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{
"388000111_0": "陰に忍ばぬその者は",
"388000111_1": "「おおぉッ!」",
"388000111_2": "「く……ッ!\\n ちょこまかとすばしっこいッ」",
"388000111_3": "「明らかに普通のアルカ・ノイズとは動きが違う……。\\n 興味深いわね」",
"388000111_4": "「感心している場合かッ!」",
"388000111_5": "「正しい判断には敵の分析が必要でしょう」",
"388000111_6": "「その点で言えば、今の戦力ではこの状況、\\n いささか手に余ると思うけど」",
"388000111_7": "「……確かにな。こうも捉えづらいと、\\n 持久戦に向かないRN式では分が悪いか」",
"388000111_8": "「かといって、客人に無茶をさせるわけにもいかない。\\n ……でしょ」",
"388000111_9": "「わたしなら大丈夫ですッ!」",
"388000111_10": "「いや、定期連絡のため来てくれた君に、\\n 不明勢力相手の無茶をさせるわけにはいかない」",
"388000111_11": "「ここは我々が引き受ける。\\n 君は自分の世界に戻るんだ」",
"388000111_12": "「そんなッ!\\n 放っておくなんて、できませんッ」",
"388000111_13": "「早まるな。その上で、救援を要請したい。\\n この数のアルカ・イズ……装者の力が必要だ」",
"388000111_14": "「……ッ、……わかりました。",
"388000111_15": " わたしが戻るまで、持ちこたえてくださいねッ!」",
"388000111_16": "「ああ、約束しよう」",
"388000111_17": "「――さて、俺たちは救援が来るまで、\\n せいぜい持ちこたえるとするか」",
"388000111_18": "「簡単に言ってくれるわね」",
"388000111_19": "「不安か?」",
"388000111_20": "「冗談はよして。これくらい物の数じゃないし、\\n いざとなったらあなたを囮にしてでも生き延びるわ」",
"388000111_21": "「フッ、その意気だ。",
"388000111_22": " 行くぞッ、遅れるなッ!」",
"388000111_23": "「あなたこそねッ!」",
"388000111_24": "「よッ。定期報告に来たぞー。元気してたか?\\n ……って」",
"388000111_25": "「お願いしますッ!\\n すぐに救援を……ッ」",
"388000111_26": "「無論だ。だが、タイミングが悪いな……。\\n 友里、すぐに動ける装者は」",
"388000111_27": "「響ちゃんとクリスちゃんは別任務に出ています。\\n 調ちゃんと切歌ちゃんはギアの調整中ですッ」",
"388000111_28": "「翼さんはライブに備えて、\\n 今すぐにでも現地に出発しなければいけません」",
"388000111_29": "「救援に回せるのは、わたしだけということね。\\n できれば前衛で戦える装者がもう人は欲しかったけれど」",
"388000111_30": "「なんだなんだ?\\n やけに騒がしいな」",
"388000111_31": "「奏、来ていたの?」",
"388000111_32": "「ついさっきな。",
"388000111_33": " それで、この騒ぎはどういうことだ?」",
"388000111_34": "「実は……」",
"388000111_35": "「並行世界の二課が襲撃されたッ!?」",
"388000111_36": "「ああ。たまたま定期連絡に行っていた未来くんが\\n 状況を知らせてくれた」",
"388000111_37": "「援軍を送り出したいところだが、\\n なにぶん、手すきの装者が少ない」",
"388000111_38": "「すまないな、定期報告に来てもらったのに慌ただしくて」",
"388000111_39": "「あたしのことは気にしないでくれ。",
"388000111_40": " それより大丈夫なのか、その並行世界は?」",
"388000111_41": "「装者こそいないけれど、独自の武装を持っている世界だから……\\n 簡単にやられはしないでしょうけど」",
"388000111_42": "「ギアなしで戦っている以上、\\n アルカ・イズの相手は危険、ってことだな」",
"388000111_43": "「こうなれば止むを得ません。\\n ライブは中止し、わたしも小日向と共に向かいます」",
"388000111_44": "「翼、それは……」",
"388000111_45": "「止めてくれるな、マリア。\\n 世界は違えど、幾度も力を合わせて危難を乗り越えた仲間だ」",
"388000111_46": "「ここで刃を抜かずして、いつ抜くッ!」",
"388000111_47": "「それはダメだ、翼」",
"388000111_48": "「奏……?」",
"388000111_49": "「翼の歌を待っている人がたくさんいるんだろ?\\n なら、その人たちに歌を届けるのが、今の翼の仕事だ」",
"388000111_50": "「並行世界への増援は、あたしが代わりに行く」",
"388000111_51": "「な……ッ!?」",
"388000111_52": "「水くさいことはなしだ。あたしだって、一緒に並行世界を\\n 危機から救った一員だ。ダンナ、問題あるか」",
"388000111_53": "「……そちらの世界の二課で許可を得るのが条件だ」",
"388000111_54": "「そう言ってくれると思ったよ」",
"388000111_55": "「すぐに帰ってこれるとは限らない……。\\n その間、奏の世界が無防備になってしまうんじゃ――」",
"388000111_56": "「なーに。あたしの世界にはあの錬金術師たちだっているんだ。\\n 少しは借りを返させろって」",
"388000111_57": "「そこまで言われたら、止める言葉なんて、もう……。",
"388000111_58": " ……小日向とマリアをお願い」",
"388000111_59": "「ああ。そうと決まれば、さっそく準備だ。\\n 人とも、よろしく頼むぞッ」",
"388000111_60": "「ええ、こちらこそ」",
"388000111_61": "「急ぎましょうッ!\\n 向こうの世界のみんなが持ちこたえているうちに……ッ」"
}

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@ -0,0 +1,58 @@
{
"388000121_0": "「遅くなって悪い、許可は取ってきたぞ」",
"388000121_1": "「こういうとき、決まりとはいえすぐに飛び出せないのが\\n 歯がゆいな」",
"388000121_2": "「感情だけで動いては、手痛いしっぺ返しを食うこともある……。\\n 自分を律することも大切だもの」",
"388000121_3": "「ハハ、言うじゃないか。\\n 誰の影響だ」",
"388000121_4": "「強いて言えば、緒川さんかな。\\n あの人からわたしが学んだのは、戦い方だけではないから」",
"388000121_5": "「へぇ、そうなのかい?」",
"388000121_6": "「うん。今から行く並行世界にも緒川さんはいるから、\\n 話してみれば奏にとっても得られることはあると思う」",
"388000121_7": "「その緒川さんも、戦ったりもするのか?」",
"388000121_8": "「戦ったりする……なんて言ったら、失礼になるかも」",
"388000121_9": "「翼がそこまで言うなんて、相当強いんだろうな。\\n 楽しみになってきたよ」",
"388000121_10": "「奏……無茶だけはしないように」",
"388000121_11": "「おう、心配してくれてありがとなッ」",
"388000121_12": "「フフ」",
"388000121_13": "「……その含み笑いはなんだ、マリア」",
