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{
"501000111_0": "祈りの巫女、悪意の巫女",
"501000111_1": "「これは――、\\n なんの音かしら」",
"501000111_2": "「泡の音――いいえ、違うわね。\\n これは……誰かの声」",
"501000111_3": "――――",
"501000111_4": "「か細く、今にも消えそうな歌声……\\n それも、祈りの歌かしら」",
"501000111_5": "「誰が唄っているの?\\n こんな不愉快なものを、わたしに聴かせるなんて」",
"501000111_6": "「いえ、そもそも、\\n わたしが見ているこれは……何」",
"501000111_7": "「誰かの……想い出?」",
"501000111_8": "「大丈夫?\\n おなか、空いてない」",
"501000111_9": "「いえ、私は大丈夫です。\\n それよりも、巫女様の方こそ……」",
"501000111_10": "「わたしは大丈夫よ。だから、もしおなかが空いている人がいたら、\\n その人に食べさせてあげて」",
"501000111_11": "「……承知しました。\\n そのように致します」",
"501000111_12": "「あれは……、\\n あの声は、あの姿は――わたしだ」",
"501000111_13": "「わたしがまだ、\\n ベアトリーチェではなく――」",
"501000111_14": "「『フィーネの魂の器』たる、\\n 巫女だった頃の――」",
"501000111_15": "「わたしはいいの。\\n 戦っている人たちにこそ、食べ物が必要でしょう」",
"501000111_16": "「だってもうすぐ、\\n 長かった『大喰らい』との戦いが終わるんだから」",
"501000111_17": "「それはそうですが……。\\n 巫女様にも、食事は摂っていただきたく」",
"501000111_18": "「もうッ!\\n いらないって言ってるでしょッ」",
"501000111_19": "(ぐぅぅ〜〜……)",
"501000111_20": "「あッ!?」",
"501000111_21": "「あの、これは……違うのよ?\\n おなかなんて、鳴ってないんだからッ」",
"501000111_22": "「やはり……皆のために耐えてくださっていたのですね。",
"501000111_23": " しかし――」",
"501000111_24": "「『祈りの巫女』たる貴女が倒れでもしたら、\\n 結果、皆が悲しみ、困るのです」",
"501000111_25": "「う……ッ」",
"501000111_26": "「少しで構いませんから、\\n 何か召し上がってはいただけないでしょうか」",
"501000111_27": "「が、我慢なんてしてないったらッ!",
"501000111_28": " わたしは……わたしは――」",
"501000111_29": "(ぐぅぅ〜〜……\\n きゅるるるる………",
"501000111_30": "「うぅ……\\n どうしておなかが鳴っちゃうのよぉ……」",
"501000111_31": "「……では、巫女様。\\n このパンの、半分でいかがでしょうか」",
"501000111_32": "「半分、召し上がっていただけるのでしたら……\\n 残りは、責任を持って兵士たちに届けさせていただきましょう」",
"501000111_33": "「……本当に? 約束よ?\\n 絶対に絶対、残りをみんなに届けてよねッ」",
"501000111_34": "「フフ……ええ。\\n このアルヴィース、巫女様からの任、しかと拝命致しました」",
"501000111_35": "「…………」",
"501000111_36": "「……そうだ、覚えている。\\n わたしは、この光景を覚えている――」",
"501000111_37": "「……いや、何かを切っ掛けにして、\\n 『思い出させられた』のか」",
"501000111_38": "「わたしが、\\n 『フィーネの魂の器』であった、遙か昔」",
"501000111_39": "「その記憶……想い出を……」"
}

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@ -0,0 +1,75 @@
{
"501000121_0": "「かつての自分――、\\n 『フィーネの魂の器』として、生きていた時代」",
"501000121_1": "「突如として、別の並行世界から、\\n 侵略者がこちらの世界へと攻め込んできた」",
"501000121_2": "「そんな世界で生きていた『わたし』は、\\n ある特殊な力を持っていた――」",
"501000121_3": "「とんだお人好しの、疑うことを知らない、お優しい少女。\\n 少女が唄う歌には、力があった」",
"501000121_4": "「戦いの中で、\\n 敵も味方も、誰も傷付いて欲しくないという、綺麗な願い」",
"501000121_5": "「そんな、『綺麗すぎる』願いは、\\n フォニックゲインを震わせて――」",
"501000121_6": "「少女は歌で、\\n 人の傷を癒やすことができたのだ」",
"501000121_7": "「やがて、少女は『祈りの巫女』として、\\n 人々から祀りあげられることになる――」",
"501000121_8": "「はじめに言葉があった――なんていう愚かな物語が、\\n 当たり前に信じられていた時代のことだ――」",
"501000121_9": "「……♪\\n …………♪」",
"501000121_10": "(お願いします、神様。\\n どうかわたしの祈りを、聞き届けてください",
"501000121_11": "(みんな、おなかを空かせています。\\n 戦いで傷付くよりも、ずっと多くの人々が",
"501000121_12": "(助けてください。\\n 人々が、おなかを満たして日々を送れるように",
"501000121_13": "(どうか、神様――)",
"501000121_14": "「ありがとうございます、巫女様ッ!\\n これでまた、敵と戦うことができますッ」",
"501000121_15": "「ああ、息子の傷が癒えて……ッ!\\n ありがとうございます、ありがとうございます……ッ」",
"501000121_16": "「わたしの歌は、\\n 飽くまで傷を癒すことしかできません」",
"501000121_17": "「……くれぐれも、\\n 無理はしないでくださいね」",
"501000121_18": "「けれど、その歌があるからこそ、\\n 戦いの終わりが見えてきたのでしょう」",
"501000121_19": "「はいッ!\\n 必ず、勝利を巫女様の下にッ」",
"501000121_20": "「……」",
"501000121_21": "「……」",
"501000121_22": "「お務め、ご立派でした」",
"501000121_23": "「いいえ、わたしの歌は、傷を癒やすだけ。\\n 空腹まではどうにもできません」",
"501000121_24": "「いくら、戦いによる傷を癒やしたところで、\\n 飢えによって死んでいく人がいる……」",
"501000121_25": "「ごめんなさい。\\n わたしに力が足りないばかりに……」",
"501000121_26": "「そんなことはありませんッ!」",
"501000121_27": "「ひゃッ!?\\n きゅ、急になんですかッ 大声を出してッ」",
"501000121_28": "「……失礼しました。",
"501000121_29": " しかし、そのようなことは仰らないでください」",
"501000121_30": "「かつて、私が奴隷だった頃、\\n 主人に見捨てられ、野垂れ死にしそうだった時――」",
"501000121_31": "「生きる意味を無くしていた私に、\\n 希望を与えてくれたのは、巫女様の唄う歌でした」",
"501000121_32": "「私だけではありません。\\n 先程の兵士たちも皆そうです」",
"501000121_33": "「皆が、\\n 巫女様の歌に、勇気と活力をもらっているのです」",
"501000121_34": "「そんな……、\\n わたしは、そんな立派なものじゃ……」",
"501000121_35": "「どうか、信じてください。\\n 巫女様の存在が、多くの人々を救っているということを」",
"501000121_36": "(わたしが、人々を救っている?\\n 本当に、そうなの……",
"501000121_37": "「……っと、そうでした。",
"501000121_38": " 巫女様、これをどうぞ」",
"501000121_39": "「食べもの……?\\n こんなに、どこに残っていたの」",
"501000121_40": "「死んだ兵士が持っていた分を、\\n こっそり集めてまいりました」",
"501000121_41": "「巫女様のためでしたら、\\n 彼らもきっと本望でしょう」",
"501000121_42": "「そう……」",
"501000121_43": "「今日は必ず、食べていただきます」",
"501000121_44": "「『大喰らい』を倒すまで、\\n 巫女様には生きていてもらわねばなりません」",
"501000121_45": "「……わかりました。\\n いただきます」",
"501000121_46": "(もうすぐ……、\\n 戦いは終わる……",
"501000121_47": "(そうすれば、もう誰も、\\n 苦しまなくて済むようになるはず……",
"501000121_48": "(そのために、\\n わたしにできることは……",
"501000121_49": "「ねえッ、アルヴィース?」",
"501000121_50": "「……あなた、さっき、\\n わたしのことを、恩人だって言ったわよね」",
"501000121_51": "「え?\\n ええ……確かに申しましたが」",
"501000121_52": "「だったら、わたしの言うこと、\\n なんでも聞いてくれるわよね」",
"501000121_53": "「だって、恩人なんだもの、ねッ!」",
"501000121_54": "「そ、それはもちろん。\\n 巫女様の言いつけでしたら、可能な限り承りますが……」",
"501000121_55": "「そうッ!\\n それよッ」",
"501000121_56": "「……はい?」",
"501000121_57": "「いつも巫女様巫女様って、\\n わたし、『巫女様』なんて名前じゃないんだけど」",
"501000121_58": "「ちゃーんと、可憐でかわいい、\\n ベルダンディっていう名前があるんだからッ」",
"501000121_59": "「それはもちろん、承知しております。",
"501000121_60": " しかし……」",
"501000121_61": "「随分と一緒にいるんだもの。\\n いい加減、名前で呼んでくれてもいいでしょう」",
"501000121_62": "「……申し訳ありません。\\n それはできかねます」",
"501000121_63": "「どうしてよーッ!?」",
"501000121_64": "「巫女様のお名前をみだりに呼ぶなど、\\n あまりに恐れ多く……」",
"501000121_65": "「……どうしてもダメ?」",
"501000121_66": "「…………」",
"501000121_67": "「……。\\n そう……」",
"501000121_68": "「ご理解ください。私と巫女様では、\\n 立場や身分、そのご威光――あらゆるものが違いすぎるのです」",
"501000121_69": "「…………もう結構よ。\\n 下がってちょうだい」",
"501000121_70": "「……はい。\\n ご用があれば、すぐにお申し付けください」",
"501000121_71": "「…………わかってるわ。\\n アルヴィースが悪いわけじゃない、あとで謝らなきゃ」",
"501000121_72": "「……仕方ないわよね。\\n わたしは大事な大事な、巫女様なんだもの……」"
}

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{
"501000131_0": "「並行世界からやってきた侵略者は、\\n 『大喰らい』と呼ばれる魔物を使役していた」",
"501000131_1": "「並行世界――その頃のわたしたちは、\\n ただ、『星』と呼んでいた世界を、全て喰らい尽くすモ」",
"501000131_2": "「星の命――星命力を根こそぎ奪われれば、\\n 大地は枯れ、空は燃え、泉は腐り果てる」",
"501000131_3": "「だから、\\n わたしたちの世界は必死に抵抗して――」",
"501000131_4": "「血で血を洗う戦いの果て、\\n どうにか『大喰らい』を撃退した」",
"501000131_5": "「……まあ。\\n 結局のところ、殺し切れては、いなかったのだけど」",
"501000131_6": "「ようやく、戦いが終わった。\\n これで、家に帰れるな……」",
"501000131_7": "「といっても、\\n 戦いの余波で、ボロボロになっちまってるけどな」",
"501000131_8": "「残っているだけマシだろう。\\n ほとんどの土地は、この戦いで焼け野原になってしまった」",
"501000131_9": "「勝ったといっても、\\n これではな……」",
"501000131_10": "「…………」",
"501000131_11": "「どうしてッ!? 戦いは終わったんでしょッ!?\\n それなのに、ちっとも変わらないじゃんッ」",
"501000131_12": "「おなかいっぱいご飯を食べたいよッ!」",
"501000131_13": "「それが、畑が以前のようには使えないらしいの。\\n お願いだから、我慢しておくれ」",
"501000131_14": "「そんなぁ……。\\n 巫女様の力で、なんとかなるんじゃなかったのッ」",
"501000131_15": "「巫女様の力じゃ、\\n 枯れた土地は戻らないみたいなの」",
"501000131_16": "「巫女様を信じてたから……。\\n だから、これまでずっと我慢してきたのに……」",
"501000131_17": "「本当にねぇ。巫女っていうぐらいなんだから、\\n それくらいの奇跡、起こしてくれないかねぇ……」",
"501000131_18": "「…………」",
"501000131_19": "「……あら?",
"501000131_20": " これは……?」",
"501000131_21": "「この子は……」",
"501000131_22": "「……」",
"501000131_23": "「間違いない。\\n この子から伝わってくる力を、わたしは知っているわ……」",
"501000131_24": "「『大喰らい』の一部。\\n いいえ、欠片と言ってもいいくらいだけれど……」",
"501000131_25": "「この小さな蛇は、あの『大喰らい』なのだわ……」",
"501000131_26": "「……どうしよう。\\n 誰かに話した方がいい、よね」",
"501000131_27": "「だって、この子のせいで、\\n この世界は、滅びそうになったんだから……」",
"501000131_28": "「…………」",
"501000131_29": "「……?\\n わ、わたしの懐を気にしているの ……どうしたの」",
"501000131_30": "「……」",
"501000131_31": "「あッ、もしかして――\\n さっき受け取った、食べものを……」",
"501000131_32": "「……ッ!」",
"501000131_33": "「……。",
"501000131_34": " ……あなたも、おなかが空いているのね」",
"501000131_35": "(こんなに弱って、\\n それでも、必死で生きようとしている……",
"501000131_36": "(……この姿は、\\n わたしたちと、いったい何が違うというんだろう",
"501000131_37": "「……周りには、誰もいないわね」",
"501000131_38": "「……ほら、お食べ」",
"501000131_39": "「――ッ!」",
"501000131_40": "「……やっぱり、おなかが減っていたのね。",
"501000131_41": " フフ……そんなに一気に食べたら、喉に詰まってしまうわよ」",
"501000131_42": "(こんなに弱ってしまって、小さくなって、\\n それでも、わたしの食事の残りを、必死で食べている……",
"501000131_43": "(ただ、生きたいだけのこの子を、\\n 殺してしまうことなんて……わたしには――",
"501000131_44": "「巫女様、お食事をお持ちしました」",
"501000131_45": "「ええ、ありがとう。\\n そこに置いておいてもらえる」",
"501000131_46": "「はい。",
"501000131_47": " ……承知しました、が……」",
"501000131_48": "「……何?\\n 何か言いたいことでもあるの」",
"501000131_49": "「食事を摂れって言うから、ちゃんと食べているんじゃない。\\n 文句でもあるの」",
"501000131_50": "「……いえ、失礼します」",
"501000131_51": "「……ふぅ。\\n 行ったわね」",
"501000131_52": "「ほら……出て来なさい、\\n ご飯の時間よ」",
"501000131_53": "「よーく噛んで食べないと、\\n おなかを壊しちゃうからね」",
"501000131_54": "「……それにしても、よく食べるわね。\\n わたしの分も無くなってしまいそう」",
"501000131_55": "「ああ、別にいいのよ。",
"501000131_56": " 気にしないで、どんどん食べなさい」",
"501000131_57": "「フフ。食べすぎて、\\n また大きくなっちゃうのは困るけど……」",
"501000131_58": "(しばらくの間、\\n この子のことを見ていてわかったことがある……",
"501000131_59": "(他の世界を滅ぼす『大喰らい』になってしまったのは、\\n きっと、この子の意思ではないということ……",
"501000131_60": "(だって、\\n この子は与えられたものを、ただ食べているだけ",
"501000131_61": "(この子が悪いんじゃないわ。都合良く利用されただけ。\\n この子を、侵略に使おうとする、悪意こそが――",
"501000131_62": "(この子を、\\n みんなからの嫌われものにしてしまったんだ",
"501000131_63": "「安心して。\\n わたしはそんなこと、絶対にしないから……」"
}

View file

@ -0,0 +1,229 @@
{
"501000141_0": "「フフ。\\n 相変わらず、よく食べるわね」",
"501000141_1": "(でも、このパンは……食糧が不足している中、\\n 巫女であるわたしのために用意されたなけなしの食事",
"501000141_2": "(それを勝手にこの子に食べさせているのは、\\n ……申し訳なく思うわね",
"501000141_3": "「……」",
"501000141_4": "「あら……どうしたの?",
"501000141_5": " わたしのことなんて気にしないで、どんどん食べなさい」",
"501000141_6": "「あなたが美味しそうに食べている姿を見るのが、\\n わたしの一番の楽しみなんだから」",
"501000141_7": "「……そういえば、\\n あなた、すっかり元気になったようね」",
"501000141_8": "「ついこの前は、\\n 弱っていたような気がしていたけど……」",
"501000141_9": "「食べものだけで、そんな回復はしないと思うのよね……\\n だとしたら……」",
"501000141_10": "(わたしがこの子を見つけたのは、街の人から嫌なことを言われて、\\n 少し、落ち込んでいた時だったかしら……",
"501000141_11": "(だけど、今はこんなに元気でいる。",
"501000141_12": " それって、ひょっとして――)",
"501000141_13": "(この子は、\\n わたしが抱いている感情に、影響されているということ",
"501000141_14": "「ねえあなた、もしかして……ご飯の他にも、\\n 他人の想いを、感情を、食べているの」",
"501000141_15": "「……」",
"501000141_16": "「……そういうことなら、\\n わたしは元気でいないとね」",
"501000141_17": "「誰かの感情を写し取る、\\n 鏡のようなこの子を、護るために」",
"501000141_18": "「……おかしな感情を食べて、\\n おなかを壊したりしたら、いけないもの」",
"501000141_19": "「……」",
"501000141_20": "「ねえあなた、わたしの歌を聴いてくれる?」",
"501000141_21": "「……」",
"501000141_22": "「……飢えも満たせない、神に祈りも届けられない、\\n 力のない歌」",
"501000141_23": "「だから、最近は誰のために唄うのか、\\n わからなくなっていた」",
"501000141_24": "「けど、今なら――」",
"501000141_25": "「あなたのために、唄えると思うから……」",
"501000141_26": "「――――♪\\n ……♪ …………♪」",
"501000141_27": "「……。",
"501000141_28": " ――♪」",
"501000141_29": "「――ッ!",
"501000141_30": " ああ、やっぱり……あなたはわたしの想いを、返してくれるのね」",
"501000141_31": "「言葉がなくたって……\\n わたしの<ruby=おもい>胸の歌</ruby>を、わかってくれる」",
"501000141_32": "「こんなに、嬉しいことはないわ……」",
"501000141_33": "「……♪\\n …………♪」",
"501000141_34": "「あれは、巫女様と……\\n まさか……そんな……ッ」",
"501000141_35": "「…………」",
"501000141_36": "「――たとえ、たった1人が、綺麗なままでいようとしても。\\n 世界は、それを許してはくれない」",
"501000141_37": "「誰もが飢えていた、この時代。\\n 終わらない飢餓は、人々から理性を奪い取る」",
"501000141_38": "「誰かを想うよりも、相手のことを考えるよりも……\\n ――わからないものは、排斥したほうが、手っ取り早い」",
"501000141_39": "「わからないから、排斥する。\\n わかってもらえないから……殺す」",
"501000141_40": "「たったそれだけのこと」",
"501000141_41": "「――悪意が、世界に満ちていく。\\n か細い歌なんかでは救えないほどに、強く――」",
"501000141_42": "「何が巫女だッ!\\n こいつは最初から、敵だったんだッ」",
"501000141_43": "「…………ッ!」",
"501000141_44": "「待っていただきたいッ!\\n これは、何かの間違いですッ」",
"501000141_45": "「間違いなものかッ!\\n 俺は、確かに見たんだッ」",
"501000141_46": "「そいつが、\\n 蛇を隠し持っているのをッ」",
"501000141_47": "「俺の親友は、戦場で喰われたんだッ!\\n 蛇に……全てを喰い尽くす『大喰らい』にッ」",
"501000141_48": "「皆、利用されていたんだッ!\\n こいつにッ」",
"501000141_49": "「そうだッ! 俺たちを癒やしていたのも、\\n 多くの餌を、『大喰らい』に献上するためだったんだッ」",
"501000141_50": "「違うッ!\\n 巫女様が、そんなことを考えるはずがないッ」",
"501000141_51": "「そいつを捕まえろッ!\\n 牢獄に閉じ込めておくんだッ」",
"501000141_52": "「俺たちは、もう騙されないぞッ!」",
"501000141_53": "「もとより『祈るだけ』の巫女なんざ……\\n なんの役にだって、立っちゃいなかったんだッ」",
"501000141_54": "「――ッ!!」",
"501000141_55": "「くッ……!\\n 巫女様ッ」",
"501000141_56": "「…………」",
"501000141_57": "「……どうして、\\n こうなっちゃったんだろう」",
"501000141_58": "「わたしは、\\n みんなの幸せを祈っていただけなのに――」",
"501000141_59": "「……祈っていた……だけ。\\n それが、ダメだったの……」",
"501000141_60": "「わたしの<ruby=いのり>歌</ruby>は……届かなかった。\\n 誰の望みも、飢えも、満たせなかった……」",
"501000141_61": "「……、\\n おなか、空いたな」",
"501000141_62": "「……、……♪\\n ――♪」",
"501000141_63": "(こんなにおなかが減っていても、\\n つい歌を口ずさんでしまう",
"501000141_64": "(求められるまま、ずっと唄ってきた歌。\\n わたしにとって、一番大事な歌",
"501000141_65": "「フフ……。\\n 牢に入れられたときの擦り傷は癒えたけれど……」",
"501000141_66": "「本当に……\\n 歌ではおなかが膨れるなんてこと、ないわよね」",
"501000141_67": "「なら……この歌に、\\n どんな意味があったんだろう……」",
"501000141_68": "「わたしは、\\n なんのために唄っていたんだろう……」",
"501000141_69": "「……あの『蛇』、\\n どうにかして処分できないの」",
"501000141_70": "「無理だよ。どんな攻撃も効きやしない。\\n 攻撃を餌と認識して食っちまうんだ」",
"501000141_71": "「しかも、こっちが焦れば焦るほど、力を増す始末だ。\\n 本当に、誰がどんな意図で造ったんだか……」",
"501000141_72": "「負の感情を食べて成長するなんて、本当に厄介ね。\\n ……ところで、巫女様の方はどうなったの」",
"501000141_73": "「ああ。\\n 正式に処刑が決まったらしい」",
"501000141_74": "「お付きの男は、最後まで擁護していたようだがな。\\n まあ、止めようがなかったな」",
"501000141_75": "「そう。\\n ……ま、仕方がないわよね」",
"501000141_76": "「戦意を維持するための象徴は、もう必要ない。\\n けれど……」",
"501000141_77": "「終わらぬ飢餓、出口の見えない絶望への捌け口……\\n スケープゴートは、必要だもの」",
"501000141_78": "『祈りの巫女』の処刑当日――",
"501000141_79": "「…………」",
"501000141_80": "「――痛ッ!\\n これは……石」",
"501000141_81": "「悪魔めッ!\\n 俺たちを騙しやがってッ」",
"501000141_82": "「全部お前のせいだッ!\\n お前のせいで、皆苦しんでいるんだッ」",
"501000141_83": "「ふざけるなッ!\\n 死んで償えッ」",
"501000141_84": "(……ああ……。\\n わたしは……こんなにも恨まれていたのね",
"501000141_85": "(みんなのために、\\n 唄っていたつもりだけれど……",
"501000141_86": "(――つまるところ、\\n <ruby=いのる>唄う</ruby>ことしか、できなかったから)",
"501000141_87": "(それでもわたしには、\\n もう、これしか……",
"501000141_88": "「…………♪」",
"501000141_89": "「――♪ ……♪\\n …………♪」",
"501000141_90": "「あいつ……ッ!\\n まだ歌なんて唄ってやがるッ」",
"501000141_91": "「聴くに耐えない……。\\n そんな呪われた歌、唄うんじゃないッ」",
"501000141_92": "「痛――ッ!」",
"501000141_93": "「――ッ!!」",
"501000141_94": "「……ざ、ざまあみろッ!\\n この<ruby=いしつぶて>石礫</ruby>は、皆の怒りだッ!」",
"501000141_95": "「……呪われた、歌?\\n みんなの……怒り……」",
"501000141_96": "「……………………フフ」",
"501000141_97": "「フフ、フフフフフッ」",
"501000141_98": "「なんだ、あいつ。\\n 今度は笑い始めたぞ」",
"501000141_99": "「正体を現したなッ!\\n 呪いの巫女めッ」",
"501000141_100": "「正体に、呪い、ね。\\n ……フフッ、ああ――なんてバカバカしい」",
"501000141_101": "「……わたしは、ただ……\\n 願われるままに、唄っていただけよ」",
"501000141_102": "「なぁんの役にも立たない歌を、ね」",
"501000141_103": "「……あなたたちの傷が、癒えるように。\\n あなたたちの戦いに、勝利があるように」",
"501000141_104": "「……ねえ、そこのあなた。\\n 戦場から生きて帰った息子さんは元気」",
"501000141_105": "「――ッ!!」",
"501000141_106": "「あんなに感謝してくれていたのにね」",
"501000141_107": "「それすら忘れて石を投げるだなんて……\\n 恩知らず」",
"501000141_108": "「そ、それは……\\n お、恐ろしいッ 早く処刑しておくれッ」",
"501000141_109": "(……わたしが心をすり減らして祈り、\\n 護ろうとしていたものが、こんなものだったなんて",
"501000141_110": "(けれど随分と……この人たちは、活力に満ちている。\\n わたしの歌を聴いていたときよりも、ずっと",
"501000141_111": "「……そうよね。\\n 歌では、腹は満ちないのだもの」",
"501000141_112": "「けれど……フフッ。",
"501000141_113": " アハハハハッ!」",
"501000141_114": "「あいつ、なんて嗤いかたを……」",
"501000141_115": "「わたしを殺そうという意志に突き動かされるあなたたちの、\\n なんて生き生きとしたことかしら」",
"501000141_116": "「全部奪われたと被害者ヅラをして、最後に残った<ruby=これ>悪意</ruby>が、\\n 人の本質――」",
"501000141_117": "「……だったら」",
"501000141_118": "「……もう、\\n 我慢なんかしなくても、いいわよね」",
"501000141_119": "「かつてより、\\n この世界に語られる神話があった」",
"501000141_120": "「世界の底にて永く<ruby=まどろ>微睡</ruby>み、\\n 世界の黄昏において目覚めるモ」",
"501000141_121": "「その鳴動は大波を巻き起こし、\\n 大地を洗い流すという」",
"501000141_122": "「終末を謳う、\\n <ruby=うわばみ>蛇</ruby>の神話――」",
"501000141_123": "「ならば、わたしはあの子に……わたしの隣にいてくれて、\\n いつもおなかを空かせているあの子に、その名を与えよう」",
"501000141_124": "「万物を飲み込む世界蛇――、\\n 『ヨルムンガンド』とッ」",
"501000141_125": "「わたしの悪意を、全部あげる。\\n わたしの存在も、何もかも、全部あげるわ」",
"501000141_126": "「……本当は、<ruby=こんなもの>悪意</ruby>じゃなくて、\\n もっと素敵なものをあげたかったけど」",
"501000141_127": "「綺麗なあなたに似合うものを、\\n おなかいっぱい食べさせてあげたかった。けれど――」",
"501000141_128": "「ここには絶望しかない。\\n あなたを汚す、底なしの絶望しか残っていない」",
"501000141_129": "「だから、せめて……\\n 全てを喰らい尽くしなさいッ」",
"501000141_130": "「あなたを汚した、何もかもをッ!\\n 全部、全部、全部――ッ」",
"501000141_131": "「少女の、呪いの<ruby=いのり>歌</ruby>を、\\n 小さな蛇は聴き届けた」",
"501000141_132": "「絶望で染まった<ruby=いのり>歌</ruby>は、\\n フォニックゲインの高まりと共に――」",
"501000141_133": "「『蛇』と、\\n そう呼ばれていた聖遺物を、一瞬で励起させた」",
"501000141_134": "「『蛇』の放ったアウフヴァッヘン波形により、\\n 少女の中にあった『フィーネの魂』が目覚めて――」",
"501000141_135": "「だけど、それは\\n 一瞬で塗り潰された」",
"501000141_136": "「……まあ、\\n それも当然よね」",
"501000141_137": "「おなかが空いている時に、\\n 恋心なんて、なんの役にも立たないんだもの」",
"501000141_138": "「少女の感じていた絶望は、\\n それほどに大きくて――」",
"501000141_139": "「彼女を糾弾したその世界を、\\n いとも簡単に、まるごと滅ぼしてしまった」",
"501000141_140": "「――ッ!\\n 巫女様……」",
"501000141_141": "「あら、こんな惨状でも生きていたのね。\\n しぶといこと」",
"501000141_142": "「……申し訳ありません、巫女様。\\n 私は、あなたの心を護れなかった」",
"501000141_143": "「私にもっと力があれば。\\n このようなことには……」",
"501000141_144": "「……ふぅん。\\n それが遺言ということでいいのかしら」",
"501000141_145": "「一時でも世話になった礼よ。\\n 苦しませずに、食べてあげる」",
"501000141_146": "「……お待ちください」",
"501000141_147": "「あら?\\n 命乞い」",
"501000141_148": "「違います。\\n 私を、連れて行ってくださいませんか」",
"501000141_149": "「……?」",
"501000141_150": "「あなたの行く道は、\\n 私にとっての道でもあります」",
"501000141_151": "「これから、あなたが、\\n 祈りではなく、絶望を、悪意を携え進むのであれば――」",
"501000141_152": "「私も、\\n それを自分の道としましょう」",
"501000141_153": "「……わたしに、ついてくると?」",
"501000141_154": "「はい、巫女様……\\n いいえ、ベルダンディ様」",
"501000141_155": "「……今更ね。",
"501000141_156": " 祈っていただけの馬鹿な少女は、もういない」",
"501000141_157": "「ヨルムンガンドと繋がったからかしら……\\n あの子が絶望を食べている今、わたし……」",
"501000141_158": "「満たされているとは言えないけれど、\\n 飢えてはいないわ」",
"501000141_159": "「…………」",
"501000141_160": "「…………けれど、そうね。\\n 人きりで食事をしても、つまらないもの」",
"501000141_161": "「であれば、わたしに仕えなさい」",
"501000141_162": "「わたしは最早、祈りの巫女ベルダンディに非ず。\\n わたしは――<ruby=ヨルムンガンド>世界蛇</ruby>の巫女、ベアトリーチェ」",
"501000141_163": "「全ての世界に、\\n 悪意と絶望をもたらすもの――」",
"501000141_164": "「あなたは精々頑張って、\\n その手伝いをするといいわ」",
"501000141_165": "「……はい。\\n 御心のままに」",
"501000141_166": "「それじゃあ、\\n まずはこの世界――」",
"501000141_167": "「どうしようもなく終わったこの世界の、\\n 中途半端な食い残しを、片付けてしまいましょう」",
"501000141_168": "「――そうしてわたしは、\\n わたしを虐げていた世界を喰らい尽くした」",
"501000141_169": "「自分が正しいという顔をして、\\n わたしに石を投げていた奴ら――」",
"501000141_170": "「そんな奴らの顔が、絶望に染まるところは、\\n とても愉快で、胸がすく思いだった」",
"501000141_171": "「しかし、その世界は既に枯れていた。\\n 大して腹の足しにはならなかった」",
"501000141_172": "「だから、次の世界に向かった。\\n 『大喰らい』を送り込んできた、侵略者たちの世界へ」",
"501000141_173": "「そこも、簡単に食い終わった。\\n だけど、それでも腹は満たされなかったから――」",
"501000141_174": "「手当たり次第に、\\n <ruby=あの子>世界蛇</ruby>と共に、世界を喰らった」",
"501000141_175": "「食えば食うほどに、\\n そう、癖になっていった」",
"501000141_176": "「今なら、\\n わたしに石を投げていた奴らの気持ちが、よくわかる」",
"501000141_177": "「悪意を振りかざすのは楽で、我慢する必要なんてなくて……\\n そこに返ってくる感情は、とても、美味しかったから」",
"501000141_178": "「数百年……、\\n いえ、数千年も経った頃だったかしら」",
"501000141_179": "「わたしに仕えると言った男が、\\n いつの間にか『ウロボロス』なんて組織を作っていた頃」",
"501000141_180": "「『スクルド』とかいう連中が、\\n わたしの前に立ち塞がった」",
"501000141_181": "「どうやら、\\n わたしが元いた世界に由来する者がいたらしい」",
"501000141_182": "「自分自身の祈りも呪いも持たずに、\\n わたしと世界蛇を倒すことだけを教えられた自動人形――」",
"501000141_183": "「そして、『歌の力を信じなさい』なんて妄言を、\\n 吐きながら立ち向かってくる人間――」",
"501000141_184": "「徒党を組んでいるだけで、\\n まるで、かつての<ruby=祈りの巫女>わたし</ruby>を見ているようだった」",
"501000141_185": "「わたしが相手をするほどでもなかったから、\\n 『ウロボロス』に全て任せたのだけど――」",
"501000141_186": "「あら。\\n 随分と手酷くやられたものね」",
"501000141_187": "「……申し訳ありません。\\n 不覚を取りました」",
"501000141_188": "「スクルドの『マスター』とやらは、\\n どうにか葬ったようだけど――」",
"501000141_189": "「相打ちでやられているようでは、\\n まったく世話ないわね」",
"501000141_190": "「どう?\\n 自分の無能さが、よくわかったでしょう」",
"501000141_191": "「何もできないまま死んでいく自分に、\\n 絶望したでしょう」",
"501000141_192": "「もう諦めなさい。\\n 楽にしてあげるわ」",
"501000141_193": "「……いいえ。\\n 私は、あなたの『絶望』には、まだ足りない」",
"501000141_194": "「ですから、\\n ここで終わるわけには、いきません」",
"501000141_195": "「……そう。\\n 往生際が悪いのね」",
"501000141_196": "「そこまでして、\\n わたしの目指す『絶望』を、見たいというのなら――」",
"501000141_197": "「こんなところで野垂れ死んでいる場合では、\\n ないでしょう」",
"501000141_198": "「仰る、通りです……」",
"501000141_199": "「……そうよね。\\n だから、この力を試してあげるわ」",
"501000141_200": "「ぐぅッ……!?」",
"501000141_201": "「わたしの……あの子の、力の一部をあげる。\\n 耐えきれなかったらそれまでだけど」",
"501000141_202": "「精々生き残れるように、頑張りなさい」",
"501000141_203": "「……はい。\\n ありがとう、ござい、ま……ぐぁぁッ」",
"501000141_204": "「……ああ、それと。\\n これからも、わたしの<ruby=かたわら>傍</ruby>に仕えるつもりなら」",
"501000141_205": "「何か名前を考えておきなさい。\\n そうね、呼びやすいものがいいわ」",
"501000141_206": "「かつて、わたしを呼ばなかったものとは\\n 別のものよ。いいわね」",
"501000141_207": "「……畏まりました」",
"501000141_208": "(……私の名、アルヴィース。\\n 『全てを知る者』などと、誰が言ったか……",
"501000141_209": "(巫女様の……\\n いいえ、かつての、ベアトリーチェ様の苦悩を知ろうともせず ",
"501000141_210": "(受けた恩も何一つ返せぬ男の、何が……ッ!)",
"501000141_211": "(――)",
"501000141_212": "(だが、私が聞いたことのある、この名の元の持ち主は――\\n 光に焼かれ、石になったという",
"501000141_213": "(……なら、私は――)",
"501000141_214": "「…………」",
"501000141_215": "「歌の力を信じなさい。\\n 歌には人の想いが、可能性が詰まっている」",
"501000141_216": "「それは誰かを慈しむ心、護ろうとする魂の輝き。\\n 歌は生命そのものなんだよ……」",
"501000141_217": "「例え世界が、星が滅んだとしても、\\n そこに生き続けた者たちの想いは、歌に残る――」",
"501000141_218": "「だから『諦めるな』などと……\\n よくも、わたしにまで言えたものだわ」",
"501000141_219": "「――『<ruby=スクルド>希望</ruby>』を謳った者たちよ、\\n 知っていて」",
"501000141_220": "「どれだけ、祈るように言葉を紡いでも、\\n 想いは届かない」",
"501000141_221": "「<ruby=わたし>絶望</ruby>に塗り潰された『フィーネの魂』が、\\n 叫び、嘆いていたような気がするわ」",
"501000141_222": "「バラルの呪詛……、\\n きっと、それのせいなんでしょうね」",
"501000141_223": "「けれど、不思議なものね。\\n そんな呪詛が存在していたおかげで――」",
"501000141_224": "「遍く世界に満ちる絶望を、\\n わたしとこの子は、腹に収め続けていける」",
"501000141_225": "「で、あるならば。\\n 呪いとは――」",
"501000141_226": "「わたしたちにとって、祝福なのよ」"
}

