」",
"398000411_6": "「これから昼飯を買いに行くんだけどさ、\\n レイは何か食べたいものないか なんでも買ってくるぞッ」",
"398000411_7": "「……別にない。\\n お姉さんの好きにして」",
"398000411_8": "「じゃあ……嫌いなものとか、\\n 食べられないものはあるか」",
"398000411_9": "「……特に、ない」",
"398000411_10": "「わかったッ! じゃあ……そうだな。\\n あたしがうまそうって思ったものを買ってくる」",
"398000411_11": "「あと、お姉さんじゃ誰かわかりにくいからさ\\n 『奏』って呼んでくれたら嬉しいんだけど」",
"398000411_12": "「……検討しておく」",
"398000411_13": "「ハハハッ!\\n 案外手厳しいな」",
"398000411_14": "「そういえば、\\n おまえの下の名前って『レイ』でよかったんだよな」",
"398000411_15": "「…………これ」",
"398000411_16": "「ん、なんだ?\\n 小さな袋……見せてくれるのか」",
"398000411_17": "「あ、袋に名札がついてる……なるほど、",
"398000411_18": " 『玲』って書いて『レイ』なのか」",
"398000411_19": "「先ほど聞いたときも思ったが……\\n やはり、綺麗な名だな」",
"398000411_20": "「……」",
"398000411_21": "「…………」",
"398000411_22": "「名札つきの袋なんていいな。\\n なあ、その中にレイのママがくれたおまもりが入ってるのか」",
"398000411_23": "「よかったら、あたしにもちょっと見せ――」",
"398000411_24": "「――ッ!",
"398000411_25": " ダメッ!!」",
"398000411_26": "「ポ、ポルターガイストッ!?」",
"398000411_27": "「いつもより揺れがでかい……ッ!\\n おい、これ、おまえがやっているのかッ」",
"398000411_28": "「そ、そうだけど……\\n うまく、止められない……ッ」",
"398000411_29": "「どうしよう……ッ!",
"398000411_30": " 止まってッ! 早く、止めないと……ッ!」",
"398000411_31": "「あ、あれ……どうして、\\n いつもみたいに上手くいかないの……ッ」",
"398000411_32": "「え……ッ!?」",
"398000411_33": "(消えた……ッ!",
"398000411_34": " これが先輩たちが襲われたっていう影か……ッ!)",
"398000411_35": "「……揺れが収まった」",
"398000411_36": "「今回のは揺れが少し大きかったな……」",
"398000411_37": "「はぁ、はぁ……」",
"398000411_38": "「……レイ、大丈夫か?」",
"398000411_39": "「……」",
"398000411_40": "「……ポルターガイストを起こしているのは、\\n 本当にきみなのだな……」",
"398000411_41": "「だが、全てを意図的に起こしているわけではない……\\n そうだね」",
"398000411_42": "「――ッ!」",
"398000411_43": "「大丈夫だ、わたしたちはきみの敵ではない。\\n だからこそ、きみに質問したいことがある」",
"398000411_44": "「……」",
"398000411_45": "「最初、ポルターガイストや\\n 影のようなものをけしかけてきたのはきみなのか」",
"398000411_46": "「……そう。\\n ごめんなさい……」",
"398000411_47": "「アレができるようになったのは最近なの……」",
"398000411_48": "「小さい頃からフォークを曲げちゃったり、\\n お皿が飛んでしまうことはあったけど……」",
"398000411_49": "「ママが死んでから、わたしの力は強くなってる。\\n きっと、本物の幽霊に近づいてるんだね……」",
"398000411_50": "「…………」",
"398000411_51": "「ごめんな。\\n あたしが、袋の中を勝手に見ようとしたから……だよな」",
"398000411_52": "「それ、大事なものなのか?」",
"398000411_53": "「……この袋もおまもりも、ママが作ってくれたものだから。\\n 触っちゃダメ」",
"398000411_54": "「大切なものだったんだな……\\n 本当に悪かった」",
"398000411_55": "「……わかってもらえたなら、別にいい」",
"398000411_56": "「……これは、わたしの大切な宝物で、\\n たったつのおまもりだから」",
"398000411_57": "「……」",
"398000411_58": "「――ッ!?」",
"398000411_59": "「ん?\\n なんだよ、いきなり血相変えて、どうした――」",
"398000411_60": "「「きゃあああ……ッ!」」",
"398000411_61": "「悲鳴ッ!\\n イズかッ」",
"398000411_62": "「あ、あ、あ……ッ!」",
"398000411_63": "「こっちの窓から外の様子が見えるッ!」",
"398000411_64": "「きゃーッ!」",
"398000411_65": "「誰か助けてーッ!」",
"398000411_66": "「子供ッ!? この近くは人が寄りつかないんじゃ――",
"398000411_67": " なんでこんなところに……?」",
"398000411_68": "「ああぁぁぁぁぁぁぁッ!」",
"398000411_69": "「来るッ!\\n またオバケが来るッ」",
"398000411_70": "「まずい、外にいる人数が多いッ!\\n 全員で行くぞッ」",
"398000411_71": "「了解ッ!」",
"398000411_72": "「おまえはここに隠れてろ、いいなッ!」",
"398000411_73": "「う、うん……ッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,33 @@
{
"398000412_0": "「これで、最後ッ!!」",
"398000412_1": "「こっちの奴らも倒し終わったッ!",
"398000412_2": " それで……」",
"398000412_3": "「…………」",
"398000412_4": "「この様子、ちょっとばかり心配だな……」",
"398000412_5": "「あんたたち、怪我はないかい?」",
"398000412_6": "「……あ、えっと、そ、その……」",
"398000412_7": "「……ちょっと心配だな。",
"398000412_8": " 立てるか? あたしに掴まって――」",
"398000412_9": "「館の中で、無事を確認させてほしい」",
"398000412_10": "「外にいたやつらはこれで全員か?\\n ひとまずは安心……なのかね」",
"398000412_11": "「おい。改めて聞くけど、\\n 怪我とかしてないか」",
"398000412_12": "「だ、大丈夫です」",
"398000412_13": "「はぐれた子や、動けない子もいないか?」",
"398000412_14": "「それも大丈夫です。\\n あの……ありがとうございました」",
"398000412_15": "「いいってことよ。\\n あんたたちが無事でよかった」",
"398000412_16": "「早くに駆けつけられたのは、\\n レイがいち早くイズに気づいてくれたおかげだな」",
"398000412_17": "「……レイ?」",
"398000412_18": "「うん? ああ、そうだ。",
"398000412_19": " きみたちは、もしやレイの知り合いなのか?」",
"398000412_20": "「レイってもしかして、この館の――」",
"398000412_21": "「だ、大丈夫……?\\n わたしも、もう隠れてなくていい」",
"398000412_22": "「ああ、みんな無事だぞッ!\\n おまえもこっち来いよ、レイ」",
"398000412_23": "「よか――」",
"398000412_24": "「「――あッ!?」」",
"398000412_25": "「ユウレイが出てきたッ!」",
"398000412_26": "「わ、わたしは……ッ!」",
"398000412_27": "「おいッ、何言って――」",
"398000412_28": "「やっぱり、ユウレイのせいで\\n イズが出るんだよッ」",
"398000412_29": "「わたしのお母さんだって、\\n そうに違いないって言ってたもんッ」",
"398000412_30": "「……ッ!」"
}