"388000121_14": "「いえね、見送りにまで来た挙句に、そんなに心配しちゃって。\\n 翼にとって『天羽奏』は本当に大事な相手なのね」",
"388000121_15": "「な……ッ!\\n か、奏の前でそんなこと――ッ」",
"388000121_16": "「照れない照れない」",
"388000121_17": "「わたしも響が任務に出るときは、いつも心配だったから、\\n 気持ちはわかりますよ」",
"388000121_18": "「くッ、小日向まで……ッ。\\n なんとやりづらい……ッ」",
"388000121_19": "「とーもーかーくッ!\\n 翼はライブに集中するんだぞ」",
"388000121_20": "「わかっている……。",
"388000121_21": " ……いってらっしゃい、奏」",
"388000121_22": "「ああ、行ってくる。\\n 帰ってきたらライブの様子、教えてくれよなッ」",
"388000121_23": "「ぬんッ!」",
"388000121_24": "「な……ッ!?\\n 丸太と入れ替わっただとッ」",
"388000121_25": "「なかなかおもしろいことをするじゃありませんか」",
"388000121_26": "「今度は分身ときたか……ッ!」",
"388000121_27": "「まったく、煩わしいったらないわね」",
"388000121_28": "「同感だな。\\n まるで忍者映画でも見せられているようだ」",
"388000121_29": "「それはいささか心外ですね」",
"388000121_30": "「忍術とは人目を忍ぶ術。\\n このような無駄に派手な演出、忍術とは言えません」",
"388000121_31": "「そいつは失礼した。\\n だが、厄介なことには変わりあるまい」",
"388000121_32": "「身代わりに分身、まるでコミックですねぇ。\\n しかし、誰か知りませんが、二課に襲撃をかけるとは……」",
"388000121_33": "「僕は作りかけのあのマシンを完成させたいというのに、\\n 英雄の宿命として、休む暇はもらえないものですね」",
"388000121_34": "「今はこの事態を収拾することを考えろッ!」",
"388000121_35": "「まあいいです。コミックの忍者か何か知りませんが、",
"388000121_36": " 所詮はアルカ・ノイズッ!」",
"388000121_37": "「真の英雄である僕が、ヒーローのなんたるかを\\n 教えてあげる必要がありそうですねぇッ」",
"388000121_38": "「何か策が?」",
"388000121_39": "「アルカ・ノイズが次々と送り込まれている以上、\\n 呼び出している者は近くにいるはずです」",
"388000121_40": "「今さら確認する必要、あったかしら?\\n とっくに承知の上だと思っていたけれど」",
"388000121_41": "「この天才にして英雄に向かってその言い草……ッ!」",
"388000121_42": "「内輪もめは後にしろッ!」",
"388000121_43": "「いずれにしろ、手が足りない現状では探りようが――」",
"388000121_44": "「警報ッ!?\\n 何が起こっているッ」",
"388000121_45": "「報告しますッ!\\n 聖遺物保管庫付近に敵の姿を確認ッ」",
"388000121_46": "「……しまったッ!\\n こちらは陽動かッ」",
"388000121_47": "「いけないッ! 本部には一般の隊員もいますッ!\\n すぐに増援に……」",
"388000121_48": "「さらに増えるか……ッ!」",
"388000121_49": "「どうするの?\\n ここを手薄にするわけにはいかないわよ」",
"388000121_50": "「ネフィリムの左腕でも手に余るこの状況、\\n 猫の手でも借りたいものですが、そう都合よく救援など……」",
"388000121_51": "「アルカ・ノイズが一掃された……?」",
"388000121_52": "「この攻撃は……ッ!」",
"388000121_53": "「遅くなりましたッ!」",
"388000121_54": "「待たせたわね」",
"388000121_55": "「猫の手よりかは、役に立つつもりだぜ。\\n 使ってやっちゃあくれないかッ」"
}

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@ -0,0 +1,33 @@
{
"388000131_0": "「皆さん、大丈夫ですかッ!?」",
"388000131_1": "「どうということはないさ。\\n 救援、感謝する」",
"388000131_2": "「RN式は消耗が激しいと聞いていたけれど、\\n 思ったより平気そうね」",
"388000131_3": "「その男が常識外れでタフなのよ」",
"388000131_4": "「こっちの世界のダンナも、\\n 翼の世界みたいな規格外ってわけか」",
"388000131_5": "「君とは……報告は幾らか受けているが、顔を見てとなると\\n はじめましてだな。風鳴弦十郎だ」",
"388000131_6": "「ああ、よく知ってるさ。\\n 天羽奏だ。よろしく頼むよ」",
"388000131_7": "「よろしくもいいですがねぇ。\\n 今は敵への対処が先決でしょう」",
"388000131_8": "「ああ。……聞いてくれ。先程、何者かが本部に侵入し、\\n 聖遺物保管庫へ向かっていると報告が入った」",
"388000131_9": "「つまり、ここのアルカ・ノイズを引き受ける役が\\n 必要というわけね」",
"388000131_10": "「その役、わたしたちが引き受けますッ!」",
"388000131_11": "「こいつらはあたしらの専門だ。\\n ダンナたちは、侵入者の方を追ってくれッ」",
"388000131_12": "「フッ、話が早くて助かる」",
"388000131_13": "「だが、こいつらは普通のアルカ・ノイズではない。\\n 緒川、頼めるか」",
"388000131_14": "「ええ。\\n 僕はここに残って彼女たちのサポート、ですね」",
"388000131_15": "「残りの2人は、俺と一緒に侵入者の捕縛だッ!\\n 行くぞッ」",
"388000131_16": "「やれやれ……。\\n この僕に命令とは、高くつきますよ」",
"388000131_17": "「いいから行くわよ」",
"388000131_18": "「それじゃ、あたしらは自分の仕事をこなすとするかッ!",
"388000131_19": " あたしの一撃、受けてみなッ!」",
"388000131_20": "「何ッ!?\\n 丸太と入れ替わっただって……ッ」",
"388000131_21": "「後ろですッ!」",
"388000131_22": "「しまっ……ッ!」",
"388000131_23": "「させませんッ!」",
"388000131_24": "「気を付けてください。\\n このアルカ・イズは普通ではありません」",
"388000131_25": "「…………」",
"388000131_26": "「どうかしましたか?」",
"388000131_27": "「いや、翼の言ってた通りだ。\\n 戦える、なんてレベルじゃなかったな、と思ってさ」",
"388000131_28": "「助っ人に来たってのに、遅れをとるわけにはいかないよな。",
"388000131_29": " 行こう、みんなッ!」",
"388000131_30": "「ええッ!」\\n「はいッ」"
}

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@ -0,0 +1,28 @@
{
"388000132_0": "「当たれぇぇぇッ!」",
"388000132_1": "「くそッ、また変わり身か……ッ!」",
"388000132_2": "「変わり身に分身の術って、\\n これじゃあまるで忍者ね」",
"388000132_3": "「どことなく、見た目も忍者っぽいし……」",