View file

@ -0,0 +1,26 @@
{
"501000151_0": "――",
"501000151_1": "――――観測記録。",
"501000151_2": "No.1232702291.",
"501000151_3": "「儀式開始のために必要なパーツは、\\n あとつ――」",
"501000151_4": "「最後に捧げるべきは、\\n 私自身の『想い出』に他なりません」",
"501000151_5": "「ベアトリーチェ様ッ!\\n 今こそ、再誕の時です――ッ」",
"501000151_6": "「いくら食べても、\\n 満ち足りることなんてない――」",
"501000151_7": "「だから、\\n 世界を喰らい続けることに飽きることもない」",
"501000151_8": "「そんなわたしの前に、\\n あなたは現れた」",
"501000151_9": "「その口で希望を語り、希望を担い、\\n 歌を唄って――」",
"501000151_10": "「わたしと、あの子の道を、\\n 希望で、塞いでみせた」",
"501000151_11": "「そんな真っ直ぐなあなたの心を、\\n わたしは、どうしても折ってやりたかった」",
"501000151_12": "「あなたの抱える『希望の歌』が、\\n 絶望に転じた瞬間を喰らうことができれば――」",
"501000151_13": "「この、いつまでもついてくる飢えが、\\n 満たされるのではないかと、そう感じて」",
"501000151_14": "「だからわたしは、全力で闘って――、\\n そして、敗北した」",
"501000151_15": "「最後まであなたは、わたしと、\\n その温かい手を繋ごうとしていたから」",
"501000151_16": "「絶望にくれてやったはずのわたしの<ruby=なか>裡</ruby>が、\\n 僅かに疼いたりもした――」",
"501000151_17": "「…………」",
"501000151_18": "「……このままで、終われるものか」",
"501000151_19": "「あの、希望の担い手に。\\n <ruby=わたし>悪意</ruby>を、認めさせなくてはならない」",
"501000151_20": "「永遠に尽きず、果てぬ人間の悪意が、\\n 一瞬の輝きに、永劫潰えるなど、あってはならない」",
"501000151_21": "「<ruby=あなた>希望</ruby>を――\\n わたしこそが、喰らわねばならない」",
"501000151_22": "「だって、\\n わたしも、<ruby=ヨルムンガンド>あの子</ruby>も――」",
"501000151_23": "「まだ……、\\n 何も満たされてはいないのだから――」"
}

View file

@ -0,0 +1,76 @@
{
"501000211_0": "開幕",
"501000211_1": "そして、時は『OTHERS』たちが侵攻してきた最中に進む――",
"501000211_2": "「恐怖や不安、怒り、悲しみ……。\\n 負の感情が、あちこちの世界に溢れているわ」",
"501000211_3": "「おかげで、すっかり力に満ち溢れている。",
"501000211_4": " こんな風に――ねッ!」",
"501000211_5": "「なッ!?\\n 海がッ」",
"501000211_6": "「真っ二つに割れてるデスッ!?」",
"501000211_7": "「なんて力……ッ!?」",
"501000211_8": "「ここまでの力の滾りは、\\n 久しく感じるわ」",
"501000211_9": "「……不愉快な気分だったけれど、\\n まあ、良しとしましょうか」",
"501000211_10": "「だって……、\\n こうしてまた会えたんだもの」",
"501000211_11": "「ねえ、響?」",
"501000211_12": "「……ベルちゃん」",
"501000211_13": "「折角の再会よ。\\n 邪魔者には、どいてもらいましょうか」",
"501000211_14": "「――ッ!?\\n 何を……」",
"501000211_15": "「みんな、構えてッ!\\n あんな力、まともに受ければ壊滅は必至よッ」",
"501000211_16": "「マリアッ!\\n わたしたちは、アマルガム・キーパーでッ」",
"501000211_17": "「ええッ!」",
"501000211_18": "「ボクだって……\\n まだ、みなさんの役に立てることがあるのならッ」",
"501000211_19": "「…………」",
"501000211_20": "「くううッ、\\n なんてプレッシャー……ッ」",
"501000211_21": "「おい、しっかりしろッ!\\n 全員、気を張れッ」",
"501000211_22": "「気なら、これでもかってくらい張ってるッ!\\n でも、耐えきれない……ッ」",
"501000211_23": "「くッ!\\n ならば、オレの錬金術で――致命傷だけは避けてくれるッ」",
"501000211_24": "「だが、オレたちをこの場から退けようという、\\n この力までは……押し返せぬか……ッ」",
"501000211_25": "「うわぁぁぁ――ッ!!」",
"501000211_26": "「みんなッ!?」",
"501000211_27": "「……つれないわね、響。\\n 邪魔者を遠くにやっただけじゃない」",
"501000211_28": "「……ベルちゃん……」",
"501000211_29": "「…………ねえ、響?\\n わたし、ずっと考えていたのよ」",
"501000211_30": "「どうすれば、あなたが嫌がってくれるのか。\\n どうすれば、あなたが苦しんでくれるのか」",
"501000211_31": "「あなたに負けた後、微睡みの中で、\\n ずっと考えていたの……」",
"501000211_32": "「……ベルちゃんが、こうして戻ってきたとしても。\\n わたしがやりたいことは、変わらないよ」",
"501000211_33": "「みんなに酷いことをするのなら、\\n それに抗ってみせる」",
"501000211_34": "「でも、それでも、\\n わたしは、ベルちゃんとわかり合いたい」",
"501000211_35": "「ベルちゃんと手を繋ぎたい。\\n そう、思うんだ」",
"501000211_36": "「……フフ。\\n ええ、あなたはそうでしょうね」",
"501000211_37": "「でもあなたは、わかり合いたいと言いながら、\\n <ruby=わたし>悪意</ruby>を決して理解しようとしていない」",
"501000211_38": "「そんなこと……ッ!」",
"501000211_39": "「百歩譲って、\\n 悪意を『知っている』としても――」",
"501000211_40": "「悪意を、受け入れるつもりがないのよ。\\n わかり合いたいなんて、冗談にもならないわ」",
"501000211_41": "「そんなことないよッ!\\n わたしは、本気で……ッ」",
"501000211_42": "「あなたが大事に抱える、その胸の歌は。\\n わたしの想いを、否定するのに」",
"501000211_43": "「――ッ!」",
"501000211_44": "「あなたがわたしに『やりたい』と言っているのはね、\\n わたしが胸に抱く想いを『捨てろ』と言ってるのと変わりないわ」",
"501000211_45": "「あなたの理想の『ベルちゃん』になってほしいと、\\n そう押し付けているだけにすぎない」",
"501000211_46": "「……ッ!",
"501000211_47": " わたしは――ッ!」",
"501000211_48": "「悪意で世界を壊すなんて、\\n 悲しいことだって思うッ だからッ」",
"501000211_49": "「フフ、ほらね」",
"501000211_50": "「だからわたしの胸に燻り続ける、\\n この熱が、想いが――間違っている、と」",
"501000211_51": "「そう唄うのでしょう?」",
"501000211_52": "「…………」",
"501000211_53": "「……フフッ」",
"501000211_54": "「……あなたは、わたしのことを救えるだなんて、\\n おめでたい勘違いをしている」",
"501000211_55": "「手を伸ばせば届く相手だ、『助けなきゃいけない相手』だと、\\n そう勝手に見下している」",
"501000211_56": "「だから……。\\n あなたへの復讐なんて、簡単なことだったのよ」",
"501000211_57": "「わたしは、ただ、\\n 悪意の化身として存在し続けるだけでいい」",
"501000211_58": "「それだけで、あなたは、\\n 勝手に傷付いてくれるんだもの」",
"501000211_59": "「それは……ッ!」",
"501000211_60": "「アッハハ! ええ、それよ、それッ!\\n その顔が見たかったのッ」",
"501000211_61": "「その顔が見られただけで、\\n 眠気も吹っ飛ぶというものだわ」",
"501000211_62": "「……でもね」",
"501000211_63": "「わたしは、どうしても、\\n <ruby=あなた>希望</ruby>の存在を許せない……腹に収めねば、気が済まない」",
"501000211_64": "「腹、に……?\\n どういうこと 何を言ってるの、ベルちゃん……」",
"501000211_65": "「響。\\n ……あなたは、『わたし』に向き合ってみせると言った」",
"501000211_66": "「その約定、\\n 果たしてもらうわ」",
"501000211_67": "「はぁ。\\n それにしても――」",
"501000211_68": "「響ったら、\\n おかしな運命に好かれすぎではないかしら」",
"501000211_69": "「……え?」",
"501000211_70": "「さっきから、実力とは不釣り合いの殺気ばかりを\\n わたしに向けている、そこの――」",
"501000211_71": "「――ッ!\\n なめるなッ」",
"501000211_72": "「この、絶大な力……ッ!\\n 並行世界を渡るもの――世界蛇と見ましたッ」",
"501000211_73": "「誰であろうともッ!\\n 立ちはだかるものは、全て敵だ――ッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,99 @@
{
"501000221_0": "「く……硬いッ!!\\n 打ち込んでも、弾かれる――ッ」",
"501000221_1": "「あたしの蹴りが、\\n 届きすらしない、だと……ッ」",
"501000221_2": "「……これは攻撃なのかしら?\\n 羽ほどの重さすらない」",
"501000221_3": "「だから防御方面も雑魚だと思ったのだけど……、",
"501000221_4": " 身を護ることだけは長けているみたいね?」",
"501000221_5": "「ごめんなさいね。\\n てっきりさっきの一撃で、装者とは違って消し飛んだと思っていたわ」",
"501000221_6": "「――ッ!!」",
"501000221_7": "「ヨウッ! 挑発に乗らないでッ!\\n 攻撃し続ければ……ッ」",
"501000221_8": "「攻撃し続ければ……、\\n どうなるというのかしら」",
"501000221_9": "「――ッ!?」",
"501000221_10": "「こいつ……ッ!\\n どこまでも余裕面をッ」",
"501000221_11": "(余裕……それどころか、\\n こちらを観察している……",
"501000221_12": "(はっきりとわかる……理解できてしまうッ!\\n ケタ違いの暴力性がッ",
"501000221_13": "「わたしの響が、お世話になったみたいね?\\n それでいて……『手を繋いでいる』わけでもなさそうだわ」",
"501000221_14": "「誰が、この世界の……\\n いいえ、全ての世界の、聖遺物使いなんかと……ッ」",
"501000221_15": "「ふぅん……?」",
"501000221_16": "「……成程、あなたたちね?\\n 並行世界に絶望を撒いてくれたのは……」",
"501000221_17": "「飢えが満たされるほどではないけれど、\\n 力を献上してくれたのだから――」",
"501000221_18": "「特別に、褒めてあげるわ。\\n ご苦労様」",
"501000221_19": "「この……ッ!\\n 上から目線でッ」",
"501000221_20": "「……それにしても随分と、\\n 並行世界にちょっかいを出してくれているようだけど」",
"501000221_21": "「どういうつもりなのかしら。\\n 傷が付きでもしたら、味が落ちるでしょう」",
"501000221_22": "「あなたたちが干渉した世界は、\\n わたしにとってはそれなりにお気に入りの餌場なのよ」",
"501000221_23": "「餌場ですってッ!?」",
"501000221_24": "「貴様なんかに……ッ!\\n 喰らい尽くされてたまるものかッ」",
"501000221_25": "「届きもしない、弱々しい攻撃を飽きもせず……」",
"501000221_26": "「そろそろ身の程を知りなさいッ!!\\n ぽっと出の、名無し風情がッ」",
"501000221_27": "「ぐぅ……ッ!」",
"501000221_28": "「うわあああッ!!」",
"501000221_29": "「そんなッ!?\\n あんなに強かった人がッ」",
"501000221_30": "(……そうか。戦いの余波で、\\n みんなの抱えている不安や恐怖が増している……",
"501000221_31": "(そのせいで、\\n ベルちゃんがどんどん、強くなっているんだ……ッ",
"501000221_32": "「このままじゃ……。\\n キョウちゃん、ヨウちゃん……ッ」",
"501000221_33": "「くそッ……」",
"501000221_34": "「どうして、こんな……」",
"501000221_35": "「はい、片付いた。\\n これで、邪魔者は消えたわ」",
"501000221_36": "「待たせたわね、響」",
"501000221_37": "「――ッ!」",
"501000221_38": "「そんな不安そうな顔をしないで?\\n もっともっと、追い詰めてしまいたくなるじゃない」",
"501000221_39": "「でも、今は本当に、\\n これ以上手を出すつもりはないのよ」",
"501000221_40": "「そんなにボロボロのあなたたちを手折ったところで、\\n ちっとも美味しくはないもの」",
"501000221_41": "「今日のところは、\\n デートのお誘いに来ただけ」",
"501000221_42": "「ああ、当然だけど、\\n 断ることは許さないわよ」",
"501000221_43": "「もし断ったら、あなたが関わってきた並行世界を、\\n つずつ、丁寧に食い尽くしていくわ」",
"501000221_44": "「そんなことはさせないッ!\\n 絶対にッ」",
"501000221_45": "「フフ、今すぐにでも、\\n 殴り掛かってきそうな顔ね」",
"501000221_46": "「けれど、言っているでしょう?\\n あなたがわたしの誘いに応じればいいだけよ」",
"501000221_47": "「それだけで、あなたはわたしの手から『世界を救える』の」",
"501000221_48": "「……勝手なのはわかってる。",
"501000221_49": " けど、わたしが手を伸ばしたいのは、世界よりも先に――」",
"501000221_50": "「今、わたしの目の前にいる……\\n ベルちゃんなんだよ……」",
"501000221_51": "「…………。\\n どれだけ言い聞かせても、わからない子ね」",
"501000221_52": "「……時間をあげると言っているの。\\n その間に、傷を癒やして、覚悟を決めておきなさい」",
"501000221_53": "「あなたとわたしは、\\n どう足掻いたとて相入れない水と油」",
"501000221_54": "「そのことを受け入れてこそ、\\n 進める境地がある――ということを、あなたは知るべきよ」",
"501000221_55": "「待ってッ!\\n ベルちゃんッ」",
"501000221_56": "「……ああ、そうだ。\\n 響、覚えておいてくれる」",
"501000221_57": "「……え?」",
"501000221_58": "「わたしは、あなたにね。\\n 『わたしと向き合え』と、そう言ったのよ」",
"501000221_59": "「それはつまり、ベルダンディ……\\n いいえ、あなたの知る『ベル』ではなく――」",
"501000221_60": "「『世界蛇の巫女ベアトリーチェ』と\\n 向き合えということ」",
"501000221_61": "「――ッ!」",
"501000221_62": "「確かにあの、『<ruby=イシム>欠陥品</ruby>』との戦いで、\\n 一度だけ手助けはしたわ」",
"501000221_63": "「けれど……\\n ねえ、響」",
"501000221_64": "「『向き合う』っていうのは、\\n 隣り合うことじゃなく、正面から相対することよ」",
"501000221_65": "「わたしを、ちゃんと正面から見なさい。\\n それとも――」",
"501000221_66": "「あなたにはその勇気がないのかしら?」",
"501000221_67": "「――ッ!?」",
"501000221_68": "(……今までのベルちゃんとは、\\n 何かが違う",
"501000221_69": "(何かを決めたような……\\n そう、決意を感じるんだ……",
"501000221_70": "「……もう、\\n ベルちゃんって呼べないのかな」",
"501000221_71": "「……そうね。\\n それは、わたしの本当の名前ではないのだから」",
"501000221_72": "「……あなたは。\\n 本当の本当に、ベアトリーチェなんだね」",
"501000221_73": "「そうよ。\\n わたしは、世界蛇の巫女、ベアトリーチェ」",
"501000221_74": "「遙かな過去から、<ruby=みらい>未来</ruby>の果てまで。\\n わたしが、わたしをそう定めたからこそ……」",
"501000221_75": "「それは決して、変わることはない。\\n 誰にだって、ねじ曲げさせるものか」",
"501000221_76": "「……――」",
"501000221_77": "「――わかったよ、ベアトリーチェ」",
"501000221_78": "「ちゃんと、正面から……\\n あなたの悪意に、向き合ってみせるッ」",
"501000221_79": "「……フフ、それでいいの。\\n 覚悟を決めてくれて、嬉しいわ」",
"501000221_80": "「……それじゃあ。\\n また会いましょう、立花響」",
"501000221_81": "「ベアトリーチェ……」",
"501000221_82": "「――くッ!\\n まだ、倒れちゃダメだ……ッ」",
"501000221_83": "「倒れたみんなを、\\n 助け、ないと……ッ」",
"501000221_84": "「響さんッ!\\n ご無事ですかッ」",
"501000221_85": "「は、はいッ!",
"501000221_86": " わたしは大丈夫です……でも、みんながッ!」",
"501000221_87": "「皆さんのバイタルは確認済みッ!\\n 救護部隊も、既に到着しています。安心してくださいッ」",
"501000221_88": "「そう、ですか……。\\n 良かったぁ……」",
"501000221_89": "「みんなを、お願いします。",
"501000221_90": " それと――」",
"501000221_91": "「キョウちゃんと、ヨウちゃんも……」",
"501000221_92": "「……ええ、わかっています。",
"501000221_93": " 彼女たちにも、話を聞く必要がありますからね」",
"501000221_94": "「ありがとうございます。",
"501000221_95": " あの……わたし、もう限界、みたいで……」",
"501000221_96": "「ちょっと、休みます、ね……」"
}

View file

@ -0,0 +1,147 @@
{
"501000311_0": "世界を渡る者たち",
"501000311_1": "「う、ん……、……?\\n ここは――」",
"501000311_2": "「……良かった。ヨウ、目が覚めたんだね。",
"501000311_3": " 身体の調子はどう? 痛いところはない?」",
"501000311_4": "「キョウッ!",
"501000311_5": " あたしのことなんてどうでもいいッ! キョウは大丈夫なのッ?」",
"501000311_6": "「あたしたち……\\n 装者どもと戦って、それで……」",
"501000311_7": "「その最中に、化け物じみた強さの……",
"501000311_8": " そうだ、『世界蛇の巫女』が……ッ!!」",
"501000311_9": "「ヨウ、落ち着いて。わたしは平気。",
"501000311_10": " わたしも目が覚めたら、この部屋に寝かされていたの」",
"501000311_11": "「きっと、あの時の状況を考えると、\\n 多分わたしたちは――」",
"501000311_12": "「……捕虜になった、ということか。\\n 殺されなかったのが不思議だけど――」",
"501000311_13": "「くそッ!」",
"501000311_14": "「……ヨウ、そんなに自分を責めないで。\\n わたしは、ヨウが生きてくれていて、良かった」",
"501000311_15": "「キョウ……。\\n そんなの、あたしだって……」",
"501000311_16": "「――ッ!",
"501000311_17": " 足音が、近づいてくる……」",
"501000311_18": "「目が覚めたようですね」",
"501000311_19": "「…………」",
"501000311_20": "「交渉の時間――、\\n ということで、よろしいですか」",
"501000311_21": "「……そうですね。\\n お互いに、知りたいこともあるでしょう」",
"501000311_22": "「特にそちらには、ね?」",
"501000311_23": "「――ッ!」",
"501000311_24": "「……控えろ、立花。\\n わたしたちの役割は聞いているだろう」",
"501000311_25": "「それに、立花とて、まだ目が覚めたばかりなんだ。\\n 無理はするな」",
"501000311_26": "「う……\\n はい……」",
"501000311_27": "「……ハ、なるほど。",
"501000311_28": " 役に立つかは知らないが……」",
"501000311_29": "「そいつらは、あたしたちへの抑止力のつもりか」",
"501000311_30": "「ご安心を。\\n 『この状況で』わたしたちが抵抗をする意味はありませんから」",
"501000311_31": "「……話が早くて助かります。\\n それではいくつか、質問をさせてもらいます――」",
"501000311_32": "「……」",
"501000311_33": "(ブラフは効かない、か。\\n ……やっぱりネームドはめんどくさいな",
"501000311_34": "(さて、踏ん張り時ですね。\\n 司令から任されたS.O.N.G.を好き放題に蹂躙されて――)",
"501000311_35": "(このままで終わるわけにはいきません。\\n ここから巻き返してみせる……ッ",
"501000311_36": "「――まずは、そちらの所属。\\n その目的について、教えていただけますか」",
"501000311_37": "「それについては、\\n 既にお仲間から聞き及んでいそうではありますが……」",
"501000311_38": "「わたしたちは『OTHERS』。この世界を殺しに来た者……。\\n 端的に申しますと、あなたがたの敵です」",
"501000311_39": "「この世界、ということは……、\\n 他の並行世界からやって来た、ということですね」",
"501000311_40": "「『見放された世界』より来たと、\\n そう話していたそうだが……」",
"501000311_41": "「そうとも。お前たちが認識していない……、",
"501000311_42": " いや、『認識しようともしなかった』世界から来たんだ」",
"501000311_43": "「つまりは、自分たちの世界のために――」",
"501000311_44": "「わたしたちの世界を攻撃してきたということか。\\n ――ベアトリーチェと徒党を組んで」",
"501000311_45": "「およそ、その認識でいていただいて構いません。\\n ですが、訂正させてください」",
"501000311_46": "「わたしたちは、あの世界蛇の巫女……。\\n ベアトリーチェとは、関係がない」",
"501000311_47": "「並行世界を壊されるのは、\\n あたしたちにとっても非常に不本意だ」",
"501000311_48": "「楽しいから世界を悪意に染めて、壊すだと……?\\n ふざけているにも程がある……ッ」",
"501000311_49": "「……わかりました」",
"501000311_50": "「……驚いた。\\n 簡単に信じるのですか」",
"501000311_51": "「簡単に信じたわけではありません。\\n これでも、人を見抜く目には長けているつもりです」",
"501000311_52": "「……」",
"501000311_53": "「あなたがたの言うことを信じ、\\n その上で、お願いがあります」",
"501000311_54": "「お願い、だって?」",
"501000311_55": "「響さんより、あなたがたが、\\n ベアトリーチェ相手に奮戦していたと聞いています」",
"501000311_56": "「……あのザマを奮戦とは。\\n 嫌味もここまでくると清々しいな」",
"501000311_57": "「そんなつもりじゃ……」",
"501000311_58": "「であれば、\\n 我々S.O.N.G.としては――」",
"501000311_59": "「あなたがた、お2人に、\\n 世界蛇及びベアトリーチェを倒すまで共同戦線を提案します」",
"501000311_60": "「――ッ!?」",
"501000311_61": "「なッ!?\\n 本気ですかッ」",
"501000311_62": "「本気です。\\n ベアトリーチェは、以前よりも力を増しています」",
"501000311_63": "「他の並行世界からの援軍も、\\n OTHERSの活動により、望めない状況です」",
"501000311_64": "「全ての世界の危機だとしても、\\n まずは自分たちの世界を護り、目の前の人々を護る……」",
"501000311_65": "「それが、僕たちの知る\\n 『並行世界の装者』たちでしょう」",
"501000311_66": "「……」",
"501000311_67": "「ですから、こちらとしては、\\n 使える戦力を放っておくわけにはいきません」",
"501000311_68": "「……確かに。\\n 現実的な案であることはわかります……」",
"501000311_69": "「……以前、我々は並行世界との共同作戦により、\\n 世界蛇及びベアトリーチェを撃退しました」",
"501000311_70": "(……数年前に記録した事象のことか。よく覚えている。",
"501000311_71": " だからこそ、並行世界を分断できるよう奇襲を掛けたわけだけど)",
"501000311_72": "(今回はそれが裏目に出た、ということ……。\\n まったく、ままならないものですね",
"501000311_73": "「しかし、今回復活したベアトリーチェは、\\n その時よりも遙かに力を増している」",
"501000311_74": "「あなたがたが『あの時』の\\n ベアトリーチェをご存知かはわかりませんが……」",
"501000311_75": "「実際戦って、ベアトリーチェの脅威がわからないほど、\\n あなたがたの力量は低くはないはずです」",
"501000311_76": "「……チッ」",
"501000311_77": "「……ええ、その通りです。\\n 残念ながら、あんな化け物レベルが出て来るのは予想外でした」",
"501000311_78": "「我々、そしてシンフォギア装者に対しての備えは、\\n 相当練ってきたのでしょう」",
"501000311_79": "「しかし、事は最早、\\n あなたがた……そして僕たちの想定を越えています」",
"501000311_80": "「ならば、我々がすべきことは、\\n 世界蛇及びベアトリーチェに対しての共同戦線」",
"501000311_81": "「少なくとも。\\n 僕たちが敵対している場合ではない。違いますか」",
"501000311_82": "「…………」",
"501000311_83": "(すごいな。\\n 的確に相手を詰めていく……",
"501000311_84": "(まるで、\\n お父様の交渉を見ているかのようだ……",
"501000311_85": "「…………」",
"501000311_86": "「…………」",
"501000311_87": "「……わかりました。\\n 共同戦線の申し出、受けましょう」",
"501000311_88": "「そうだな。\\n 飽くまでも、一時的、表面的な――な」",
"501000311_89": "「本当ッ!?」",
"501000311_90": "「あなたの言う通り、この問題は、\\n わたしたちだけで突破するのは難しそうです」",
"501000311_91": "「それで、\\n わたしたちに何を求めるつもりですか」",
"501000311_92": "「捕虜としてのわたしたちに、そのような提案をするのです。\\n 何か、してもらいたいことがあるのでしょう」",
"501000311_93": "(切り替えが早いな。\\n 余程頭が回るか、あるいは……",
"501000311_94": "(常在戦場の生き方が染み付いているか。\\n どちらにしろ、相当に過酷な世界を生き抜いてきたようだ",
"501000311_95": "「はい。\\n 各地に出現しているドッペルゲンガーを退かせてください」",
"501000311_96": "「ああ……順当だな。\\n だが、それはできない」",
"501000311_97": "「――ッ!\\n それは、どうして……」",
"501000311_98": "「……意地悪で言っているわけではないんですよ、\\n ファム・ファタール」",
"501000311_99": "「一度『避雷針』を導に召喚した『<ruby=ドッペルゲンガー>器</ruby>』は、\\n もう元に戻すことは不可能です」",
"501000311_100": "「そんな……」",
"501000311_101": "「……わたしたちは、\\n 星命力がほぼ枯渇した世界からやって来ました」",
"501000311_102": "「星命力、って……\\n 確か……」",
"501000311_103": "「エレクライトを纏うヒビキさんから、報告を受けた……\\n ニコラ・テスラが求めていたものですか」",
"501000311_104": "「如何にも。\\n とは言え、わたしたちの収集方法はそれとは違います」",
"501000311_105": "「死にかけの、守護者にすら見放されたわたしたちの世界。\\n しかし、だからこそ、他の並行世界には存在しない技術がありました」",
"501000311_106": "「それは、『乾いた器に、潤ったものを捕らえる』技術。",
"501000311_107": " ……元々は、飲料水を得るための……生きるための、技術です」",
"501000311_108": "「水は、高きから低きに流れる。道理ですよね。\\n リンゴが上から下に落ちるのと同じです。だから――」",
"501000311_109": "「今にも死にそうな、弱々しい魂を導にして、\\n この世界に召喚した『<ruby=うつわ>ドッペルゲンガー</ruby>』こそ……」",
"501000311_110": "「強者を捕らえるのに相応しい、\\n そんな強い器となる、ということですよ」",
"501000311_111": "「けれど……そんなに大きな器を用意するのに、\\n 代償がないわけがないでしょう」",
"501000311_112": "「――ッ!」",
"501000311_113": "「避雷針役は召喚時点で死を免れませんし……\\n ドッペルゲンガーは、飽くまで『自律する器』」",
"501000311_114": "「作戦開始時点にインプットした『生命力を回収する』という任務を、\\n 粛々と、休むことなく遂げ続ける機械でしかありません」",
"501000311_115": "「あたしたちの生死に関わらず――な」",
"501000311_116": "「……なるほど」",
"501000311_117": "「……他に、確認事項はありますか?\\n なければ、これで話は終わりに――」",
"501000311_118": "「――あのッ!\\n だったらッ」",
"501000311_119": "「キョウちゃんとヨウちゃんの世界についても、\\n 何か、教えてくれることはあったりするかな……」",
"501000311_120": "「……勘違いしないでくださいね、\\n ファム・ファタール」",
"501000311_121": "「わたしたちにできるのは、\\n 世界蛇撃破のため、力を振るうことだけ」",
"501000311_122": "「つまり、世界蛇を倒すところまでいけば、\\n 共同戦線は即終了です」",
"501000311_123": "「あたしたちの目的は、『見放された世界』のために、\\n この世界から奪い尽くすこと。……それは変わらない」",
"501000311_124": "「精々寝首を掻かれないよう、\\n 気をつけることだな」",
"501000311_125": "「……」",
"501000311_126": "「……それは、こちらとて同じことだ」",
"501000311_127": "「……最後に、\\n もうつだけ教えていただけますか」",
"501000311_128": "「……」",
"501000311_129": "「この状況下です。並行世界への攻撃を中止して、\\n あなたがたの世界に逃げるという選択肢もあったのでは」",
"501000311_130": "「馬鹿を言うな。\\n あたしたちは、世界を託されて戦っているッ」",
"501000311_131": "「『見放された世界』のためなら、\\n 泥水だって啜って生き延びてやるッ」",
"501000311_132": "「ええ、その通りです。\\n こちらにも、決して譲れないものがある」",
"501000311_133": "「<size=25>――それに、容易く『逃げ帰れる』わけでもないんですよ。\\n カヴァーチャが、許してくれるはずもない……</size>」",
"501000311_134": "「え……?」",
"501000311_135": "「……いえ、こちらの話です」",
"501000311_136": "「大して実のある話ではなかっただろうお詫びに……",
"501000311_137": " そうですね、こんな『話のタネ』はいかがでしょうか?」",
"501000311_138": "「あなたたちは、\\n わたしたちのことを『世界の敵』と呼びましたが――」",
"501000311_139": "「わたしたちにとっては、\\n シンフォギアこそ『世界の敵』です」",
"501000311_140": "「だって、わたしたちの世界が『見放された世界』になってしまったのは、\\n ――シンフォギアのせいなんですから」",
"501000311_141": "「――ッ!?」",
"501000311_142": "「……」",
"501000311_143": "「……世界創生の神話に興味があるわけではないでしょうから、\\n わたしの『雑談』はこれくらいにさせていただきますね」",
"501000311_144": "(シンフォギアが、世界の敵……?\\n どうして、そんなことに……"
}