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@ -0,0 +1,45 @@
{
"398000421_0": "「やっぱり、ユウレイのせいで\\n イズが出るんだよッ」",
"398000421_1": "「わたしのお母さんだって、\\n そうに違いないって言ってたもんッ」",
"398000421_2": "「……ッ!」",
"398000421_3": "「お、おいッ!\\n いきなり何言い出すんだッ」",
"398000421_4": "「だって……ッ!」",
"398000421_5": "「もー、バカッ!」",
"398000421_6": "「親の言うことなんてアテにならないから、\\n アタシたちで確かめにきたんでしょ」",
"398000421_7": "「それは……そうだけど……」",
"398000421_8": "「…………」",
"398000421_9": "「ねえ、あんたさ。\\n なんで学校来ないの」",
"398000421_10": "「…………」",
"398000421_11": "「あんた、チョーノーリョクが使えるって言ってたのは嘘で、\\n 本当はユウレイだから変なことができるんじゃないの」",
"398000421_12": "「こ、この力は、嘘なんかじゃ……」",
"398000421_13": "「じゃあ、何?\\n ユウレイって噂はホントなんだ」",
"398000421_14": "「――ッ!」",
"398000421_15": "「こら、よさないか」",
"398000421_16": "「そういう言い方は感心しないな。\\n 冗談でも、言われて傷つくことだってあるんだぞ」",
"398000421_17": "「……なんなの、オバサンたち」",
"398000421_18": "「「オバ……ッ!?」」",
"398000421_19": "「今はアタシが喋ってるの。助けてくれたことには\\n お礼を言うけど、オバサンたちは黙っててくれる」",
"398000421_20": "「「…………」」",
"398000421_21": "「……」",
"398000421_22": "「……ったく。\\n で、あんたは喋りなさいよ」",
"398000421_23": "「アタシはあんたのチョーノーリョクとか、\\n もともと信じてないの」",
"398000421_24": "「チューニビョーっていうんだっけ?\\n どーせそんなとこでしょ」",
"398000421_25": "「……そんな、ことじゃ……」",
"398000421_26": "「じゃあなんだって言うの?\\n あんた、学校来てるときはタロットとかしてるだけだし……」",
"398000421_27": "「それなのにさ、ママたちがノロイだとか言ってるから、\\n バカバカしくて確認しにきたってわけ」",
"398000421_28": "「まあ、わたしはちょっとだけ、\\n あんたがユウレイかもって思ったりするけど……」",
"398000421_29": "「それでも、\\n ユウレイと友達ってちょっとステキかなって……」",
"398000421_30": "「トクベツ感っていうか、そういうのあるよね。\\n ……で、ホントのとこどうなの」",
"398000421_31": "「え、えっと……」",
"398000421_32": "「おまえたち、いい加減に――」",
"398000421_33": "「――あんたのママも呪われてたって話。\\n 本当なの」",
"398000421_34": "「――ッ!!\\n 違うッ」",
"398000421_35": "「きゃぁぁぁあッ!?」",
"398000421_36": "「ゆ、揺れて……ッ!」",
"398000421_37": "「やめてよ、なんでそんなこと言うのッ!?」",
"398000421_38": "「わたしのママは……\\n わたしは、呪われてなんかいないッ」",
"398000421_39": "「ノイズがッ!」",
"398000421_40": "「さっき倒したばかりなのに、またッ!」",
"398000421_41": "「話はあとだッ!\\n 全員でここを切り抜けるぞッ」",
"398000421_42": "「ああ。――おい、おまえらッ!\\n 絶対にあたしたちの後ろから動くんじゃないぞッ」"
}

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@ -0,0 +1,22 @@
{
"398000511_0": "迷子の幽霊少女",
"398000511_1": "「わたし、やっぱりここにいたらだめだ、",
"398000511_2": " だめなんだ……ッ!」",
"398000511_3": "「あッ!?\\n ちょっとユウレイ、どこ行くのよッ」",
"398000511_4": "「おいこら、待てッ!\\n 人になったら危な――」",
"398000511_5": "「――ッ!?\\n まるであいつの感情に呼応するみたいに、増えやがったッ」",
"398000511_6": "「はあぁぁぁッ!」",
"398000511_7": "「先輩ッ!」",
"398000511_8": "「雪音は子供たちを護ることに集中をッ!\\n わたしたちの背後には、体たりとも通すものかッ」",
"398000511_9": "「ああ、速攻で倒すんだッ!\\n それで、奥に走ってったレイを追いかけようッ」",
"398000511_10": "「ったりめーだッ!\\n こいつらも、あいつも……誰人傷つけさせないッ」",
"398000511_11": "「はぁ、はぁ……ッ!」",
"398000511_12": "「……アハハ。\\n ほら、誰も追ってこない……」",
"398000511_13": "「わかってた。だってわたしは幽霊だもん。",
"398000511_14": " ……だから、誰も心配なんかしてくれない」",
"398000511_15": "「あの人たちだって……\\n やっぱり、同じだった」",
"398000511_16": "「信じられるのは……",
"398000511_17": " ママだけッ!」",
"398000511_18": "「……?」",
"398000511_19": "「ママのおまもりが、光ってる……?」"
}

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@ -0,0 +1,18 @@
{
"398000512_0": "「よし、捌いたか……」",
"398000512_1": "「うん、これで全部――」",
"398000512_2": "「悪いッ! あたしはあいつを追いかける。\\n 後のことは任せていいか」",
"398000512_3": "「もちろんッ!」",
"398000512_4": "「頼んだぞ」",
"398000512_5": "「ああ、行ってくるッ!」",
"398000512_6": "「さて……\\n みんな、大丈夫か」",
"398000512_7": "「は、はい。\\n ありがとうございます……」",
"398000512_8": "「よし、全員無事みたいだな。\\n それじゃあ……」",
"398000512_9": "「もしよかったら、あんたたちが知ってることを、\\n あたしたちに教えてもらえないかな」",
"398000512_10": "「……ど、どうする?」",
"398000512_11": "「……いいよ。\\n オバ……ううん、お姉さんたちに教えてあげよう」",
"398000512_12": "「本当かッ!?」",
"398000512_13": "「……ま、2回もピンチを助けてもらったし。\\n 仕方ないかなって」",
"398000512_14": "「だから、お姉さんたちも、\\n アタシの質問にいくつか答えてよ」",
"398000512_15": "「フフッ……\\n ああ、承知した」"
}

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@ -0,0 +1,18 @@
{
"398000521_0": "「…………」",
"398000521_1": "「よかった……ッ!\\n やっぱりここにいたか」",
"398000521_2": "「――ッ!」",
"398000521_3": "「ちょッ、なんで逃げるんだよッ!」",
"398000521_4": "「おい、待てってッ!」",
"398000521_5": "「追いかけてこないでよッ!」",
"398000521_6": "(放っておけるわけないだろッ!\\n そんな悲しそうな顔してるやつをッ",
"398000521_7": "「来ないで……ッ!」",
"398000521_8": "「わッ!」",
"398000521_9": "「危ないだろうがッ!」",
"398000521_10": "(机に椅子、花瓶やらなんやら、壊していいのかこれッ!?",
"398000521_11": " さ、さすがにこの量を壊すなってのは――ッ!)",
"398000521_12": "「うわあッ!」",
"398000521_13": "「いたた……机投げてくるとか、勘弁しろよ。\\n あたしじゃなけりゃ大怪我だぞ」",
"398000521_14": "「……はぁ、完全に見失っちまった。\\n まいったな……ん」",
"398000521_15": "(机の引き出しから、何か飛び出してる……?)"
}