"388000132_4": "「ふざけた恰好しやがって……。\\n あたしたちをおちょくってんのかッ」",
"388000132_5": "「アルカ・ノイズにこんな改造を施すなんて……。\\n 手を加えた錬金術師は何を考えてるのかしら」",
"388000132_6": "「あたしの世界の錬金術師も癖は強いけど、\\n ここのは数段悪趣味だな。それでいて厄介なのが腹立つよ」",
"388000132_7": "「これを忍者と呼ぶのは、僕としては複雑ですね……。\\n 明らかに、忍のなんたるかを理解していない……」",
"388000132_8": "「なんにしても、\\n 応戦しないわけにはいかないわね」",
"388000132_9": "「やるなぁ、緒川さん。\\n 餅は餅屋ってとこか」",
"388000132_10": "「そのくくられ方は複雑ですね……」",
"388000132_11": "「緒川です」",
"388000132_12": "「そっちに妙な男が行ったッ!\\n 注意しろッ」",
"388000132_13": "「妙な男……?\\n すみません、もう少し具体的に――」",
"388000132_14": "「――先程の言葉、聞き捨てならんでゴザルな」",
"388000132_15": "「え……ッ!?」",
"388000132_16": "「なんだ、誰かいるのかッ!?」",
"388000132_17": "「――そこですッ!」",
"388000132_18": "「木の上に、誰かいる……?」",
"388000132_19": "「緒川さんのクナイを弾いた……ッ!?」",
"388000132_20": "「誰だッ!\\n 姿を見せろッ」",
"388000132_21": "「……フッ。いいだろう。\\n <ruby=それがし>某</ruby>の雄姿、その目に焼き付けるがいいッ! ――トォッ!」",
"388000132_22": "「な……ッ、\\n こいつは……ッ」",
"388000132_23": "「その恰好って……」",
"388000132_24": "「もしかして……」",
"388000132_25": "「忍、者……?」"
}

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@ -0,0 +1,86 @@
{
"388000211_0": "ニンジュツクラベ",
"388000211_1": "数分前――",
"388000211_2": "「急ぐぞッ!\\n 聖遺物を賊の手に渡すわけにはいかんッ」",
"388000211_3": "「本部内にまでは、\\n アルカ・イズはバラまかれていないようね」",
"388000211_4": "「はぁ、はぁ……ッ! この僕をあちこち引きずり回すとは、\\n 人使いが、荒いですね……ッ」",
"388000211_5": "「これくらいで情けないわね」",
"388000211_6": "「……ッ!",
"388000211_7": " 待て、誰かいるぞッ!」",
"388000211_8": "「待ちくたびれたでゴザルよ」",
"388000211_9": "「何、あのふざけた恰好……?」",
"388000211_10": "「何者だッ!」",
"388000211_11": "「ククク……聞かれたからには、\\n 名乗らぬも無作法というものでゴザルな……よかろうッ」",
"388000211_12": "「遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よッ!\\n <ruby=それがし>某</ruby>こそは、文明が生んだ闇を駆けしスーパーニンジャッ!」",
"388000211_13": "「人呼んで――",
"388000211_14": " アカオニッ!」",
"388000211_15": "「あか……おに?」",
"388000211_16": "「左様にゴザル。闇夜に映えし赤は、熟練のニンジャの証。\\n ニンジャマスターを目指す<ruby=それがし>某</ruby>にこそ相応しい色でゴザル」",
"388000211_17": "「忍を名乗る割には、\\n 身を隠そうという気はないのだな……」",
"388000211_18": "「フハハハハッ! おかしなことをいう男でゴザルッ!\\n 一流のニンジャは、人目を引きながら任務を完遂するものッ」",
"388000211_19": "「<ruby=それがし>某</ruby>はそこらへんのコソ泥とはわけが違うのでゴザルッ!」",
"388000211_20": "「同類か……」",
"388000211_21": "「……僕を見ながら言うの、やめてもらえます?\\n いささか以上に不愉快です」",
"388000211_22": "「どんななりをしていようと、二課に襲撃をかけた相手を\\n 逃がすつもりはない。悪いが、ここでお縄についてもらうッ」",
"388000211_23": "「なかなか素早いでゴザルな。",
"388000211_24": " ……なれどッ!」",
"388000211_25": "「何ッ!?」",
"388000211_26": "「――いかな剛拳とて、\\n 殺意がなければナマクラも同じ」",
"388000211_27": "「一瞬で後ろをとられた……ッ!?」",
"388000211_28": "「御命、頂戴するでゴザ――」",
"388000211_29": "「させるものかよッ!\\n おおぉ――ッ」",
"388000211_30": "「何……ッ!?」",
"388000211_31": "「アカオニが吹き飛んだッ!?\\n 手も触れていないのに……ッ」",
"388000211_32": "「震脚で衝撃波を発生させた」",
"388000211_33": "「相変わらず、無茶をするわね……」",
"388000211_34": "「フッ、なかなかおもしろい真似をするでゴザルな」",
"388000211_35": "「あの様子……ダメージを受けてないの?」",
"388000211_36": "「いや、ダメージを受ける前に、\\n 自ら跳んで衝撃を受け流していた」",
"388000211_37": "「気を引き締めろ。どうやらこいつは、\\n 手加減していい手合いではないようだ」",
"388000211_38": "「……こっちの忍者も呼んだ方がいいかもしれないわね。\\n 外はまだ片付かないのかしら」",
"388000211_39": "「確認の暇をくれる相手ではないだろうよ」",
"388000211_40": "「ん? 構わないでゴザルよ?\\n 憂いを残しては、戦いにも身が入らないでゴザろう」",
"388000211_41": "「……では、お言葉に甘えるとしよう。",
"388000211_42": " ――友里。外の戦況はどうだ? 様子を知りたい」",
"388000211_43": "「外の音声、回しますッ!」",
"388000211_44": "「あたしの世界の錬金術師も癖は強いけど、\\n ここのは数段悪趣味だな」",
"388000211_45": "「これを忍者と呼ぶのは、僕としては複雑ですね……。\\n 明らかに、忍びのなんたるかを理解していない……」",
"388000211_46": "「……向こうも交戦中みたいね。\\n こっちに来てもらう余裕はないか」",
"388000211_47": "「そのようだな。\\n やはりこの男は、俺が相手を……ん」",
"388000211_48": "「悪趣味……?\\n ビを理解していない……だと」",
"388000211_49": "「……?\\n おい、何をぶつぶつと――」",
"388000211_50": "「……拳法使いよ。\\n この場は預けるでゴザル」",
"388000211_51": "「何……?」",
"388000211_52": "「アルカ・ノイズ……ッ!\\n まだ手持ちが残っていたかッ」",
"388000211_53": "「御免ッ!」",
"388000211_54": "「待てッ!",
"388000211_55": " ……逃したか」",
"388000211_56": "「追いかけるより、こいつらの処理が優先ね」",