View file

@ -0,0 +1,90 @@
{
"501000321_0": "「それじゃあ、まずはセレナちゃんの世界に、\\n 行ってきますッ」",
"501000321_1": "「くれぐれも、注意してくださいね。",
"501000321_2": " ベアトリーチェの件もありますので……」",
"501000321_3": "「ごめんなさい。\\n わたしのせいで、ご迷惑を掛けてしまって……」",
"501000321_4": "「そんなことないよッ!\\n みんなで、セレナちゃんの世界を助けに行こうッ」",
"501000321_5": "「マリアさん、調ちゃん、切歌ちゃんも、\\n 一緒に行けたら良かったんだけど……」",
"501000321_6": "「仕方ないさ。\\n まだ怪我も残ってるし、新しいギアの馴らしも必要だからな」",
"501000321_7": "「そうだな。\\n 今は、いずれ訪れる戦いに備えてもらおう」",
"501000321_8": "「それにしても……」",
"501000321_9": "「……どうした?\\n 敵意が滲み出ているぞ」",
"501000321_10": "「……呉越同舟とはこのことだな。\\n しかし、仲違いしていても始まるまい」",
"501000321_11": "「そうですよッ!\\n みんなで協力して、頑張りましょうッ」",
"501000321_12": "「キョウちゃん、ヨウちゃんも、\\n 怪我はもう大丈夫」",
"501000321_13": "「……あたしたちに構うな。\\n 自分たちのことだけ心配してろ」",
"501000321_14": "「そうですよ、ファム・ファタール。\\n お気遣いなく、互いの目的を果たすのみですから」",
"501000321_15": "「う、うん……」",
"501000321_16": "「やれやれ。\\n この様子じゃ、先が思いやられるな……」",
"501000321_17": "数時間前――",
"501000321_18": "「納得いかないわッ!\\n こいつらと、共同戦線を張るだなんてッ」",
"501000321_19": "「切ちゃんを傷付けた人たち、\\n わたしも、信用できない……」",
"501000321_20": "「……フン。\\n 信用できないのは、お互い様だ」",
"501000321_21": "「なんですってッ!?」",
"501000321_22": "「まあまあ、\\n みんな、甘いものでも食べて落ち着くデスよ」",
"501000321_23": "「……むしろ切ちゃんは、\\n どうしてそこまで落ち着いているの」",
"501000321_24": "「それはもう、\\n こうしてピンピンしているからデスよ」",
"501000321_25": "「いや、思いっきり怪我しているだろ。\\n いいからベッドに戻ってろって」",
"501000321_26": "「寝てばかりいるのは飽きたデスよッ!\\n 年頃の女の子にはキツすぎる仕打ちデスッ」",
"501000321_27": "(緊張感の欠片もない……\\n あたしたちは本当に、こんな奴らに負けたってのか",
"501000321_28": "「とにかくッ!\\n 大事なのは、ベアトリーチェをどうにかすることデスよね」",
"501000321_29": "「そのために必要なことなら、\\n なんでもやるべきデスッ」",
"501000321_30": "「暁さんの言う通りです。\\n 今は、わたしたちが揉めている場合ではないと思います」",
"501000321_31": "「でも、セレナの世界でも、他の世界でも、\\n 未だにドッペルゲンガーが暴れているんでしょ」",
"501000321_32": "「増え続けるアレを放置したまま、\\n 共同戦線といっても、さすがに限度があるわ」",
"501000321_33": "「……では、\\n 兵たちに、召喚の一時中止を指示しておきましょうか」",
"501000321_34": "「それなら、あなたたちも、\\n 少しは安心できるでしょう」",
"501000321_35": "「――ッ!?\\n そんなことができるのッ」",
"501000321_36": "「……そうだな。退かせることはできないが、\\n これ以上器を喚ばないことなら、可能だ」",
"501000321_37": "「じゃあ、すぐにお願いッ!」",
"501000321_38": "「……今回の作戦は、お前たちにとっては悲願だったはず。\\n そう簡単に、決行を止められるものなのか」",
"501000321_39": "「問題ありません。\\n わたしたち人は、作戦の全権を任されていますから」",
"501000321_40": "「……ああ。\\n これも作戦の内だと言えば、受け入れてくれるだろう」",
"501000321_41": "「では、早速――」",
"501000321_42": "「――各員に通達。\\n 現時刻をもって、作戦を一時中止します」",
"501000321_43": "「繰り返します。\\n 作戦は一時中止。そのまま待機し、次の指令を待ってください」",
"501000321_44": "「了解ッ!\\n 作戦を一時中止し、待機しますッ」",
"501000321_45": "「……これで満足か?」",
"501000321_46": "「……ええ」",
"501000321_47": "「ねえ、その通信機って……」",
"501000321_48": "「ああ、これですか? ボディチェックはしたと思いますが……\\n さすがに、すぐに取り外せるはずありませんよね」",
"501000321_49": "「頭の内側に取り付けてある通信機なんて」",
"501000321_50": "「今の男の人の応答は……一人二役で、声を変えて\\n 喋ってたわけではなかったデスか……」",
"501000321_51": "「……話を戻しましょうか。\\n これで、新たなドッペルゲンガーの出現は止まります」",
"501000321_52": "「とは言え、先に伝えた通り、既に召喚されている\\n ドッペルゲンガーの活動までは止まりませんが……」",
"501000321_53": "(……『世界を救うための組織』なんて、\\n 人に凄まじい覚悟が必要な集まりのはずだ",
"501000321_54": "(その救世の作戦実行中だろうに、\\n こいつらの一言で、すぐさま、それを止めることもできる",
"501000321_55": "(この2人……\\n 部下たちから、どれだけ信用されていやがるんだ",
"501000321_56": "(それこそ……、\\n こいつらの世界での、英雄扱いってことなのか……",
"501000321_57": "「どうやら、無事にゲートを通過できたようですね。\\n 先を急ぎましょう」",
"501000321_58": "「あたしたちでもギャラルホルンのゲートを使えるとは……",
"501000321_59": " 笑えない皮肉だな……」",
"501000321_60": "(キョウちゃんとヨウちゃんも、\\n ゲートを通れたっていうことは……",
"501000321_61": "(2人が纏っているものも、\\n 聖遺物だということか",
"501000321_62": "(けど、あんだけシンフォギアを嫌ってたんだ。\\n まさか自分たちも使ってるなんてことは……",
"501000321_63": "「……何を団子になっている、\\n 先を急ぐぞ」",
"501000321_64": "「気を抜くのは、\\n グレイプニル世界に着いてからにしろ」",
"501000321_65": "「あの……グレイプニル世界というのは、\\n ひょっとして、わたしの住んでいる世界のことですか」",
"501000321_66": "「ん?",
"501000321_67": " ああ……」",
"501000321_68": "「……おや。\\n どうやら、呑気に話している場合ではないようです」",
"501000321_69": "「えッ!?」",
"501000321_70": "「おいでなすったかッ!\\n 相変わらず、厄介な連中だッ」",
"501000321_71": "「全員、構えろッ!」",
"501000321_72": "「構える暇など――ッ!」",
"501000321_73": "「まだるっこしいッ!!」",
"501000321_74": "「――速いッ!?」",
"501000321_75": "「……なるほど、これがカオスビーストか。\\n 聞いていたより、ずっと弱いな」",
"501000321_76": "「この程度の力なら、\\n ことさら警戒する必要はなかったようですね」",
"501000321_77": "「……マジかよ。\\n あたしらが、あれだけ手こずった相手を……」",
"501000321_78": "(これだけの力を、\\n 今まで見せてこなかったのは……",
"501000321_79": "(こいつらの目的が、あたしらを殺すためではなく、\\n 生命力を奪いたかったから、なのか",
"501000321_80": "「呆けている場合か?\\n 後続が出て来たぞ」",
"501000321_81": "「――ッ!?」",
"501000321_82": "「あたしらは『協力』したぞ。\\n 残りはお前たちで片付けろ」",
"501000321_83": "「それとも……、\\n 捕虜にこれ以上働かせるつもりか」",
"501000321_84": "「共同戦線ですもんね。\\n わたしたちに丸投げするつもりではないでしょう」",
"501000321_85": "「改めて――\\n あなたたちの実力、見せてもらいましょう」",
"501000321_86": "「ハッ!\\n 言われなくても、見せてやるよッ」",
"501000321_87": "「その通りだッ!\\n わたしたちの本領、その目に焼き付けろッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,59 @@
{
"501000331_0": "「わたしたちは、セレナちゃんの世界に行くんだッ!!\\n だからそこを、退けぇぇぇッ」",
"501000331_1": "「お見事ですね、ファム・ファタール。\\n そうでなければ面白くない」",
"501000331_2": "「…………」",
"501000331_3": "(でも、この力を、\\n キョウちゃんは『世界の敵』と呼んだ",
"501000331_4": "(シンフォギアが、\\n キョウちゃんたちの世界を、壊したって……",
"501000331_5": "(シンフォギア……了子さんが遺してくれた\\n この力は、正しいものだって信じているけど……",
"501000331_6": "「先を急ぐぞ。\\n グレイプニル世界は、すぐそこだ」",
"501000331_7": "「マムッ!\\n ただいま戻りましたッ」",
"501000331_8": "「お帰りなさい、セレナ。\\n そして、ようこそ装者の皆さん」",
"501000331_9": "「……まさか、そちらのあなたも、\\n 一緒に戻ってくるとは思いませんでしたが」",
"501000331_10": "「……」",
"501000331_11": "「あんなことがあったのに、\\n どういった風の吹き回しですか」",
"501000331_12": "「……あんなこと?",
"501000331_13": " いったい、何があったんです?」",
"501000331_14": "「えっと……、\\n それは――」",
"501000331_15": "「他愛ないですね」",
"501000331_16": "(姉、さん……――)",
"501000331_17": "「――ッ!?\\n 誰だッ」",
"501000331_18": "「それはこっちのセリフよッ!」",
"501000331_19": "「<ruby=その子>セレナ</ruby>を傷付けて……、あんたはいったいどこの誰ッ!?\\n ただで帰れるなんて思わないことねッ」",
"501000331_20": "「――何故、このタイミングで介入がッ!?\\n お前たち、まさか……ミョルニル世界のッ」",
"501000331_21": "「く……こんな時にッ!」",
"501000331_22": "「ほらほらッ!?\\n 考えごとしている暇なんてないわよッ」",
"501000331_23": "「チィッ……!」",
"501000331_24": "「まだまだ。終わりじゃないッ!\\n この程度じゃ済まさないわッ」",
"501000331_25": "「セレナを傷付けた報いをッ!\\n その身で受けなさい――ッ」",
"501000331_26": "「く……ッ!?」",
"501000331_27": "ミョルニルの『APPLE』……ッ",
"501000331_28": "(わたしたち以外で、\\n ある程度自由に並行世界を渡る術を持った連中……ッ",
"501000331_29": "(これだけの相手から、わたし1人で\\n 想い出を回収するには荷が重い、ならば――ッ",
"501000331_30": "「どうしたのッ!?\\n 観念したのかしらッ」",
"501000331_31": "「……フフ、まさか。\\n 退かせてもらいますよ、今はね」",
"501000331_32": "「――ッ!?",
"501000331_33": " させるかッ!」",
"501000331_34": "「……チッ、逃がしたか」",
"501000331_35": "「そんなことがあったなんて……」",
"501000331_36": "「はい。すんでのところで、\\n 並行世界のお人に助けてもらったんです」",
"501000331_37": "「そして撤退したわたしは、\\n ギャラルホルン世界でヨウと合流し――」",
"501000331_38": "「その後のことは、\\n あなたたちもご存じですよね」",
"501000331_39": "「過去の話はそこまでにしましょう。\\n 何か、<ruby=みらい>未来</ruby>に向けての話を伝えに来たのでしょう?」",
"501000331_40": "「――ベアトリーチェの侵略。\\n そして、OTHERSという組織との共同戦線、ですか」",
"501000331_41": "「こちらの被害の仔細を知らず……\\n 勝手に決めることとなってしまい、申し訳ありません」",
"501000331_42": "「いえ、そちらの世界の方々が熟慮したことでしょう。\\n 謝る必要はありません」",
"501000331_43": "「並行世界のマリアとセレナが率いるAPPLE。\\n そして、スクルドの方々――」",
"501000331_44": "「彼らは数人の隊員を、\\n この世界に残してくれた上で、再び旅立ちました」",
"501000331_45": "「各並行世界を渡り、\\n それぞれの世界の助けとなるために」",
"501000331_46": "「APPLEと、スクルドの人たち……。\\n みんな、動いてくれていたんだ」",
"501000331_47": "「彼らは、並行世界に危機が迫っていることを察知し、\\n 早急に協力し合っていたようです」",
"501000331_48": "「……どうやら、\\n ドッペルゲンガーが暴れているようです」",
"501000331_49": "「く――ッ!?」",
"501000331_50": "「その目はなんだ?\\n 活動は停止させられないと言っただろう」",
"501000331_51": "「あれは『<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>』のひとつですが、\\n こちらの世界群でいうところの、自律式の聖遺物のようなもの」",
"501000331_52": "「一度起動してしまえば、\\n もうわたしたちの操作は受け付けません」",
"501000331_53": "「組み込まれた命令を、\\n ただ遂行し続けるだけの道具です」",
"501000331_54": "「……つまり。\\n 倒すしかないってことだな」",
"501000331_55": "「着いて早々、申し訳ありません。\\n 対処をお願いできますか」",
"501000331_56": "「もちろんですッ!\\n 任せてくださいッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,15 @@
{
"501000332_0": "「これで、終わりです」",
"501000332_1": "「……随分と簡単に、\\n とどめを刺すものだな」",
"501000332_2": "「はぁ……今度はなんだ?\\n あたしたちが何をしても気に食わないようだけど」",
"501000332_3": "「……元はといえば、\\n それはお前たちの仲間を『使って』召喚したものだ」",
"501000332_4": "「なんの罪悪感もないのか?」",
"501000332_5": "「――。\\n ええ、ありません」",
"501000332_6": "「……あたしたちの胸にある『絶対』の目的は、\\n 『見放された世界』を救うことだ」",
"501000332_7": "「そのためだったら、\\n どんな血塗られた道だろうと、乗り越えてみせると決めた」",
"501000332_8": "「償うべき罪を、どれだけ重ねようとも。\\n 絶対に、果たしてみせるッ」",
"501000332_9": "「……」",
"501000332_10": "(なんという眼。\\n これは、修羅場を越えてきた者の眼か――",
"501000332_11": "「殺すための覚悟――、\\n 英雄になる覚悟なんて、とっくに済ませてきました」",
"501000332_12": "「だから、今更止まりませんよ。\\n ……止まるものですか」"
}

View file

@ -0,0 +1,41 @@
{
"501000411_0": "幕間",
"501000411_1": "「ただいま戻りましたッ!」",
"501000411_2": "「お疲れ様です。",
"501000411_3": " それでは、早速今後のことについて話しましょうか」",
"501000411_4": "「世界蛇との決戦となれば、\\n 更なる情報が必要となるでしょう」",
"501000411_5": "「そこで、セレナ。\\n あなたにお願いがあります」",
"501000411_6": "「ヴェイグさんのことですよね?\\n 少し待ってください。お願いしてみますから……」",
"501000411_7": "「待つ必要はない。\\n 直接話すからな」",
"501000411_8": "「ヴェイグさんッ!?\\n 表に出て来て平気なんですかッ」",
"501000411_9": "「オレのことは気にしなくていい。\\n それよりも今はベアトリーチェのことだ」",
"501000411_10": "「話が早くて何よりですね。",
"501000411_11": " では――ミレニアムパズルは使用できるのですか?」",
"501000411_12": "「使うことはできる。",
"501000411_13": " ……ただ、今のベアトリーチェを捕らえるのは難しいだろう」",
"501000411_14": "「それは……最近ヴェイグさんが調子悪そうにしていることと、\\n 何か関係があるんですか」",
"501000411_15": "「……まったく、\\n お前に隠し事はできないな」",
"501000411_16": "「オレは、セレナの精神に居候している身だが……\\n ヒトの精神構造ってのは、『並行世界の狭間』に似ているんだ」",
"501000411_17": "「だから、セレナの<ruby=なか>裡</ruby>にいるだけでも、\\n ベアトリーチェの悪意が伝わってくるんだ」",
"501000411_18": "「そうだったんですか……」",
"501000411_19": "「正直、『嫌な<ruby=にお>臭</ruby>い』に関しては、\\n 表でも裏でもそこまで差はない……」",
"501000411_20": "「むしろ……、直接、お前たちの近くにいる今の方が、\\n 調子が良いくらいだよ」",
"501000411_21": "「エヘヘ……」",
"501000411_22": "「どうしてお前が照れてるんだよ」",
"501000411_23": "「しかし、ベアトリーチェの力は、\\n 以前よりもずっと増している……」",
"501000411_24": "「悪意だけを見ても、\\n 比べものにならないくらいに膨れ上がっているようだ」",
"501000411_25": "「ただ、妙なことにな。\\n 『世界蛇』を連れているような感じはしない」",
"501000411_26": "「まるで、世界蛇の巫女と、世界蛇。\\n 同化して、つのモになったかのようだ」",
"501000411_27": "「それって、\\n 以前戦った時のように……ですか」",
"501000411_28": "「……いや、あの時とも違うな。\\n もっと別の、混ざり合った存在になっている」",
"501000411_29": "「だから今、\\n ミレニアムパズルを使っても捕らえるのは難しい……と」",
"501000411_30": "「ああ、そうなる」",
"501000411_31": "「それじゃあ……、\\n わたしがグレイプニルギアを使っても……」",
"501000411_32": "「そうだ。\\n だから、あまり無茶をしないでくれ」",
"501000411_33": "「ただでさえ、普段から危なっかしいんだ。\\n もう少し自分を大事にした方が良い」",
"501000411_34": "「はい。\\n 気をつけます」",
"501000411_35": "「<size=25>そうか……こいつが纏っているのがグレイプニルギア……。\\n だからこの世界は、『グレイプニル』と呼ばれるのか……</size>」",
"501000411_36": "「……?」",
"501000411_37": "「話はそのくらいにしておきましょう。\\n セレナの検査をする必要がありますからね」",
"501000411_38": "「皆さんも、少し休んでください。\\n 戦いは、まだ続くのでしょうから」"
}

View file

@ -0,0 +1,88 @@
{
"501000421_0": "「……あッ!」",
"501000421_1": "「――ッ!」",
"501000421_2": "「……お前か。\\n 検査とやらは、終わったのか」",
"501000421_3": "「はい。\\n 『大丈夫』の太鼓判をもらって、終わりましたッ」",
"501000421_4": "「……そうか。\\n じゃあ――」",
"501000421_5": "「あ、あのッ!」",
"501000421_6": "「……なんだ?」",
"501000421_7": "「この世界に来る途中で話していた、世界の名前の話。\\n 教えてもらえませんか」",
"501000421_8": "「……あたしがお前に教える理由も、義理もない」",
"501000421_9": "「そ、それでもッ!\\n 教えてもらいたいんですッ」",
"501000421_10": "「だから……」",
"501000421_11": "「お願いしますッ!」",
"501000421_12": "「――ッ!」",
"501000421_13": "「……わかったよ。\\n 教えてやるから、そんな顔をするな」",
"501000421_14": "「あたしたちが作戦上で呼んでいる名前だ。\\n 特に面白い話だとも思えないが……」",
"501000421_15": "「ありがとうございますッ!!」",
"501000421_16": "「……。\\n 一度しか言わないから、勝手に覚えろ」",
"501000421_17": "「ファム・ファタール――お前の知る立花響がいる世界が、\\n 『ギャラルホルン』世界だ」",
"501000421_18": "「そして……シンフォギアを使わない、\\n もう人の立花響の世界が、『ナグルファル』」",
"501000421_19": "「錬金術師が幅をきかせている世界が、\\n 『ドラウプニル』」",
"501000421_20": "「今いるこの世界は、『グレイプニル』」",
"501000421_21": "(わたしの使う、\\n このギアと同じ名前……",
"501000421_22": "「聖遺物ヴィマーナを利用する世界が、\\n 『ミストルティン』」",
"501000421_23": "「ロボット技術が進歩した世界、\\n 『フロッティ』」",
"501000421_24": "「既に世界蛇によって滅ぼされた世界、\\n 『ミョルニル』」",
"501000421_25": "「ああ……シンフォギアが開発されなかった世界もあるな。",
"501000421_26": " 装者もいない世界を、『スヴォル』」",
"501000421_27": "「そして……、\\n 竜の力を纏って闘うという世界、『レーヴァテイン』――」",
"501000421_28": "「……まあ、『レーヴァテイン』は、本流から大きく分かれた世界。\\n だから今回、あたしたちの作戦目標には入ってない」",
"501000421_29": "「本流……?\\n どういう意味ですか」",
"501000421_30": "「……お前たちは、\\n 自分の世界こそが『真なる世界』と思っていたんだろう」",
"501000421_31": "「だが、それは真実とは異なる」",
"501000421_32": "「ファム・ファタールがいる『ギャラルホルン』も含めて、\\n どの並行世界群も、そう呼べはしない」",
"501000421_33": "「当然、あたしたちの、\\n 『見放された世界』も含めてな」",
"501000421_34": "「真なる、世界……?」",
"501000421_35": "「――とにかく、\\n 世界の名前についてはこんなところだ」",
"501000421_36": "「どうだ?\\n 別に面白い話ではなかっただろう」",
"501000421_37": "「そんなことありませんッ!\\n とっても面白かったですッ」",
"501000421_38": "「……そ、そうか……」",
"501000421_39": "「……えっと、それで……\\n その世界の名前は、わたしのグレイプニルギアみたいに……」",
"501000421_40": "「聖遺物の名前をつけられている。",
"501000421_41": " そこで、その、ちょっと疑問があるんですけど……」",
"501000421_42": "「……?」",
"501000421_43": "「それぞれの並行世界に、\\n 『同じ聖遺物』があったりもしますよね」",
"501000421_44": "「失われた聖遺物ミョルニルを、\\n 別の世界から持ち出した時みたいに……」",
"501000421_45": "「それなら、どうして、\\n 聖遺物の名前をつけたんですか」",
"501000421_46": "「それって……。\\n ちょっとわかりにくいような気がして……」",
"501000421_47": "「……フフ。\\n まあ、そうよね」",
"501000421_48": "(あ……、\\n 今、すごく自然に笑ってくれた",
"501000421_49": "(こんな笑い方をするような人を、\\n わたしはやっぱり、心から悪い人だって思えない……",
"501000421_50": "「この世界が『グレイプニル』と呼ばれているのはな。\\n 恐らく、お前のせいだよ」",
"501000421_51": "「ええッ!?\\n わたしのッ」",
"501000421_52": "「『ギャラルホルン』世界だけは特別だけど。\\n 各世界に、同じ名前の聖遺物があったとして――」",
"501000421_53": "「『その聖遺物』が、『その世界』において、\\n 大きな影響を及ぼすターニングポイントとなる場合」",
"501000421_54": "「あたしたちは、『その世界』のことを、\\n 『その聖遺物』の名前で呼称する――」",
"501000421_55": "「それが過去のことか、<ruby=みらい>未来</ruby>のことかはわからない。\\n だけど、あたしたちはそう教えられてきたんだ」",
"501000421_56": "「……あれ?",
"501000421_57": " セレナちゃんとヨウちゃん、何を話していたの?」",
"501000421_58": "「ヨウ?\\n 何か問題でもありましたか」",
"501000421_59": "「ああ。\\n いや、別に……」",
"501000421_60": "「色々と、教えてもらっていたんですッ!\\n ありがとうございました、ヨウさんッ」",
"501000421_61": "「べ、別に大したことじゃない……」",
"501000421_62": "「…………」",
"501000421_63": "(やっぱり、\\n どうしてもヨウさんが悪い人には思えない",
"501000421_64": "(確かに攻撃されたけれど……この2人が\\n あれだけ必死なのには、世界を救う以外に、理由があるんじゃ……",
"501000421_65": "「それで、\\n 検査の結果はどうだったんだ」",
"501000421_66": "「あ、えっと……、\\n それなんですけど……」",
"501000421_67": "「検査の結果は良好。\\n ですが――」",
"501000421_68": "「セレナが、この世界を離れる許可は出せません」",
"501000421_69": "「マムッ!?」",
"501000421_70": "「それは、何故……?」",
"501000421_71": "「ヴェイグさんのミレニアムパズルが、\\n ベアトリーチェに対する決定打にならない以上――」",
"501000421_72": "「世界蛇との短期決戦は望めません。\\n ならば、この世界の護りを、これ以上手薄にはできない」",
"501000421_73": "「でも、わたしだって、\\n みなさんのお役に……」",
"501000421_74": "「あなたの気持ちはわかります。\\n しかし、<ruby=ベアトリーチェ>敵</ruby>がどう仕掛けてくるかわからない現状――」",
"501000421_75": "「これは決定事項ですよ、セレナ」",
"501000421_76": "「そんな……」",
"501000421_77": "「まあ、仕方がないだろ。\\n この世界を護ることに専念したほうがいい」",
"501000421_78": "「そうだな。",
"501000421_79": " 我々からの援護も、すぐに出せるかどうか不明だ」",
"501000421_80": "「…………わかりました。\\n わたしは、この世界を護り抜くことに全力を尽くします」",
"501000421_81": "「お互いに頑張ろうねッ!",
"501000421_82": " それぞれの世界を、絶対に護り抜こうッ!」",
"501000421_83": "「は、はいッ!\\n 頑張りますッ」",
"501000421_84": "「…………」",
"501000421_85": "「…………」"
}

View file

@ -0,0 +1,27 @@
{
"501000431_0": "「……その……\\n ごめん、キョウ」",
"501000431_1": "「どうしたの?\\n そんな顔をして……」",
"501000431_2": "「あたし、あの子に色々と喋っちゃった。\\n わざわざ、言わなくてもいいことを……」",
"501000431_3": "「ああ、そのことか。",
"501000431_4": " ……フフ、いいんだよ」",
"501000431_5": "「え?」",
"501000431_6": "「ヨウがやりたいようにすればいいの」",
"501000431_7": "「……でも、あたしは、\\n 肝心なところで、腕が鈍ってしまう……」",
"501000431_8": "「あいつらの本部に攻め込んだ時も……」",
"501000431_9": "「お前にも、\\n 仕置きが必要か――ッ」",
"501000431_10": "「く…………ッ!」",
"501000431_11": "「ヨウ、待ってッ!」",
"501000431_12": "「――ッ!?\\n ……キョウ どうして……」",
"501000431_13": "「あの時も……、\\n キョウが止めてくれたよね」",
"501000431_14": "「ヨウにあんなこと、させたくなかっただけだよ。\\n ヨウは、ちっちゃい子に優しいから」",
"501000431_15": "「そういう役目は、わたしでいいの」",
"501000431_16": "「キョウ……」",
"501000431_17": "「あ、あの……ッ」",
"501000431_18": "「――待て、立花。\\n 下手に声を掛けない方が良い」",
"501000431_19": "「だな。",
"501000431_20": " ……まあ案の定、あちらさんも色々ワケアリってことか」",
"501000431_21": "「様々な言動から察するに\\n 譲れぬ何かのために戦っている、それは理解した」",
"501000431_22": "「だからといって……\\n 現状、あの人が世界の敵であり、捕虜であることに変わりはない」",
"501000431_23": "「それは……。\\n わかっている、つもりですけど」",
"501000431_24": "「それでも……」"
}