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@ -0,0 +1,55 @@
{
"398000611_0": "ほんとうのこと",
"398000611_1": "「なんだこれ?\\n よっ……と」",
"398000611_2": "「これは……アルバムか?\\n すごい分厚い――」",
"398000611_3": "「つぁッ!」",
"398000611_4": "「いたた……」",
"398000611_5": "(なんだ、アルバムから静電気?\\n いや、紙で指を切った……",
"398000611_6": "「あれ? 傷が無い……。\\n じゃあ、今の痛みはいったい……」",
"398000611_7": "「……とりあえず、アルバムを元に戻すか」",
"398000611_8": "「……あれ?",
"398000611_9": " この写真、あいつじゃないか……ッ!」",
"398000611_10": "(勝手に見るのは気が引けるけど……これがあいつのものなら、\\n このアルバムに何か、ヒントがあるかも……",
"398000611_11": "「……今よりもっと幼いな……でも、笑ってる。",
"398000611_12": " なんだよ、こんなに可愛く笑えるんじゃないか……」",
"398000611_13": "「ってことは、\\n この隣に写ってるのがあいつのママってことか」",
"398000611_14": "「この写真は誕生日みたいだな……\\n ケーキの前で寄り添って、幸せそうに笑ってる」",
"398000611_15": "『玲、12歳の誕生日ッ!』",
"398000611_16": "「……この綺麗な文字は\\n たぶんあいつが書いたものじゃないな」",
"398000611_17": "(つまり、このアルバムは\\n あいつのママが作ったものってことだ……",
"398000611_18": "『3月22日、ママとずっと一緒にいると言ってくれた。\\n 嬉しいッ ママもずーっと一緒にいるからねッ』",
"398000611_19": "『3月31日、ママがずっと護ってあげると伝えた。\\n とても喜んでくれたッ』",
"398000611_20": "『この笑顔を護るためなら、ママはなんだってできちゃう。\\n 私が無敵のママでいられるのは、玲のおかげ』",
"398000611_21": "『今扱ってる聖遺物はちょっと気難しいモノだけど、\\n ママは玲がいる限りこんなモには負けないのだッ』",
"398000611_22": "『それに、この聖遺物の性質を応用すれば、\\n 玲の力を和らげるためのおまもりを作れるかも……』",
"398000611_23": "「…………」",
"398000611_24": "(どのページも、笑顔の母娘の写真が並んでる。\\n メッセージも、枚ずつ丁寧に書かれてあるな",
"398000611_25": "『玲がママの似顔絵を描いてくれたッ!\\n たくさん褒めたら、恥ずかしいよって笑ってた』",
"398000611_26": "『うーん、天使……\\n 私、こんなに幸せなママでいいのかしら』",
"398000611_27": "(……そういえば本当に小さいころ、ママもあたしのアルバムを\\n こんな風に作ってくれてたっけ",
"398000611_28": "(ママの作ってくれたアルバムを、パパと一緒に\\n リビングのソファに座ってよく見たのを覚えてる",
"398000611_29": "(写真だけじゃなくて、動画もたくさん撮ってくれたな)",
"398000611_30": "(パパのバイオリンに合わせて歌を唄うあたしを\\n ママがよく撮影してた",
"398000611_31": "(最後はママも一緒に唄って終わるのがお決まりだったよな)",
"398000611_32": "「…………」",
"398000611_33": "「……次のページから、写真の雰囲気が変わってる。この部屋……\\n まさか、病室か」",
"398000611_34": "「『事故の後遺症で入院』……そういえば、あいつのママ\\n 事故にあったって言ってたな……」",
"398000611_35": "(写真に『すぐに帰るから』って走り書きがある……)",
"398000611_36": "「――ッ!」",
"398000611_37": "(次のページから写真が1枚も無い……。\\n あいつの言う通りなら……きっとこの辺りで亡くなったんだ",
"398000611_38": "「……いつ頃から、このアルバムを作ったのかな。\\n 最初のページは……」",
"398000611_39": "「――ッ!」",
"398000611_40": "「……どういうことだよ、これッ!?」",
"398000611_41": "「あいつ、\\n なんで本当のこと言わないんだよ……ッ」",
"398000611_42": "「いや、言えなかったのか……」",
"398000611_43": "「大好きなママが急に死んで、周りからは幽霊扱いされて、\\n ひとりぼっちになっちまったんだからな……」",
"398000611_44": "「急にいなくなっちまうなんて、\\n きっと想像もしてなかったはずだ……」",
"398000611_45": "「……あたしだって、\\n そんなこと考えてすらいなかった」",
"398000611_46": "「あのときはパパとママを失って悲しくて……」",
"398000611_47": "「たった1人で世界に放り出されたみたいで、\\n すごく、すごく怖かった……」",
"398000611_48": "「周りがみんな敵に見えて、\\n 戦うしかないって思って、それで――」",
"398000611_49": "「……そんな中であいつは、\\n 自分自身が訳のわからない状態になってる……」",
"398000611_50": "「そんなの、ずっと不安に違いない……ッ!」",
"398000611_51": "「誰にも助けてもらえない今のままじゃ、あいつはこの先、\\n 誰にも心を開けなくなって本当に独りになっちまう……ッ」",
"398000611_52": "「……今のあいつはひとりぼっちにさせちゃいけない。\\n あたしが探してやらないとッ」"
}

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@ -0,0 +1,58 @@
{
"398000621_0": "「……なるほど、きみたちはあの子のクラスメイトなのか」",
"398000621_1": "「まあ、クラスメイトだからって\\n 別に仲いいわけでもなかったけど……」",
"398000621_2": "「ユウレイは占いとかオカルト好きみたいだったから、\\n そもそもアタシたちとグループ違うしね」",
"398000621_3": "「へえ……あの子、占いが好きなのか。\\n 全然知らなかったよ」",
"398000621_4": "「別のグループにいた子なのに、\\n きみはずいぶん詳しいんだな」",
"398000621_5": "「べ、別にッ! 昼休みによく占いの雑誌読んでたから\\n そうかなって思っただけだしッ」",
"398000621_6": "「でも、ユウレイのいるところで、\\n 今日みたいなことが起こるようになっちゃったんだよね……」",
"398000621_7": "「最初はもちろん偶然かもって思ってたんだけど、\\n 毎回ユウレイがいるところで、ってなると……」",
"398000621_8": "「そうそう。それで騒ぎになっちゃって、ユウレイのやつ\\n 保護者から『呪われてるッ』とか言われ出したし」",
"398000621_9": "「それは……あんまりだろ」",
"398000621_10": "「オトナってどうしても頭がカタイっていうか、ジョーシキに\\n トラワレすぎて、わからないものを怖がるっていうか」",
"398000621_11": "「アタシのママに比べたら、お姉さんたちは\\n まだ柔らかいみたいだから、話が通じてよかった」",
"398000621_12": "「それできみたちも、\\n その……彼女を責めに来たのか……」",
"398000621_13": "「はぁ?\\n そんなわけないでしょ」",
"398000621_14": "「では、\\n どうして彼女にあんな質問をしたんだ……」",
"398000621_15": "「あんたたちには関係な――」",
"398000621_16": "「…………」",
"398000621_17": "「…………。\\n ……気に食わないから」",
"398000621_18": "「なぜ?」",
"398000621_19": "「だってさ『ノロイ』なんてあるわけないじゃん。\\n だから、あいつは普通の人間なわけ」",
"398000621_20": "「それなのにさ、さも『自分は特別です』『幽霊です』みたいな\\n 顔しちゃってさ……そういうとこが気に入らないの」",
"398000621_21": "「そうそうッ! わたしたちがめっちゃ声かけてるのに\\n オドオドしちゃって反応してくんないしッ」",
"398000621_22": "「少しなら、あたしらだって占いとかオカルト話とか\\n 全然聞くのにさッ」",
"398000621_23": "「それは、つまり……」",
"398000621_24": "「要するに、きみらの輪に入れようとしたけど、\\n 断られたから意地悪しちゃってたってわけか」",
"398000621_25": "「は……はぁッ!?\\n 全然違うんですけどッ」",
"398000621_26": "「それだと、あたしたちが仲良くしたいみたいじゃんッ!」",
"398000621_27": "「フフッ……そうだな。\\n 違うのか」",
"398000621_28": "「違わ……ないけど……」",
"398000621_29": "「…………」",
"398000621_30": "「なるほどな……。\\n そういうことだったのか」",
"398000621_31": "「でもな、おまえら。\\n 誰だって、自分のペースってもんがある」",
"398000621_32": "「それがいきなり乱されりゃ驚くし、驚いてるうちに\\n ガンガンこられたら、答えられるものだって答えられない」",
"398000621_33": "「おまえらだって、お母さんから、\\n 身に覚えのないことを『やったでしょ』って強く言われたら」",
"398000621_34": "「まず驚いて、うろたえるんじゃないか?」",
"398000621_35": "「……」",
"398000621_36": "「心配してたけど……素直になれないだけで、いい子たちだな。\\n ま、ちょっと意地悪だったかもしれないけど」",
"398000621_37": "「子供は分別はつかないかもしれないが、馬鹿じゃない。",
"398000621_38": " ……今回はあたしたちの方が馬鹿だったかもしれないな」",
"398000621_39": "「ったく。\\n アタマの硬いオトナにならないよう気をつけないとな」",
"398000621_40": "「……そうだね」",
"398000621_41": "(……そういえば幼い頃、\\n 少しだけ似たような経験をしたことがある",
"398000621_42": "(風鳴の家に生まれたわたしは、周囲の大人たちの言動から\\n 微妙な立ち位置の子供なのだと唐突に理解した瞬間があった",
"398000621_43": "(わたしも一歩間違えれば、玲と同じようなことを\\n していたかもしれないし、されていたかもしれない",
"398000621_44": "(そうならずに済んだのは、近しい大人たちが\\n わたしを見守り、支えてくれたからだ",
"398000621_45": "「まだ、大人になれた気はしないけど……わたしたちも年上なら、\\n 年下の子が悩んでいたら手助けくらいはしないとね」",
"398000621_46": "「ああ、少しくらいの世話焼きはやらせてもらおう。\\n あの子たちが、お互い一歩踏み込めるように」",
"398000621_47": "「うんッ!」",
"398000621_48": "「…………」",
"398000621_49": "「レイッ!\\n 戻ってきてくれてよかったッ」",
"398000621_50": "「…………」",
"398000621_51": "「待って、奏。\\n 何か様子がおかしい……ッ」",
"398000621_52": "「レイの後ろから、ノイズがッ!?」",
"398000621_53": "「くそッ、間に合わなかったか――ッ!」",
"398000621_54": "「雪音……ッ!",
"398000621_55": " くッ、いったいどうなってるんだッ!?」"
}