"388000211_57": "「仕方ありませんね。二課を荒らされるのは僕としても\\n 困りますから、文字通り腕を振るわせてもらいますよ」",
"388000211_58": "「その恰好って……」",
"388000211_59": "「もしかして……」",
"388000211_60": "「忍、者……?」",
"388000211_61": "「いかにも。<ruby=それがし>某</ruby>の名は、アカオニ。\\n 遠くの海の向こうよりこの地を訪れた、ニンジャでゴザルッ」",
"388000211_62": "「忍者って……どういうことだよ?\\n ていうかその衣装、忍ぶ気全然ないだろ」",
"388000211_63": "「気を付けてください。身なりはふざけていますが、\\n 先程の身のこなし……只者ではありません」",
"388000211_64": "「聞こえるか?\\n どうやら、既に交戦状態にあるようだな」",
"388000211_65": "「ええ。本部内に侵入していたのは、この……",
"388000211_66": " ふざけた恰好の男でしょうか?」",
"388000211_67": "「ああ。どういうつもりかはわからんが、\\n 堂々と姿を晒したうえ、こちらを無視してそちらに向かった」",
"388000211_68": "「こちらはこちらで手が離せん。\\n しばらく、そいつの相手は任せた」",
"388000211_69": "「……承知しました。\\n こちらでなんとかしましょう」",
"388000211_70": "「その声……貴様らでゴザルな?\\n <ruby=それがし>某</ruby>のニンジャ・アルカ・ノイズにケチをつけたのは」",
"388000211_71": "「ニンジャ・アルカ・ノイズ……?」",
"388000211_72": "「そのままのネーミングね……」",
"388000211_73": "「名を名乗るでゴザルッ!」",
"388000211_74": "「敵を相手に名乗る必要があるとは思えませんが……」",
"388000211_75": "「ええい、名乗らないとはニンジャの風上にもおけぬヤカラッ!\\n 恥を知るでゴザルッ」",
"388000211_76": "「そ……それはどっちかっていうと、\\n 侍の作法じゃないのか」",
"388000211_77": "(……ここは会話に応じて、\\n 司令たちの合流まで時間を稼ぐのが得策ですね",
"388000211_78": "「……緒川慎次です」",
"388000211_79": "「オガワ……?",
"388000211_80": " なるほど。では、貴様がクサナギニングンの頭領でゴザルな」",
"388000211_81": "「……ッ!?\\n なぜそれを……ッ」",
"388000211_82": "「これはいいッ、手間が省けたでゴザルッ!」",
"388000211_83": "「クサナギニングンの頭領よ。ニンジャとしての誇りをかけて、\\n <ruby=それがし>某</ruby>とニンジュツ比べで勝負するでゴザルッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,30 @@
{
"388000221_0": "「忍術……比べ?」",
"388000221_1": "「然り。サイキョーのニンジャの座をかけて、\\n <ruby=それがし>某</ruby>と勝負でゴザルッ!」",
"388000221_2": "「……あなたの目的は、\\n 二課が保有する聖遺物ではないのですか」",
"388000221_3": "「ンン? 違うでゴザルなぁ。<ruby=それがし>某</ruby>が請け負った任務――",
"388000221_4": " それは、この国の二課なる組織を潰すことッ!」",
"388000221_5": "「二課を……潰す?」",
"388000221_6": "「随分と大胆なことを目論んだものね」",
"388000221_7": "「それじゃあ、なんで一度は本部の中まで潜り込んだのに、\\n あっさり戻ってきたんだ」",
"388000221_8": "「二課を潰すため、まずは機密を盗み出すつもりでゴザった。\\n 組織には弱みがあると相場が決まっているでゴザルからな」",
"388000221_9": "「それを使い、次なる手を打つつもりでゴザったが……、",
"388000221_10": " 今となってはそんなもの、二の次ッ!」",
"388000221_11": "「<ruby=それがし>某</ruby>のニンジャ・アルカ・ノイズをバカにされて、\\n 黙っているわけにはいかないでゴザルッ」",
"388000221_12": "「ましてや情報通り、ここには本場のニンジャが\\n いるときているッ」",
"388000221_13": "「ニンジャマスターを目指す者として、本場二ホンのニンジャと\\n 手合わせできるこの好機ッ 逃がしてなるものかッ」",
"388000221_14": "「依頼主からの仕事より、個人の事情を優先させた、と……。\\n そんないい加減で口の軽い忍がいますか……」",
"388000221_15": "「元より、クサナギの里にドウジョウヤブリに出向くつもりだったで\\n ゴザルが、その頭領が二課にいるとは運がいい」",
"388000221_16": "「イセーキニチョとは、\\n このことでゴザルなッ」",
"388000221_17": "「それを言うなら一石二鳥よ」",
"388000221_18": "「……里に手を出すつもりだったということですか。\\n だとしたら、捨て置くわけにはいきませんね」",
"388000221_19": "「里の脅威になる可能性があるなら、\\n この場でけりをつけます」",
"388000221_20": "「ニンジュツ比べ、応じてくれるということでゴザルな」",
"388000221_21": "「……皆さん。アカオニの相手は僕がします。\\n アルカ・イズはお願いします」",
"388000221_22": "「ああ、任せてくれ。\\n 緒川さんの邪魔はさせないさ」",
"388000221_23": "「ニンジャ・アルカ・ノイズだかなんだか知らないけど、\\n いつまでも手玉にとられるわたしたちではないわッ」",
"388000221_24": "「いきますッ!」",
"388000221_25": "「話はついたようでゴザルな。",
"388000221_26": " それでは、いざジンジョーに……勝負ッ!」",
"388000221_27": "「教えてさしあげましょう。あなたの忍術もどきが\\n 通じるほど、草薙の歴史は浅くないとッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,32 @@
{
"388000222_0": "「アガートラームとッ!」",
"388000222_1": "「<ruby=シェンショウジン>神獣鏡</ruby>の広範囲攻撃ならッ!」",
"388000222_2": "「避けた……ッ!」",
"388000222_3": "「だけど……」",
"388000222_4": "「――織り込み済みだッ!」",
"388000222_5": "「よしッ!\\n これで片付いたなッ」",
"388000222_6": "「すばしっこくて、意外と厄介な敵だったわね」",
"388000222_7": "「緒川さんに加勢しましょうッ!」",
"388000222_8": "「この速度についてきますか……ッ!」",
"388000222_9": "「フハハハハッ!\\n 木の上を跳び回る修行だったら、とっくに修めてゴザルッ」",
"388000222_10": "「<ruby=それがし>某</ruby>にとって、この程度の森など平地も同然ッ!」",
"388000222_11": "「しかし、逃げてばかりでは興ざめッ!\\n ――仕掛けさせてもらうでゴザルッ」",
"388000222_12": "「ッ、速い……ッ!」",
"388000222_13": "「接近戦は互角でゴザルかッ!\\n では、これはどうでゴザルッ」",
"388000222_14": "「アカオニ流ニンジュツッ!\\n カトン・レンゴクチョウのジュツッ」",
"388000222_15": "「炎ですか。\\n それなら――ッ」",