View file

@ -0,0 +1,31 @@
{
"501000441_0": "「さて――\\n それで、どうするんでしょうか」",
"501000441_1": "「このグレイプニル世界に、\\n ベアトリーチェに対する決定打がないことはわかりました」",
"501000441_2": "「これで諦めてもらっちゃ困る。\\n ベアトリーチェを倒す方策くらいは、用意してもらわないと」",
"501000441_3": "「予想よりずっと、共闘に前向きじゃないか。",
"501000441_4": " ……このままじゃ自分たちが奪う分の世界がなくなるから、か?」",
"501000441_5": "「ええ、その通りですよ。\\n よくわかっているじゃないですか」",
"501000441_6": "「皮肉のつもりで言っているんだろうが、\\n 時間の無駄でしかないぞ。『当面の』目的は同じなんだ」",
"501000441_7": "「その割には、親切ご丁寧に、\\n あいつに色々教えてくれていたようじゃないか」",
"501000441_8": "「ぐッ……」",
"501000441_9": "「……雪音も、そのくらいにしておけ。",
"501000441_10": " 直截的なやり取り自体はこちらも望むところだ」",
"501000441_11": "「そちらから、\\n 何か有効な提案はないのか」",
"501000441_12": "「……そうですね。\\n わたしたちの技術を貸し出すのは癪ですし――」",
"501000441_13": "「並行世界群を渡るベアトリーチェが、\\n わたしたちを知らなかったことも<ruby=はらわた>腑</ruby>が煮え繰り返る想いですが」",
"501000441_14": "「――であればこそ、\\n <ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>が何かしらの役に立つかもしれません」",
"501000441_15": "「……なるほどな。イシムの時もそうだったが、\\n 相手にとって未知の技術は武器となる……」",
"501000441_16": "「そのまま使っては、あまり意味はないでしょう。\\n しかし――」",
"501000441_17": "「そちらの……愚かな、小さな頑張り屋さんが、\\n <ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>を纏ったように」",
"501000441_18": "「あるいは、別の装者が、\\n 合金仕立てのシンフォギアに取り込んで使ったように……」",
"501000441_19": "「技術の活かし方次第では、\\n 可能性があると考えます」",
"501000441_20": "「だがその方法は、お前たちにとっては、\\n 聖遺物ではない異物を取り込むということだ」",
"501000441_21": "「強靱な意志なくしては、\\n 制御は難しい――」",
"501000441_22": "「あるいは、よっぽどお気楽なやつでもいるのなら、\\n 案外簡単に制御してしまうかもしれないがな」",
"501000441_23": "「お、お気楽……?」",
"501000441_24": "「……なんだか不思議と、\\n 心当たりがあるような気がするな……」",
"501000441_25": "「……あのッ!\\n 可能性があるなら、試してみるべきではないでしょうかッ」",
"501000441_26": "「バックファイアの克服だったら、わたしたち……\\n デュオレリックの時にも経験してますッ」",
"501000441_27": "「そうだねッ!\\n わたしたちなら、きっと乗り越えられるはずッ」",
"501000441_28": "「S.O.N.G.に帰還して、\\n エルフナインちゃんに訊いてみようッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,33 @@
{
"501000451_0": "「――というわけで、シンフォギアに、\\n 『アリアドネの糸』を組み込めないかなッ」",
"501000451_1": "「なるほど、試してみる価値はありそうです。\\n それでは、どなたのギアに組み込んでみましょうか」",
"501000451_2": "「はいッ!\\n アタシのギアに組み込んで欲しいデスッ」",
"501000451_3": "「なんでもクリス先輩から、直々のご指名ということデスッ!\\n やる気がみなぎるデスよッ」",
"501000451_4": "「怪我も治りかけデスし、『アリアドネ』だろうが\\n 『アバラボネ』だろうがドンと来いデスッ」",
"501000451_5": "「ボクは構いませんが……\\n ご指名ということは、何か理由があるのですか」",
"501000451_6": "「……いや、えーと、その……\\n こいつならできると思ってさ」",
"501000451_7": "(……覚悟をもった『お気楽』なやつだから……\\n なんて、言えるわけないよな",
"501000451_8": "「組み込み自体はすぐに終わります。\\n 早速試してみましょう」",
"501000451_9": "「お……おおッ!?\\n これが、調たちと同じアマルガム・キーパー……デスか」",
"501000451_10": "「はい。バックファイアの感覚はありますか?\\n 細心の注意を払って調整したつもりですが―……」",
"501000451_11": "「別になんともないデスよ?\\n 極めて良好デースッ」",
"501000451_12": "「すごいよ、切歌ちゃんッ!」",
"501000451_13": "「……」",
"501000451_14": "(今回、確かにわたしたちは<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>に施していた仕掛けを、\\n 起動していない……",
"501000451_15": "(それでも……<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>をシンフォギアに取り込みながら、\\n 特になんの問題もない、ですって",
"501000451_16": "(理由として考えられることは――)",
"501000451_17": "(彼女と関係の深い、\\n マリア・カデンツァヴナ・イヴ、及び月読調",
"501000451_18": "(その2人が、既に同じ『アリアドネの糸』を纏っていたから、\\n といったところでしょうか……",
"501000451_19": "(『お気楽』だなんて皮肉ってはみたけど。\\n そいつはある意味、異分子を受け入れられる余裕、とも言える",
"501000451_20": "(絆を深く結んでいる仲間が、『糸』を制御していたから。\\n 同じ素材を用いたギアを、容易く起動させたってところか",
"501000451_21": "(なんにせよ、\\n ふざけた奴らだ……",
"501000451_22": "「とにかくッ!\\n これでアタシも思いっきり戦えるデスッ」",
"501000451_23": "「ああ、だがあまり無理をするな。怪我もまだ完治していない。\\n 今は、敵の侵攻に備えて――」",
"501000451_24": "「警報ッ!?\\n 何事だッ」",
"501000451_25": "「指令室に急ぎましょうッ!」",
"501000451_26": "「何が起こったんですかッ!?」",
"501000451_27": "「ギャラルホルンが、\\n 過去最大のアラートを発していますッ」",
"501000451_28": "「更に現在、\\n 本部上空に、巨大なエネルギー反応を確認中ッ」",
"501000451_29": "「まさか、\\n ベアトリーチェが侵攻をッ」",
"501000451_30": "「いや、違うぞッ!\\n こいつは――カオスビーストだッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,16 @@
{
"501000511_0": "『自らの世界』を護るのは",
"501000511_1": "「カオスビーストッ!?」",
"501000511_2": "「そんなッ!?\\n 奴らは並行世界の狭間にしか存在し得ないはずッ」",
"501000511_3": "「それがどうして、\\n この世界にッ」",
"501000511_4": "「いや、待てッ!\\n 他にも反応があるみたいだッ」",
"501000511_5": "「これは……カオスビーストと同時に、\\n カルマイズも出現ッ」",
"501000511_6": "「住民の避難を最優先として、直ちに対応を行いますッ!\\n 皆さん、出撃準備を――ッ」",
"501000511_7": "「おいおいおいおい……、\\n なんだか警報がどえらい感じになってきてないか」",
"501000511_8": "「これは――ッ!?」",
"501000511_9": "「エルフナインちゃんッ!?」",
"501000511_10": "「以前、ベアトリーチェが出現した時のように、\\n 複数の並行世界で、異常事態が発生していますッ」",
"501000511_11": "「なんだとッ!?」",
"501000511_12": "「つまり、他の並行世界にも、\\n カオスビーストが出現しているってことかッ」",
"501000511_13": "「――ッ!\\n みんな……ッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,63 @@
{
"501000521_0": "観測記録 No1248809975.",
"501000521_1": "『スヴォル』世界にて――",
"501000521_2": "「おおお――ッ!!」",
"501000521_3": "「くそッ!\\n 硬いッ」",
"501000521_4": "「横から来るわよッ!\\n ボサッとしないッ」",
"501000521_5": "「すまん、助かった」",
"501000521_6": "「力押しが通用する相手ではないでしょう。\\n もっと気を付けなさい」",
"501000521_7": "「ああ、肝に銘じる。",
"501000521_8": " しかし――」",
"501000521_9": "「……何よ?\\n なんだか嬉しそうな顔をして」",
"501000521_10": "「いや、こうして君と肩を並べて戦えるのは、\\n やはり心強いと思ってな」",
"501000521_11": "「……あなたね。\\n こんな時に、何をいきなり――」",
"501000521_12": "「そらそらァッ!!」",
"501000521_13": "「見ましたかッ!?\\n 僕の、華麗な一撃をッ」",
"501000521_14": "「……あら、いたの?」",
"501000521_15": "「最初からいましたよッ!\\n この僕の活躍を見逃すとは、なんたる不敬ッ」",
"501000521_16": "「さあさあ、英雄たる僕の、空前絶後の大活躍ッ!\\n その目に刻みつけておくことですねッ」",
"501000521_17": "「ハーハハハハハッ!!」",
"501000521_18": "「……」",
"501000521_19": "「……」",
"501000521_20": "「……まあ、戦力としては申し分ない。\\n 多少やかましいのは欠点だが」",
"501000521_21": "「……やかましいといえば。\\n あちらの方も、大変なことになっているようね」",
"501000521_22": "「フハハハハッ!\\n この程度の敵、楽勝でゴザルッ」",
"501000521_23": "「マスター、ご照覧くださったでゴザルかッ!?\\n <ruby=それがし>某</ruby>の実力をッ!」",
"501000521_24": "「マスターからの試練を乗り越えた<ruby=それがし>某</ruby>は無敵ッ!\\n 敵無しでゴザルッ」",
"501000521_25": "「……お見事です。",
"501000521_26": " しかし、僕は別にあなたの師匠ではないと、ずっと……」",
"501000521_27": "「さすが、マスターはご謙遜が上手でゴザルなッ!",
"501000521_28": " <ruby=それがし>某</ruby>も見習わなければならないでゴザルッ!」",
"501000521_29": "「……どうあれ、今のところは抑えている。\\n スクルドのメンバーも助力してくれているからな」",
"501000521_30": "「ええ、だけどそれは、\\n カルマイズに限った話よ」",
"501000521_31": "「先に出現した、カオスビースト。\\n あれが複数出るようでは、さすがに厳しい……」",
"501000521_32": "「スクルドからの報告では、\\n 他の並行世界でも似たような状況だと言っていたな」",
"501000521_33": "「ならば、助力は望めまい。\\n 俺たちだけで、やるしかないということだッ」",
"501000521_34": "観測記録 No1248809979.",
"501000521_35": "『ドラウプニル』世界にて――",
"501000521_36": "「オレの錬金術を受けて、\\n 立っていられると思うなよッ」",
"501000521_37": "「ああ、次から次へとッ!\\n 鬱陶しいッ」",
"501000521_38": "「この世界に戻ってきて早々に新手とはなッ!」",
"501000521_39": "「愚痴を言いながらも前線に出て戦うマスター、\\n さすがですわ」",
"501000521_40": "「あたしは、\\n マスターと一緒に闘えて嬉しいゾッ」",
"501000521_41": "「とにかく、\\n 今は目の前の敵を倒す他あるまい。それにしても――」",
"501000521_42": "「何故にッ!\\n オレはまたこのファウストローブを纏っているッ」",
"501000521_43": "「まあまあ、キャロぴッ!\\n 超似合ってるから大丈夫だってッ」",
"501000521_44": "「そういう問題ではないッ!\\n そもそも、歌による強化もないだろう、今はッ」",
"501000521_45": "「歌による強化はないけど、\\n プチプラでちょぴっと防御力とかアゲアゲにしたしッ」",
"501000521_46": "「それ、アタシの自腹なのッ!\\n キャロぴ、アタシが今無給労働してるの知ってるよねッ」",
"501000521_47": "「アタシのハイパーウルトラ頑張り、\\n 無駄になんて、しないよね……ッ」",
"501000521_48": "「ぐ……ッ!!」",
"501000521_49": "「はぁん……それにしても、やっぱキャロぴの戦う姿って素敵……。\\n アタシの永遠の推しだけのことはある……」",
"501000521_50": "「ええい、非戦闘員は引っ込んでいろッ!\\n 戦いの邪魔だッ」",
"501000521_51": "「りょッ!\\n 今すぐにッ」",
"501000521_52": "(でもキャロぴ、アタシは信じてるよ。\\n どんな大変な時でも、きっとなんとかしてくれるって",
"501000521_53": "「雑魚どもは倒した。\\n あとは――」",
"501000521_54": "「――ッ!?",
"501000521_55": " この気配はッ!?」",
"501000521_56": "「あれが本命かッ!?」",
"501000521_57": "「でっかいのが来たゾッ!\\n バラバラにしがいがありそうだゾッ」",
"501000521_58": "「あーらら、これはまた厄介そうな相手ですねぇ。\\n 一時撤退でもします」",
"501000521_59": "「フン、まさか。",
"501000521_60": " オレの前に現れたものは――全て倒すッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,79 @@
{
"501000522_0": "「これで終わりだ――ッ!」",
"501000522_1": "「倒せたか。",
"501000522_2": " しかし……」",
"501000522_3": "「ふぅ、大変だったゾ」",
"501000522_4": "「派手に強敵だったな。\\n 何度も闘いたい相手ではない」",
"501000522_5": "「しかし、\\n 華麗な衣装で舞うマスターの敵ではありませんわ」",
"501000522_6": "「ガリィちゃん、疲れちゃいましたー。\\n もう動けませーんッ」",
"501000522_7": "(こいつらの消耗が、\\n 思ったよりも激しいな",
"501000522_8": "(だからといって、助けに期待するわけにもいくまい。\\n 明らかに、同時多発的にこの異常は起きている――",
"501000522_9": "(……きっと<ruby=エルフナイン>あいつ</ruby>も、\\n あの世界で戦い続けているはずだ",
"501000522_10": "(新型デュプリケイターは乱用できないとはいえ、\\n 技術で世界を渡ることが可能だと知った",
"501000522_11": "(なればこそ、オレたちは必ずまた会える。\\n それまで、オレはオレの戦いをするだけだ――ッ",
"501000522_12": "観測記録 No1248809986.",
"501000522_13": "『ナグルファル』世界にて――",
"501000522_14": "「トドメだッ!\\n くらええええええええッ」",
"501000522_15": "「まだ倒れないッ!?",
"501000522_16": " それなら、連続でッ!!」",
"501000522_17": "(ギンと別れた後、\\n わたしが、この世界に戻ってきたのは――",
"501000522_18": "(こいつらと、\\n 戦うためだったのかもしれない",
"501000522_19": "(戦って、この世界を……\\n 大事な人がいる場所を――護るためにッ",
"501000522_20": "「しまッ――!?」",
"501000522_21": "「はぁーッ!!」",
"501000522_22": "「無事か、立花ッ!!」",
"501000522_23": "「は、はい。\\n ありがとうございます」",
"501000522_24": "「……こうして、\\n 再び立花と肩を並べて戦える日が来ようとはな」",
"501000522_25": "「……そうですね。\\n 頑張りましょう、みんなを護るために」",
"501000522_26": "「その意気だッ!\\n 共に行くぞ、敵の只中へとッ」",
"501000522_27": "「――はいッ!!」",
"501000522_28": "観測記録 No1248809993.",
"501000522_29": "『フロッティ』世界にて――",
"501000522_30": "「……ふぅ。\\n なんとか終わったデスよ」",
"501000522_31": "「お疲れさま。\\n ずっと戦いっぱなしで疲れたんじゃない」",
"501000522_32": "「あれくらい、楽勝デスッ!",
"501000522_33": " でも、さすがに何度も何度もは勘弁デスけど……」",
"501000522_34": "「それにしても、あの怪物たち、\\n いったいなんだったんデスか」",
"501000522_35": "「並行世界のマリア――、\\n APPLEからもらった情報で、大体はわかってきた」",
"501000522_36": "「どこの並行世界も、ここと同じように、\\n カオスビーストという怪物に襲われているみたい……」",
"501000522_37": "「だからみんな、\\n 自分の世界を護るのに精一杯だって」",
"501000522_38": "「うーん、要するに……、\\n アタシたちの世界は、アタシたちで護れ、ってことデスね」",
"501000522_39": "「うん、頑張ろう。\\n そのためにも、休める時に休まないと」",
"501000522_40": "「アタシだけじゃなく、\\n 調も休まないとダメ、デスよ」",
"501000522_41": "「……うん、そうする」",
"501000522_42": "「……じゃあ、\\n わたしたちが休んでいる間の監視は任せたから」",
"501000522_43": "「ええッ!?\\n いえ、ここのところ、僕もずっと働き詰めなのですが――」",
"501000522_44": "「あのーッ!?\\n もしもーしッ」",
"501000522_45": "観測記録 No1248809995.",
"501000522_46": "『ミストルティン』世界にて――",
"501000522_47": "「状況の説明をッ!」",
"501000522_48": "「人口密集地にカルマノイズが出現ッ!\\n 更に大型の個体も確認ッ」",
"501000522_49": "「スクルドから得た情報にあった、\\n カオスビーストであると思われますッ」",
"501000522_50": "「市民の避難を最優先で実行ッ!\\n オートマシンの状況はどうなっているッ」",
"501000522_51": "「カルマノイズによって次々と破壊されていますッ!\\n このままでは……」",
"501000522_52": "「手の空いている職員も、避難誘導に回せッ!\\n 人命を失わせてはならないッ」",
"501000522_53": "「は、はいッ!!」",
"501000522_54": "「八紘おじちゃんッ!\\n 何があったのッ」",
"501000522_55": "「……以前より情報を得ていた、\\n カオスビースト、及びカルマイズの侵攻だ」",
"501000522_56": "「職員と、オートマシンを回して対処しているが、\\n あまり状況は芳しくない……」",
"501000522_57": "「それじゃあ、やっぱり、\\n わたしが出るべきなんじゃ――」",
"501000522_58": "「何度も言っているが、\\n それは許可できない」",
"501000522_59": "「これ以上、\\n 君に、負担を掛けることはしない」",
"501000522_60": "「でも、\\n このままじゃ……ッ」",
"501000522_61": "「……いや、どうやら、\\n 頼りになる援軍が来てくれたようだ」",
"501000522_62": "「えッ!?」",
"501000522_63": "「くそッ!\\n まだ市民の避難が完了していないというのにッ」",
"501000522_64": "「なんだッ!?」",
"501000522_65": "「はあ――ッ!!」",
"501000522_66": "「そこッ!!」",
"501000522_67": "「無事かッ!?」",
"501000522_68": "「君たちは……?」",
"501000522_69": "「二課の方ですね?\\n カルマイズは引き受けますので、市民の避難をお願いします」",
"501000522_70": "「わ、わかりましたッ!\\n 人も気をつけてッ」",
"501000522_71": "「さて、と。\\n これで気兼ねなく、暴れることができるな」",
"501000522_72": "「あんまり無理はしないで。\\n 多分、これで終わりじゃないと思うから」",
"501000522_73": "「影護にも情報提供があったんだよな。\\n また、厄介な相手らしいけど――」",
"501000522_74": "「なあに、オレたちなら必ずやれるはずだッ!\\n そうだろッ」",
"501000522_75": "「うん。\\n 人なら、きっと大丈夫」",
"501000522_76": "「よしッ!\\n やるぞ――ッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,35 @@
{
"501000531_0": "観測記録 No1248809999.",
"501000531_1": "『ギャラルホルン』世界にて――",
"501000531_2": "「ラスト1匹――ッ!」",
"501000531_3": "「今ので最後ですねッ!」",
"501000531_4": "「ああ。\\n 出現した分は倒したはずだ」",
"501000531_5": "「カオスビーストに、カルマノイズ。\\n ここまで群れると、さすがに面倒だな」",
"501000531_6": "「…………」",
"501000531_7": "「ヨウちゃん?\\n どうしたの」",
"501000531_8": "「……キョウ。\\n 何か、おかしくないか」",
"501000531_9": "「はい。\\n この世界を落とすにしては、敵の数が中途半端すぎる……」",
"501000531_10": "「十分多かったと思うけどな。",
"501000531_11": " ただ、確かにこれで終わりってのは妙だよな」",
"501000531_12": "「そうだ、戦力はいくらでも用意できるはず。\\n わざわざ小出しにする理由はなんだ」",
"501000531_13": "「――それは単に、\\n あなたたちに嫌がらせがしたいから、だけど」",
"501000531_14": "「――ッ!?」",
"501000531_15": "「ベルちゃ――ううん、ベアトリーチェッ!\\n 嫌がらせって、どうしてそんなことをッ」",
"501000531_16": "「え?\\n 意味なんてないわよ」",
"501000531_17": "「……え?」",
"501000531_18": "「だってわたしは、悪意の化身だもの。\\n これぐらいの嫌がらせ、呼吸と同じよ」",
"501000531_19": "「貴様ッ!!」",
"501000531_20": "「ヨウ、待ってッ!」",
"501000531_21": "「あらあら」",
"501000531_22": "「くそッ!\\n 逃げるなッ」",
"501000531_23": "「あのね。\\n まだわたしは、あなたたちと戦う気はないの」",
"501000531_24": "「だって……もったいないじゃない」",
"501000531_25": "「もったいない……?」",
"501000531_26": "「そうよ?\\n わたしたちの戦いは、しかるべき状況で行うべきだと思うの」",
"501000531_27": "「それには、まだ足りない……。\\n だから準備が整うまで、しばらく頭を冷やしてくると良いわ」",
"501000531_28": "「えッ!?\\n 急にゲートがッ」",
"501000531_29": "「ぐ……ッ!?\\n 引き摺り込まれるッ」",
"501000531_30": "「それじゃあ、行ってらっしゃい」",
"501000531_31": "「ま、まっ――」",
"501000531_32": "「うわあああああああ――ッ!?」"
}

View file

@ -0,0 +1,46 @@
{
"501000611_0": "死に絶えた世界",
"501000611_1": "「う、うう……\\n 地面に、叩きつけられた……」",
"501000611_2": "「――ッ、いたた……」",
"501000611_3": "「ここは……どこだろう?\\n 見渡す限りの、荒地……」",
"501000611_4": "「――そうだッ!?\\n みんなはッ」",
"501000611_5": "「あ、響ッ!」",
"501000611_6": "「――未来ッ!?」",
"501000611_7": "「良かった、無事なんだねッ!?」",
"501000611_8": "「うん、わたしは大丈夫。",
"501000611_9": " 未来はッ!? 他のみんなはッ!?」",
"501000611_10": "「わたしもみんなも、大丈夫だよ。\\n ほら、あそこに」",
"501000611_11": "「くッ……、\\n 不覚を取ったな」",
"501000611_12": "「くそ、いきなりとはいえ……\\n なんてザマだよ」",
"501000611_13": "「ん?\\n そういえば、あいつらは……」",
"501000611_14": "「生憎だけど、\\n 人とも無事ですよ」",
"501000611_15": "「残念だったな。\\n この程度で、くたばってなんかいられるか」",
"501000611_16": "「……そんなつもりで言ってないんだけどな。",
"501000611_17": " とにかく、全員無事みたいだな」",
"501000611_18": "「それにしても……、\\n どこだよ、ここは」",
"501000611_19": "「特に、\\n 目印になるものも見当たらないね……」",
"501000611_20": "「通信も、通じなくなっているみたい。\\n ……そっちはどうですか」",
"501000611_21": "「ん……」",
"501000611_22": "「……ダメ、ですね。\\n こちらも通じません」",
"501000611_23": "「せめてもの救いは、\\n カルマイズやカオスビーストの類がいないことだな」",
"501000611_24": "「あの化け物巫女のことだ。飛ばされた先で、\\n 大量の敵に囲まれる……くらいは覚悟していたが」",
"501000611_25": "「敵どころか、生命の気配すらない……\\n いったいどこなんだ、ここは」",
"501000611_26": "「……推測になりますが」",
"501000611_27": "「恐らくここは、\\n 世界蛇によって食い尽くされた後の世界かと……」",
"501000611_28": "「……ああ。\\n この世界は、既に星命力を根こそぎ奪われている」",
"501000611_29": "「そんな……。\\n 世界蛇に食べられた世界は、こんな風に……」",
"501000611_30": "「……静寂で、耳が痛く感じるほどだ。\\n これが、全てが喰らい尽くされた世界……」",
"501000611_31": "「こんな世界を、世界蛇は……ベアトリーチェは、\\n いくつも生み出しているっていうこと……」",
"501000611_32": "「……うなだれるよりも、\\n 先のことを考えましょう」",
"501000611_33": "「そうだな、いつまでもこんな場所にはいられない。\\n 元の世界に戻る方法を探すぞ」",
"501000611_34": "「……すごいね、2人共。\\n こんな光景を見せられても、すぐに動き出せるなんて」",
"501000611_35": "「当たり前です」",
"501000611_36": "「……え?」",
"501000611_37": "「……だってここは、\\n わたしたちの世界によく似ていますから」",
"501000611_38": "「言っちゃなんだが、こんな光景見慣れてるんだよ。\\n この程度、いちいち打ちひしがれていられるか」",
"501000611_39": "「このような、\\n 命から見放された世界であっても――」",
"501000611_40": "「わたしたちは、生きるために。\\n 先に進むことを諦めませんよ」",
"501000611_41": "「……」",
"501000611_42": "「とりあえず、進むぞ。\\n 立ち止まっている暇なんかないだろう、お前たちも」",
"501000611_43": "「……そうだね。\\n 行こうッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,47 @@
{
"501000621_0": "「おい。\\n こっちの方角で本当にいいんだろうな」",
"501000621_1": "「知るか。あの化け物巫女が、\\n 親切丁寧にあたしたちを誘導してくれるとでも」",
"501000621_2": "「周囲の調査は必須でしょう。\\n 信じられないのなら、あなたは立ち止まればいい」",
"501000621_3": "「わたしたちは、\\n あなたたちを置いて先に進んでもいいんですから」",
"501000621_4": "「冗談ッ!\\n あたしだって、こんな荒野でくたばりたかねえよッ」",
"501000621_5": "「……」",
"501000621_6": "「……未来?\\n どうしたの 疲れた」",
"501000621_7": "「ううん、平気だよ。\\n ちょっと、昔のことを思い出していたの」",
"501000621_8": "「昔のこと?」",
"501000621_9": "「うん。みんなを追いかけて、\\n 人でギャラルホルンのゲートに飛び込んだ時のこと――」",
"501000621_10": "「あの時も、\\n こんな荒野にたった人で取り残されて……」",
"501000621_11": "「不安だったわたしのところに、ミーナさんが来てくれて。\\n 本当に安心したんだ」",
"501000621_12": "「そっか。\\n ミーナさんが……」",
"501000621_13": "「ミーナさんだけじゃなくて、\\n その世界の兵士の人たちにも出会ったりした――」",
"501000621_14": "「でも……、そうやって出会った、\\n たくさんの人たちの、その先を、わたしは知らないんだ」",
"501000621_15": "「わたしたちも、\\n 一期一会の出会いが、幾度となくあった」",
"501000621_16": "「さんざん並行世界を巡ってきたけど、\\n それっきりで、会っていないやつがたくさんいるよな」",
"501000621_17": "「……フン。\\n 自分たちが介入した運命の多さに、今更気がついたか」",
"501000621_18": "「……おい。そういう皮肉交じりのちょっかいは、\\n やめるんじゃなかったのか」",
"501000621_19": "「なんだと――?」",
"501000621_20": "「はいはーいッ!\\n ストップストーップッ」",
"501000621_21": "「それくらいにしようッ!\\n わたしたちがケンカしたところで、何も解決しないよッ」",
"501000621_22": "「まあ――」",
"501000621_23": "「確かに――」",
"501000621_24": "「……ベアトリーチェが、\\n 何を考えているのかはわからないけど」",
"501000621_25": "「この世界にわざわざわたしたちを落としたってことは、\\n 簡単に突破できるような場所じゃないはずッ」",
"501000621_26": "「だったら、協力しないとッ!\\n 元の世界に帰るためにッ」",
"501000621_27": "「……立花の言う通りだ。\\n 肝に銘じよう」",
"501000621_28": "「あたしも……\\n 了解だ」",
"501000621_29": "「キョウちゃん、ヨウちゃんも。\\n わたしが何を言っても、届かないかもしれないけど――」",
"501000621_30": "「…………」",
"501000621_31": "「でも、今だけは、\\n 同じ方向を見て進むことはできないかな」",
"501000621_32": "「せめて今、この時だけでも、\\n 同じ方向を向いて、手を繋げるのなら――」",
"501000621_33": "「その間に、\\n 何か、わかることがあるかもしれない……そう思うんだ」",
"501000621_34": "「……」",
"501000621_35": "「……」",
"501000621_36": "「……まあ、いいでしょう」",
"501000621_37": "「えッ!?」",
"501000621_38": "「帰りたいという意志は、わたしたちも同じです」",
"501000621_39": "「死んだ世界にいても、意味がない。\\n わざわざトラブルを起こす意味もありません」",
"501000621_40": "「……あたしも、それで構わない。\\n 全てが終わったら、また敵同士だとわかっているのならな」",
"501000621_41": "「……うん。\\n ありがとうッ」",
"501000621_42": "(響は……、\\n せめてこの時だけでも、って言うけれど――",
"501000621_43": "(きっと……、\\n ずっと仲良くしていきたいって思っているはずだよね",
"501000621_44": "(ちゃんと、2人と手を繋いでいくために……)"
}

View file

@ -0,0 +1,31 @@
{
"501000631_0": "「このまま歩き続けるに当たって、\\n 重要なのは水分、そして食糧の確保だ」",
"501000631_1": "「この身1つで放り込まれたんだ。\\n 飲み物なんて持っちゃいないぞ」",
"501000631_2": "「どこかに水場でもあればいいのだが――」",
"501000631_3": "「そんなものがないことは、\\n この土地の有り様を見て想像がつくだろう」",
"501000631_4": "「……だが、補給が必要なのは確かだろう?\\n お前たちとて、飲まず食わずで生きられるわけでもあるまい」",
"501000631_5": "「わかっている。\\n 対処する方法があるから、慌てていないだけだ」",
"501000631_6": "「何か方法があるのッ!?」",
"501000631_7": "「ええ。\\n この<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>を使います」",
"501000631_8": "「……?\\n なぁに、それ」",
"501000631_9": "「これによって、空気中の水分を絞り出し、\\n 飲料水を精製することが可能です」",
"501000631_10": "「あなたたちの分も用意できますので、\\n ご心配なく」",
"501000631_11": "「……良かった。\\n ありがとうございます」",
"501000631_12": "「それに、食糧だが……。\\n そちらにも一応アテはある」",
"501000631_13": "「こんな、命の枯れ果てた世界であっても、\\n しぶとく生きている生物は多少なりともいるものだ」",
"501000631_14": "「ほら、そこ。\\n 見てみろ」",
"501000631_15": "「そこって言われても、\\n 腐った沼があるようにしか見えないぞ」",
"501000631_16": "「見るべきは、沼の周りに生えている植物だ。\\n 少ないが、腹の足しにはなる」",
"501000631_17": "「これまで通って来た途上で、\\n 体液を水分として利用できそうな生物も確保してあります」",
"501000631_18": "「いつの間に――」",
"501000631_19": "(慣れている……ということか。\\n 普段から、どれほど過酷な環境に身を置いているのだ",
"501000631_20": "(自分たちの世界を、\\n 『見放された世界』と称するのも、頷ける……",
"501000631_21": "(ああ。どこの並行世界であっても、\\n ここまで追い詰められていた連中はいなかった――",
"501000631_22": "(こいつらから見たら、あたしたちの世界は、\\n さぞかし恵まれているように見えるんだろうな",
"501000631_23": "「――ほら。\\n 水分が精製できましたよ」",
"501000631_24": "「すごいッ!\\n 『<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>』って、こんなことができるんだッ!」",
"501000631_25": "「……ええ、すごいんですよ。\\n わたしたちの世界が生み出した技術ですから」",
"501000631_26": "「この技術で、\\n あたしたちは生き延びてきたんだからな」",
"501000631_27": "「だから、絶対に。\\n 滅ぼさせなんか、しない――」",
"501000631_28": "「…………」"
}

View file

@ -0,0 +1,38 @@
{
"501000711_0": "そういうふうにできている",
"501000711_1": "荒野に踏み出してから、数日後――",
"501000711_2": "「はぁ、はぁ……」",
"501000711_3": "「大丈夫、未来?\\n 少し休んだ方が……」",
"501000711_4": "「ううん、平気。\\n 立ち止まってなんか、いられないよ」",
"501000711_5": "「響こそ、無理しないでね。\\n 響に何かあったら、わたし……」",
"501000711_6": "「ありがとう。",
"501000711_7": " でも……どこかに辿り着かないと……」",
"501000711_8": "(全員、それぞれに消耗していますね。\\n 焦りが出始めています……",
"501000711_9": "「一旦、ここで止まりましょう。\\n 今日はここで野営するのが良さそうです」",
"501000711_10": "「ああ、食糧の残量も心許なくなってきた。\\n 補給の頃合いだ」",
"501000711_11": "「……そうだな、無理を徹しても仕方がない。\\n 手分けをして探しに行こう」",
"501000711_12": "「わたしッ!\\n あっちの方に探しに行ってきますッ」",
"501000711_13": "「あッ!\\n 待って響、わたしも一緒に行くッ」",
"501000711_14": "「それでは、わたしたちは、\\n こちらの方に探しに行くとしましょうか」",
"501000711_15": "「……待ってくれ。\\n その前に、少し話をしたい」",
"501000711_16": "「わたしたちの当座の敵である、ベアトリーチェ。\\n 彼女についての情報も必要だろう」",
"501000711_17": "「……別に。\\n あたしたちは自前の情報で事足りている」",
"501000711_18": "「そうですね。\\n 話をする必要性を感じません」",
"501000711_19": "「あのな。\\n そういうことじゃないんだよ」",
"501000711_20": "「知ってるから。わかってるから。\\n わざわざ伝える必要ないだなんて」",
"501000711_21": "「そんな甘えや思い込みで失敗することの辛さを、\\n あたしたちは一応、知ってんだ」",
"501000711_22": "「お前たちは、なんらかの方法を使って、\\n わたしたちのことを観測していたのだろう」",
"501000711_23": "「だが、ずっと見ているだけで、\\n 直截の干渉をしてこなかったというのなら――」",
"501000711_24": "「それは、知らないのと同じだ。\\n わたしたちを、何も、わかっていないのと」",
"501000711_25": "「自分たちのことを何も知らないくせにって、\\n お前らはそう言うけれど、そいつはお互い様だ」",
"501000711_26": "「お前らだって、\\n あたしたちのことを知らないんだからな」",
"501000711_27": "「だからこそ、互いの言葉で、\\n わたしたちは知っていかないといけない」",
"501000711_28": "「違うか?」",
"501000711_29": "「…………」",
"501000711_30": "「はぁ……わかりました、わかりましたよ……\\n 仕方ないですね」",
"501000711_31": "「わたしたちのことについて、\\n 必要以上の話をする気はありません。それでも――」",
"501000711_32": "「あなたたちの話、聞くだけは聞きましょう。\\n それで構いませんか」",
"501000711_33": "「……ああ。\\n 今はそれでいい」",
"501000711_34": "「……」",
"501000711_35": "(言葉にする、か……)"
}