View file

@ -0,0 +1,60 @@
{
"398000711_0": "かつての少女、少女を探す",
"398000711_1": "逃げ出してしまった玲を1人追ってきたクリスは、",
"398000711_2": "館の一室で母娘のアルバムを見つけ――",
"398000711_3": "「誰にも助けてもらえない今のままじゃ、あいつはこの先、\\n 誰にも心を開けなくなって本当に独りになっちまう……ッ」",
"398000711_4": "「……今のあいつはひとりぼっちにさせちゃいけない。\\n あたしが探してやらないとッ」",
"398000711_5": "「……かなりたくさん、家具を飛ばしちゃった。",
"398000711_6": " ハハ……ほんとに幽霊じみてきたな、わたしの力……」",
"398000711_7": "「でも……\\n これであの人も、もう追ってこないはず」",
"398000711_8": "「…………」",
"398000711_9": "「大丈夫……わたしにはママがいるッ!\\n わたしにはママだけがいてくれればいい……ッ」",
"398000711_10": "「――見つけたッ!」",
"398000711_11": "「――ッ!?」",
"398000711_12": "「な、なんで……ッ!?」",
"398000711_13": "「あ、待てこらッ!\\n 逃がすかッ」",
"398000711_14": "「もう、しつこい……ッ!」",
"398000711_15": "「くッ!\\n また家具を飛ばして抵抗か……ッ」",
"398000711_16": "「だけどな、\\n もう当てられると思うなよッ」",
"398000711_17": "「ぜ、全然当たらない……ッ!?",
"398000711_18": " なんでッ!?」",
"398000711_19": "「ったく……ろくに戦ったことのないやつの\\n 狙い方なんて、あたしにはお見通しなんだよッ」",
"398000711_20": "「そんな……ッ!」",
"398000711_21": "「ほら、鬼ごっこはもう終わりだ」",
"398000711_22": "「――ッ!」",
"398000711_23": "「……なんで? どうして追いかけてくるの?\\n わたしのことなんて、どうでもいいでしょ」",
"398000711_24": "「期待させないでよ、もう終わりにしてッ!\\n わたしのことは放っておいてッ」",
"398000711_25": "「放っておけるわけないだろッ!」",
"398000711_26": "「――ッ!」",
"398000711_27": "「……おまえを見てると、\\n 昔の自分を思い出すんだよ……」",
"398000711_28": "「……急にパパもママもいなくなって、だけど周りの大人は、\\n 誰も手を差し伸べてくれなくて……ッ」",
"398000711_29": "「寂しくて辛いけど、強がって生きていくしかなかった\\n あのときのことをな……」",
"398000711_30": "「…………。\\n ……あなたも、ママがいないの」",
"398000711_31": "「……ああ。",
"398000711_32": " だからこそ、おまえに伝えなきゃいけないことがある」",
"398000711_33": "「いない人やモノに縋るのは、もうやめろ」",
"398000711_34": "「――ッ!」",
"398000711_35": "「どうしてそんなこと言うのッ!? ママがいないなら……ッ!\\n あなたなら、わたしの気持ちわかるはずでしょッ」",
"398000711_36": "「わかるから言ってるんだ。\\n それに縋っていても、おまえは救われない」",
"398000711_37": "「そんなこと……ッ!\\n そんなの、わたしが番わかってるッ」",
"398000711_38": "「どんなにママがくれたおまもりを大事にしても、\\n 祈っても……ママはもう戻ってこないッ」",
"398000711_39": "「だけど、それでも……わたしの心の拠り所は\\n もうこれだけなのッ ",
"398000711_40": "「周りに友達や仲間がいるあなたとは違うのッ!」",
"398000711_41": "「なんだこのポルターガイストの規模はッ!?\\n 部屋全体が揺れてるぞッ」",
"398000711_42": "「こんなことしたいわけじゃないだろッ!?\\n ちょっと冷静になれッ」",
"398000711_43": "「――ッ!\\n だ、だって……」",
"398000711_44": "「……ダメッ、コントロールできない……ッ!\\n どうしたら――」",
"398000711_45": "「きゃあッ!」",
"398000711_46": "「棚が倒れる――",
"398000711_47": " 危ないッ!」",
"398000711_48": "「大丈夫かッ!?」",
"398000711_49": "「あ……」",
"398000711_50": "「――ッ、ま、護ってくれなくていいったらッ!\\n わたしには、このおまもりだけあれば……」",
"398000711_51": "「……えッ!?\\n おまもりが無いッ」",
"398000711_52": "「嘘だろ、落としたのかッ!?」",
"398000711_53": "「――ッ!?\\n こんなときにお出ましかッ」",
"398000711_54": "「な……なんでオバケがッ!?",
"398000711_55": " わからなかった、なんで……ッ」",
"398000711_56": "「つべこべ言わずにあたしの後ろへッ!」",
"398000711_57": "「どんだけ嫌がられようが、\\n おまえはあたしが護ってやるッ」"
}

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@ -0,0 +1,24 @@
{
"398000712_0": "「こいつでトドメだッ!」",
"398000712_1": "「……ふう」",
"398000712_2": "「どうして? 今まではオバケが出てくるときは\\n わかったはずなのに……なんで……」",
"398000712_3": "「……超能力ってのも、万能じゃないんだろ。",
"398000712_4": " だからこそ、おまえのママは研究してたんじゃないのか?」",
"398000712_5": "「おまえがその力で困らないように。\\n その力に頼らなくても生きていけるように……ってさ」",
"398000712_6": "「……」",
"398000712_7": "「……ま、調子が悪いときもあるだろってことだ。",
"398000712_8": " とりあえず、少し落ち着け。な?」",
"398000712_9": "「……ん」",
"398000712_10": "(ポルターガイストが収まってよかった。\\n でも、どうして急にあんな規模になったんだ……",
"398000712_11": "(やっぱり、\\n こいつが大きく感情を乱すことに関係してんのか……",
"398000712_12": "「あ、あのッ!」",
"398000712_13": "「どうした?」",
"398000712_14": "「迷惑だってわかってる……けど、その、お願いがあって……。",
"398000712_15": " ママのくれたおまもり、……一緒に探してほしい……」",
"398000712_16": "「お願いッ!\\n あれが無いと、わたし、わたし……ッ」",
"398000712_17": "「……わかった。",
"398000712_18": " 一緒に探そう」",
"398000712_19": "「あとな、覚えとけ。\\n 迷惑なんかじゃない」",
"398000712_20": "「おまえの大切なものだから、\\n あたしは一緒に探すんだ」",
"398000712_21": "「…………」"
}