"388000222_16": "「ほうッ! 水で迎撃したでゴザルかッ!\\n なら、これはどうでゴザル」",
"388000222_17": "「――スイトン・ゲキリュウソウのジュツッ!」",
"388000222_18": "「あれは……水の龍ッ!?」",
"388000222_19": "「土の壁が受け止めたわッ!」",
"388000222_20": "「次は土でできた巨人が……ッ!?」",
"388000222_21": "「木が伸びて縛り上げた……ッ!」",
"388000222_22": "「なんなのよ、このとんでもない戦いは……?」",
"388000222_23": "「……なぁ、あたしらが援護する必要って、\\n あるのか……」",
"388000222_24": "「…………」",
"388000222_25": "「皆さん、ご無事ですか」",
"388000222_26": "「はい。\\n 緒川さんは大丈夫ですか」",
"388000222_27": "「ええ。あの男、実力は本物です。\\n ただ、つ、わかったことがあります」",
"388000222_28": "「アカオニの術は忍術に見せかけていますが、\\n 根本的に違います」",
"388000222_29": "「アカオニは忍者などではありません。\\n ――錬金術師です」"
}

View file

@ -0,0 +1,63 @@
{
"388000231_0": "「錬金術師ッ!?」",
"388000231_1": "「妙なアルカ・ノイズを使うと思っていたけれど、\\n あれも自前ってこと」",
"388000231_2": "「ということは、アイツが改造したのか……。",
"388000231_3": " ふざけた奴だが、能力は本物ってことか」",
"388000231_4": "「違うでゴザルッ!\\n 錬金術ではなく、ニンジュツでゴザルッ」",
"388000231_5": "「<ruby=それがし>某</ruby>は紛うことなくニンジャッ!\\n 使っているのは解釈を変えたニンジュツでゴザルッ」",
"388000231_6": "「呆れるほどの剣幕だわ。\\n なんというか……こだわりがあるみたいね」",
"388000231_7": "「受けてみよ、アカオニ流ニンジュツッ!\\n カトン・レンゴクチョウッ」",
"388000231_8": "「<size=40>うわぁああああああああああああ……ッ!</size>」",
"388000231_9": "「どうでゴザル?\\n アカオニ流ニンジュツの炎は」",
"388000231_10": "「どうもこうも……、\\n 忍術である証明にはまったくなってないじゃないッ」",
"388000231_11": "「だけど、すごい威力です……ッ!」",
"388000231_12": "「……はッ!? 緒川さんはッ!?",
"388000231_13": " 今のを至近距離で受けたら……ッ!」",
"388000231_14": "「僕なら心配はいりませんよ」",
"388000231_15": "「無傷……?」",
"388000231_16": "「司令といい、あなたといい、\\n 毎度のことながらどうなってるのよ……」",
"388000231_17": "「普段の皆さんなら、今の攻撃もかわせたはずです。\\n 相手の姿に惑わされて、油断したのではないですか」",
"388000231_18": "「それは……」",
"388000231_19": "「気を引き締めてください。\\n 相手は強敵に違いありません」",
"388000231_20": "「詰めの詰めまで、\\n 油断していい相手ではありませんよ」",
"388000231_21": "「……はいッ!\\n もう惑わされませんッ」",
"388000231_22": "「貴様……<ruby=それがし>某</ruby>のジュツをさっきから無効化しているな?\\n ジュツの威力は<ruby=それがし>某</ruby>が上のはず……何をしている?」",
"388000231_23": "「その答えは、ご自分で見つけてください。\\n 見つけられるものなら、ですが」",
"388000231_24": "「おもしろいッ!\\n 貴様の秘密、<ruby=それがし>某</ruby>が暴いてみせようッ!」",
"388000231_25": "「速い……ッ!\\n 目で追うのがやっとだわッ」",
"388000231_26": "「ギアも纏っていないのに、すごい……」",
"388000231_27": "「くそッ!\\n あたしらじゃあ、援護することもできないのか……ッ」",
"388000231_28": "(装者の皆さんはアルカ・ノイズとの戦いで消耗が激しい……\\n 下手に戦えば、巻き込んでしまう。それなら、今は――",
"388000231_29": "「どうしたでゴザル?\\n 逃げてばかりでは勝てぬでゴザルよッ」",
"388000231_30": "(きた――ッ!)",
"388000231_31": "「ようやく真っ向から戦うつもりになったでゴザルか?」",
"388000231_32": "「それはどうでしょうか」",
"388000231_33": "「緒川さんッ!」",
"388000231_34": "「加勢するぞッ!\\n もう油断はしないッ」",
"388000231_35": "「わたしにだって、できることはきっとあるッ!」",
"388000231_36": "「あいにく、仲間を見捨てろとは教えられていないのッ!」",
"388000231_37": "「威勢だけは一人前でゴザルな。\\n しかし、<ruby=それがし>某</ruby>のニンジュツの前では貴様らなど……」",
"388000231_38": "「……む?\\n この気配は……」",
"388000231_39": "「――なるほど、そういうことでゴザルか」",
"388000231_40": "「さすがにジュツを使い過ぎたでゴザル。\\n 消耗した今の状態では、このまま戦うのはいささか不利」",
"388000231_41": "「戦略的撤退とさせてもらうでゴザル」",
"388000231_42": "「――アカオニ流、レインボーフラッシュのジュツッ!」",
"388000231_43": "「なんだッ!?」",
"388000231_44": "「目くらましッ!?」",
"388000231_45": "「眩しくて何も見えない……ッ!?」",
"388000231_46": "「クサナギニングンの頭領よ。次はオマエを倒し、\\n <ruby=それがし>某</ruby>が真のニンジャマスターとなるでゴザル」",
"388000231_47": "「ククク……フハハハハハハハ――ッ!」",
"388000231_48": "「逃げられましたか。\\n ……意外と冷静なようですね」",
"388000231_49": "「え……?」",
"388000231_50": "「皆、無事かッ!?」",
"388000231_51": "「ダンナッ!」",
"388000231_52": "「こういうことです。気を引いて、司令と挟み撃ちに\\n するつもりだったのですが、勘付かれたようです」",
"388000231_53": "「その様子だと、逃げられたようだな」",
"388000231_54": "「面目ありません」",
"388000231_55": "「いいさ。\\n 皆が無事であれば、それで」",
"388000231_56": "「司令、相手は僕との決着を望んでいます。\\n 十中八九、また襲撃をかけてくるでしょう」",
"388000231_57": "「のんきに構えてもいられんか……。\\n だが、時間ができたのなら、対策も立てられる」",
"388000231_58": "「ええ。あのような手合いに忍を名乗られるのは、\\n あまり気持ちのいいものではありませんしね」",
"388000231_59": "「次にまみえたときには、\\n 忍のなんたるかを叩き込んでさしあげなくては」",
"388000231_60": "「ああ、そうしてやれ。\\n そのためにも、まずは作戦会議だな」"
}

View file

@ -0,0 +1,84 @@
{
"388000311_0": "ダイヴマシン・ニライカナイ",