View file

@ -0,0 +1,89 @@
{
"501000721_0": "(……この世界でも、\\n 夜が来て、朝が来て、また夜が来るんだ",
"501000721_1": "(……それは、わたしたちの世界も、\\n 今までに訪れた世界とも変わらない",
"501000721_2": "「……でも、\\n 人で見張りって、ちょっとだけ寂しいかな」",
"501000721_3": "「――夜間の見張りは、\\n わたしたち人に任せてもらいたい」",
"501000721_4": "「……妥当な提案だと思います。\\n こちらに見張りを任せる愚は犯さないようで何よりです」",
"501000721_5": "「あたしたちは捕虜の立場だからな。\\n 指示には従うさ」",
"501000721_6": "(その割に、\\n 態度が大きいような気がするけどな……",
"501000721_7": "(ま、まあまあ……)",
"501000721_8": "「それじゃあ時間を決めて、\\n 交代で見張りましょうッ」",
"501000721_9": "「はぁ……、\\n 今日もいっぱい歩き続けて、疲れちゃったな……」",
"501000721_10": "「うん……、\\n 本当に、疲れ――、た――」",
"501000721_11": "「……いけないッ!\\n 眠ったらダメなんだってばッ」",
"501000721_12": "「でも、この世界、\\n 暗くて静かだから、眠く――」",
"501000721_13": "「…………」",
"501000721_14": "「…………ぐぅ」",
"501000721_15": "「……ヨウ、起きてる?」",
"501000721_16": "「うん、起きてるよ。\\n 見張りが眠るの、待ってたんだよね」",
"501000721_17": "「しばらくは大丈夫そう。\\n 向こうの岩のところまで移動しよう」",
"501000721_18": "「うん」",
"501000721_19": "「……あのね、\\n キョウに言っておきたいことがあるんだ」",
"501000721_20": "「言っておきたいこと?」",
"501000721_21": "「うん。\\n キョウも、わかってることだと思うんだけど――」",
"501000721_22": "「いずれ殺す相手の心に、\\n 近付きすぎちゃダメだよ」",
"501000721_23": "「…………」",
"501000721_24": "「そのままだと、キョウは進めなくなる。\\n あの世界の奴らに、情けなんて掛ける必要はないんだから」",
"501000721_25": "「……そうだね。\\n ありがとう」",
"501000721_26": "「でも、それを言うなら、\\n ヨウだって、おあいこじゃない」",
"501000721_27": "「え?」",
"501000721_28": "「ヨウだって、\\n 『グレイプニル』の子に、情報を漏らしてたくせに」",
"501000721_29": "「うッ!?\\n それは……その、ごめん……」",
"501000721_30": "「……フフ、冗談だよ。\\n それに、わたしは大丈夫だから」",
"501000721_31": "「殺すべき時には、ちゃんと殺してみせる。\\n だってわたしたちは、英雄なんだから」",
"501000721_32": "「わたしたちの帰りを待っているみんながいる。\\n <ruby=みらい>未来</ruby>を託してくれた、みんなが……」",
"501000721_33": "「……うん、そうだよね。",
"501000721_34": " だから、2人でちゃんと、英雄になろう」",
"501000721_35": "「そうだね。\\n 人で人の、英雄に――」",
"501000721_36": "「……思い出すね、こうしていると。\\n あたしたちの、だいじな、この音を……」",
"501000721_37": "「……♪」",
"501000721_38": "(……久々に聴いたな、ヨウの口笛。\\n わたしたちの、故郷の――",
"501000721_39": "(この口笛を聴けば、吹けば――、\\n あたしは、いつでも故郷を忘れずにいられる――",
"501000721_40": "「それ、2人の大切な歌なのかな?」",
"501000721_41": "「――ッ!?」",
"501000721_42": "「すっごく素敵な歌だねッ!」",
"501000721_43": "「お前ッ!",
"501000721_44": " 眠っていたはずじゃッ!?」",
"501000721_45": "「確かに、ちょっとだけウトウトしてたけど、\\n こんなキレイな歌聴いたら、眠ってなんていられないよッ」",
"501000721_46": "「この地獄耳が……ッ!」",
"501000721_47": "「今のって、\\n キョウちゃんとヨウちゃんの世界の歌」",
"501000721_48": "「違うッ! 歌なんかじゃないッ!\\n あたしたちの世界は、歌を捨てたんだッ」",
"501000721_49": "「歌を、捨てた……?\\n どうして」",
"501000721_50": "「……」",
"501000721_51": "「前にも話したはずです、ファム・ファタール。\\n シンフォギアが、わたしたちの世界を壊したからですよ」",
"501000721_52": "「『<ruby=わたしたちの>見放された</ruby>世界』では、並行世界群よりもずっと早い段階で、\\n シンフォギアシステムが確立されました」",
"501000721_53": "「だけど、大きすぎるその力は、\\n 結果として、世界を滅びの淵まで追い詰めることとなった」",
"501000721_54": "「だから、シンフォギアは、歌の力は。\\n わたしたちにとって、滅びの存在なんですよ」",
"501000721_55": "「そんな……",
"501000721_56": " 歌が世界を滅ぼすなんてこと、嘘だよッ!!」",
"501000721_57": "「信じようが信じまいが、\\n それが事実だ」",
"501000721_58": "「あたしたちの世界と、お前たちの世界とでは、\\n 根本的に『成り立ち』が違うんだ」",
"501000721_59": "「お前たちが掲げる、希望の歌は――、\\n あたしたちの世界を、救うことはない」",
"501000721_60": "「<ruby=シンフォギア>その力</ruby>を振るう果てにあるのは、\\n 破滅でしかありません」",
"501000721_61": "「だから、シンフォギアも、聖遺物も……\\n あたしたちは、絶対に許さない」",
"501000721_62": "「……」",
"501000721_63": "「……なるほど、\\n それが彼女たちの、想いの根源か」",
"501000721_64": "「シンフォギアの力……、\\n いや、聖遺物の力は、確かにデカい代物だ」",
"501000721_65": "「考えたくもないけどよ……\\n この力が、世界に牙を剥くことだってあるのかもしれない……」",
"501000721_66": "「…………」",
"501000721_67": "「……響。\\n 昨日人から言われたこと、気にしてる」",
"501000721_68": "「アハハ、聞かれてたんだ。\\n …………うん、ちょっとね」",
"501000721_69": "「わたしには、\\n 絶対に譲れない想いが確かにある」",
"501000721_70": "「その想いこそが、わたしを作ってる……。\\n どうしたって変わらないんだ」",
"501000721_71": "「でも……」",
"501000721_72": "「戦いを重ねるたび、それをどう伝えていいのか、\\n 言葉に詰まってしまう時がある」",
"501000721_73": "「そういう時って、\\n どうしたらいいんだろ……」",
"501000721_74": "「……だからこそ、\\n 響は唄うんじゃない」",
"501000721_75": "「……え?」",
"501000721_76": "「自分の想いを、歌と拳に乗せて。\\n 戦いながら、唄ってきたんでしょ」",
"501000721_77": "「……昨日の夜ね。\\n こっそり、翼さんと、クリスと話をしたの」",
"501000721_78": "「あの2人には、確かにわたしたちの世界を、\\n 襲わなければいけない理由がある」",
"501000721_79": "「でも、その理由が、\\n 彼女たちの世界を救うためだというなら――」",
"501000721_80": "「もし、わたしたちが、\\n 彼女たちの世界を助けることができれば……」",
"501000721_81": "「そうか……そうだよッ!\\n いろんなことがいっぺんにありすぎて、頭から抜けてたけど……」",
"501000721_82": "「その方法を探すことができれば、\\n キョウちゃんやヨウちゃんと戦う必要はなくなるんだッ」",
"501000721_83": "「うん。\\n そのために、何が必要なのかは、まだわからないけれど……」",
"501000721_84": "「なら……キョウちゃんとヨウちゃんのことを、\\n もっともっと、知らないと」",
"501000721_85": "「それで……\\n もし、わたしたちのことも知ってくれたなら……」",
"501000721_86": "「今、2人が望んでいる<ruby=みらい>未来</ruby>とは、\\n 違う<ruby=みらい>未来</ruby>だって、拓けるかもしれないんだ……ッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,50 @@
{
"501000731_0": "「食糧探しにも、\\n 大分慣れてきてしまったな――」",
"501000731_1": "「ブツブツ言うな。",
"501000731_2": " ほら、いたぞッ! あの岩陰だッ!」",
"501000731_3": "「ム……蛇か。",
"501000731_4": " 今のところ、あまり良い印象は持てないが」",
"501000731_5": "「腹に入れれば同じことだ。\\n それに、蛇は美味い」",
"501000731_6": "「そ、そうなのか……?」",
"501000731_7": "「いいから、静かにしてろ。",
"501000731_8": " そら――ッ!!」",
"501000731_9": "「……何度見ても、\\n その足技、見事なものだな」",
"501000731_10": "「そうか?\\n 足癖が悪いと、素直に言ったらどうだ」",
"501000731_11": "「優れた技術には敬意を払うさ。\\n それが敵であれ、味方であれ、な」",
"501000731_12": "「お前たちの技術には、目を見張るものがある。",
"501000731_13": " それだけに――」",
"501000731_14": "「そんな素晴らしい技術が、\\n 人に牙を剥くために使われることを、耐え難く思う」",
"501000731_15": "「この気持ちは同じもののはずだ。\\n お前たちが、シンフォギアを許さないと思う気持ちとな」",
"501000731_16": "「…………」",
"501000731_17": "「……この力は、\\n カヴァーチャと呼ばれている」",
"501000731_18": "「カヴァーチャ?\\n 『<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>』の一種か?」",
"501000731_19": "「そうだ。聖遺物よりかは扱いやすいが……\\n カヴァーチャは、その中でも特殊なものだ」",
"501000731_20": "「これを纏うために……、",
"501000731_21": " いや――」",
"501000731_22": "「これを纏わなければならなかった故に、\\n あたしは、<ruby=はら>胎</ruby>から下を失った」",
"501000731_23": "「……」",
"501000731_24": "「……あたしのせいで、キョウも、\\n 柔らかい腕と、温かい手のひらを無くしてしまった……」",
"501000731_25": "「同じ気持ちだと、そう言ったな?",
"501000731_26": " ……どうだかな、わかるはずがない」",
"501000731_27": "「自分だけじゃない。\\n 大事な人の大切な身体に、取り返しの付かない傷を付けた」",
"501000731_28": "「そんなあたしに……\\n ヒトの抱く温度なんて、もうわかるはずがないんだよ」",
"501000731_29": "「…………」",
"501000731_30": "(大事な人を失いかけて。\\n それを繰り返すまいとしているが故の、刃のような態度……",
"501000731_31": "(わたしも――わからない、とは言わない。言えるものか。",
"501000731_32": " だがそれを言ったところで、慰めにもならない、か――)",
"501000731_33": "「……喋りすぎたな。\\n 食糧は確保した、戻るぞ」",
"501000731_34": "「……ああ、そうしよう」",
"501000731_35": "「よっ、と……。\\n この蛇、案外重いな。これは食い出があるぞ」",
"501000731_36": "「わたしも手伝おう」",
"501000731_37": "「……この程度に手助けなんて、いらないよ。\\n お前たちときたら、あたしたちを本当に捕虜だと思っているのか」",
"501000731_38": "「使えばいい、こんな時くらい」",
"501000731_39": "「…………」",
"501000731_40": "(こんな時、カヴァーチャが腕に付いていれば、\\n 運ぶのも楽なのにな……",
"501000731_41": "(このカヴァーチャは、確か、ヘビクイワシの脚をモデルにしたもの。\\n さすがに、蹴って運ぶわけには……",
"501000731_42": "(……)",
"501000731_43": "(……待てよ?\\n ヘビクイワシだと……",
"501000731_44": "(――あたしは馬鹿かッ!?\\n どうして今まで気が付かなかったんだ",
"501000731_45": "(この並行世界群においては、想いの力が大きく影響する。\\n それこそ、あのちんまい科学者がやってみせたようにだ",
"501000731_46": "(だったら、――『蛇を喰らう鷲』。\\n この概念の力は、使えるはずだ",
"501000731_47": "(ベアトリーチェ、そして『世界蛇』。\\n 奴らに対する有効打として――"
}

View file

@ -0,0 +1,55 @@
{
"501000811_0": "つまみ食い",
"501000811_1": "「この世界に落とされてから、\\n どれくらい経ったんだろ……」",
"501000811_2": "「数えようとしないほうがいいですよ。\\n 気が重くなるだけですから」",
"501000811_3": "「他の世界のみんな、\\n 大丈夫かな」",
"501000811_4": "「あたしたちの奇襲も凌ぎきったんだ。\\n カルマイズやカオスビースト如きにやられてもらっちゃ困る」",
"501000811_5": "「……フフ」",
"501000811_6": "「……?\\n 何がおかしい」",
"501000811_7": "「ありがとう。\\n 励ましてくれているんだよね」",
"501000811_8": "「――ッ!?\\n あたしは、そんなつもりじゃ……」",
"501000811_9": "「こうして長い時間を一緒に過ごしていると、\\n 敵同士だってことを忘れそうになるな」",
"501000811_10": "「それは良くないですね。",
"501000811_11": " 仲良くしていられるのは、今だけのこととお忘れなく」",
"501000811_12": "「わたしたちは『見放された世界』の英雄であり続けるために。\\n 共同戦線が終わったら、必ずあなたたちと敵対します」",
"501000811_13": "「そのことは、決して変わりませんよ」",
"501000811_14": "「……ううん、\\n 変わるかもしれないよ」",
"501000811_15": "「……?」",
"501000811_16": "「だって、\\n <ruby=みらい>未来</ruby>はどうなるのか、わからないもん」",
"501000811_17": "「……あたしたちが、お前たちと手を取り合う<ruby=みらい>未来</ruby>があると。\\n そう言いたげな顔と、口ぶりだな」",
"501000811_18": "「……そんな<ruby=みらい>未来</ruby>、あり得ません」",
"501000811_19": "「だが……あり得ないと言われた<ruby=みらい>未来</ruby>を、\\n わたしたちは、これまで何度も掴み取ってきた」",
"501000811_20": "「わたしたちの諦めの悪さ……\\n 今まで観察してきたのなら、よく知っているだろう」",
"501000811_21": "「特に――、\\n 立花のしつこさはな」",
"501000811_22": "「翼さん、ヒドいッ!\\n そういう言い方ってどうなんですかッ」",
"501000811_23": "「事実だろう?」",
"501000811_24": "「それは……、\\n まあ、そうですけどッ」",
"501000811_25": "「そういうのは、諦めない強さー、とかッ!\\n もっといい感じに言ってくださいよーッ」",
"501000811_26": "「フ……フフッ」",
"501000811_27": "「キョウ、ちょっと……」",
"501000811_28": "「……ヨウ?\\n どうかした」",
"501000811_29": "「少し、話したいことが……」",
"501000811_30": "(……最初の頃は、こうして2人で話そうとすると、\\n 何かと理由をつけてあいつらに遮られていたが……",
"501000811_31": "(最近では、すっかり見逃されている。\\n あいつらが気を抜いているのか、それとも――",
"501000811_32": "(まさか本当に、仲間扱いされているんじゃないだろうな?\\n ……くそッ 冗談じゃないッ",
"501000811_33": "「……ヨウ?\\n 何か言いたいことがあったんじゃないの」",
"501000811_34": "「……キョウは、\\n ちょっと、あいつらに対して気を抜きすぎてる」",
"501000811_35": "「あいつらは敵なんだ。\\n この先、必ず殺し合いになる相手だよ」",
"501000811_36": "「……大丈夫だよ。\\n たとえ表面上はそう見えていたとしても……」",
"501000811_37": "「戦士としての自分、\\n 英雄としての自分のこと、忘れてないから」",
"501000811_38": "「……だったら、いいんだけど。\\n あたし、キョウが傷付くのなんて、嫌だからね」",
"501000811_39": "「ありがと。大丈夫だよ、わかってる。",
"501000811_40": " ……こうしていられるのは、今だけだって」",
"501000811_41": "「ああ、こんなとこにいたのか。",
"501000811_42": " なあ、この草って食べられるのか?」",
"501000811_43": "「それは……はぁ、何度も教えましたよね?\\n わたしを図鑑か何かだと勘違いしていませんか」",
"501000811_44": "「待っていてください。\\n どうせ他にもあるでしょう 今行きますから――」",
"501000811_45": "「…………」",
"501000811_46": "(あいつらと話している姿を見ると、\\n 話していると……なんだか不安になる",
"501000811_47": "(キョウが、あたしを置いて、あたしたちの世界から、\\n どこかに行ってしまいそうで……",
"501000811_48": "(でも――)",
"501000811_49": "(それはキョウにとっては、\\n 良いことなのかも……",
"501000811_50": "(あたし1人が戦って、1人でケリをつけられるのなら。\\n キョウは、戦いから逃れることができるのかもしれない……",
"501000811_51": "(あたしが気付いた、\\n このカヴァーチャの力――",
"501000811_52": "(蛇を喰う鷲のように、\\n 世界蛇を、人で喰らうことができるのなら――"
}

View file

@ -0,0 +1,92 @@
{
"501000821_0": "「うひゃぁ……。\\n すごい嵐だね」",
"501000821_1": "「出口を求めて歩き続けるには、\\n ちょっとばかし苦労するけど……」",
"501000821_2": "「少なくとも、水にはしばらく困らなさそうだね」",
"501000821_3": "「……全てが死に絶えたように見えた世界でも、\\n こうして雨が降り、風が吹いている」",
"501000821_4": "「この世界には、\\n まだ命が芽吹く可能性が残されているんですね……」",
"501000821_5": "「こんな世界ですら……羨ましいな。\\n あたしたちの世界は、こんな風になれないから」",
"501000821_6": "「全てが、<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>で延命措置されているだけの、\\n 死ぬことを定められた……いろんなものに、見放された世界」",
"501000821_7": "「……ねえ、キョウちゃん。\\n ヨウちゃん」",
"501000821_8": "「やっぱり……\\n 何か手伝えることって、ないのかな」",
"501000821_9": "「わたしたち、\\n 少しでも、助けになれるのなら――」",
"501000821_10": "「……あなたたちの世界をくれれば、\\n それで解決だと言っているでしょう」",
"501000821_11": "「うッ!?\\n それはちょっと、できないけど……」",
"501000821_12": "「そうでしょう",
"501000821_13": " だから結局、最後には戦うしかないんです」",
"501000821_14": "「死んだ人間が、生き返らないのと同じこと……」",
"501000821_15": "「……死んだ世界は、死んだまま。\\n その真理を捻じ曲げることは、神様にだってできないんですよ」",
"501000821_16": "「それこそが、全ての『世界の理』というものです。\\n 誰も逃れられない、決まりです」",
"501000821_17": "「…………」",
"501000821_18": "「死んだものは、生き返らない。\\n それはわかってるよ。……わかっている、けれど……」",
"501000821_19": "「それでも、キョウちゃんとヨウちゃんが、\\n 人の世界のために戦ったという想いは、消えない……」",
"501000821_20": "「誰かの残した想いは消えない。\\n ああ、そうかもな」",
"501000821_21": "「だから、お前は今、ここにいるんだろう。\\n だが――」",
"501000821_22": "「――ッ!?」",
"501000821_23": "「おいッ!\\n みんな、あれを見ろッ」",
"501000821_24": "「何か見つけたんですかッ!?」",
"501000821_25": "「ああ、地平線辺りに妙なものが見えた。\\n あの形、自然のものとは思えない」",
"501000821_26": "「――ッ!!\\n 行こう、みんなッ」",
"501000821_27": "「これは……墓地?\\n それも、こんなにたくさん――」",
"501000821_28": "「……ここって、まさか……」",
"501000821_29": "「……うん、間違いないよ。\\n この景色……忘れるはず、ない」",
"501000821_30": "「……?\\n お前たち、ここがどこだかわかったのか」",
"501000821_31": "「……うん。ここは、世界蛇と戦って敗れた、\\n スクルドの人たちが眠る場所なんだ」",
"501000821_32": "「――ッ!」",
"501000821_33": "「……なら、手向けくらいはくれてやるべきだろうな」",
"501000821_34": "「――」",
"501000821_35": "(死闘の果てに散っていった戦士たちよ。\\n 言えた義理ではないが……どうか、安らかに眠ってくれ",
"501000821_36": "(その無念、勝手に晴らさせてもらうぞ。\\n あたしが、ベアトリーチェを倒すことで",
"501000821_37": "「……わたしも、伝えておこうかな」",
"501000821_38": "(……ミーナさん。\\n ベアトリーチェが、また復活しました",
"501000821_39": "(でもきっと、わたしたちがなんとかしてみせます。\\n ミーナさんや、スクルドの人たちから託された想いを繋いで",
"501000821_40": "(何度、悪意を携えてこようとも。\\n わたしたちは、それに抗うって……",
"501000821_41": "(ベアトリーチェに……\\n わたしたちの胸の歌を、伝え続けますから",
"501000821_42": "(だから、心配しないで。\\n ゆっくり、眠っていてくださいね――",
"501000821_43": "「きゃあッ!?",
"501000821_44": " なんて大きな雷……」",
"501000821_45": "「いきなりだったね。\\n でも、雷かぁ……」",
"501000821_46": "「ん? 雷?」",
"501000821_47": "「――そうだッ!」",
"501000821_48": "「どうした?\\n もしや……何か思いついたのかッ」",
"501000821_49": "「はいッ!\\n ミョルニルギアッ ミョルニルギアですよッ」",
"501000821_50": "「ミョルニルギアって……、\\n ミーナさんから託された力」",
"501000821_51": "「うんッ! それにもう1つ。\\n ヒビキが纏うエレクライトッ」",
"501000821_52": "「エレクライト――『ナグルファル』世界の技術ですね。\\n 単独で並行世界間を移動するという……」",
"501000821_53": "「はいッ! ヒビキは稲妻を纏ったエレクライトの力で、\\n 並行世界を移動するゲートを開いていましたッ」",
"501000821_54": "「だったら、わたしたちもッ!\\n 並行世界の障壁をぶち破れるんじゃないかなッ」",
"501000821_55": "「だって、わたしたちは望んでいる……\\n こんなにも強くッ」",
"501000821_56": "「最速で、最短で、まっすぐにッ! 一直線にッ!\\n わたしたちが、帰るべき場所へ帰る道を求めている……」",
"501000821_57": "「それなら、きっとッ!!」",
"501000821_58": "「今、こうして轟いている雷と――、\\n ミーナさんから託された、ミョルニルギアの力でッ」",
"501000821_59": "「――何を言い出すのかと思えば。\\n 無茶苦茶なことを」",
"501000821_60": "「理論も何もない、思いつきでしかない話ですよ。\\n とても実践できるとは――」",
"501000821_61": "「……だが、その無茶苦茶が、\\n これまで、わたしたちを救ってきたのも事実だ」",
"501000821_62": "「ああ。こいつの勢い任せで、\\n 道を切り開いたことは度や度じゃない」",
"501000821_63": "「想いは力になる――、\\n やってみよう、響ッ」",
"501000821_64": "「うんッ!」",
"501000821_65": "「全員、本気なのか……」",
"501000821_66": "「無論だ。",
"501000821_67": " だが、立花1人に任せはしない。わたしたちの力も束ねよう」",
"501000821_68": "「このバカの無茶苦茶に付き合えるのは、\\n あたしたちくらいなもんだしなッ」",
"501000821_69": "「じゃあ、トライバーストでも、\\n トリプルバーストでもなくて……」",
"501000821_70": "「うんッ!\\n みんなの力も借りた、これは――」",
"501000821_71": "「S2CA・クワトロバーストッッ」",
"501000821_72": "「Gatrandis babel ziggurat edenal\\n Emustolronzen fine el baral zizzl――」",
"501000821_73": "「Gatrandis babel ziggurat edenal\\n Emustolronzen fine el zizzl――」",
"501000821_74": "「――これが、\\n シンフォギア装者の切り札、S2CAッ」",
"501000821_75": "「周囲の雰囲気が変わったッ!?\\n これはフォニックゲインの高まりによるもの……ッ」",
"501000821_76": "(観測記録より伝え聞くのと、\\n 実際に肌で感じるのでは、まるで違う……ッ",
"501000821_77": "(憎んでいる歌のはずなのに……\\n 不思議と、嫌な気持ちはない",
"501000821_78": "(これはまるで――この場に眠る戦士たちの魂まで、\\n こいつに力を貸しているかのような……",
"501000821_79": "「ぐ、ううう……ッ!\\n 重い……けど……ッ」",
"501000821_80": "(ミーナさん。スクルドのみなさん。\\n わたしたちに、力を――ッ",
"501000821_81": "「世界を隔てる壁なんて……\\n ぶち抜けぇぇえええぇぇ――ッ」",
"501000821_82": "「どうだッ!?」",
"501000821_83": "「あれは、並行世界の狭間……ッ!\\n やったぁッ 世界を渡る道ができたんだッ」",
"501000821_84": "「ま……まさか、\\n 本当に成し遂げたって言うんですかッ」",
"501000821_85": "「……ああ。",
"501000821_86": " しかし、どうやら厄介な連中も呼び寄せたみたいだ」",
"501000821_87": "「くッ!?\\n 並行世界の狭間より迷い出て来たかッ」",
"501000821_88": "「裏を返せば、あの亀裂が世界に繋がっているという証ッ!\\n もう少しで、元の世界に帰れるはずですッ」",
"501000821_89": "「うん――もうちょっとだッ!\\n だから、ここで負けたりなんかしないッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,28 @@
{
"501000831_0": "「同時に叩き込むぞッ!」",
"501000831_1": "「これで、終いだぁぁぁぁッ!」",
"501000831_2": "「今ので全てか?\\n ならば、あとは――」",
"501000831_3": "「ああ、この世界ともお別れだッ!\\n あたしたちの世界に戻るぞッ」",
"501000831_4": "「……まさか、自力で障壁をこじ開けるなんてね。\\n やっぱり、素晴らしいわ」",
"501000831_5": "「その声は――ッ!?」",
"501000831_6": "「――ベアトリーチェッ!」",
"501000831_7": "「少しぶりね、響。\\n 元気にしていたかしら」",
"501000831_8": "「……あら?」",
"501000831_9": "「そっちの2人……なんだか雰囲気が変わったわね?\\n しばらく一緒にいて、仲良しになれたのかしら」",
"501000831_10": "「――ッ!?」",
"501000831_11": "「ふざけるなッ!」",
"501000831_12": "「フフ……まあ、それは別にどうでもいいんだけど。",
"501000831_13": " ねえ、響?」",
"501000831_14": "「頃合いになったら迎えに行くと言ったでしょ?\\n 勝手に出ようとするなんて、慌てんぼうさんだこと……」",
"501000831_15": "「うん、でも、\\n 今のあなたたちを見ていたら――」",
"501000831_16": "「わたしも、\\n 我慢ができなくなってきたわ……」",
"501000831_17": "「――ッ!」",
"501000831_18": "「やる気かッ!?」",
"501000831_19": "「そうね。\\n 本番の前に、少しだけ……」",
"501000831_20": "「つまみ食いさせてもらおうかしら」",
"501000831_21": "「この力――ッ!?」",
"501000831_22": "「以前戦った時よりも、\\n ついこの前、会った時よりも――」",
"501000831_23": "「ベアトリーチェは……\\n ずっと、強くなっているッッ」",
"501000831_24": "「……言っておくけど、\\n これは単なるつまみ食いよ」",
"501000831_25": "「こんな程度で、\\n やられてなんか、くれないでよね」"
}

View file

@ -0,0 +1,42 @@
{
"501000832_0": "「アハハハハハッ!!\\n ほら、どうしたのッ」",
"501000832_1": "「その程度の力で、\\n わたしを倒すだなんて息巻いていたのかしらッ」",
"501000832_2": "「く……ッ!」",
"501000832_3": "「立花だけを集中して狙っているッ!?\\n 急ぎ援護に向かわねばッ」",
"501000832_4": "「くそッ!\\n 周りの奴らが邪魔だッ」",
"501000832_5": "「響ッ!\\n すぐに行くからッ だから――ッ」",
"501000832_6": "「く、ぅ……ッ!!」",
"501000832_7": "「大丈夫――負けないよッ!\\n このくらいじゃ……ッ」",
"501000832_8": "「その意気よッ!\\n そうでなければ、わたしの腹は満たせないッ」",
"501000832_9": "(奴はいま……、\\n あいつに気を取られているッ",
"501000832_10": "(今しかないッ!\\n カヴァーチャの――ヘビクイワシの力で、奴を討つのはッ",
"501000832_11": "「これが、あたしの背負った力……\\n カヴァーチャの力ッ」",
"501000832_12": "「覚悟しろッ、世界蛇の巫女――ッ!!」",
"501000832_13": "「……小うるさい蝿ね。\\n 良いところなのよ、邪魔をしないでちょうだいッ」",
"501000832_14": "「――ッ!?\\n あの角度から、この反射速度……ッ」",
"501000832_15": "「ぐぁああああ――ッ!!」",
"501000832_16": "「ヨウッ!?\\n どうしてッ」",
"501000832_17": "「あら?\\n 人の心配なんてしている場合」",
"501000832_18": "「えッ!?」",
"501000832_19": "「ぐぅ――ッ!?」",
"501000832_20": "「キョウちゃんッ!\\n ヨウちゃんッ」",
"501000832_21": "「誰彼構わず心配するその想い……\\n 馬鹿みたいに愚かで、ひと思いに食べちゃいたくなる」",
"501000832_22": "「うぁあああ――ッ!!」",
"501000832_23": "「けど――まだだッ!\\n まだ、終わってなんか――ッ」",
"501000832_24": "「フフ……ッ!\\n ええ、その通り……その通りよ、響」",
"501000832_25": "「だから、そんなに無理をしないで?\\n 飽くまでつまみ食い、本番じゃないって言ったでしょ」",
"501000832_26": "「――ッ!?」",
"501000832_27": "「……立花響。\\n 次が、本番よ」",
"501000832_28": "「傷を治し、心を研いで――\\n 全力で挑んできなさい」",
"501000832_29": "「<ruby=あなた>希望</ruby>と<ruby=わたし>悪意</ruby>、\\n どちらが潰えるのか……存分に、確かめ合いましょう」",
"501000832_30": "「それじゃあね」",
"501000832_31": "「――撤退したか」",
"501000832_32": "「見逃してもらった……\\n って言った方が正しいだろうけどな」",
"501000832_33": "「ッ……」",
"501000832_34": "「響ッ!\\n 大丈夫ッ」",
"501000832_35": "「わたしは平気。\\n でも、ヨウちゃんが……」",
"501000832_36": "「ヨウッ!!\\n しっかりして、ヨウッ」",
"501000832_37": "「――とりあえず、帰還するぞ。\\n 話はそれからだ」",
"501000832_38": "「今後のことも含めて、話し合わねば。",
"501000832_39": " あの<ruby=ベアトリーチェ>悪意</ruby>に、打ち勝つために――」"
}

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@ -0,0 +1,50 @@
{
"501000911_0": "すれ違い、惑い、そして",
"501000911_1": "「風鳴翼――\\n ただいま帰還いたしました」",
"501000911_2": "「翼さんッ!!",
"501000911_3": " お2人も……ッ!」",
"501000911_4": "「本当に……無事で良かった」",
"501000911_5": "「先ほど、皆さんから通信が入った時、\\n どれだけ胸を撫で下ろしたことか……」",
"501000911_6": "「ご心配をおかけしました……」",
"501000911_7": "「皆さんとの通信が途絶えて、1週間近く。\\n その間に、こちらではドッペルゲンガーの掃討が続いていました」",
"501000911_8": "「同時に、断続的に現れるカルマノイズと、\\n カオスビーストへの対応……」",
"501000911_9": "「戦力だけの話では、もちろんありませんが……\\n こうして無事に戻ってきていただけて、何よりです」",
"501000911_10": "「とはいえ、\\n 響さんが、怪我を負ったと聞きましたが……」",
"501000911_11": "「……ああ。\\n 医務室で、治療を受けてるよ」",
"501000911_12": "「……心配ですが、事態は一刻を争います。\\n 何があったのか、報告をお願いできますか」",
"501000911_13": "「はい。わたしたちはベアトリーチェにより、\\n とある世界へと落とされ――」",
"501000911_14": "「なるほど、そんなことが……」",
"501000911_15": "「……なあ、\\n 並行世界のやつらはどうなってるんだ」",
"501000911_16": "「スクルド、及びAPPLEの方々からの情報の限りでは\\n 皆さん、今のところ持ちこたえているようです」",
"501000911_17": "「しかし、どこもかしこも、かなりギリギリの状況のようです。\\n このまま侵攻が続けば……」",
"501000911_18": "「結局のところ……、\\n あたしたちが、ベアトリーチェを倒すしかないってことか」",
"501000911_19": "「ベアトリーチェさえどうにかすれば、\\n 他の世界を攻めている敵も退くはずだからな」",
"501000911_20": "「そうだね。\\n そう信じて……戦うしかない」",
"501000911_21": "(そう、『戦うしかない』……。\\n この想いは、わたしたちだってよくわかる……",
"501000911_22": "(――そういえばあの2人、\\n ちゃんと話し合えてるかな",
"501000911_23": "「ヨウッ!\\n どうしてあんな無茶をしたのッ」",
"501000911_24": "「…………」",
"501000911_25": "「たった1人でベアトリーチェに立ち向かうなんて、\\n 怪我だけで済んだから良かったけど……」",
"501000911_26": "「死ぬ時は一緒だって、\\n そう言ったでしょうッ」",
"501000911_27": "「…………」",
"501000911_28": "「――ッ!\\n なんとか言ってよ、ヨウッ」",
"501000911_29": "「あたしは、\\n キョウを、戦いから遠ざけたかったんだッ」",
"501000911_30": "「え……?」",
"501000911_31": "「あたしが戦って、キョウがもう、戦わずに済むのなら……\\n それでいいって思ったんだッ」",
"501000911_32": "「……なんで?」",
"501000911_33": "「なんで、そんなこと言うの?\\n 一緒に戦おうって、一緒に英雄に堕ちようって……」",
"501000911_34": "「そう言ったじゃないッ!」",
"501000911_35": "「……ッ!」",
"501000911_36": "「キョウッ!\\n 待っ、……ッ」",
"501000911_37": "(――あたしが、追っていいわけがない……ッ!\\n 傷付けた……あたしが……ッ",
"501000911_38": "「くッ……」",
"501000911_39": "(なんで……、\\n どうしてよ、ヨウ……ッ",
"501000911_40": "(わたしは、あなたがいるから戦えるのに――ッ!!)",
"501000911_41": "「きゃッ!?」",
"501000911_42": "「調ッ!?\\n 大丈夫デスかッ」",
"501000911_43": "「だ、大丈夫……",
"501000911_44": " ――ッ!? あなたは……」",
"501000911_45": "「――ッ!!」",
"501000911_46": "「え、今――」",
"501000911_47": "「えっと……、\\n 泣いてた、デスよね……」"
}