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@ -0,0 +1,35 @@
{
"398000721_0": "「しょ……っと。",
"398000721_1": " うーん、この辺には無いみたいだな」",
"398000721_2": "「もう少し奥の方を探すか……」",
"398000721_3": "「おまもり、ママのくれたおまもり、どこ……?\\n あれが無いと、わたし、人になっちゃう……ッ」",
"398000721_4": "「…………」",
"398000721_5": "「……なあ、おまえさ。\\n 本当にそうなのか」",
"398000721_6": "「――え?」",
"398000721_7": "「あたしは、そうじゃないと思うぞ」",
"398000721_8": "「わかったようなこと……ッ!\\n 勝手なこと言わないでッ」",
"398000721_9": "「わたしをわかってくれる人なんて、\\n ママしかいないんだからッ」",
"398000721_10": "「わたしを愛してくれたのはママだけッ!\\n わたしにはママしかいないのッ」",
"398000721_11": "「ママから貰ったおまもりが無くなったら\\n ママが完全にいなくなっちゃうッ」",
"398000721_12": "「わかった、わかったよ……ッ!」",
"398000721_13": "「……ママ、絶対見つけるからね。\\n 待っててね……」",
"398000721_14": "(完全に意固地になってるな)",
"398000721_15": "(おまえの世界はママだけじゃないって伝えたいのに、\\n なかなか上手くいかないな……",
"398000721_16": "「――あッ!」",
"398000721_17": "「あったぞ、おまもりッ!」",
"398000721_18": "「本当ッ!?」",
"398000721_19": "「これは、しばらくあたしが預かって……」",
"398000721_20": "「ダメッ!\\n 返してッ」",
"398000721_21": "「あ……ッ!",
"398000721_22": " こら、バカッ!」",
"398000721_23": "「――ッ!?」",
"398000721_24": "「すごい……ッ! おまもりを持ったら、\\n オバケが出てくることが、またわかるようになったッ」",
"398000721_25": "「なんだってッ!?」",
"398000721_26": "「ねえ、聞いてッ!\\n もうすぐ、わたしの近くにオバケがたくさん現れるッ」",
"398000721_27": "「な……ノイズがッ!?」",
"398000721_28": "「やっぱりこのおまもりは、\\n わたしを護ってくれる力なんだよッ」",
"398000721_29": "「きっと、わたしが怖いモノから逃げられるように、\\n ママが教えてくれてるんだッ」",
"398000721_30": "「だから……これは渡さない。絶対渡さないッ!",
"398000721_31": " あなたなんかに、取り上げられたりしないッ!!」",
"398000721_32": "「待てッ!\\n そっちにはみんながいるんだぞッ」"
}

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@ -0,0 +1,27 @@
{
"398000811_0": "玲瓏の下から覗く",
"398000811_1": "時は遡り、",
"398000811_2": "翼と奏が、少女たちに対応していた直後――",
"398000811_3": "「くそッ、間に合わなかった――ッ!」",
"398000811_4": "「の……ノイズッ!?」",
"398000811_5": "「雪音……ッ!",
"398000811_6": " くッ、いったいどうなってるんだッ!?」",
"398000811_7": "「まずいな。レイがノイズを連れてきたみたいに見えて、\\n あの子たちが動揺しかねない……ッ」",
"398000811_8": "「…………」",
"398000811_9": "「ねえ、あのノイズ\\n 今、ユウレイと一緒に現れたよねッ」",
"398000811_10": "「まさか、ユウレイが連れてきたんじゃ……ッ!?」",
"398000811_11": "「じゃあ、あの噂は本当だったってこと……ッ!?」",
"398000811_12": "「……ッ!」",
"398000811_13": "「……ほらね、誰もわたしのことなんか信じてくれない。",
"398000811_14": " やっぱり、わたしにはママだけなんだ……ッ!」",
"398000811_15": "「きゃ……ッ!?\\n か、家具が飛んで――ッ」",
"398000811_16": "「危ないッ!」",
"398000811_17": "「おい、落ち着けッ!\\n これじゃ、おまえが――」",
"398000811_18": "「――ッ! 止められないでも、止まらないでも……",
"398000811_19": " どうせわたしがやってるんだ、仕方ないでしょッ!」",
"398000811_20": "「に、逃げなきゃ、\\n こんなところにいられないッ」",
"398000811_21": "「待つんだッ!\\n わたしたちの後ろに――ッ」",
"398000811_22": "「まずいッ!\\n 誤解のせいで余計にパニックになってるッ」",
"398000811_23": "「けど、今誤解を解いている余裕はないッ!\\n イズの脅威から少女たちを護るのが先決だッ」",
"398000811_24": "「ちくしょうッ!\\n それなら、さっさと倒すまでだッ」"
}

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@ -0,0 +1,19 @@
{
"398000812_0": "「……なんとか、\\n 誰にも怪我させないうちに倒せたみたいだな」",
"398000812_1": "「ああ……」",
"398000812_2": "「だが……」",
"398000812_3": "「…………」",
"398000812_4": "「やっぱり、ユウレイって呪われてるんじゃないの?\\n さっきイズを連れて戻ってきたしッ」",
"398000812_5": "「やっぱり大人たちの言うとおり、\\n ユウレイがイズを呼んでるってこと……」",
"398000812_6": "「違うッ!",
"398000812_7": " あれは、たまたまタイミングがかぶっただけで――」",
"398000812_8": "「おまえも……\\n なんで否定しないんだよッ」",
"398000812_9": "「……ハ。\\n 否定して……どうなるの」",
"398000812_10": "「ほ、ほら。みんなも見たよね?\\n ユウレイがイズと一緒に歩いてきたところッ」",
"398000812_11": "「きみたち、\\n まずは落ち着いて話を――」",
"398000812_12": "「今さらなんの話を聞くわけッ!?\\n わたし、もう帰るッ」",
"398000812_13": "「あ、あたしも……\\n やっぱり、イズは怖いし……」",
"398000812_14": "「待ってくれッ!\\n 本当に違うんだッ」",
"398000812_15": "「…………」",
"398000812_16": "「――ねえ。\\n さっきの、本当にあんたがやったの」"
}

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@ -0,0 +1,46 @@
{
"398000821_0": "「――ねえ。\\n さっきの、本当にあんたがやったの」",
"398000821_1": "「……え?」",
"398000821_2": "「どうなの?\\n 答えてよ」",
"398000821_3": "「…………そ、それは」",
"398000821_4": "「そんなことあるわけないだろう。\\n あれはタイミングが悪かっただけで――」",
"398000821_5": "「お姉さんは黙っててッ!\\n アタシは、こいつに聞いてるのッ」",
"398000821_6": "「お、おまえ、\\n ほんっとに口悪いな……ッ」",
"398000821_7": "「そんな言い方したら、\\n 喋れるものも喋れなく――」",
"398000821_8": "「…………」",
"398000821_9": "(……今は見守ろうってことか。\\n わかったよ",
"398000821_10": "「…………」",
"398000821_11": "「ねえ、あんたがやったの?」",
"398000821_12": "「…………ち、違う……」",
"398000821_13": "「……そう」",
"398000821_14": "「……アタシも帰る。\\n それじゃ」",
"398000821_15": "「――ッ!」",
"398000821_16": "「…………」",
"398000821_17": "「……あんまり気落ちするなよ。\\n あの子たちの誤解なら、あたしたちも解くのを手伝うからさ」",
"398000821_18": "「今日は色々なことがあったから、\\n あの子たちにも考える時間が――」",
"398000821_19": "「そんなの、嘘だッ!」",
"398000821_20": "「やっぱり誰もわたしのことをわかってくれないッ!\\n この力は、ママしか受け入れてくれないんだッ」",
"398000821_21": "「またポルタ―ガイストが……ッ!」",
"398000821_22": "「だけど、今までの規模と全然違うッ!\\n 範囲がどんどん広がっていってるッ」",
"398000821_23": "「誰もわたしを理解してくれない……ッ!",
"398000821_24": " だったらッ!」",
"398000821_25": "「やめろッ!\\n そんなことしたらまた――」",
"398000821_26": "「くそッ!\\n またイズがッ」",
"398000821_27": "「もしや、\\n この子の感情に呼応しているのか……ッ」",
"398000821_28": "「彼女の持つ『おまもり』が、仮に聖遺物だとして――\\n まさか、歌を介さずフォニックゲインが高まるのか……ッ」",
"398000821_29": "「レイの超能力が直接、聖遺物に作用している\\n ――って可能性はあるかもしれないね」",
"398000821_30": "「今はそんなこと、どうだっていいッ!」",
"398000821_31": "「落ち着けッ!\\n こんなことしても何つおまえのためにならないッ」",
"398000821_32": "「そんなの、もうどうだっていい……」",
"398000821_33": "「誰とも一緒にいられないなら……",
"398000821_34": " わたしは――幽霊は、1人でいるべきなんだ……ッ!」",
"398000821_35": "「独りなのを受け入れれば、\\n もうきっと寂しくなんてならない」",
"398000821_36": "「だから、わたしは――ッ!」",
"398000821_37": "「――おまえは、\\n 人を受け入れてなんかいないッ」",
"398000821_38": "「それを受け入れてるっていうなら、\\n どうしておまえは泣いてるんだよッ」",
"398000821_39": "「――え」",
"398000821_40": "「どうして、涙なんか……ッ!",
"398000821_41": " わたしは、わたし、は……ッ!」",
"398000821_42": "「うッ、くッ……ぐすッ",
"398000821_43": " う――うわああぁぁぁぁんッ!」"
}