"388000311_1": "「ひとまず、状況を整理しよう」",
"388000311_2": "「二課を襲撃してきた人物だが、\\n 本人の名乗りの通り、アカオニと呼称する」",
"388000311_3": "「緒川の報告によれば、アカオニは何者かから仕事を請け負い、\\n 二課を潰しに来たということだ」",
"388000311_4": "「このことから、アカオニはいずれかの機関に属しているか、\\n 対価を得て任務を請け負っていると考えられる」",
"388000311_5": "「機関となると……錬金術師協会か?」",
"388000311_6": "「あるいはパヴァリア光明結社か」",
"388000311_7": "「あなたたちの世界にあるという錬金術師の組織ですか」",
"388000311_8": "「現状、どちらもこちらの世界では確認できていない」",
"388000311_9": "「というか、あんな男が組織の中でやっていけるかしら?」",
"388000311_10": "「それについては同意ですね。\\n 到底、他人に合わせられるとは思えません」",
"388000311_11": "「…………」",
"388000311_12": "「……なぜ僕をじっと見ているのですか?」",
"388000311_13": "「別に。あなたに言われるとは、\\n アカオニも不本意だろうと思っただけよ」",
"388000311_14": "「あー、話を戻すぞ。",
"388000311_15": " ……アカオニの行動だが、一貫性があまりに無さすぎる」",
"388000311_16": "「能力は紛れもなく一流だが、\\n 任務とやらに対する職業意識があまりに希薄だ」",
"388000311_17": "「聖遺物保管庫に迫っていたっていうのに、\\n あっさり引き返したわね」",
"388000311_18": "「緒川。\\n おまえはアカオニをどう見る」",
"388000311_19": "「なんといいますか……間違った忍者のイメージに憧れた、\\n 海外のコミックファンという印象です」",
"388000311_20": "「それでいて、錬金術を忍術に見立て、多彩な術を行使する\\n 能力の高さから、相当の実力者といえるでしょう」",
"388000311_21": "「そういえば、どの術もえらく派手だったな。\\n 炎の鳥とか、水の龍とか」",
"388000311_22": "「本当の忍は、\\n あのような派手な術は使わないのですが……」",
"388000311_23": "「とはいえ、脅威であることは確かだわ。\\n 対策が必要だと思うけれど」",
"388000311_24": "「ああ。正直、2人の動きが早すぎて、\\n あたしたちは割って入れなかったしな」",
"388000311_25": "「あの……、\\n つ、聞いてもいいでしょうか」",
"388000311_26": "「どうしました?」",
"388000311_27": "「緒川さんは、アカオニの攻撃を簡単に打ち消していたように\\n 見えました。あれはいったい、どうやったんですか」",
"388000311_28": "「よく気付きましたね。あれは、アカオニの術が\\n 五行思想を下敷きにしていたからできた対策です」",
"388000311_29": "「五行思想……?」",
"388000311_30": "「この世界の全てのものは、\\n 木火土金水の種類の元素から成り立つという考え方です」",
"388000311_31": "「この5つの元素には、相手を活かす<ruby=そうせい>相生</ruby>関係と、\\n 逆に相手を打ち消す<ruby=そうこく>相剋</ruby>関係があります」",
"388000311_32": "「相手を打ち消す……つまり、緒川さんはアカオニの術に\\n <ruby=そうこく>相剋</ruby>関係の術をぶつけたということですか?」",
"388000311_33": "「正解です。だからこそ、僕はアカオニよりも小さな力で、\\n 相手の術を打ち消すことができたんです」",
"388000311_34": "「もっとも、アカオニの術は錬金術を下敷きにしているので、\\n 地水火風の四大元素を応用していたようですが」",
"388000311_35": "「東洋と西洋における、\\n 自然界の力の定義の違いというわけね」",
"388000311_36": "「アカオニに対抗するには、あの奇抜な体術だけでなく、\\n 忍術への対策も必要になるということか……」",
"388000311_37": "「対策について詰めていくとしよう。……ここからは長くなるな。",
"388000311_38": " 装者の皆は、ひとまず休んでいてくれ」",
"388000311_39": "「おいおい、水くさいぜ、ダンナ。\\n せっかく来たんだ、あたしたちにも協力させてくれよ」",
"388000311_40": "「同感ね。\\n なにより、やられたままじゃ引き下がれないわ」",
"388000311_41": "「しかし……」",
"388000311_42": "「ここまで来て、お客さん扱いはなしですよ」",
"388000311_43": "「フッ……君たちには敵わないな。",
"388000311_44": " わかった。引き続き、協力を頼む」",
"388000311_45": "「おう、任せとけッ!」",
"388000311_46": "「それならまずは、アカオニの動きに対応できるよう、\\n 訓練が必要ね」",
"388000311_47": "「あの動きについていく、か……。\\n 一朝一夕でどうにかなることじゃなさそうだけど」",
"388000311_48": "「やっぱ、緒川さんに鍛えてもらうのが手っ取り早いよな」",
"388000311_49": "「司令が認めてくださるのであれば、\\n 僭越ながら手ほどきさせていただきましょう」",
"388000311_50": "「おまえほどの適任はいないだろう。",
"388000311_51": " 装者たちへの修行は任せたぞ」",
"388000311_52": "「了解しました。ただ、対策のために忍術のいろはを\\n 会得するには、それなりに時間がかかります」",
"388000311_53": "「えーと……やっぱり、\\n 何年も修行しなきゃいけなかったり」",
"388000311_54": "「本来はそうですが、今回は目的が限定されているので、\\n 皆さんであれば数日で成果を得られるかと考えています」",
"388000311_55": "「もっとも――短期間に修行を集中させるので、\\n 厳しいものになりますが」",
"388000311_56": "「数日か……それでも相当の短期間だが、\\n 再度の襲撃が予想される状況では間に合うかわからないな」",
"388000311_57": "「確かにそうですが、装者の皆さんが戦いに慣れている\\n とはいえ、それ以上の短縮は……」",
"388000311_58": "「付け焼き刃では、アカオニには届かない、か」",
"388000311_59": "「それでも、やれることをやるしか……」",
"388000311_60": "「そこでこの天才の出番ですよッ!」",
"388000311_61": "「うわッ、びっくりした……ッ!\\n な、なんだよいきなり……」",
"388000311_62": "「これは失礼しました。\\n 遅くなりましたが、あなたとは初めましてですね」",
"388000311_63": "「僕の名は、ドクター・ウェェェェェルッ!\\n この世界に人といない、超ッ 天才科学者にして英雄ッ」",
"388000311_64": "「お、おぉ……。\\n なんだかすごいやつがでてきたな……」",
"388000311_65": "「正直に、うさん臭いって言っていいのよ」",
"388000311_66": "「いや、そういうわけにも……」",
"388000311_67": "「…………」",
"388000311_68": "「ん? どうしたのかしら。\\n 私の顔、何かついてる」",
"388000311_69": "「いや……あんた、もしかして……。",
"388000311_70": " でも雰囲気は全然違うし……」",