View file

@ -0,0 +1,47 @@
{
"501000921_0": "「…………」",
"501000921_1": "「後をつけてきてみれば……\\n やっぱり、泣いてるデスよね」",
"501000921_2": "「うん……」",
"501000921_3": "「……心配デス。\\n 話を聞いてみるデスよ」",
"501000921_4": "「切ちゃん、ちょっと待って。",
"501000921_5": " その……危ないよ」",
"501000921_6": "「危ない?\\n どうしてデスか」",
"501000921_7": "「だってあの人は、\\n 切ちゃんを攻撃した人だよ」",
"501000921_8": "「うーん……。実際のトコロ、\\n 誰に攻撃されたのか、はっきり覚えてないデスよ」",
"501000921_9": "「ええ……?\\n そうなの」",
"501000921_10": "「現場が大混乱だったせいで、本当にあの人に攻撃されたのか、\\n わからないんデス。それに――」",
"501000921_11": "「あの人の涙を見て、\\n 思い出したデスよ」",
"501000921_12": "「……え?」",
"501000921_13": "「必死に我慢して、なんとか平気なフリをして、\\n 周りを攻撃するしかなくて、でも心の中では泣いてた時――」",
"501000921_14": "「アタシたちは、\\n 手を伸ばしてもらったじゃないデスか」",
"501000921_15": "「だから……、\\n お願いデス、調」",
"501000921_16": "「……ずるいよ、切ちゃん」",
"501000921_17": "「けど……そうだね。酷いことをした人を、\\n 許すのか許さないのか、っていう話と――」",
"501000921_18": "「今、目の前で泣いている人を放っておくのか……\\n それは、別のことだもんね」",
"501000921_19": "「さすがは調ッ!\\n わかってるデスッ」",
"501000921_20": "「うん。\\n 切ちゃんの思うように、やっていいと思うよ」",
"501000921_21": "「ありがとうデスッ!",
"501000921_22": " それじゃあ早速、おーいデスッ!!」",
"501000921_23": "「――ッ!?」",
"501000921_24": "「あ、あなたたち――、\\n ……いったい、捕虜のわたしに、なんの用ですか」",
"501000921_25": "「あ、えっと……デスね」",
"501000921_26": "(し……しまったデスッ!\\n どんなことを話すか、考えてなかったデスよッ",
"501000921_27": "「えーと。えー……っと……。\\n その、デスね」",
"501000921_28": "「……用がないのでしたら、行きますが」",
"501000921_29": "「いや、そう、そうデスッ! アタシのギア、\\n アマルガム・キーパーについて質問があるデスッ」",
"501000921_30": "「……質問?」",
"501000921_31": "「はい。\\n あの力は、アナタたちがくれたものだって聞いているデス」",
"501000921_32": "「まあ、『あげた』と言えば、\\n 確かにその通りかもしれませんけど……」",
"501000921_33": "「ただ、その〜……デスね。\\n イマイチ使い方がわからないというか、デスね」",
"501000921_34": "「纏えても、アームドギアを使ってみても、\\n 調やマリアと違って、いつものアマルガムのままなんデス……」",
"501000921_35": "「………………。\\n ……は」",
"501000921_36": "「ふ……ふざけているんですかッ!?\\n せっかく渡したのに、使い方がわからないですってッ」",
"501000921_37": "「デデデッ!?\\n 急に怒らないでほしいデスッ」",
"501000921_38": "「〜〜〜〜ッ……!",
"501000921_39": " あ……呆れて言葉が出てこないとは、このことですね……」",
"501000921_40": "「…………はぁ、仕方がありません。\\n どこか、身体を動かせる場所を用意してください」",
"501000921_41": "「身体を、動かせる場所、デスか?",
"501000921_42": " 動かし方を教えてくれるデスねッ!?」",
"501000921_43": "「勘違いしないでください。あなたが使いこなせないせいで、\\n わたしたちの技術が低く見られるのは我慢ができないだけです」",
"501000921_44": "「『<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>』の使い方、\\n 今からあなたに叩き込んで差し上げます」"
}

View file

@ -0,0 +1,50 @@
{
"501000922_0": "「これで、\\n 終わりデースッ」",
"501000922_1": "「お、およよよ?\\n なんだか、糸が絡まってるみたいな、重さが――ッ」",
"501000922_2": "「力に振り回されすぎですッ!\\n もっと、自分の腕の延長線上として扱ってッ」",
"501000922_3": "「デデデデースッ!?」",
"501000922_4": "「はぁ……。\\n この力、託したのが間違いだったかもしれませんね」",
"501000922_5": "「そ、そんなことないデスよッ!\\n 必ず、使いこなせるようになってみせるデスッ」",
"501000922_6": "「だからッ!\\n ご指導ご弁解のほど、よろしくお願いするデスッ」",
"501000922_7": "「それを言うならご鞭撻です。",
"501000922_8": " ……」",
"501000922_9": "「……はぁ。ちゃんと目の前の敵を見据えて\\n 力を振るってください」",
"501000922_10": "「了解デースッ!\\n だりゃぁぁぁぁあ――ッ」",
"501000922_11": "「……。\\n 本当に大丈夫なんでしょうか」",
"501000922_12": "「きっと大丈夫。\\n 切ちゃんは、やればできる子だから」",
"501000922_13": "「……そうですか」",
"501000922_14": "「……もう1人の人は、\\n 一緒じゃないの」",
"501000922_15": "「……ええ。\\n 今は別行動中ですよ」",
"501000922_16": "「……もっとも、ヨウは……金輪際、\\n わたしと行動なんてしたくないのかもしれないけど」",
"501000922_17": "「え……」",
"501000922_18": "「事情はわからないけど……放っておいていいの?\\n 大切な人なんじゃなかったの」",
"501000922_19": "「……いいんです。\\n それに恐らく、ヨウもそれを望んでいると……」",
"501000922_20": "「それは聞き捨てならないデスッ!」",
"501000922_21": "「なッ!?\\n なんですか、いきなりッ」",
"501000922_22": "「……『恐らく』、なんですよね?」",
"501000922_23": "「え?",
"501000922_24": " ……ええ、まぁ……」",
"501000922_25": "「……けど、そうでなかったら、\\n ヨウがわたしを遠ざけるなんてこと……」",
"501000922_26": "「……わたしたちを見ていたというのなら。\\n 知ってるんじゃないですか」",
"501000922_27": "「え……」",
"501000922_28": "「お互いを大事に想って、すれ違ってしまっているのなら、\\n そのままにしたらダメなんです」",
"501000922_29": "「そうデスよ。そういう時こそ、ちゃんと話さないと、\\n 取り返しのつかないことになるデスッ」",
"501000922_30": "「――ッ!",
"501000922_31": " ……どうして……」",
"501000922_32": "「あなたたちはどうして……。\\n わたしたちに、そこまで構うんですか」",
"501000922_33": "「今は一時的に協力しているとはいえ、\\n 敵として、殺し合いをしなければいけない相手なのに……」",
"501000922_34": "「それは……」",
"501000922_35": "(そっか。\\n これが――",
"501000922_36": "(あの時、\\n わたしたちを助けてくれた、響さんの想いなんだ",
"501000922_37": "(どれだけ拒絶されても、\\n 目の前で、こんなに心細そうに、声もなく叫んでいる……",
"501000922_38": "(こんなの、放っておけるはずなんてない。\\n 昔のわたしたちと、似ているからこそ……",
"501000922_39": "(2人が仲良くできないままだなんて、\\n そんなの……絶対に嫌デスッ",
"501000922_40": "(響さんみたいに、\\n 上手くできるかなんてわからない、でも、それでも――",
"501000922_41": "「あの、\\n わたしたちは――」",
"501000922_42": "「おいッ!\\n 大変だッ」",
"501000922_43": "「こ、こんな時に非常事態デスかッ!?」",
"501000922_44": "「なんのことだよ……って、",
"501000922_45": " 今はこの話をするのが先決だッ!」",
"501000922_46": "「あいつが、ヨウが――、\\n たった人で、ベアトリーチェのところに行きやがったッ」",
"501000922_47": "「――ッ!?」"
}

View file

@ -0,0 +1,57 @@
{
"501000931_0": "「……まさか、あなた如きが、\\n たった人で追いかけてくるなんてね」",
"501000931_1": "「いいの、相棒がいなくて?\\n あなた人じゃ、半人前もいいところでしょ」",
"501000931_2": "「響たちに感化されたのかしら?\\n だとしたら……わたしがしたことは無駄じゃなかったわね」",
"501000931_3": "「黙れッ!\\n お前如き、あたし人で十分だッ」",
"501000931_4": "「必ずここで、お前を殺すッ!\\n 殺してみせるッ」",
"501000931_5": "「……フフ、心地良い殺気ね。\\n その殺気に免じて、相手をしてあげる」",
"501000931_6": "「あなたは、わたしを殺したいから殺す。\\n わたしは、楽しむためにあなたを殺す……」",
"501000931_7": "「さあ、おいでなさいな。\\n 全力で、食い滅ぼしてあげるからッ」",
"501000931_8": "「――ッ!!」",
"501000931_9": "(向けられるだけで、身体中が焼かれるような悪意……ッ!\\n だが、退くわけにはいかないッ",
"501000931_10": "(キョウのために、『見放された世界』のためにッ!\\n あたしは、人でだって……ッ",
"501000931_11": "「はぁ――ッ!!」",
"501000931_12": "「……軽いわね。その程度?\\n それでは、わたしに傷つ付けられないわよ」",
"501000931_13": "「ぐ……ッ!?\\n まだ、まだだッ」",
"501000931_14": "(どうして――ッ!\\n どうしてあたしに応えてくれないんだ、カヴァーチャッ",
"501000931_15": "「フフ、必死でかわいい。\\n それなら、これはどう」",
"501000931_16": "「があああ――ッ!!!」",
"501000931_17": "「あら、優しく撫でてあげただけでしょう?\\n 随分と大きな悲鳴を上げるわね」",
"501000931_18": "「でも、まだ足りないわ。\\n せっかく来たんだもの、もっとわたしを楽しませなさい」",
"501000931_19": "「ぐ、ぐうッ!?」",
"501000931_20": "「オマケも付けてあげる。\\n 頑張らないと、そのまま死んでしまうわよ」",
"501000931_21": "「あ……」",
"501000931_22": "「フフ、良い顔ね。\\n その顔を見られたから、もういいわ」",
"501000931_23": "「あとは、この子たちに任せるわ。\\n 最期の時を、せいぜい楽しみなさい」",
"501000931_24": "(……あたしは、ここまでなのか。\\n こんなところで、終わってしまうのか",
"501000931_25": "「……ごめんね、キョウ……。\\n やっぱりあたし、人じゃ、何もできなか――」",
"501000931_26": "「させないデースッ!!」",
"501000931_27": "「……あら?」",
"501000931_28": "「――ッ!?」",
"501000931_29": "「危機一髪な感じデスが……\\n ギリギリセーフ、間に合ったデスねッ」",
"501000931_30": "「ああ、間一髪だったッ!」",
"501000931_31": "「あたしたちが来たからには、\\n もう好きにはさせねぇぞッ」",
"501000931_32": "「お前たち……、\\n どうして、ここに――」",
"501000931_33": "「ヨウッ!」",
"501000931_34": "「……キョウまで?\\n どうして……」",
"501000931_35": "「言いたいことは、たくさんあるけど……、",
"501000931_36": " でも今は、ヨウが無事でいてくれて、良かった……」",
"501000931_37": "「……あたし……あたしは……。\\n キョウ、ごめん、やっぱりあたし、人じゃ、何も――ッ」",
"501000931_38": "「1人じゃ何もできないだなんて、\\n そんなの当たり前デスッ」",
"501000931_39": "「……ッ!?」",
"501000931_40": "「でも、\\n それでいいじゃないデスかッ」",
"501000931_41": "「1人じゃ何もできないからこそ、\\n アタシたちは、手を取り合うことができるんデスからッ」",
"501000931_42": "「あれは……あいつも、\\n <ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>の力を、使いこなしているのか……?」",
"501000931_43": "「キョウさんが、教えてくれたんデスッ!\\n この、アマルガム・キーパーの力をッ」",
"501000931_44": "「アタシは、お気楽者デスからッ!\\n どんな想いも肩代わりできるなんてことは言えないデスッ」",
"501000931_45": "「アナタたち2人が、必死に背負っているものを\\n 代わりに背負ってみせるだなんて言うつもりもないデスッ」",
"501000931_46": "「でも、それでもッ!\\n かつて、アタシたちがそうしてもらったように――」",
"501000931_47": "「アナタたちが、出すべき答えに辿り着くまでッ!\\n アタシが、護ってみせるデスッ」",
"501000931_48": "「だからこそ……応えるデスよッ!\\n アタシの、アマルガム・キーパーッッ」",
"501000931_49": "「……ああ、なんてことなの」",
"501000931_50": "「…………素晴らしいわ。\\n 今まで、響にしか目が行っていなかったけれど――」",
"501000931_51": "「他の子も、\\n なかなか良い具合に育っているじゃない」",
"501000931_52": "「装者たちが<ruby=みな>皆</ruby>、\\n メインディッシュになり得るというなら――」",
"501000931_53": "「我慢せずに、\\n 食べ始めてしまっても構わないわよね――ッ」",
"501000931_54": "「――来るぞッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,64 @@
{
"501000932_0": "「これで――\\n 決めるデスッ」",
"501000932_1": "「よしッ!\\n これで取り巻きは全部倒したなッ」",
"501000932_2": "「ああ、あとは本命のみッ!\\n 気合いを入れろッ」",
"501000932_3": "「……これが、護ることを決めた、\\n 装者たちの力……」",
"501000932_4": "「…………すごい……」",
"501000932_5": "「あたしが敵わなかった悪意に、\\n 露ほども臆さず、立ち向かって……」",
"501000932_6": "「フフ、やはりシンフォギア装者は素晴らしいわ。\\n 一時でもわたしを倒しただけのことはある。けれど――」",
"501000932_7": "「ぽっと出の連中は、味が劣るわね。\\n 精神面が雑魚過ぎる、とでも言うのかしら」",
"501000932_8": "「――ッ!」",
"501000932_9": "「けれど……全ての希望をへし折ってこそ、\\n <ruby=わたし>悪意</ruby>は満たされるというもの」",
"501000932_10": "「いいわ。\\n 少しだけ、手伝ってあげる」",
"501000932_11": "「わたしの悪意を受けて、\\n ほんの少しでも、抗ってごらんなさい」",
"501000932_12": "「な、何を……ッ!?」",
"501000932_13": "「悪意の種、マリスシード。――ヒトの持つ、原初の呪い。\\n あなたたち人に、プレゼントよ」",
"501000932_14": "「――ッ!?\\n よ、避けられない……ッ」",
"501000932_15": "「キョウッ!\\n 逃げて――ッ」",
"501000932_16": "「そうは――」",
"501000932_17": "「させるかッ!!」",
"501000932_18": "「ぐッ!?」\\n「がッ」",
"501000932_19": "「――ッ!?」",
"501000932_20": "「な……ッ!?\\n 風鳴翼、雪音クリスッ」",
"501000932_21": "「どうして……ッ!?\\n お前たちに、あたしたちを庇う理由なんてッ」",
"501000932_22": "「その『悪意の種』を受ければ、\\n あなたたちだって、無事ではすまないはず……ッ」",
"501000932_23": "「ぐッ……そりゃあ、お前らとはまだ、\\n 一番大事な話ができていないからな……ッ」",
"501000932_24": "「一番、大事な話……?」",
"501000932_25": "「……大切な何かのために命を<ruby=なげう>擲</ruby>つことを、\\n 悪とは呼ぶまい」",
"501000932_26": "「だが、もし――それで片翼を失ってしまえば、\\n 残された者はどうすればいい……ッ」",
"501000932_27": "「――ッ!」",
"501000932_28": "「片翼の、その先にある<ruby=みらい>未来</ruby>を、\\n 背負わせる覚悟が、お前にはあったのか」",
"501000932_29": "「そ、それは――」",
"501000932_30": "「……キョウ、だったよな。\\n お前だってそうさ」",
"501000932_31": "「え――?」",
"501000932_32": "「お前が、そいつのことを、\\n どれだけ信用して縋っているかなんて、知らないけどな」",
"501000932_33": "「だけど、伝えようとしなかったら、\\n 『どれだけ大切か』なんてわからないだろ」",
"501000932_34": "「求めるだけでも、祈るだけでも意味なんて無い。\\n 向き合わないと、いけないんだッ」",
"501000932_35": "「わたしとヨウが、\\n ……向き合う」",
"501000932_36": "「ぐぅッ!\\n 悪意の種……ヒトの呪いか。結構、効くもんだな……ッ」",
"501000932_37": "「……そう、だな。",
"501000932_38": " だが、わたしたちは知っているッ!」",
"501000932_39": "「この怒りを、\\n 湧き上がるこの衝動を……ッ」",
"501000932_40": "「この想いこそを呪いと言うならば、\\n 覆すことも容易いとッッ」",
"501000932_41": "「ああ……\\n あのバカが、嫌になるほど教えてくれたッ」",
"501000932_42": "「呪いと呪わなければ呪いでいられない、\\n 誰かの想い……『悪意』なんざで――ッ」",
"501000932_43": "「わたしたちを、\\n 抑え込めると思うなッ」",
"501000932_44": "「悪意の種からでも、如何様に。\\n 希望の花こそ、咲かせてみせようッ」",
"501000932_45": "「これが、あたしらが積み重ねてきた覚悟だッ!\\n 折れるものなら――折ってみやがれッ」",
"501000932_46": "「ああ……\\n ……ああ……ッ」",
"501000932_47": "「……素晴らしい」",
"501000932_48": "「ええ、本当に素晴らしいわ。\\n これほどのものとは、思わなかった……ッ」",
"501000932_49": "「ま……まさかこいつ、\\n 泣いていやがるのかッ」",
"501000932_50": "「ええ、\\n それはもちろん、涙も流すというものよ」",
"501000932_51": "「あなたたち装者は、\\n 全員がわたしの腹を満たす存在へとなり得た」",
"501000932_52": "「有象無象の世界などより、\\n 余程、上質の餌へと成り代わってくれた、だから――」",
"501000932_53": "「――つまみ食いは、やっぱりここまで」",
"501000932_54": "「みんなの傷が癒えたら、\\n 全力をもって、<ruby=わたし>悪意</ruby>を殺しに来なさい」",
"501000932_55": "「悪意の化身、絶望の化身。\\n 世界蛇の巫女、『ベアトリーチェ』が――」",
"501000932_56": "「相手をしてあげる」",
"501000932_57": "(――ッ!?)",
"501000932_58": "(この迫力――ッ!?)",
"501000932_59": "(ああ……。\\n さっきまでは本気でなかった……そういうことか",
"501000932_60": "「それじゃあ、\\n また逢いましょう」",
"501000932_61": "(…………)"
}

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@ -0,0 +1,54 @@
{
"501000941_0": "「お帰りなさい、みんな」",
"501000941_1": "「友里さんッ!?\\n まだ休んでいなくて大丈夫なのですかッ」",
"501000941_2": "「心配お掛けしました。でも、みんなが戦っている中で、\\n 私たちばかり、いつまでも休んではいられないもの」",
"501000941_3": "「復帰早々、ベアトリーチェとの戦いを見せられるとは、\\n 思わなかったけどね……」",
"501000941_4": "「でも、司令代行に任せっきりになっていた分、\\n ここからは俺たちもバリバリ働きますよッ」",
"501000941_5": "「ありがとうございます。\\n ようやくいつものメンバーが戻ってきて、心強いです」",
"501000941_6": "「ただ、しかし――」",
"501000941_7": "「捕虜であるヨウさんの独断先行については、\\n 然るべき対応が必要かと思います」",
"501000941_8": "「…………」",
"501000941_9": "「来たるべきベアトリーチェ戦を前にして、\\n 勝手な行動は、司令代行として看過できません」",
"501000941_10": "「あ、あの――ッ!」",
"501000941_11": "「未来さん?\\n 何か」",
"501000941_12": "「そのことについて、\\n わたしから、人に少し話をさせてもらえませんか」",
"501000941_13": "「……わかりました。\\n どうぞ」",
"501000941_14": "「ありがとうございますッ!」",
"501000941_15": "「あの――」",
"501000941_16": "「キョウちゃん、ヨウちゃん。\\n 人が、自分の世界のために必死で戦っているのは……」",
"501000941_17": "「わたしたち、もうわかってる。\\n わかってるんだよ……」",
"501000941_18": "「…………」",
"501000941_19": "「2人にとって、ベアトリーチェとの戦いは、\\n 飽くまでその戦いのための、前段」",
"501000941_20": "「だったら……まずはこれを、2人も乗り越えなきゃ。\\n 違う」",
"501000941_21": "「……返す言葉もありません」",
"501000941_22": "「……ああ、互いの世界のために、\\n いつかはぶつからないといけないだろうからな」",
"501000941_23": "「戦うのか、それ以外の道かは、\\n まだ決められねども――」",
"501000941_24": "「少なくとも、\\n 今、わたしたちが争うことに意味はない」",
"501000941_25": "「そうだよ。\\n 今、わたしたちが戦っている相手は、ベアトリーチェだよね」",
"501000941_26": "「だからまず、わたしたちが、\\n いずれ向き合って、決着をつけられるように――」",
"501000941_27": "「今は、\\n わたしたちの手を握って欲しいんだ」",
"501000941_28": "「捕虜とか、敵とか、味方とかじゃなくて、\\n 今、『世界のために』戦っている者として――」",
"501000941_29": "「…………」",
"501000941_30": "(――ああ、これは。\\n 嫌になるくらい何度も見てきた『光』だ",
"501000941_31": "(手が届かないもの。わたしたちには、\\n 決して差し伸べられないと思っていた――温かい手",
"501000941_32": "(拒否するべきだ。拒絶するべきだ。\\n この手を掴んだら、あたしたちはもう戻れなくなる",
"501000941_33": "(本当は――助けてほしい。\\n なんだっていい、あたしたちの世界を、助けてほしい……",
"501000941_34": "(でも、そんなことは決して口にはできない。\\n 今更、あたしたちに許されることじゃない……ッ",
"501000941_35": "(共同戦線。そう、飽くまでも打算的に、\\n 自分を言い聞かせて、この手を取るしか――",
"501000941_36": "「…………」",
"501000941_37": "「……わかり、ました。",
"501000941_38": " ヨウも、それでいいですね?」",
"501000941_39": "「……ああ、承知した。\\n ……今後は、そちらの指示に従うと誓おう」",
"501000941_40": "「ありがとう、2人とも……ッ!」",
"501000941_41": "「わたしとしては、『指示』に\\n 従ってほしいわけじゃないんだけど……それでも、ありがとう」",
"501000941_42": "(…………)",
"501000941_43": "(もし、最後まで辿り着いた時には、\\n 互いの世界の存亡を賭けて、殺し合いをすることになる",
"501000941_44": "(……『もし』?",
"501000941_45": " ううん、わたしたちは辿り着かなければならない)",
"501000941_46": "(この人たちとの、殺し合いに。",
"501000941_47": " ……『見放された世界』の、ために……)",
"501000941_48": "(――本当に?)",
"501000941_49": "(あたしたちと同じように生きていると……\\n あたしたちみたいなものにまで手を伸ばす、優しい人だと……",
"501000941_50": "(そう知ってしまった相手と、殺し合いを?)",
"501000941_51": "(そんなこと――、\\n 本当にできるのか"
}

View file

@ -0,0 +1,57 @@
{
"501001011_0": "託す者、託される者",
"501001011_1": "「…………」",
"501001011_2": "「…………」",
"501001011_3": "「……仔羊のステーキだそうよ?\\n 美味しい」",
"501001011_4": "「は、……モゴッ。\\n ……、…………」",
"501001011_5": "「その……ベアトリーチェ様。\\n 何故、このようなことを」",
"501001011_6": "「わたしは別に、\\n 普通の食事を摂る意味がないんだもの」",
"501001011_7": "「だからせめて、あなたに食べさせてあげてるの。\\n わかった わかったらほら、口を開けて」",
"501001011_8": "「……然様ですか。\\n お手を煩わせてしまい、申し訳ありません」",
"501001011_9": "「いいのよ。\\n わたしが好きでやっていることだから」",
"501001011_10": "「…………」",
"501001011_11": "「……」",
"501001011_12": "「……ねえ?」",
"501001011_13": "「……はい?」",
"501001011_14": "「あなた、\\n どうしてわたしを復活させたの」",
"501001011_15": "「それは――」",
"501001011_16": "「蛇に纏わる聖遺物を集めること、\\n 装者たちの目を掻い潜ること……どれも簡単ではなかったはずよ」",
"501001011_17": "「だから……わたしを復活させたことは、\\n 単純に褒めてあげる。よくやったわ」",
"501001011_18": "「……ありがたき、しあ――」",
"501001011_19": "「――でもね」",
"501001011_20": "「とうに塗り潰された想い出まで組み込んだのは、\\n 余計だったわね」",
"501001011_21": "「……申し訳ありません」",
"501001011_22": "「……いいわ、許してあげる」",
"501001011_23": "「あなたは随分と長い間、\\n わたしと同じ絶望を……悪意を抱えてくれたんだもの」",
"501001011_24": "「そうでしょう、石屋。\\n いいえ……アルヴィース」",
"501001011_25": "「あなた、本当に――\\n 馬鹿がつくくらい忠臣だったのね」",
"501001011_26": "「……ッ!",
"501001011_27": " もったいない、お言葉です」",
"501001011_28": "「……。\\n 『あなたの主人として』……つ、命令するわ」",
"501001011_29": "「なんなりと」",
"501001011_30": "「もしもわたしが、次の戦いで潰えたのなら。\\n あなたが、わたしの『悪意』を継ぎなさい」",
"501001011_31": "「それは――」",
"501001011_32": "「口ごたえは許さないわ。\\n 何があろうと生きて、そうするのよ」",
"501001011_33": "「わかった?\\n アルヴィース」",
"501001011_34": "「…………。",
"501001011_35": " ……御心のままに」",
"501001011_36": "「ええ、それでいい。\\n それでこそ、わたしの従者よ」",
"501001011_37": "「……」",
"501001011_38": "「わたしは――。\\n どこまでも、わたしが『愉しんだ』悪意を肯定する」",
"501001011_39": "「お綺麗なものだって、嫌いなわけではなかったわ。\\n けれど……」",
"501001011_40": "「お綺麗なものより、それを砕いた時の感情の落差こそ、\\n 『美味しい』と思ったことを、わたしは、微塵も後悔しない」",
"501001011_41": "「だってわたしは、\\n 『祈りの巫女ベルダンディ』に非ずッ」",
"501001011_42": "「わたしこそが、\\n 『世界蛇の巫女ベアトリーチェ』ッ」",
"501001011_43": "「全ての並行世界を愉しみ喰らう、\\n 悪意の化身なのだから――ッ」",
"501001011_44": "「ああ、響……シンフォギア装者たち。\\n わたしは、自分自身の手で、あなたたちを折りたいの」",
"501001011_45": "「この想いは、間違ってなんかいなかった。\\n だから、最後の闘いの幕を開きましょう」",
"501001011_46": "「だからこそ、わたしは、わたしとしていなくちゃいけないわ。\\n わたしがあの子たちを手折ることに、意味があるのだから……」",
"501001011_47": "「だから……わたしとずっといてくれたあなた。\\n ヨルムンガンド……」",
"501001011_48": "「――」",
"501001011_49": "「あなたも、一緒に来てくれる?\\n わたし、あなたのことも大好きよ」",
"501001011_50": "「ずっと、ずっと……\\n わたしの悪意に、寄り添ってくれた……かわいい子」",
"501001011_51": "「……今度こそ、\\n おなかいっぱい食べさせてあげるわ」",
"501001011_52": "「――」",
"501001011_53": "「フフ。嬉しい?\\n そうよね、わかるわ。わたしも、嬉しくてたまらないもの」",
"501001011_54": "「さあ――行きましょう。\\n 食事の時間よ」"
}

View file

@ -0,0 +1,53 @@
{
"501001021_0": "「――痛ッ!?」",
"501001021_1": "「す、すみませんッ!\\n 消毒液が染みてしまいましたかッ」",
"501001021_2": "「もうすぐ終わりますので、\\n あと少しだけ我慢してもらえれば……」",
"501001021_3": "「……なぁ」",
"501001021_4": "「……はい?\\n なんでしょうか」",
"501001021_5": "「……あたしは、お前に酷い仕打ちをした。\\n だのに、どうしてこれほど懸命になれる」",
"501001021_6": "「…………」",
"501001021_7": "「……それは、S.O.N.G.や、数多の並行世界を攻撃した\\n あなたたちに恨みはないのか、とそういう質問ですか」",
"501001021_8": "「……ああ。\\n そうだ」",
"501001021_9": "「もちろん。\\n あなたたちのしたことを、許したわけではありません」",
"501001021_10": "「……当然だな」",
"501001021_11": "「みなさん……」",
"501001021_12": "「ごめんなさい、話は聞かせてもらったわ。\\n その上で、言っておかなければならないことがある」",
"501001021_13": "「エルフナインの言った通りよ。\\n わたしたちは、あなたたちの凶行を許してなんかいない」",
"501001021_14": "「…………」",
"501001021_15": "「でも、わたしたちが目指したい<ruby=みらい>未来</ruby>は……\\n 『やられたらやり返す』ような世界じゃない」",
"501001021_16": "「自責でも、しろと?\\n ……まだ、殺し合いもしていないだろうに」",
"501001021_17": "「……お前たちが、己の世界を背負って、\\n こちらの並行世界に侵攻してきたことは、既に知ったこと」",
"501001021_18": "「だが、『世界を背負っている』――\\n それだけでは、わたしたちには勝てないと思え」",
"501001021_19": "「あたしたちよりも、\\n お前たちの世界の方が重いと――そう言いたいのか」",
"501001021_20": "「……優しくて、強い世界を背負っているから……\\n あたしたちには、負けるはずがないと」",
"501001021_21": "「……そうではない」",
"501001021_22": "「そもそも、わたしたちは、\\n 最初から世界を背負ってなどいないのだ」",
"501001021_23": "「……」",
"501001021_24": "「……そうさ。そんな重いもの、\\n とてもじゃないけど背負えない」",
"501001021_25": "「そんな大層なこと、考えちゃいないんだ。\\n けど……あたしたちには、胸の歌がある。シンフォギアがある」",
"501001021_26": "「……おかしいよな。",
"501001021_27": " けどさ、突き動かされるんだ」",
"501001021_28": "「目の前で、誰かが泣いていたら……。\\n 思っちまうんだよ、――助けたい、ってさ」",
"501001021_29": "「ああ。\\n つ、世界つを背負うには、この身はまだまだ未熟」",
"501001021_30": "「それでもわたしは、\\n 己の防人としての信念のために戦うと決めている」",
"501001021_31": "「わたしも、己の正義を全うすることに手一杯で、\\n 世界をどうこう、なんてこと……今はもう、考えられないわ」",
"501001021_32": "「話は聞かせてもらったデースッ!」",
"501001021_33": "「切ちゃん、\\n 医務室なんだから、そんな大声はダメ」",
"501001021_34": "「ハッ! ごめんデスッ!",
"501001021_35": " でも、言っておかなきゃいけないことがあるんデスッ!」",
"501001021_36": "「……わたしたちに?」",
"501001021_37": "「アタシも、最初にOTHERSの人たちに襲われた時は驚いたし、\\n 一度でも戦えなくなったことはすっごく悔しかったデスッ」",
"501001021_38": "「でも……『仲良し2人』がケンカしているのを見るのは、\\n それ以上に嫌だったデスよッ」",
"501001021_39": "「だから、それとこれとは別ッ!\\n そういうことにして、助けに行ったんデスよッ」",
"501001021_40": "「そりゃあ、世界が全部ハッピーになれば、\\n それに越したことはないデスけど……」",
"501001021_41": "「戦ってる時に、\\n そんなこと考えていられないデスからね」",
"501001021_42": "「……わかる?\\n 人とも」",
"501001021_43": "「……わたしたちは、誰のためでもない。自分のために。\\n 自分が護りたいもののために……戦っている」",
"501001021_44": "「…………自分が、」",
"501001021_45": "「……護りたい、もの……」",
"501001021_46": "「別に、すぐに飲み込めというつもりはないわ。\\n 『英雄』には、理解しづらい話かもしれないから」",
"501001021_47": "「でも、そういう考えもあるということを、\\n あなたたちには知っておいて欲しいの」",
"501001021_48": "(恨んだり憎んだりすることよりも、\\n 今できることは、ここにある――",
"501001021_49": "(――これでいいのよね、\\n セレナ",
"501001021_50": "「…………」"
}