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@ -0,0 +1,36 @@
{
"398000822_0": "「どうして……ぐすッ\\n なんで、涙がとまらないの……ッ」",
"398000822_1": "「1人でいるって、決めたのに……ッ!」",
"398000822_2": "「おまえの本心は、\\n それを認めてないってことだッ」",
"398000822_3": "「でも、わたしは幽霊だから……ッ!\\n オバケが寄ってくる、幽霊だから……ッ」",
"398000822_4": "「誰かといると、その人を傷つけちゃうッ!」",
"398000822_5": "「じゃあ、あたしと一緒にいろッ!」",
"398000822_6": "「――え」",
"398000822_7": "「おまえの周りにオバケが出たら、あたしが退治してやるッ!\\n オバケ退治なんて、あたしなら朝飯前だッ」",
"398000822_8": "「あたしだっているぞ。",
"398000822_9": " なんてったって、オバケ退治のプロなんだからなッ!」",
"398000822_10": "「ああ。わたしたちはきみを1人にはしない。\\n わたしたちを、きみのための剣と思ってくれて構わない」",
"398000822_11": "「――ッ!",
"398000822_12": " だって……だってッ!」",
"398000822_13": "「もう、やめてよ……そんなこと言われたら、\\n わたし、どうしたらいいかわからなくなっちゃうよッ」",
"398000822_14": "「わからないなら――\\n だから、まずはあたしたちを頼れってんだッ」",
"398000822_15": "「1人になろうとすんなッ!」",
"398000822_16": "「ママの手を離したくないのはわかる。\\n でも……おまえのママは、もう心の中にしかいないんだ」",
"398000822_17": "「――ッ!」",
"398000822_18": "「だからこそ、\\n おまえは誰かと手を繋いでなきゃダメなんだよ……」",
"398000822_19": "「い……いらないッ!\\n わたしには、ママが――ママからもらったおまもりが……ッ」",
"398000822_20": "「そのおまもりをママから貰って\\n それ以降、力が強くなったんじゃないのかッ」",
"398000822_21": "「――ッ!」",
"398000822_22": "「こうなったのは、そのおまもりのせいだって、\\n 本当はおまえもわかってるんじゃないのかッ」",
"398000822_23": "「――ちがう。",
"398000822_24": " 違う違う違うッ!」",
"398000822_25": "「おまもりの『せい』じゃなくて、\\n おまもりの『おかげ』だッ」",
"398000822_26": "「ポルターガイストの勢いが増したッ!」",
"398000822_27": "「くッ、勢いの底がまるで見えない……ッ!」",
"398000822_28": "「これはママが『わたしがわたしを護れるように』\\n 残してくれた力なのッ」",
"398000822_29": "「ママがもういない――",
"398000822_30": " そんなこと、わかってるッ!!」",
"398000822_31": "「だからこそ、わたしは1人で生きていかなきゃいけないッ!\\n この力は、そのための力ッ」",
"398000822_32": "「だから渡せない、触れさせないッ! どうせ誰も、\\n 幽霊に触れようとはしてくれないんだからッ」",
"398000822_33": "「この……バカやろうッ!」"
}

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@ -0,0 +1,82 @@
{
"398000911_0": "ママ",
"398000911_1": "「ポルターガイストの勢いが増したッ!」",
"398000911_2": "「くッ、勢いの底がまるで見えない……ッ!」",
"398000911_3": "「これはママが『わたしがわたしを護れるように』\\n 残してくれた力なのッ」",
"398000911_4": "「ママがもういない――",
"398000911_5": " そんなこと、わかってるッ!!」",
"398000911_6": "「だからこそ、わたしは1人で生きていかなきゃいけないッ!\\n この力は、そのための力ッ」",
"398000911_7": "「だから渡せない、触れさせないッ! どうせ誰も、\\n 幽霊に触れようとはしてくれないんだからッ」",
"398000911_8": "「この……バカやろうッ!」",
"398000911_9": "「じゃあ、さっきの子たちはなんだってんだよッ!」",
"398000911_10": "「わたしに、\\n 嫌なことを言いにきただけじゃないッ」",
"398000911_11": "「ノイズは人を殺す。おまえだってわかってるだろッ!\\n そんなことは誰だって知ってる常識だッ」",
"398000911_12": "「それが頻繁に現れると噂される場所に、危険を冒してまで、\\n わざわざ嫌いなやつに、どうでもいいやつに会いにくるか」",
"398000911_13": "「――ッ!」",
"398000911_14": "「『ママのおまもり』が大事なのはわかる。\\n けど、それにばっかり目が行き過ぎだ」",
"398000911_15": "「おまえ……そのままじゃ、\\n 本当に何も見えなくなっちまうぞ」",
"398000911_16": "「そんなこと、言われなくたってわかってる……ッ!",
"398000911_17": " でも、怖いのッ!」",
"398000911_18": "「怖くて、仕方ない……ッ!\\n 視線を上げたら、相手がどんな顔でわたしを見ているのか……」",
"398000911_19": "「もし、本当に……\\n 幽霊を見るみたいな目で見られてたら」",
"398000911_20": "「1人じゃとても、受け止められない……ママのくれた\\n おまもりがないと、わたしはきっと壊れちゃうッ」",
"398000911_21": "「ママだって、わたしのことを護ってくれるって言ったッ!",
"398000911_22": " なら、それに縋って何が悪いのッ!!」",
"398000911_23": "「わたしは……ッ!!」",
"398000911_24": "「――ッ!?\\n ま、眩し……ッ」",
"398000911_25": "「この光、あのおまもりから……ッ!?」",
"398000911_26": "「なんだよこれ、ゆりかご……ッ!?\\n 『おまもり』がレイを取り込んだのか……ッ」",
"398000911_27": "「それに、なんだッ!?\\n 変化したギアが、突然重く……ッ」",
"398000911_28": "「ぐ……ッ!\\n もしかしたら、このギアは……」",
"398000911_29": "「あいつの『おまもり』が……いや、あいつのママが、\\n あいつを護ってほしいと、あたしたちに託した力だったんじゃないか」",
"398000911_30": "「ならばこの状態は……1度は力を貸したものの、わたしたちでは\\n レイを護るに能わずと、判じられたということか……ッ」",
"398000911_31": "「…………」",
"398000911_32": "「あいつ、繭で雁字搦めに……ッ!?",
"398000911_33": " くそ、今助け――ッ!!」",
"398000911_34": "「避けろッ!!」",
"398000911_35": "「――言われなくてもッ!!」",
"398000911_36": "「壁が抉れて……ッ!?",
"398000911_37": " 攻撃力がポルターガイストの比じゃないッ!」",
"398000911_38": "「ぐ――ッ!?\\n あたしたちを近づけない気かッ」",
"398000911_39": "「けどなんだか、妙な感じだッ!」",
"398000911_40": "「どうした、雪音ッ!?」",
"398000911_41": "「この攻撃にしたって、\\n あいつを取り込むにしたって――」",
"398000911_42": "「どうしてあいつのいる場所だけ、\\n あんなに大事そうに、何重にも……」",
"398000911_43": "「あれじゃむしろ、\\n 何かから護ってるみたいな感じが――」",
"398000911_44": "「……そうだな、あたしにもそう見える」",
"398000911_45": "「あの子が最も必要として、\\n だからこそ心を縛る呪いと化してしまった、あれは……」",
"398000911_46": "「ああ。あれこそが……\\n あいつのママだッ」",
"398000911_47": "「だが、これが『母の愛』と呼べるのかッ!?」",
"398000911_48": "「身動きがとれぬほどに縛りつけ、抱き締めるだけの腕が、\\n 目を覆うだけの手のひらを、愛とッ」",
"398000911_49": "「そうだな……理由はどうあれ、\\n あの子の自由を奪っていることに変わりはないッ」",
"398000911_50": "「……いいや、違う。\\n それだけじゃないッ」",
"398000911_51": "「……確かにこれは、こいつを縛りつける呪いになった。\\n なっちまった……」",
"398000911_52": "「けどッ!\\n 始まりは、違ったはずだッ」",
"398000911_53": "「じゃなきゃ、あいつを護るため、あたしたちのギアに\\n この『おまもり』が力を貸してくれるはずがないッ」",
"398000911_54": "「確かにそうだ……ッ!",
"398000911_55": " 最初、ギアから感じた想いは、呪いなどとは程遠いッ!」",
"398000911_56": "「今ならばわかる――はじめにわたしに届いた声は、\\n 確かにあの子を護ってくれという願いだったとッ」",
"398000911_57": "「なら……なあ、あいつのママさんよ、悪かった。\\n あたしたちのやり方は、あんたの気には食わなかったか」",
"398000911_58": "「けどなッ! きっと――\\n あいつはあんたが思ってるほど弱っちくないぞッ」",
"398000911_59": "「然りッ!\\n 確かに、人には独りでは立てない夜がある――」",
"398000911_60": "「だが、不器用だろうと、届くか保証がなかったとしても――\\n 手を伸ばしてくれる誰かがいる限りッ」",
"398000911_61": "「その孤独を乗り越えていく力があるッ!」",
"398000911_62": "――――",
"398000911_63": "「けど、その『誰か』は、自分の目で見なきゃ気づけない。\\n あんたが、目を塞いだままじゃダメなんだッ」",
"398000911_64": "「……大事なものには傷ついてほしくなかったんだよな。\\n 痛いことも悲しいことも溢れてるこの世界に……」",
"398000911_65": "「戦い方を教えていない娘を放り出しちまって、\\n 護ってやらなきゃって思ったんだよな」",
"398000911_66": "「でも……その『護りたい』って想いが、\\n 呪いであっていいはずがないんだよッ」",
"398000911_67": "「あんたの『おまもり』は――",
"398000911_68": " あいつにとって愛のままじゃなきゃ、ダメなんだッ!!」",
"398000911_69": "「そいつを呪いに変えちまったら、\\n あんたの娘は一生誰ともわかりあえなくなっちまう……ッ」",
"398000911_70": "――――",
"398000911_71": "「く……ッ!\\n 聞く耳持たずかッ」",
"398000911_72": "「娘も娘ならママもママかッ!\\n 揃いも揃って頑固でいやがるッ」",
"398000911_73": "「なら、まずはその手を解いてやるッ!!」",
"398000911_74": "「そして、あんたが納得するまで、\\n あたしたちだってあいつの心を護りたいんだってぶつかってやるッ」",
"398000911_75": "「ああ。\\n あたしたちはあの子に手を伸ばすことを諦めないッ」",
"398000911_76": "「だからこそ、あなたの腕の中の娘はもう、\\n 自分自身で歩かねばならないということを……」",
"398000911_77": "「それを支えようってやつがここにいて……それだけじゃない、\\n 彼女を見ようとしている子たちがいることもッ」",
"398000911_78": "「あんたにも、あいつにも、\\n 何度だって教えてやるッ」",
"398000911_79": "「だから、思い出してくれッ!\\n あんたたちが大事にしてた、愛情ってもんをッ」"
}