"388000311_71": "「ああ、そういうこと。\\n あなたの世界にも櫻井了子はいるのね」",
"388000311_72": "「私のことはフィーネと呼んでもらった方が\\n しっくりくるのだけれど」",
"388000311_73": "「そうか……わかったよ。",
"388000311_74": " よろしくなッ、フィーネッ!」",
"388000311_75": "「ええいッ! 邪魔をするなッ!\\n せっかくの僕の見せ場だというのにッ」",
"388000311_76": "「はいはい、お好きにどうぞ。\\n どうせ、ろくでもない思いつきでしょうけど」",
"388000311_77": "「ふん……まあいい。\\n それでは、気を取り直して」",
"388000311_78": "「皆さん。この危機を乗り切る方法――\\n 僕が持っているとしたら」",
"388000311_79": "「あるのか?\\n そんな手段が」",
"388000311_80": "「あるのですよッ!\\n この状況を救う、たったつの手段がッ」",
"388000311_81": "「それこそ、この天才が発案した、世紀の大発明ッ!\\n その名も――ダイヴマシン・ニライカナイッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,56 @@
{
"388000321_0": "「ダイヴマシン……」",
"388000321_1": "「ニライカナイ……?」",
"388000321_2": "「そうッ! この天才が作り出した、\\n 世紀の――」",
"388000321_3": "「それはもういいから、早く説明に入りなさい」",
"388000321_4": "「理不尽ッ! 英雄の功績はあらゆるものが\\n 讃えられるべきだッ、そうでしょうッ」",
"388000321_5": "「あー、とりあえず、進めてくれないか?\\n 時間がないって話をしてんだからさ」",
"388000321_6": "「わ、わかりましたよ……英雄部隊の数名も呼んだことです。\\n 改めてこの素晴らしい装置について説明致しましょう」",
"388000321_7": "「ダイヴマシン・ニライカナイは、人の精神世界に入り、\\n 圧縮した時間の中で活動できる装置です」",
"388000321_8": "「人の精神世界……?\\n エルフナインの電界顕微観測鏡と似てるわね」",
"388000321_9": "「時間を圧縮できるっていうのは、\\n どういうことですか ",
"388000321_10": "「例えば、精神世界でまる1日を過ごしてから、\\n 現実世界に戻ってきたとしましょう」",
"388000321_11": "「しかし、現実世界では1時間しか経過していない、\\n ということになります」",
"388000321_12": "「もっとも、肉体は寝かせている状態になりますので、\\n 身体的な成長は望めませんが」",
"388000321_13": "「その点は問題ありません。皆さんに受けてもらう修行は、\\n 心構えに関するものが主となりますから」",
"388000321_14": "「そんなすごいものが……」",
"388000321_15": "「トンチキなことばっか言ってると思ったけど、\\n すごいやつなんだな。そんなもの作るなんて」",
"388000321_16": "「いえ、作ってないわよ」",
"388000321_17": "「……え?」",
"388000321_18": "「正確にいえば、\\n まだ完成していない、が正しいわね」",
"388000321_19": "「どういうこと……?」",
"388000321_20": "「そもそも、正式に認可した覚えがないのでな」",
"388000321_21": "「勝手に作ってたってことかよッ!?」",
"388000321_22": "「それに、この男は理論を組み立てて設計こそしたけれど、\\n 実際に手は動かしてないのよね」",
"388000321_23": "「何を言いますッ! 英雄部隊は僕の手足も同然ッ!\\n でしたら、僕が作ったも同じッ」",
"388000321_24": "「ひでぇ……おれたちの手柄はナシかよ?」",
"388000321_25": "「新入りだってがんばったのにな」",
"388000321_26": "「ええい、だまらっしゃいッ!\\n 天才は頭脳を動かすのが本分なのですッ」",
"388000321_27": "「天才なのは確かみたいだけど……\\n なんていうかさ」",
"388000321_28": "「ええ……<ruby=ひと>人間</ruby>としては、ね」",
"388000321_29": "「あ、あの……\\n その装置、完成していないってことでしたけど……」",
"388000321_30": "「ええ、あと一手間かける必要があるわ。\\n そこは科学よりも超常の解析に近い範疇――私の出番ね」",
"388000321_31": "「……本当はこいつと合作なんて死んでもごめんなんだけど」",
"388000321_32": "「ごねている場合ですか?」",
"388000321_33": "「わかってるわよ。……半日待ってなさい。\\n それで仕上げてあげる。いいわよね」",
"388000321_34": "「ああ、許可しよう。",
"388000321_35": " 政府への説明が少々面倒だが……」",
"388000321_36": "「それはあなたの仕事。\\n 胃痛に悩むタイプでもないでしょ」",
"388000321_37": "「それから、あなたの部隊の連中、借りるわよ。\\n あなたよりよっぽど役に立ちそうだわ」",
"388000321_38": "「冗談じゃないッ! 彼らはこの僕にだけ仕える戦士たちッ!\\n だからこその英雄部隊ッ」",
"388000321_39": "「篭絡しようなど考えたところで、\\n そんなことは無駄――」",
"388000321_40": "「別にいいですよ」",
"388000321_41": "「隊長よりは優しそうだしな」",
"388000321_42": "「なんですとォッ!?」",
"388000321_43": "「あら、わかってるじゃない。\\n それじゃ、ついてきなさい」",
"388000321_44": "「バカなッ!? 戻ってこい、おまえたちッ!\\n おまえたちは僕だけの英雄部隊のはずでしょうッ」",
"388000321_45": "「そんな女の色香に惑わされるなど、\\n 英雄部隊としての自覚が……、……ッ、……ッ」",
"388000321_46": "「……と、いうことになったが。",
"388000321_47": " 君たちはどうする? 休める部屋は用意するが」",
"388000321_48": "「いや、ただ待ってるのは性に合わない。\\n あたしらはあたしらで、今できることをやりたい」",
"388000321_49": "「同感ね。あのふざけた奴に翻弄されたままじゃ、\\n どのみち気が休まらないわ」",
"388000321_50": "「例えダイヴマシンが完成していなくても、\\n できることはあるはずです」",
"388000321_51": "「それでは、僕が稽古をつけましょう。\\n 忍の動きに慣れる一助になるかと」",
"388000321_52": "「ああ、よろしくお願いするよ、緒川さん。",
"388000321_53": " 一度その強さ、直接確かめたいと思ってたしな」"
}

View file

@ -0,0 +1,28 @@
{
"388000331_0": "「それでは、この場を借りて忍の体術というものを\\n 味わってもらいます」",
"388000331_1": "「ここでこうして向かい合うと、\\n 以前の立ち合いを思い出すわね」",
"388000331_2": "「なんだ、緒川さんと戦ったことがあるのか?」",
"388000331_3": "「ええ。\\n 翼たちと一緒にこの世界に来たときにね」",
"388000331_4": "「へぇ、それじゃあ忍者の動きには慣れてるってことか?」",
"388000331_5": "「そう言えればよかったけれど、アカオニとの戦いを見ると、\\n あのときよりも緒川さんの動きは凄まじかったわ」",