View file

@ -0,0 +1,34 @@
{
"501001031_0": "「改めまして……、捕虜という立場にありながらの勝手な行動、\\n 申し訳ありませんでした」",
"501001031_1": "「以後は、共同戦線の盟約通り、\\n そちらの指示に全面的に従うことを約束します」",
"501001031_2": "「それと――、\\n 亜空間への救援、ありがとうございました」",
"501001031_3": "「…………」",
"501001031_4": "「我々の敵は、ベアトリーチェです。\\n 彼女を倒すためには、より多くの戦力が必要となります」",
"501001031_5": "「以後の作戦において、\\n 活躍を期待します」",
"501001031_6": "「はい」",
"501001031_7": "「……1つ、\\n こちらから提案したいことがあるのですが」",
"501001031_8": "「なんでしょうか?」",
"501001031_9": "「現状、起動済みのドッペルゲンガーは、\\n わたしたちの制御外にあるという話を以前にしました」",
"501001031_10": "「しかし、ベアトリーチェに対応しなければならない現状、\\n ドッペルゲンガーの存在は、各世界で障害となっています」",
"501001031_11": "「そこで、作戦行動を停止しているOTHERSの兵を動かし、\\n それらドッペルゲンガーの鎮圧を行おうかと……」",
"501001031_12": "「そんなことが可能なのッ!?",
"501001031_13": " いえ、可能と言えばもちろんそうなんでしょうけど……」",
"501001031_14": "「何しろ、ドッペルゲンガーを\\n 仕掛けてきたのはOTHERSなわけですからね……」",
"501001031_15": "「……あたしたちは、\\n どうしたって、この世界群の『敵』だ」",
"501001031_16": "「だけど、だからこそ、今大事なのは、\\n 目の前の強敵に対応することだ」",
"501001031_17": "「『見放された世界』を救うためには、\\n 今できることを全てしなければならない」",
"501001031_18": "「だからこそ――、\\n その過程を阻むものがあれば、あたしたちは……」",
"501001031_19": "「優先順位は、\\n 二度と、間違えないつもりです」",
"501001031_20": "「……こちらとしては、\\n その提案を蹴る理由はありません」",
"501001031_21": "「ドッペルゲンガーへの対応が軽くなるのであれば、\\n 並行世界で戦っている皆さんの負担も減るでしょうから」",
"501001031_22": "「けど……あんたたちはそれでいいとして、\\n 部下の人たちは、本当にそれで納得するのか」",
"501001031_23": "「ずっと悲願だった計画に反する行動だなんて。\\n もしも反旗など翻されたら……」",
"501001031_24": "「問題ない。……本当に、あたしたちの命令は、\\n あっけないくらいに通るだろうさ」",
"501001031_25": "「何しろ、あたしたちは――、\\n 『見放された世界』の英雄なんだからな」",
"501001031_26": "(……無茶な命令を通せるのは、\\n 盲信にも近い信頼関係があってこそ",
"501001031_27": "(それほどに、彼女たちが名乗る『英雄』という名は、\\n 重いものということですか……",
"501001031_28": "「……とはいえ、各並行世界群において、\\n 情報の行き違いが起こっては元も子もありません」",
"501001031_29": "「同じく鎮圧を目的としているのに、\\n 下手にかち合うことは時間の無駄です」",
"501001031_30": "「ですので、そちらの情報網を使って、\\n 各世界に伝達をしてもらえますでしょうか」",
"501001031_31": "「そうですね。 \\n スクルドやAPPLEの皆さんに至急連絡しましょう」"
}

View file

@ -0,0 +1,86 @@
{
"501001041_0": "「――しかし、ドッペルゲンガーを全て鎮圧するのに、\\n OTHERSの兵だけでは足りないでしょう」",
"501001041_1": "「そうだな。\\n わたしたちも一刻も早く、鎮圧に向かわねば」",
"501001041_2": "「いえ、ここは任せてください。\\n わたしと、ヨウに」",
"501001041_3": "「ああ。\\n 共同戦線を張り直したのなら、それを示す必要もある」",
"501001041_4": "「しかし、\\n それでは――」",
"501001041_5": "「あなたたち装者は、\\n 今は休息に努めるべきでしょう」",
"501001041_6": "「ベアトリーチェは、\\n <ruby=ファム・ファタール>立花響</ruby>の傷が癒える頃に現れると言っていました」",
"501001041_7": "「そして、<ruby=ファム・ファタール>立花響</ruby>は、\\n まだ目覚めていません――」",
"501001041_8": "「ならば、逆説的に考えて、\\n 今この瞬間にベアトリーチェが現れることはありません」",
"501001041_9": "「そうだな。ここはあたしたちに任せて、\\n そっちはベアトリーチェの襲来に備えるべきだ」",
"501001041_10": "「もし、こちらが信用できないと言うのなら、\\n 監視を付けていただいて構わないのですが……」",
"501001041_11": "「……今の2人なら、監視なんて付けなくたって平気だよ。",
"501001041_12": " ただ、2人だけだと無理しすぎないか心配で……」",
"501001041_13": "「そういうことなら、\\n あたしたちにお任せくださいッ」",
"501001041_14": "「邪魔するぜ」",
"501001041_15": "「明日香ちゃんッ!?」",
"501001041_16": "「出たな、世界観の違うおっさん。\\n あんたの身体で、医務室になんの用だ」",
"501001041_17": "「別に、\\n 怪我を治しに来たわけじゃねぇよ」",
"501001041_18": "「ここを襲った襲撃者がいると聞いたんでな。\\n 発、ぶちのめしてやろうと来たんだが――」",
"501001041_19": "「――ッ!?」",
"501001041_20": "「師範ッ!\\n そんなことしてる場合じゃないって言いましたよねッ」",
"501001041_21": "「……ったく、ピーピーとうるせぇな。",
"501001041_22": " 俺だって、ケンカを売る時と場所くらい、わきまえてるよ」",
"501001041_23": "「本当ですかぁ……?」",
"501001041_24": "「……聞いたぜ。\\n あの妙な敵を倒しに行くんだろ」",
"501001041_25": "「前回は不覚を取っちまったからな。\\n リベンジと行かせてもらうぞ」",
"501001041_26": "「そういうことで、あたしと師範でなんとかしますッ!\\n だから、みなさんは休んでいてくださいッ」",
"501001041_27": "「響さんの分まで、\\n 頑張ってみせますのでッ」",
"501001041_28": "「それは……」",
"501001041_29": "「いや、この局面だ、有り難い。\\n すまないが……頼めるか」",
"501001041_30": "「はいッ!\\n お任せくださいッ」",
"501001041_31": "「不肖、水流明日香ッ!\\n オケアスキックやパンチ、ぶちかまして参りますッ」",
"501001041_32": "「<size=25>……あの男は、\\n 戦力として数えていいのか</size>」",
"501001041_33": "(……あの子の方は、\\n 聖遺物オケアスの使い手だと観測記録で見たけれど……",
"501001041_34": "(さすがに、装者でも、組織所属でもない人間まで、\\n 詳細を確認をする余裕はなかった――",
"501001041_35": "(正確に言えば、内容があまりにもバカバカしすぎて、\\n エラーと判断し、それ以上の調査は切り上げたんだが……",
"501001041_36": "「ええ、\\n 実力は保証するわ」",
"501001041_37": "「とはいえ、彼女たちを入れても、まだ4人。\\n やはり、装者から何人か――」",
"501001041_38": "「――待ちな。\\n その戦い、アタシらも噛ませてもらおうか」",
"501001041_39": "「環さんッ!?\\n 本部の復旧作業を行っているとお聞きしましたが……」",
"501001041_40": "「ああ。\\n そっちの方は、一区切りついたところなんだが――」",
"501001041_41": "「少しでも、アンタらを休ませてやりたいと、\\n ここの司令代行から頼まれてね」",
"501001041_42": "「だったらアタシらの出番だろう。\\n 目の前の戦闘はこっちに任せて、この先の決戦に備えてな」",
"501001041_43": "「……はい。\\n お心遣い、痛み入ります……ッ」",
"501001041_44": "「――ほう。\\n なかなか楽しめそうなやつが来たな」",
"501001041_45": "「ああん? なんだい、このオッサン。\\n <ruby=や>戦</ruby>るってんなら、相手になろうか?」",
"501001041_46": "「話が早くていいじゃねぇか。\\n それじゃあ早速――」",
"501001041_47": "「だから、ストップですってッ!\\n オトナの人たちが揉めてどうするんですかッ」",
"501001041_48": "「人々の平和を脅かすものこそ、本当の敵ッ!\\n みんなで力を合わせて戦いましょうッ」",
"501001041_49": "「……まあ、道理だな。",
"501001041_50": " 勝負は、化け物退治の数で決めるってのはどうだい?」",
"501001041_51": "「いいぜ。\\n スコア勝負なら負ける気がしねぇけどな」",
"501001041_52": "「……戦力は揃ったみたいね。\\n 協力して対応をお願いするわ」",
"501001041_53": "「わかりました。",
"501001041_54": " 行きましょう、ヨウ」",
"501001041_55": "「了解だ。",
"501001041_56": " ……さっさと済ませよう、キョウ」",
"501001041_57": "「この拳……食らいなさいッ!!」",
"501001041_58": "「邪魔だぁぁぁッ!!」",
"501001041_59": "「まさか、カルマノイズまで\\n 湧いて出て来るなんてッ」",
"501001041_60": "(予想よりも数が多い――ッ!\\n だが、弱音など吐いていられるかッ",
"501001041_61": "「――終わりだッ!!」",
"501001041_62": "「ヨウ、後ろッ!!」",
"501001041_63": "「――ッ!?」",
"501001041_64": "「しま――ッ!?」",
"501001041_65": "「ヨウッ!?」",
"501001041_66": "「――お前はッ!?」",
"501001041_67": "「そこです――ッ!!」",
"501001041_68": "「なんとか間に合いましたね。\\n 人とも、無事ですか」",
"501001041_69": "「助けてくれたことには感謝する。",
"501001041_70": " だが――」",
"501001041_71": "「お前は、組織を率いる立場だろうッ!? \\n 何故ここに来たッ」",
"501001041_72": "「確かに、僕の立場からすれば、\\n 不合理と見えるかもしれません。しかし――」",
"501001041_73": "「僕の知る、本物の司令ならば……全てを、\\n 装者の皆さんに押しつけるようなことはしません」",
"501001041_74": "「たとえ、最終的な決着を、\\n 彼女たちに任せなければならないとしても――」",
"501001041_75": "「そこに至るまでの道を切り開くことこそが、\\n 大人の役割だと、そう言うはず――ッ」",
"501001041_76": "「あなたたちの動きは拝見しました。\\n ……懸命に戦っているところをね」",
"501001041_77": "「そんなあなたたちだからこそ、\\n 僕は、信頼に値すると思います。ですから――」",
"501001041_78": "「今は協力して、事態に当たりましょう。\\n それが、あと少しの間だけであったとしても……」",
"501001041_79": "「…………」",
"501001041_80": "「……ヨウ、\\n 大丈夫」",
"501001041_81": "「――うん、大丈夫。\\n もう、負けてなんかいられないから」",
"501001041_82": "「そうだね。\\n 戦おう。……今までと同じように、戦い続けるんだ」",
"501001041_83": "「うん。あたしたちは、\\n 英雄として、その先に行かないと――いけないんだ」"
}

View file

@ -0,0 +1,35 @@
{
"501001042_0": "「――<ruby=ファム・ファタール>立花響</ruby>は、\\n まだ目覚めないのですか」",
"501001042_1": "「彼女なくして、\\n ベアトリーチェ打倒はあり得ないでしょう」",
"501001042_2": "「そうだな。\\n 前に戦った時も、決着をつけたのはあいつだ」",
"501001042_3": "「しかし正直、容態はあまり芳しくない。\\n あの世界での、S2CAの負担がここに来て響いている」",
"501001042_4": "「傷は十分に癒えているはずだが、\\n まだ目は覚ましていない」",
"501001042_5": "「元はと言えば、わたしたちのせいで、\\n この状況を招いてしまった……」",
"501001042_6": "「だからこそ、復活してもらわなくては。\\n ベアトリーチェと、そしてわたしたちとの決着がつきません」",
"501001042_7": "「うん……。\\n でも、今のままじゃ……響……」",
"501001042_8": "「1つ……、\\n 方法があります」",
"501001042_9": "「……え?」",
"501001042_10": "「あたしたちが、\\n この世界にばらまいた『<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>』の力を使うんだ」",
"501001042_11": "「あの中には、紛い物とはいえ癒やしの力を持つ、\\n 『アスクレピオスの杖』があります」",
"501001042_12": "「あれを軸に、<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>全ての力を束ねれば……\\n <ruby=ファム・ファタール>立花響</ruby>を癒やすくらいならば、可能かと」",
"501001042_13": "「それッ!\\n ボクにも手伝わせてくださいッ」",
"501001042_14": "「ボクは、『<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>』に仕組まれた罠を見抜けずに、\\n 大きな失敗をしてしまいました」",
"501001042_15": "「あの時の失敗を2度と繰り返さないように、\\n みなさんがいない間も、ずっと研究を続けていたんです」",
"501001042_16": "「その成果を見せるのは、今しかありませんッ!\\n お願いですッ ボクにできることを、したいんですッ」",
"501001042_17": "(……この世界の人たちは、\\n 本当に馬鹿みたいに、光に手を伸ばし続けている……",
"501001042_18": "(まったく……。\\n どいつもこいつも、嫌になりますよ",
"501001042_19": "(…………。\\n でも、本当に嫌なのは……",
"501001042_20": "「……わかりました。\\n 一緒にやりましょう」",
"501001042_21": "「ありがとうございますッ!!」",
"501001042_22": "「それじゃあ早速、\\n 『アスクレピオスの杖』を起動しよう」",
"501001042_23": "「はいッ!\\n 保管してある場所にご案内しますねッ」",
"501001042_24": "「ん、ん……?」",
"501001042_25": "「……わたし……\\n ああ、そうか……戻ってこられたんだ……」",
"501001042_26": "「そしてこれから、わたしは――……」",
"501001042_27": "「ありがとう、キョウちゃん、ヨウちゃん、エルフナインちゃん。\\n 人の想いも、しっかり届いてたよ」",
"501001042_28": "「響さん……」",
"501001042_29": "「そんなことは……どうだっていいんです。\\n わたしたちは戦いに引き戻すために、あなたを癒し、呼び起こした」",
"501001042_30": "「起きて早々に悪いが……\\n 戦いは、きっとすぐに始まるぞ」",
"501001042_31": "「うん……。\\n わかってる」",
"501001042_32": "「ついに、来たんだね。\\n その時が……」"
}

View file

@ -0,0 +1,61 @@
{
"501001111_0": "届かせる想い",
"501001111_1": "「ご報告いたしますッ!!」",
"501001111_2": "「キョウ様のご命令通り、\\n ドッペルゲンガーの鎮圧は順調に進んでおりますッ」",
"501001111_3": "「必ず、作戦は成功させてみせますッ!\\n キョウ様、ヨウ様もお気を付けくださいッ」",
"501001111_4": "「すべては、\\n 『見放された世界』のためにッ」",
"501001111_5": "「……ええ、あなたたちの献身、無駄にはしません。\\n すべては、『見放された世界』のために」",
"501001111_6": "「――お聞きの通り、各並行世界群において、\\n ドッペルゲンガーは全て鎮圧されつつあります」",
"501001111_7": "「だが、カオスビーストやカルマノイズは、\\n 今なお出現し続けている」",
"501001111_8": "「この『ギャラルホルン』世界へ救援に来るほどの、\\n 余裕はないと見るべきだろうな……」",
"501001111_9": "(しかし、どの並行世界群も、\\n どこも陥落することなく、持ちこたえていたとは……",
"501001111_10": "(並行世界群の力をなめていたわけではない。けど……\\n あたしたちの見通しが甘かったとしか言いようがないな",
"501001111_11": "「他の並行世界のみんなも、頑張ってるんだ……ッ!\\n わたしたちは、この世界でできることをやろうッ」",
"501001111_12": "「ここで負けたら、みんなの頑張りも無意味になる。\\n 絶対に切り抜けないと……」",
"501001111_13": "「いつものことデスッ!\\n アタシたちなら、きっとできるはずデスッ」",
"501001111_14": "「緒川さんたちも、\\n 全力で対応にあたってくれている」",
"501001111_15": "「政府との連携に、諸外国の情勢の把握。\\n そして、各並行世界との情報共有」",
"501001111_16": "「全員が必死になって、\\n わたしたちが戦う舞台を整えてくれているわ」",
"501001111_17": "「その期待に、\\n しっかり応えないといけないわね」",
"501001111_18": "「みなさんのギアの最終調整、\\n 完了しましたッ」",
"501001111_19": "「アマルガム・キーパー、そしてシードギアに関しては、\\n もう少しギリギリまで見たかったのですが……」",
"501001111_20": "「ボク自身の出撃準備もあるので、\\n ごめんなさい」",
"501001111_21": "「なに、あとはぶっつけ本番でなんとかするさ。\\n これまでも、そうして来たんだからな」",
"501001111_22": "「それに……お前の本分は銃後の護りだろ?\\n 期待してるぞ」",
"501001111_23": "「はいッ!」",
"501001111_24": "「なんとかする、なんて……\\n そんな行き当たりばったりで、本当に大丈夫なのか」",
"501001111_25": "「……ううん、この人たちのこういう土壇場での覚醒に、\\n わたしたちはいつも悩まされてきました」",
"501001111_26": "「それが今だけは味方にいる……。\\n 頼りにさせてもらいましょう」",
"501001111_27": "「うん、任せてッ!」",
"501001111_28": "「――そうだッ! キョウちゃんとヨウちゃんに、\\n 言わなきゃいけないことがあったんだッ」",
"501001111_29": "「……言わなきゃいけないこと?」",
"501001111_30": "「うんッ!\\n わたしを起こしてくれてありがとうッ」",
"501001111_31": "「――ッ!?」",
"501001111_32": "「わ、わたしたちの手なんて、握ったって……ッ!」",
"501001111_33": "「あたしたちは、握り返せない。\\n ……やめてくれ」",
"501001111_34": "「ううん、やめない。\\n 絶対にッ」",
"501001111_35": "「――ッ!」",
"501001111_36": "「まだ、2人が、とった手を握り返してくれなくても。\\n それでも、こうして手が届いたことが嬉しいんだッ」",
"501001111_37": "「だから――、\\n ありがとうッ」",
"501001111_38": "「…………」",
"501001111_39": "「……あたしたちは、必要だからそうしたまでのこと。\\n お前が戦えないようでは、戦力的に厳しいからな」",
"501001111_40": "「……ええ、それだけです。",
"501001111_41": " ですから……期待していますよ、<ruby=ファム・ファタール>立花響</ruby>」",
"501001111_42": "「うんッ!」",
"501001111_43": "「きゃあッ!?",
"501001111_44": " ゆ、揺れて……ッ!」",
"501001111_45": "「本部上空に、\\n 極めて高密度のエネルギー反応を確認ッ」",
"501001111_46": "「世界蛇――ベアトリーチェが、\\n 出現しますッ」",
"501001111_47": "「――ついに、この瞬間が来ましたか」",
"501001111_48": "「我々S.O.N.G.と、スクルド、APPLE。\\n そして、並行世界の仲間たちと、OTHERS……」",
"501001111_49": "「多くの人々の行動により、\\n ここまでは漕ぎ着けました」",
"501001111_50": "「しかし……、\\n これより先は、皆さんの力が頼りです」",
"501001111_51": "「バックアップは全力で行いますッ!\\n 世界蛇及びベアトリーチェの撃破、お願いしますッ」",
"501001111_52": "「はい(デース)ッ!!!!」",
"501001111_53": "「みんな――、\\n 行こうッ」",
"501001111_54": "「長かった戦いを、\\n ここで終わらせるんだッ」",
"501001111_55": "「ベアトリーチェは、どこに――」",
"501001111_56": "「見えたッ!\\n 空の上だ――ッ」",
"501001111_57": "「ああ、良かった。本当に良かったわ。\\n 響……元気になったみたいね」",
"501001111_58": "「ベアトリーチェ……」"
}