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@ -0,0 +1,51 @@
{
"398000921_0": "「ぐッ――\\n 撃が重いッ」",
"398000921_1": "「母の愛は深く……。\\n 故に、この強さか……ッ」",
"398000921_2": "「けど――それでも、そいつは、\\n もうあんたの腕の中にいるべきじゃあないッ」",
"398000921_3": "(ちくしょうッ!\\n 攻撃をいくら浴びせても効いてる気が全然しないッ",
"398000921_4": "(どうすればこいつを……\\n 『玲』を取り戻せる……ッ",
"398000921_5": "(あれ、そういえば……)",
"398000921_6": "「そうだったのか……\\n ま、そうだとしても、名前が知れてよかったよ、レイ」",
"398000921_7": "「……そうね。\\n 『幽霊』には相応しい呼び名でしょう」",
"398000921_8": "「あなたたちも、そう呼べばいい」",
"398000921_9": "「ゆ、幽霊?」",
"398000921_10": "「幽霊などと……。",
"398000921_11": " <ruby=れいろう>玲瓏</ruby>のレイ。綺麗な名前じゃないか」",
"398000921_12": "「…………」",
"398000921_13": "「あたしたち、1度もあいつの本当の名前\\n 呼んだこと、ないじゃないか……ッ」",
"398000921_14": "「え……ッ!?」",
"398000921_15": "「彼女は、『<ruby=レイ>玲</ruby>』では――」",
"398000921_16": "「違うッ!」",
"398000921_17": "「幽霊の『玲』なんかじゃないッ!\\n おまえの名前はもっとあったかい――なあ、そうだろッ」",
"398000921_18": "「『<ruby=ホマレ>玲</ruby>』ぇッ!」",
"398000921_19": "「まだ、視線上げるのが怖いならそれでいいッ!\\n けど――聞いててくれッ」",
"398000921_20": "「あたしはクリスッ!\\n 雪の音と書いてゆきね。それにクリスだッ」",
"398000921_21": "「おまえの『玲』は、幽霊の『レイ』なのか?\\n おまえの口から、教えてくれッ」",
"398000921_22": "「…………」",
"398000921_23": "「雪音、\\n 本当の名前というのはどういうことだッ」",
"398000921_24": "「あいつの下の名前は『レイ』じゃなくて、\\n 本当は『ホマレ』って読むんだッ」",
"398000921_25": "「あいつのママの遺したアルバムに、\\n 書いてあったんだ……ッ」",
"398000921_26": "「それが、いつの間にかあいつのことをそう呼ぶやつは\\n いなくなっちまった。だから――」",
"398000921_27": "「なんだってッ!?\\n じゃあ、あたしはずっと違う名前で呼んでたのか……ッ」",
"398000921_28": "「…………」",
"398000921_29": "「あたしは天羽奏ッ! 天然の天に羽で、あもう。\\n 音を奏でるで、かなでだッ」",
"398000921_30": "「今まで間違って呼んでごめんなッ! 今からちゃんと呼ぶから",
"398000921_31": " もう1度、あたしと仲良くしてほしいッ!」",
"398000921_32": "「わたしの苗字は風が鳴るで、かざなり。\\n 名前は鳥の翼で、つばさだッ」",
"398000921_33": "「…………」",
"398000921_34": "「あたしたちの名前、聞こえたか?\\n だから次は、おまえの名前を教えてくれッ」",
"398000921_35": "「わた、し……は……\\n 『レイ』なんかじゃ、ない……」",
"398000921_36": "「幽霊なんかじゃ、いたくない……ッ!」",
"398000921_37": "「わたしの、名前は……『ホマレ』……ッ!\\n クリスが呼んでくれた……『ホマレ』ッ」",
"398000921_38": "「ク、リス……かな、で……つば、さ……ッ!\\n おね、がい……たすけて……ッ」",
"398000921_39": "「『ママ』の攻撃が緩んだ……ッ!」",
"398000921_40": "「この音……\\n まるでガラスが割れるような……」",
"398000921_41": "「ホマレを護りたいあんたの心も、\\n 護られたままでいたかったホマレの心も――」",
"398000921_42": "「ガラスみたいに、\\n 脆いままではいさせないッ」",
"398000921_43": "「あなたの守護――『お護り』と、\\n 玲を縛る呪いが紙一重であったようにッ」",
"398000921_44": "「脆さと強さも、表裏一体ッ!」",
"398000921_45": "「怖いから、そこから逃れようと前に進む。\\n 痛いから、どうにかしようって頑張ることができる……」",
"398000921_46": "「脆さも、痛さも。\\n それがあるから、あたしたちは手を取ることができるんだ」",
"398000921_47": "「さあ……\\n ゆりかごの中にいるホマレを引き上げるぞッ」",
"398000921_48": "「「ああッ!!」」"
}