View file

@ -0,0 +1,48 @@
{
"501001121_0": "「……ベアトリーチェ」",
"501001121_1": "「響だけじゃなく……ちゃんと揃っているようね。\\n 嬉しいわ」",
"501001121_2": "「あの男――石屋恭二は、\\n 今日は連れていないのか」",
"501001121_3": "「石屋?",
"501001121_4": " ……ええ、『石屋』は、いないわよ」",
"501001121_5": "(……なんだ、今の反応は?)",
"501001121_6": "「それにしても、\\n よくぞここまで、立派に育ってくれたわ」",
"501001121_7": "「別に……、\\n お前のために育ったつもりはねえよ」",
"501001121_8": "「フフ、伝わってくるわ。\\n 心地良い敵意が……」",
"501001121_9": "「ただ――、\\n 少しだけ残念なのは……」",
"501001121_10": "「待ちに待った晩餐会。\\n わたしは、美味しいものだけを食べたいのだけれど」",
"501001121_11": "「――ッ!?」",
"501001121_12": "「貴様……ッ!」",
"501001121_13": "「こんな弱い奴らと一緒で、本気が出せるの?\\n そうしてくれないと、困るのだけど」",
"501001121_14": "「キョウちゃんもヨウちゃんも、\\n 弱くなんてないッ」",
"501001121_15": "「2人は、ずっとずっと、\\n 大切なもののために戦ってきたんだッ」",
"501001121_16": "「そうね。それに、この場に立っている以上は、1人の戦士。\\n 弱い強いで、戦う資格は決まらないッ」",
"501001121_17": "「あら――庇い立てるじゃない。\\n 敵同士だったはずなのに、情でも湧いたのかしら」",
"501001121_18": "「この2人の揺れを、迷いを弱さと呼ぶのなら……\\n それは、可能性に他ならない」",
"501001121_19": "「お前が、弱さと蔑んだものに、幾度破れたか。\\n 忘れたとは言わせん」",
"501001121_20": "「フフ……。\\n ええ、それもそうね」",
"501001121_21": "「……それを認めるなんて、殊勝だね」",
"501001121_22": "「自分が弱いって、そう気付いた時に、\\n 人は初めて手を取り合えるんデスッ」",
"501001121_23": "「1人じゃできないことでも、\\n みんなで繋がれば、なんだってできるんデスよッ」",
"501001121_24": "「お前は確かに、相変わらず……\\n 簡単に世界を滅ぼせるほどに強いんだろうさ」",
"501001121_25": "「だけど、強くなることで、\\n 人の痛みを忘れてしまうってんなら――」",
"501001121_26": "「あたしたちは弱いままでいい。\\n 弱いまま、ずっと遠くの<ruby=みらい>未来</ruby>まで……この意志を繋いでやるッ!」",
"501001121_27": "「知らない誰かのために、明日を繋いで――、\\n 知らない誰かに、希望を繋いでみせるッ」",
"501001121_28": "「フフ、言ってくれるじゃない。",
"501001121_29": " わたしが、人の痛みを忘れた……ですって?」",
"501001121_30": "「馬鹿を言わないで。\\n わたしは、誰よりも『それ』を理解しているのよ」",
"501001121_31": "「だからこそ。\\n 誰かの心の痛みを貪り、悪辣を喰らうのが――愉しいんじゃない」",
"501001121_32": "「そんな悲しいこと、\\n どうして手放せないの……ッ」",
"501001121_33": "「同じ言葉を話しているのに、\\n こんなに遠いなんて……」",
"501001121_34": "「まったく、もう……それはわたしの台詞よ。\\n 本当に――わからない子たちなんだから」",
"501001121_35": "「あなたたちがどう思おうとも、\\n わたしは、こういう風にできているの」",
"501001121_36": "「やめるつもりなんて、さらさらないわ。\\n わたしは心から、<ruby=わたし>悪意</ruby>であることを愉しんでいるのよ」",
"501001121_37": "「これが、ベアトリーチェ。\\n 悪意の化身――世界蛇の巫女」",
"501001121_38": "「さあ――わたしに見せなさい、希望の担い手たちよ。\\n あなたたちが、わたしに何を以て応えるのか……ッ」",
"501001121_39": "「……」",
"501001121_40": "「……わたしたちは、唄うよ。\\n この胸の歌を」",
"501001121_41": "「あなたが、永劫の悪意で人の心を喰らうというのなら。\\n わたしたちは、何度だって唄い続けるッ」",
"501001121_42": "「かつてあなたと戦った人たちが、\\n 脈々と継いできたように」",
"501001121_43": "「この世界には、悪意だけではなく、\\n 希望を唄う誰かが必ずいるってことをッ」",
"501001121_44": "「繋いで、繋いで……<ruby=悪意>あなた</ruby>に届け続けてみせるッ!!\\n それがあなただというのなら――ベアトリーチェッッ」",
"501001121_45": "「相容れなくても、せめて――\\n あなたに、この手が、届くまでッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,28 @@
{
"501001211_0": "『世界蛇の巫女ベアトリーチェ』",
"501001211_1": "「ベアトリーチェ、\\n あなたに言われていたことを、ずっと考えていたんだ」",
"501001211_2": "「ふぅん?」",
"501001211_3": "「死んだ誰かを生き返らせることなんてできないのと、\\n 同じくらいに――」",
"501001211_4": "「あなたが、どうしようもなく、\\n 『悪意』で在ろうとするのは、やっぱり、わたしは悲しいよ」",
"501001211_5": "「…………」",
"501001211_6": "「けど……わたしは、その悲しみを抱いてこそ、\\n ベアトリーチェと向き合い続けることができるんだ……」",
"501001211_7": "「誰かと向き合うっていうことは、\\n 受け止めるっていうこと」",
"501001211_8": "「誰にだってある、自分が自分であるために必要な、\\n 絶対に、譲れないこと……」",
"501001211_9": "「それは、自分の気持ちを折ってまで、\\n 誰かに明け渡していいものじゃない」",
"501001211_10": "「だから、\\n 本当に悲しいけれど……」",
"501001211_11": "「悪意が……愉しい。\\n それが、ベアトリーチェの本当の気持ちなんだね」",
"501001211_12": "「ええ、そうよ。\\n ようやく……わかってくれたみたいね」",
"501001211_13": "「たとえ、わたしの始まりに、どんな理由があったとしても。\\n 今のわたしは、<ruby=わたし>悪意</ruby>を愉しんでいる」",
"501001211_14": "「今も、愉しくて愉しくて、\\n あなたの表情を歪めるのが、幸せで仕方がないわッ」",
"501001211_15": "「もしも、わたしたちがわかり合えることがあるとしたら。\\n それは、ただの点のみ」",
"501001211_16": "「<ruby=わたし>悪意</ruby>と<ruby=あなた>希望</ruby>――、\\n お互いに、譲れない<ruby=想い>意思</ruby>があるという、それだけよね」",
"501001211_17": "「うん。\\n でも、きっと、それで十分なんだ」",
"501001211_18": "「ええ、そうね。\\n その通りよ」",
"501001211_19": "「ごめんね。\\n これだけのことが、こんなに遅くなって」",
"501001211_20": "「――いいのよ。\\n 待った甲斐があったというものだわ」",
"501001211_21": "「わたし、全力で戦う。全力で……唄うよ。\\n それこそがあなたにとって、わたしが手を伸ばすということッ」",
"501001211_22": "「あなたが、みんなの心に、\\n 悲しい想い出を刻むというのなら――ッ」",
"501001211_23": "「わたしは必ず、それを止めるッ!\\n この、胸の歌でッッ」",
"501001211_24": "「ええ、来なさいッ!\\n あなたの想い、歌、その全てを――」",
"501001211_25": "「世界蛇の巫女、ベアトリーチェとッ!\\n 世界蛇ヨルムンガンドが、受け止めてあげるッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,121 @@
{
"501001221_0": "「くらえぇぇぇぇ――ッ!!」",
"501001221_1": "「隙を与えるなッ!\\n 続くぞッ」",
"501001221_2": "「ええッ!\\n 畳み掛けるッ」",
"501001221_3": "「邪魔ねッ!\\n それなら、こっちも同時に――」",
"501001221_4": "「――――」",
"501001221_5": "「させないッ!」",
"501001221_6": "「連携だったら、\\n アタシたちだって負けてないデスッ」",
"501001221_7": "「数の上では勝っていてもッ!」",
"501001221_8": "「相手は世界蛇とベアトリーチェ……\\n それぞれが、あまりにも強いッ」",
"501001221_9": "「それなら――せめて連携されないよう、\\n 波状攻撃を仕掛けるまでッ」",
"501001221_10": "「――ッ!?\\n エルフナインちゃんッ」",
"501001221_11": "「ボクのこの力だって、\\n みなさんを護るために発現した力ッ」",
"501001221_12": "「だから……一緒に戦わせてくださいッ!!\\n この想い、<ruby=悪意>あの人</ruby>に、届けてみせますッ!!」",
"501001221_13": "「――もちろんッ!!」",
"501001221_14": "「フフ。\\n ならば、その希望、塗りつぶしてあげる――」",
"501001221_15": "「おいで、ヨルムンガンド……。\\n こっちにいらっしゃい」",
"501001221_16": "「1ヶ所にまとまったなッ!?\\n それなら、まとめてお陀仏だ――ッ」",
"501001221_17": "「あたしの狙撃から、逃げられると思うなよッ!!!」",
"501001221_18": "「くぅぅ……ッ!?",
"501001221_19": " ――いいじゃない、素晴らしいわッ!」",
"501001221_20": "「素敵よ、あなたたちッ!\\n 漲る殺意が、わたしを更に昂らせてくれるッ」",
"501001221_21": "「希望を謳いながら、悪意に身を焦がすその矛盾ッ!\\n わたしにとっては、たまらなく愛おしいッ」",
"501001221_22": "「違うッ!\\n これは殺意でも悪意でもないッ」",
"501001221_23": "「これは、あなたに届き続けるための希望ッ!!\\n この世界を……ッ」",
"501001221_24": "「あなたひとりだけに……\\n 悪意だけに、させるもんか――ッッ」",
"501001221_25": "「くぅ……ッ!?」",
"501001221_26": "「調ッ!?\\n 大丈夫デスかッ」",
"501001221_27": "(……戦いが始まってから、\\n どのくらい経ったのかしら――",
"501001221_28": "(5時間? 10時間?\\n とうに陽は落ち、帳が下りている",
"501001221_29": "(限界は、とうに越えているはず。",
"501001221_30": " ――フフ、もちろんそれは、わたしだって同じ)",
"501001221_31": "(手を抜くだなんて、もったいないことはしない。",
"501001221_32": " だからこそ……ああ、なんて満たされるッ!!)",
"501001221_33": "「……うん、平気。\\n だから、もっと人で攻めていこうッ」",
"501001221_34": "「了解デスッ!\\n 調がその気なら、アタシだって無限に頑張れるデスよッ」",
"501001221_35": "「この程度で挫けていたら、\\n ここまで支えてくれたみんなに、合わせる顔がないもんね」",
"501001221_36": "(どう見ても、誰もが満身創痍。\\n とても立ち上がれるような様子には見えない",
"501001221_37": "(だけれども、\\n 人、瞳の奥にある光は、消えていない",
"501001221_38": "「……ここで我々が敗れれば、\\n 後ろにいる多くの人々が傷付く」",
"501001221_39": "「なればこそッ!\\n 防人の名にかけて、歩たりとも退きはしないッ」",
"501001221_40": "「わたしたちが力を持つのは、\\n 力を持たぬ人々を護るためッ」",
"501001221_41": "「その意志は潰えないッ!\\n 最後まで、悪意に抗い続けてみせるわッ」",
"501001221_42": "「翼、今よッ!!\\n 飛びなさいッ」",
"501001221_43": "「心得たッ!!\\n 友の声を風に、羽ばたくわたしの<ruby=つばさ>剣</ruby>――御覧じろッッ!!」",
"501001221_44": "「ぐ……ッ!!\\n あぁあああああ――ッ」",
"501001221_45": "(わたしと、この子で、\\n これまで多くの世界を平らげてきた",
"501001221_46": "(もちろん抵抗されることはあった。\\n だから、その抵抗ごと、磨り潰して滅ぼしてきた",
"501001221_47": "(今回も、今までと同じだと思っていた。\\n だけどわたしは、一度負けた――",
"501001221_48": "「まだですッ!\\n ボクだってまだ、戦えますッ」",
"501001221_49": "「戦う力を持たなかったボクが、\\n 数奇な運命を経て、こうして力を手に入れたのは――」",
"501001221_50": "「今、みなさんと一緒にッ!\\n こうして肩を並べるためだと、そう信じますッ」",
"501001221_51": "「そうだよね。\\n 戦う誰かを、遠くから見ているだけなのは、辛いもの」",
"501001221_52": "「望んで手に入れた力じゃなかったとしても、\\n それでも、戦場で隣にいられることは、わたしの望みッ」",
"501001221_53": "「護られるばかりじゃない自分であるためにッ!\\n わたしは、ここに立ち続けるッ」",
"501001221_54": "(ミーナさん。\\n あなたの想いも、無駄になんかしない――ッ",
"501001221_55": "「1度負けたわたしに、慢心はない――\\n けれど、だからこそ、<ruby=あなた>希望</ruby>たちと、真っ向にぶつかりたかった」",
"501001221_56": "「……不思議ね、どうしてかしら?\\n あなたたちも、ずっと真っ向から、わたしに向かってきてくれる」",
"501001221_57": "「ハッ! そんなこと、わかるもんか。\\n お前の攻撃のおかげで、こちとら、考える暇もねぇ」",
"501001221_58": "「ただな、どいつもこいつも……、\\n 命を張って、お前に本気でぶつかってんだッ」",
"501001221_59": "「先輩として、あたしがここで、\\n 情けないところを見せるわけにはいかないだろうがッ」",
"501001221_60": "「ぐ、ぅ――ッ!!!\\n まさか、押されているッ」",
"501001221_61": "「あらゆる負の感情を身に纏った、\\n このわたしがッ」",
"501001221_62": "「フ――フフフッ!\\n こんな愉しいこと――終わらせてなるものかッッ」",
"501001221_63": "「ああああああ――ッ!?」",
"501001221_64": "「フフ。\\n これで――」",
"501001221_65": "「ああ……\\n まだ、立ってくれるのね。わたしのために……」",
"501001221_66": "「――何故だ」",
"501001221_67": "「何故、お前たちは、\\n そこまで、真っ直ぐに戦える……ッ」",
"501001221_68": "「どれだけ喰らいついても、果てることのない悪意を前に、\\n どうして……誰も、諦めないッ」",
"501001221_69": "「その姿は、まるで、わたしたちが……\\n いつか、本当に目指したかった、英雄のように――」",
"501001221_70": "「……でも、今のわたしたちは、\\n なりたかった英雄から程遠い」",
"501001221_71": "「ただ、目の前の現実に打ちひしがれて。怖くて、竦んで……。\\n 今も、あなたたちみたいにすぐに立ち上がれなくて……」",
"501001221_72": "「そんなことないよ。\\n わたしだって、フラフラだよ」",
"501001221_73": "「どうして戦えるのか……って、\\n そう言ったよね」",
"501001221_74": "「<ruby=ファム・ファタール>立花響</ruby>……」",
"501001221_75": "「それは――、誰のためでもない。\\n 自分たちが、そうしたいと思っているから」",
"501001221_76": "「そうしなきゃって、\\n わたしたちが感じているからッ」",
"501001221_77": "「だから、こんなところで挫けてなんかいられないッ!\\n この想い、伝えるまで、折れるもんかッ」",
"501001221_78": "「最後まで立ち続けてみせるんだッ!\\n それが、わたしの唄う、わたしの歌だッ」",
"501001221_79": "「――だからッ!\\n 負けるもんかあああぁぁぁぁッ」",
"501001221_80": "「この装者たちは、\\n どうしようもないほどに希望を唄う、<ruby=みらい>未来</ruby>の担い手だ」",
"501001221_81": "「あたしたちは、ここで何をしている……?\\n ただ絶望に<ruby=くずお>頽</ruby>れて、うつむいているだけなのか?」",
"501001221_82": "「違う、そんなことは許されない。\\n あたしたちは――英雄になりにきたんだッ」",
"501001221_83": "「そうです……少しでもいいッ! ほんの僅かでもいいッ!\\n わたしたちが、できることッ」",
"501001221_84": "「「何かを成さねば――ッ!\\n  ここより先に、進めるものかッ」」",
"501001221_85": "「――これはッ!?\\n アマルガム・キーパーの力が増しているッ」",
"501001221_86": "「キョウさんとヨウさんが、何かを掲げて……ッ!?\\n まさか、<ruby=アーティファクト>人工聖遺物</ruby>に働きかけてくれたんですかッ!?」",
"501001221_87": "「――いえ、\\n 理由を考えるのは後ですッ ",
"501001221_88": "「ボクですら、\\n これだけの力を引き出せているということは――ッ」",
"501001221_89": "「力が――、\\n ギアの内側から、湧いてくるッ」",
"501001221_90": "「フォニックゲインとは違う、\\n けれど、確かな力……ッ」",
"501001221_91": "「なんだか……。\\n これまでよりも、素直に身体が動かせるような……」",
"501001221_92": "「……きっと、\\n 手を繋げたんデスよ」",
"501001221_93": "「諦めないで、手を伸ばした……。\\n その結果が、返ってきたんデスッ」",
"501001221_94": "「……うん。\\n わたしたちが、そうしてもらったように、だね」",
"501001221_95": "「マリアたちの、あの様子――ッ!",
"501001221_96": " フフ……そうか。あの2人が、やってくれたのか」",
"501001221_97": "「ならば、こちらも負けてはいられないな。\\n ――行けるな 雪音」",
"501001221_98": "「当然だッ!\\n 負けて終わるなんて御免だからなッ」",
"501001221_99": "「悪意の種なんて名前のくせして、\\n こいつも、なかなか頼れるみたいだしな」",
"501001221_100": "「ああ。種が悪意だったとして、\\n 花は如何様にでも咲かせられるものだ」",
"501001221_101": "「水、土、空気……。\\n あらゆるものが、花の育ち方を決めるのだから」",
"501001221_102": "「なればこそ、わたしたちは、\\n 希望の花を咲かせる何かと成ろうッ」",
"501001221_103": "「……そうだな。\\n 始まりが敵だったとしても、最後までそうとは限らない」",
"501001221_104": "「確かな今で、手を繋げているんだったら。\\n そいつは、間違いなくあたしたちの力だッ」",
"501001221_105": "「『見放された世界』とやらの技術が、\\n 装者たちに力を与えて――」",
"501001221_106": "「わたしの植え付けた悪意の種さえ、\\n 別の力となって、わたしに向けられている――」",
"501001221_107": "「何度倒したとしても、決して折れず。\\n 必ず、わたしの前に立ちはだかる――」",
"501001221_108": "「……フフ。\\n こんなに絶望的な展開はないわね」",
"501001221_109": "「だけど、絶望こそはわたしの糧ッ!\\n 絶望を前に、わたしが折れることはないッ」",
"501001221_110": "「最高よッ! 万全以上のお前たちを食い尽くした時こそ、\\n わたしの悪意は完成する――ッ」",
"501001221_111": "「わたしもッ!\\n もう後先など考えたりはしないッ」",
"501001221_112": "「遙か過去から連なる悪意、その全てを重ねて、\\n あなたたちを喰らう力へと変えてあげる――ッ」",
"501001221_113": "「みんなまだ、戦えるよ。\\n だって、そうしたいって想っているから」",
"501001221_114": "「並行世界で出会った、たくさんの人たちも、\\n わたしたちと一緒に戦ってくれている」",
"501001221_115": "「うん。感じるよ。この胸に……響いてくる。\\n 背中を押してくれる、みんなのためにも――」",
"501001221_116": "「わたしたちは振り返らずに、\\n 前だけを見て、ただ進むんだッ」",
"501001221_117": "「終わらせよう。\\n ベアトリーチェ……」",
"501001221_118": "「これが――、\\n 最後の戦いだ――ッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,132 @@
{
"501001222_0": "「――ベアトリーチェッ!!」",
"501001222_1": "「――立花響ッ!」",
"501001222_2": "「――しまったッ!?\\n バランスがッ」",
"501001222_3": "「もらった――ッ!」",
"501001222_4": "「――ぐッ!?\\n やらせる……ものですかッ」",
"501001222_5": "「さすがにキツいな……ッ!\\n だが、耐えてみせるッ」",
"501001222_6": "「キョウちゃんッ!?\\n ヨウちゃんッ」",
"501001222_7": "「あなたたちッ!?\\n 悪意と絶望を前に、折り砕かれていたんじゃなかったの」",
"501001222_8": "「ああ、折れていたさッ!\\n 嫌というほどになッ」",
"501001222_9": "「それでも、あれだけ必死な姿を見せられて……ッ!\\n 折れたままでいるなんて、できないでしょうッ」",
"501001222_10": "「どん底まで堕ちて、なお這い上がることッ!\\n それにかけては、誰にも負ける気はありませんッ」",
"501001222_11": "「食らえッ!\\n この一撃は、あたしたちの覚悟ッ」",
"501001222_12": "「そして――、お前すら目もくれなかった、\\n 『見放された世界』からの、一撃ですッッ」",
"501001222_13": "「お前に届かずとも……\\n こいつにならッ」",
"501001222_14": "「――――ッ!!」",
"501001222_15": "「――ッ!?\\n ヨルムンガンドッ」",
"501001222_16": "「貴様……ッ! 雑兵と侮っていたけれど、\\n ここで喰らい付いてくるかッ」",
"501001222_17": "「怯んだッ!?\\n 今ならッ ベアトリーチェに、届く……ッ」",
"501001222_18": "「――うッ!?」",
"501001222_19": "(そんなッ!?\\n 身体が動かない……ッ",
"501001222_20": "(今までの戦いの反動……?",
"501001222_21": " でも、立ち上がらないと――ッ!)",
"501001222_22": "「バカ……何やってんだ。\\n ここで倒れたら、もう起き上がれねぇぞ」",
"501001222_23": "「ご、ごめん。\\n 肝心な時に……」",
"501001222_24": "「……やっこさんも、\\n いよいよ崖っぷちみたいだな」",
"501001222_25": "「ここにいる全員、さすがに限界だ。",
"501001222_26": " だから、最後に1発、ガツンとぶん殴ってやれよ」",
"501001222_27": "「そこまでは、あたしがどうにか道をつける。\\n 思い切りぶち込んでやれッ」",
"501001222_28": "「――うんッ!\\n お願いッ」",
"501001222_29": "「さあ……ベアトリーチェッ!\\n あたしの全霊を懸けた、とっておきだッ」",
"501001222_30": "「お前が打ち込んだ『悪意の種』から咲いた希望……\\n 余さず食らっていきやがれッッ」",
"501001222_31": "「ぐ、ああああ――ッ!!」",
"501001222_32": "(身体が、もう満足に動かない。\\n 見事に削りきられたわね……",
"501001222_33": "「――――ッ」",
"501001222_34": "(ああ……この子も、そろそろ限界かしら。\\n ……そうよね、ここまで、ずっと必死に<ruby=いきて>戦って</ruby>きたものね……)",
"501001222_35": "(わたしも、気を抜けば倒れてしまいそう。",
"501001222_36": " だけど――)",
"501001222_37": "「これが――ッ」",
"501001222_38": "(この一撃だけは。\\n 逃げずに正面から、受け止めないといけないわ",
"501001222_39": "(わたしと、\\n そしてあの子のために",
"501001222_40": "「わたしの――、\\n わたしたちの、全部だああああぁぁぁぁ――ッ」",
"501001222_41": "「――ッ!\\n う、ううッ……」",
"501001222_42": "「……もう。仕方のない子ね。\\n どうして、泣いているの」",
"501001222_43": "「……どうしてだろう。\\n わかんないな。あなたに、ようやく、手が届いたのに……」",
"501001222_44": "「わかんないけど、\\n どうしてか、涙が出るんだ……」",
"501001222_45": "「フフ……\\n 困った子ね」",
"501001222_46": "「ああ……まあ、いいわ。\\n わたしの負け。完敗よ」",
"501001222_47": "「おかしな気持ちだわ。\\n 完膚無きまでに負けたというのに、どこか、清々しい――」",
"501001222_48": "「ああ……そう。そうだわ。\\n 久しく忘れていた――これこそ……」",
"501001222_49": "「満ち足りたと、いうものね……」",
"501001222_50": "「ここは……」",
"501001222_51": "「――」",
"501001222_52": "「ああ……\\n あなたがわたしを導いたのね」",
"501001222_53": "「何か、最後に言いたいことがあると、\\n そういうことかしら」",
"501001222_54": "「――――」",
"501001222_55": "「……もう、いい?\\n あなたも、おなかいっぱいになったって」",
"501001222_56": "「……そう。\\n 良かったわ」",
"501001222_57": "「ヨルムンガンド、鏡のような、美しいあなた。\\n ……わたしの終点まで、一緒にいてくれて、ありがとう」",
"501001222_58": "「随分、\\n 長い時間が掛かってしまったけれど――」",
"501001222_59": "「わたしも、あなたも。\\n ようやく、満足することができたのね……」",
"501001222_60": "「――――」",
"501001222_61": "「……ああ、もう、逝ってしまうのね。",
"501001222_62": " でも、きっと……またすぐに会えるわ」",
"501001222_63": "「全ての世界の、あらゆるところに。\\n あなたも、わたしも、溶けていくのだから――」",
"501001222_64": "「だって……\\n <ruby=悪意>わたし</ruby>は、どんな場所にだって存在するのだもの……」",
"501001222_65": "「……ベアトリーチェ、\\n これで、最後なんだね」",
"501001222_66": "「ええ……わたしは、これで消える。\\n もう、復活することもないでしょう。けれど――」",
"501001222_67": "「安心しないで、抗い続けなさい。",
"501001222_68": " ……悪意というものは、不滅なのだから」",
"501001222_69": "「……」",
"501001222_70": "「フフ……\\n 譲らないわよ、これだけはッ」",
"501001222_71": "「だって、\\n わたしの悪意は、既に託してある」",
"501001222_72": "「……え?」",
"501001222_73": "「あなたたちが、希望の歌を、\\n <ruby=みらい>未来</ruby>へと繋いでいくように――」",
"501001222_74": "「わたしも、悪意が潰えることのないように、\\n 託して、<ruby=みらい>未来</ruby>へと運んでいくわ」",
"501001222_75": "「託されたものの強さは、\\n あなたたちが、番よく知っているでしょう」",
"501001222_76": "「他でもないあなたたちが。\\n 託されてきた想いをもって、<ruby=悪意>わたし</ruby>を打ち破り続けたのだもの」",
"501001222_77": "「畏れなさい、<ruby=みらい>未来</ruby>を。\\n 永劫尽きることのない、悪意を前にして」",
"501001222_78": "「……畏れるものですか。\\n 何が来ようとも、決して」",
"501001222_79": "「1人では受け止められなくても、\\n 繋いだ手と手が、希望を紡いでいく限り……」",
"501001222_80": "「どんな絶望が降って来たって、\\n 負けるつもりはないデスッ」",
"501001222_81": "「人の積み重ねた知恵は、\\n きっとまた……悪意を越えていきます」",
"501001222_82": "「ここまで意地を通してきたんだ。\\n この先だって、そうするさ」",
"501001222_83": "「わたしたちの……人の戦いは終わらない。\\n 言われずとも、悪意に挑み続けるつもりだ」",
"501001222_84": "「きっと、大変な道だけど。\\n それでも、みんなとなら大丈夫だって信じているから」",
"501001222_85": "「わたしたちは――、\\n <ruby=みらい>未来</ruby>を、畏れたりしないッ!」",
"501001222_86": "「……本当、\\n 最後の最後まで食えない子たちね」",
"501001222_87": "「この希望を喰らおうとしたからこそ、\\n わたしと、あの子は満たされたのね……」",
"501001222_88": "「――そうだ。\\n あなたたちも、悪くなかったわよ」",
"501001222_89": "「…………」",
"501001222_90": "「あなたたちと拳を交わしたおかげで、\\n わたしは、『全ての世界』に干渉する術がわかった……」",
"501001222_91": "「――ッ!?",
"501001222_92": " 貴様、まさかッ!」",
"501001222_93": "「……安心なさい。\\n 今更、『世界』をどうこうしようなんて思っていない」",
"501001222_94": "「もう、わたしの手が届かない世界はない。\\n どれほどに遠い大地であっても、わたしは必ずそこにいる」",
"501001222_95": "「わたしは、永劫潰えることのない悪意として、\\n 全ての世界に溶けていくの」",
"501001222_96": "「あらゆる世界の人間……その最後の1人が、\\n 絶望を抱いて死ぬのかどうか、それを見届けるために、ね」",
"501001222_97": "「……」",
"501001222_98": "「生命としてのカタチを捨て、\\n 世界に遍在する悪意と一体化する」",
"501001222_99": "「そう……。\\n わたしは、全ての悪意の母になるの」",
"501001222_100": "「ベアトリーチェッ!?\\n 身体が消えて――」",
"501001222_101": "「……そうだわ。\\n あなたたちに、最後の贈り物をあげる」",
"501001222_102": "「カルマノイズとカオスビーストは、わたしが連れて逝ってあげる。\\n わたしに勝ったご褒美よ。ありがたく受け取りなさい」",
"501001222_103": "「あの瘴気の塊どもを、消すと……?\\n いとも簡単に言ってくれるな……」",
"501001222_104": "「最後の最後まで、\\n ケタの違いを見せつけてきやがる……」",
"501001222_105": "「カルマノイズが、消える?",
"501001222_106": " でも、それって……」",
"501001222_107": "「あら……フフ、よく気がついたわね。\\n それは決して、あなたたちにとって良いことばかりではないわ」",
"501001222_108": "「かつて、<ruby=わたし>少女</ruby>の祈りを聞かなかった神々が、\\n わたしとあの子から、並行世界を護るために作ったもの――」",
"501001222_109": "「そう。\\n 『ギャラルホルン』は、これでもう動くことはない」",
"501001222_110": "「――ッ!?」",
"501001222_111": "「その励起に、神々ですら『歌』を必要としたなんて、\\n まったく、バカバカしい話よね……」",
"501001222_112": "「だけどまあ、\\n こうして最後に嫌がらせができたのだから、許してあげる」",
"501001222_113": "「ええ、本当に。\\n ――ざまあみなさい」",
"501001222_114": "「ねえ、響?\\n 最初にわたしが負けた時にも言ったでしょう」",
"501001222_115": "「悪意とは――、\\n 人間がいる限り、いつだってそこにあるもの」",
"501001222_116": "「それを、\\n 覚えておきなさい」",
"501001222_117": "「――だとしても。\\n 何度だって、わたしたちは希望を繋いでいくよ」",
"501001222_118": "「確かに、人間の心の奥底には、\\n 悪意の闇があるのかもしれない――」",
"501001222_119": "「でも、そこには同じように、\\n 希望だって、咲いているから」",
"501001222_120": "「わたしたちは、託して、託し続けて、\\n いつまでも悪意に抗い続ける。あなたに、関わり続けるよ」",
"501001222_121": "「何度も躓くかもしれない。だけど、決して――\\n 最後の瞬間まで、それを途絶えさせることはしない」",
"501001222_122": "「そのことを、きっと約束するよ。\\n ……ベアトリーチェ」",
"501001222_123": "「……そう」",
"501001222_124": "「楽しみに、しているわ。\\n 立花響」",
"501001222_125": "「それじゃあ、ね」",
"501001222_126": "(アルヴィース……\\n あとは任、せ――",
"501001222_127": "「……」",
"501001222_128": "「約束するよ。\\n あなたを、いつまでもわたしの想い出に残していく……」",
"501001222_129": "「だから、……おやすみなさい。\\n ……ベルちゃん……」"
}

View file

@ -0,0 +1,120 @@
{
"501001311_0": "End of pray",
"501001311_1": "「――ベアトリーチェは、倒した」",
"501001311_2": "「……でも、\\n まだ終わりじゃないんだよね」",
"501001311_3": "「……ええ。",
"501001311_4": " わたしたちの決着が、まだ……残っています」",
"501001311_5": "「夜も明け、全員が満身創痍。\\n あれだけの戦いを経たのだから無理もないことだ」",
"501001311_6": "「それでも――、\\n あなたたちは、戦おうと言うの」",
"501001311_7": "「当然だ。\\n それこそが、あたしたちの当初からの目的――」",
"501001311_8": "「『見放された世界』を救うための、\\n 戦いなのだから……」",
"501001311_9": "「……」",
"501001311_10": "「でも、\\n こんな決着のつけ方しかないなんて……」",
"501001311_11": "「今更、何を躊躇う。\\n お前たちにだって、戦う理由はあるはずだ」",
"501001311_12": "「戦わなければ、\\n あたしたちは、再びドッペルゲンガーを解き放つッ」",
"501001311_13": "「そうなれば、この『ギャラルホルン』世界だけではなく、\\n 他の並行世界群でも再び戦火が拡がることになるんだぞッ」",
"501001311_14": "「だから……戦え、シンフォギア装者ッ!!\\n あたしたちを……『英雄』のままで、いさせてくれッ」",
"501001311_15": "「そうじゃなきゃ……\\n あたしたちは、何者にもなれやしない……ッ」",
"501001311_16": "「ベアトリーチェは言ってた……。\\n もう、ギャラルホルンは起動しないって……」",
"501001311_17": "「もう他の並行世界のみんなを、\\n 助けに行けないってことデスかッ」",
"501001311_18": "「いえ、並行世界を渡る方法自体は残っています。",
"501001311_19": " ですが、どれも乱用できるものではありません――」",
"501001311_20": "「そもそも、カルマノイズたちが消えたことで、\\n どのような影響が出ているのか……」",
"501001311_21": "「……」",
"501001311_22": "「……わかった。\\n 戦おう」",
"501001311_23": "「響……、\\n いいの」",
"501001311_24": "「戦いたくなんてないよ。",
"501001311_25": " でも――」",
"501001311_26": "「それでも、\\n わたしは……」",
"501001311_27": "「キョウちゃんとヨウちゃん、2人と正面から向き合って。\\n わたしはまた――わたしの答えを、見つけてみせるッ」",
"501001311_28": "「……ああ、それでこそだ。\\n かかってこい、シンフォギア装者ッ」",
"501001311_29": "「あたしたちの侵略と略奪――\\n 止めてみせろッ」",
"501001311_30": "「――ッ!?」",
"501001311_31": "「…………」",
"501001311_32": "「――ッ!!",
"501001311_33": " キョウッ!? 間に入るなんて、危ないこと……ッ!」",
"501001311_34": "「………………ダメ」",
"501001311_35": "「……ダメ、だよ……」",
"501001311_36": "「キョウッ!?」",
"501001311_37": "「ごめん、ヨウ。\\n ごめんね……あんなに忠告してくれたのに……」",
"501001311_38": "「わたしには、できない。\\n この人たちと戦うなんて……殺すなんてッ」",
"501001311_39": "「あんなに真っ直ぐに、光に向かって手を伸ばす人たちから……\\n 世界を、奪って良いはずがない……ッ」",
"501001311_40": "「やっぱり、知らなければ良かった。\\n 遠く離れた世界の、敵のままだったら良かったのに」",
"501001311_41": "「その温もりを、優しさを知ってしまったわたしは、\\n もう、戦えない――ッ」",
"501001311_42": "「…………キョウ……」",
"501001311_43": "「ごめんなさい……。\\n ごめんなさい……ッ」",
"501001311_44": "「お願い、ヨウ。\\n 一緒に逃げてッ」",
"501001311_45": "「わたし、英雄になれなくてもいいッ!\\n ヨウ、あなたと一緒に生きていられれば、それで良かったッ」",
"501001311_46": "「……」",
"501001311_47": "「……そうだね。\\n キョウは優しいから、そんな風に思っちゃうよね」",
"501001311_48": "「ごめんね、ヨウ……。\\n わたしは、『見放された世界』のための英雄になれない……ッ」",
"501001311_49": "「……いいよ。\\n 英雄じゃなくても」",
"501001311_50": "「……え?」",
"501001311_51": "「キョウが、キョウでいてくれるなら。\\n あたしだって、英雄になれなくても良かったんだ」",
"501001311_52": "「あたしたちの世界は、\\n どうしようもないくらいに追い詰められていたけれど……」",
"501001311_53": "「それでも、\\n あたしが生きてこられたのは、キョウがいたからだよ」",
"501001311_54": "「キョウさえ、隣にいてくれれば、\\n あたしにとっては十分だったんだ」",
"501001311_55": "「……ヨウ。\\n わたしも、あなたと一緒に生きたい」",
"501001311_56": "「でも、そんなことはできない。\\n わたしたちには、背負うものが多すぎる」",
"501001311_57": "「今日まで犠牲にした人たちのために、\\n 立ち止まれないって、そう思っていた。それなのに――」",
"501001311_58": "「ダメなんだ。\\n わたしはもう、戦うことが、恐ろしい……」",
"501001311_59": "「わたしがしてきたのは……戦う覚悟なんかじゃない。\\n 殺す、覚悟だけだったから……」",
"501001311_60": "「だからもう、\\n わたしは、この命をもって償うしか――」",
"501001311_61": "「そんなことはさせないッ!\\n させるもんかッ」",
"501001311_62": "「……ヨウ。\\n お願い、もうこれしか……」",
"501001311_63": "「キョウに生きて欲しいから、\\n あたしは、どんな無茶だってできたんだッ」",
"501001311_64": "「そのためだったら、\\n あたしが人で死んだって、構わなかったッ」",
"501001311_65": "「でもッ!\\n あたしが本当に、心の底で望んでいたのは違うことッ」",
"501001311_66": "「あたしだってッ!\\n キョウと人で、生きる道を探したいよッ」",
"501001311_67": "「……ヨウ」",
"501001311_68": "「それなら――、\\n わたしたちに、手伝わせてッ」",
"501001311_69": "「<ruby=ファム・ファタール>立花、響</ruby>……?」",
"501001311_70": "「2人が生きたいって願うのなら、\\n その助けになりたいんだッ」",
"501001311_71": "「――って、ごめん、みんな。\\n わたし人で、勝手に決めちゃって」",
"501001311_72": "「……何言ってんだ。\\n そんなの、いつものことだろ」",
"501001311_73": "「うん。\\n 響なら、きっとそう言うってわかってたよ」",
"501001311_74": "「……そうね。\\n そのお節介に、わたしたちも救われたのだから」",
"501001311_75": "「難しいことは、\\n 後で考えるデスッ」",
"501001311_76": "「うん。\\n みんなで考えれば、何かいい方法が思いつくよ」",
"501001311_77": "「はいッ!\\n ボクも、できる限りお手伝いしますッ」",
"501001311_78": "「お前たち……」",
"501001311_79": "「ありがとう、みんなッ!",
"501001311_80": " それじゃあ、キョウちゃん、ヨウちゃんッ!」",
"501001311_81": "「2人が一緒に生きられる道を、\\n そして、人の世界を救う方法を、みんなで探そうッ」",
"501001311_82": "「……そんな都合の良い方法が、\\n あると言うのですか」",
"501001311_83": "「……わからないよ。\\n でも、探さないままでいたら、可能性さえ見つからない」",
"501001311_84": "「だから――、\\n もうちょっとだけ続けようよ」",
"501001311_85": "「わたしたちとの、\\n 共同戦線ッ」",
"501001311_86": "「ああ……」",
"501001311_87": "(差し出された手の、\\n 温かさ……",
"501001311_88": "(わたしたちは、これを、ずっと求めて――)",
"501001311_89": "「――ぐぅッ!?」",
"501001311_90": "「キョウちゃんッ!? ヨウちゃんッ!?\\n どうしたのッ」",
"501001311_91": "「わ、わからない……ッ!\\n 全身が、締め付けられるように――ッ」",
"501001311_92": "「い、痛い……ッ!\\n 熱い……ああああああッ」",
"501001311_93": "「ぐ、ぁ……ッ! まさか……、\\n カヴァーチャが、暴走、を……ッ」",
"501001311_94": "「世界のための戦いに叛き逃げようとするわたしたちを、\\n 許さないとでも言うの……ッ」",
"501001311_95": "「キョウ、逃げて……ッ!」",
"501001311_96": "「そんなこと……ッ!」",
"501001311_97": "「あ、ああ……」",
"501001311_98": "「<size=40>あああああ――ッ!!!</size>」",
"501001311_99": "「…………」",
"501001311_100": "「い、いったい、\\n どうしたことデスかッ」",
"501001311_101": "「なんて不気味で、\\n 痛々しいカタチ……」",
"501001311_102": "「「ぐ、ぅ……」」",
"501001311_103": "「キョウちゃんッ!\\n ヨウちゃんッ そ、そんな……ッ」",
"501001311_104": "「響――危ないッ!!」",
"501001311_105": "「手当たり次第に、\\n あたりに攻撃を……ッ」",
"501001311_106": "「「ア、アア……\\n  やめて、もう、戦いたくなンテ、ナイッ」」",
"501001311_107": "「「お願、イ、\\n  カヴァーチャ……ッ」」",
"501001311_108": "「「もう、\\n  わタシたち、に――」」",
"501001311_109": "「「……殺させ、ないで」」",
"501001311_110": "「き、消えた……?",
"501001311_111": " あれは、2人がずっと使っていた……世界を渡る亀裂?」",
"501001311_112": "「今のは、\\n なんだったんだ……」",
"501001311_113": "「2人が纏っている武装が暴走し、\\n 彼女たちを縛り付けたようにも見えましたが……」",
"501001311_114": "「ああ……2人の意思ではなかったように見えた。\\n しかし、あの姿……尋常ではないぞ」",
"501001311_115": "「すごく……痛そうだったデス」",
"501001311_116": "「ようやく、手を繋げたのに……ッ!\\n こんなことって……」",
"501001311_117": "「キョウちゃん、ヨウちゃん、\\n どこに、行っちゃったの……」"
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"501001411_0": "悪意、潰えず",
"501001411_1": "観測記録 No----------.",
"501001411_2": "『レーヴァテイン』世界にて――",
"501001411_3": "「……」",
"501001411_4": "(この世界に立ち寄ったのは、\\n 無駄足になるかもしれません",
"501001411_5": "(しかし、私はベアトリーチェ様から、\\n 悪意たることを託された者",
"501001411_6": "(後継としての役割を全うするためならば、\\n 何もかもを受け入れましょう",
"501001411_7": "「……まったく。\\n こんな輩を、あのお方に会わせることになるとは」",
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"501001411_9": "「…………」",
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"501001411_11": "「私たちは、\\n お互いがお互いのために利用し合うだけの関係です」",
"501001411_12": "「今すぐに、どうこうしようという気はありません。\\n ご安心を」",
"501001411_13": "「……それはこちらとて同じこと。\\n あの方が決めた道ならば、わたしたちは――」",
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"501001411_16": "「…………」",
"501001411_17": "「お初にお目に掛かります。\\n 私は、アルヴィース」",
"501001411_18": "「『悪意を継ぐ者』と、\\n 今は名乗っております」",
"501001411_19": "「お目通りいただけたということは、\\n 実りのある話ができるということでしょうか」",
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