View file

@ -0,0 +1,17 @@
{
"398000922_0": "「戻ってこい、玲ッ!!\\n おまえがどんだけ否定しようと、何度でも言ってやるッ」",
"398000922_1": "「おまえは、幽霊なんかじゃないッ!!」",
"398000922_2": "――――",
"398000922_3": "「……あんたもさ、\\n もう、離してやってくれ」",
"398000922_4": "「1人にしないって、約束するからさ」",
"398000922_5": "――――",
"398000922_6": "「……今……」",
"398000922_7": "「……うん。\\n 『よろしくね』って――わたしも、そう聞こえた」",
"398000922_8": "「う……」",
"398000922_9": "「――ッ!!",
"398000922_10": " おいッ、しっかりしろッ!」",
"398000922_11": "「……」",
"398000922_12": "「……声をかけてやらないのか?\\n 雪音」",
"398000922_13": "「…………。\\n ……こいつが起きたら、呼んでやるよ」",
"398000922_14": "「恥ずかしがって笑っちゃうくらいには、な」"
}

View file

@ -0,0 +1,53 @@
{
"398001011_0": "幽霊少女は真昼に笑う",
"398001011_1": "「……ん」",
"398001011_2": "「気がついたみたいだな」",
"398001011_3": "「大丈夫か?」",
"398001011_4": "「どこか痛いところはないか?」",
"398001011_5": "「……うん、平気」",
"398001011_6": "「わたし、確かおまもりの中に吸い込まれて……」",
"398001011_7": "「そこから、\\n みんなが引っ張り上げてくれたんだね……」",
"398001011_8": "「けど……わたしがここにいるってことは、\\n おまもりは砕けちゃったんだね……」",
"398001011_9": "「ああ……」",
"398001011_10": "「大丈夫。落ち込んでる、けど……\\n ちゃんと、クリスたちの声、聞こえてたから」",
"398001011_11": "「それに……ママの声も。\\n 頑張りなさいって、言ってくれた……」",
"398001011_12": "「……」",
"398001011_13": "「寂しいし、やっぱり怖いよ。",
"398001011_14": " でもこれでよかったんだって、ちゃんとわかってる」",
"398001011_15": "「わたしはもう、ゆりかごからは出なくちゃいけない。\\n 本当はずっと、わかってた……」",
"398001011_16": "「でも、それを認めるのが怖くて、\\n それなら、ずっと『幽霊』でいる方が楽だと思ってたの」",
"398001011_17": "「そうすれば、ママが護ってくれるゆりかごのなかにいても、\\n 言い訳ができるから」",
"398001011_18": "「そうだな。\\n 世界と繋がっていくのは、誰しも度は怖いと感じるものだ」",
"398001011_19": "「じゃあ、どうしてみんなは怖いのに向かっていけるの?\\n なんの保証もないのに」",
"398001011_20": "「……たぶん、怖くても向かった先に\\n 何かがあるって信じたい――いいや」",
"398001011_21": "「何かを作っていけるんだって\\n 信じたいんだと思う」",
"398001011_22": "「何かを作っていける……」",
"398001011_23": "「ああ。おまえだって……\\n <ruby=ホマレ>玲</ruby>だって、そうなんじゃないか?」",
"398001011_24": "「だから、\\n ママのゆりかごから抜け出せたんじゃないかな」",
"398001011_25": "「……そうなのかな。\\n まだわからないや」",
"398001011_26": "「だからかな。\\n わからないけど、わかりたいかもしれない」",
"398001011_27": "「これが……フフ。\\n 何かを作っていける……かも、ってこと」",
"398001011_28": "「あ……」",
"398001011_29": "「――ッ!\\n な、なんかすごい音してたし、なんかあったのかもって……」",
"398001011_30": "「ええと、それに、それで……さっきの騒ぎで\\n ハンカチ落としたっぽいから、探しに来ただけ」",
"398001011_31": "「そっか……」",
"398001011_32": "「…………」",
"398001011_33": "「…………」",
"398001011_34": "「ほら、玲。\\n 行ってこいよ」",
"398001011_35": "「――ッ!」",
"398001011_36": "「……あ、あのさッ!」",
"398001011_37": "「え、あ、あのッ!",
"398001011_38": " ごめん……えっと、その……」",
"398001011_39": "「……バカみたい。\\n あんた悪くないでしょ、なんで謝るのよ」",
"398001011_40": "「え……あ……」",
"398001011_41": "「はー……もう。\\n ……あんたさ、占いできるんでしょ」",
"398001011_42": "「う、うん……」",
"398001011_43": "「じゃあさ、今度アタシのこと占ってよ……」",
"398001011_44": "「え――」",
"398001011_45": "「何?\\n ダメなわけ」",
"398001011_46": "「だ……ダメじゃないッ!」",
"398001011_47": "「フ……\\n もう大丈夫そうだな」",
"398001011_48": "「ああ。\\n ママさんも、ちゃんと見てるといいな」",
"398001011_49": "(あんたの呪いが、この結果を生んだなら……\\n 護りすぎたことだって、無駄じゃなかったんだ",
"398001011_50": "(だからさ、ちゃんと見てろよ。\\n あんたの玲は……ちゃんと笑えてるぞッ"
}

View file

@ -0,0 +1,35 @@
{
"398001111_0": "『玲』",
"398001111_1": "「2人ともご苦労だった」",
"398001111_2": "「お疲れさまです。\\n 二課の方は大丈夫でしたか」",
"398001111_3": "「ああ。慌ただしかったノイズへの対応も\\n なんとか一段落がついた」",
"398001111_4": "「それならよかったです」",
"398001111_5": "「ところでクリスくんの姿が見当たらないが……」",
"398001111_6": "「雪音はまだ館に残っています。<ruby=ホマレ>玲</ruby>と……\\n 護衛対象の少女と少し話をしたら、戻ってくると思います」",
"398001111_7": "「積もる話もあるだろうし、あたしたちだけ、\\n ひと足先に報告しに戻ってきたんだ」 ",
"398001111_8": "「それならいいんだ」",
"398001111_9": "「今回の任務の報告がてら、いくつか聞きたいことがある」",
"398001111_10": "「聞きたいこと?」",
"398001111_11": "「実は、依頼を寄越した山川博士と、その後連絡がつかなくてな……\\n それに、通話記録や渡された資料などがどこにも見当たらないんだ」",
"398001111_12": "「まるで、幻のようにな……」",
"398001111_13": "「それに気づいてから3人に連絡を取ろうとしたが\\n 通信の類が何かに妨害されたように届かなくてな」",
"398001111_14": "「現場でつかんだ情報を\\n 君たちの主観が入ってもいい……共有してもらえないか」",
"398001111_15": "「……わかった。\\n まずは、ホマレの母親……山川博士についてだけど――」",
"398001111_16": "「つまり……俺たちが山川博士から連絡を受けたときには、\\n すでに博士は亡くなっていたと……」",
"398001111_17": "「はい、おそらくは」",
"398001111_18": "「娘を護りたいって想いが、\\n あたしたちを呼んだんじゃないかな」",
"398001111_19": "「ふむ……。\\n 君たちが無事に戻ったということは、依頼は……」",
"398001111_20": "「無論、完遂しました。\\n 彼女が踏み出した歩を、しっかりと見届けてきましたよ」",
"398001111_21": "「ああ。\\n あいつはもう独りじゃない。きっともう大丈夫だ」",
"398001111_22": "「……そうか。博士の事実確認については\\n 俺たちの方でやろう。君たちは――」",
"398001111_23": "「お?\\n どうしたんだよ、揃いも揃って神妙な顔しちゃってさ」",
"398001111_24": "「おッ、おかえりー」",
"398001111_25": "「玲とゆっくり話はできたか?」",
"398001111_26": "「ああ」",
"398001111_27": "「でも最後にあいつが、『おまもり』にするから写真を撮らせてって\\n 言ってきてさ。いろんなポーズで撮らされて……」",
"398001111_28": "「ったく、あたしの写真なんかおまもりにされてもなぁ。\\n 見てくれよ、これ。あたしの端末でも無理やり撮るんだぞ、あいつ……」",
"398001111_29": "「いいじゃないか。\\n 誰かが自分のことを想ってくれているってのは、番のおまもりだろ」",
"398001111_30": "「……ああ。\\n 雪音も玲も、いい表情をして写っている」",
"398001111_31": "「……ま、こんな写真で\\n あいつがまた目を閉じようなんて思わないようになるなら……」",
"398001111_32": "「たまには、こんな残し方も悪くないかもな」"
}