"388000331_6": "「ええ。アカオニの戦闘方法は純粋な忍術とは違った脅威……\\n 手加減のできる相手ではありませんでしたから」",
"388000331_7": "「わたしたちのときは手加減していたというの?」",
"388000331_8": "「いえ、そうではありません。そもそも、忍とは本来、\\n 面と向かって戦うことが本分ではありません」",
"388000331_9": "「意表を突けば、その必要はなくなりますからね。\\n 例えば――こんな風に」",
"388000331_10": "「消えた……ッ!?」",
"388000331_11": "「後ろです」",
"388000331_12": "「なっ……ッ!?\\n いつのまに……ッ」",
"388000331_13": "「と、このように相手の虚を突くのが、\\n 本来の忍の在り方です」",
"388000331_14": "「しかしアカオニには、こういった手管が通じなかった……。\\n 真っ向から戦っていたのは、そうせざるを得なかったからです」",
"388000331_15": "「それと、アカオニの動きが皆さんより\\n 極端に速いということはありません」",
"388000331_16": "「目くらましや詐術でこちらの注意を逸らし、\\n 意識に死角を作っているのです」",
"388000331_17": "「わかったような、わからないような……」",
"388000331_18": "「まずは身をもって体感するのがいいでしょう。\\n 皆さん、ギアを纏ってかかってきてください」",
"388000331_19": "「3人いっぺんにか?」",
"388000331_20": "「何か、問題がありますか?」",
"388000331_21": "「ヘッ、おもしろいじゃないか。",
"388000331_22": " やってやるさッ!」",
"388000331_23": "「甘く見られたもの――とは言えないわね。",
"388000331_24": " わたしも全力でやらせてもらうわッ!」",
"388000331_25": "「わたしだって、戦うためにここに来ています。\\n ――お願いしますッ」"
}

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@ -0,0 +1,14 @@
{
"388000332_0": "「はぁ、はぁ、はぁ……ッ!\\n ちくしょう、本も取れないなんて……ッ」",
"388000332_1": "「それに、緒川さん……息1つ、乱してない……」",
"388000332_2": "「どんな体力してるのよ……ッ!」",
"388000332_3": "「惜しかったですね。\\n ですが、着実によくなっていましたよ」",
"388000332_4": "「そんな涼しい顔で言われても、複雑な気分だな……」",
"388000332_5": "「み、皆さん……。\\n ダイヴマシンが、完成しました……ぐぅぅ……」",
"388000332_6": "「だ、大丈夫ですか?",
"388000332_7": " なんだか、すごく疲れてるみたいですけど……」",
"388000332_8": "「フィ、フィーネさんに、こき使われて……。\\n あの人はあの人で、隊長よりも人使いが荒い……」",
"388000332_9": "「疲労困憊のところ、連絡役までありがとな。\\n あんたは少し休んでいてくれ」",
"388000332_10": "「ありがとうございます……\\n 優しさが、沁みる……」",
"388000332_11": "「では、行きましょうか。せっかく急いで完成させてくださった\\n ようですし、修行の続きは、精神世界でということで」"
}

View file

@ -0,0 +1,43 @@
{
"388000411_0": "記憶の里",
"388000411_1": "「これがダイヴマシン……」",
"388000411_2": "「そうッ! これこそ驚天動地、世界を揺るがす大発明ッ!\\n その名も――ニライカナイッ」",
"388000411_3": "「その意味は『理想郷』。\\n 人の精神世界が理想郷であるかは疑問の余地があるけれど」",
"388000411_4": "「僕のネーミングに、何か文句でも?」",
"388000411_5": "「どうでもいいわよ、そんなの」",
"388000411_6": "「精神世界がどうとかって、正直よくわからないんだけど。\\n どういうことなんだ」",
"388000411_7": "「まず、ダイヴマシンに繋ぐメインの人間が必要となるわ。\\n 精神世界はこの役を担う人間の記憶から構築されることになる」",
"388000411_8": "「他の人間を精神世界に招くという意味では、\\n ネット空間におけるホスト役に近いかしら」",
"388000411_9": "「これはいわば、精神世界へ潜るという行為……\\n すなわち、<ruby=ダイヴ>潜水</ruby>するということよ」",
"388000411_10": "「なるほど、それでダイヴマシンと呼んでいるのね」",
"388000411_11": "「危険はないんですか……?」",
"388000411_12": "「1番負荷がかかるのはホスト役ね。\\n 精神力が強い者でなければ、後遺症が残りかねないわ」",
"388000411_13": "「ダンナが開発を認めなかったのは、\\n そういう理由か」",
"388000411_14": "「世界を揺るがす発明は常にリスクと隣り合わせ。\\n そのリスクを乗り越える者こそ、真の開拓者となるのですよ」",
"388000411_15": "「リスクって……安全は保証されてないのか?」",
"388000411_16": "「試運転に英雄部隊から被験者を募ったのですが、\\n 誰も手をあげなかったのです。まったく、嘆かわしい」",
"388000411_17": "「モルモット役はちょっと……」",
"388000411_18": "「そんなものをわたしたちに使わせようっていうの……?」",
"388000411_19": "「安心しなさい。\\n ホスト役には適任がいるから。ねぇ」",
"388000411_20": "「……まあ、そうなりますよね」",
"388000411_21": "「RN式をあれだけ連続使用できるんですもの。\\n あなたに任せるのが最適解よね」",
"388000411_22": "「もとよりそのつもりでしたので。\\n 装者の皆さんに押し付けるつもりはありません」",
"388000411_23": "「大丈夫なのか?」",
"388000411_24": "「お気遣いありがとうございます。\\n ですが、こういうときに身体を張るのは大人の役割でしょう」",
"388000411_25": "「――準備をお願いします」",
"388000411_26": "「あなたも随分と感化されたものね……」",
"388000411_27": "「装置は正常に起動しています。脳波、心拍数、共に正常。\\n 問題ありません、準備は万端です」",
"388000411_28": "「今のうちに言っておくけど、精神世界から戻ってくるときは、\\n ゆっくり目覚めることを意識するのよ」",
"388000411_29": "「そうしなかった場合、どうなりますか?」",
"388000411_30": "「精神に負荷がかかるわ。ちょうど、深い海から\\n 急浮上したときに減圧症が起こるのと同じね」",
"388000411_31": "「それは怖いですね。\\n 肝に銘じておきます」",
"388000411_32": "「それでは、装者の皆さん。\\n また、精神世界でお会いしましょう」",
"388000411_33": "「やけに落ち着いてるな。\\n 不安じゃないのか」",
"388000411_34": "「いついかなるときも、平常心であること。\\n 忍の心得のつですよ」",
"388000411_35": "「覚えておくわ」",
"388000411_36": "「それじゃあ、起動するわよ」",
"388000411_37": "「いつでもどうぞ」",
"388000411_38": "「この僕の発明の初の被験者となるあなたに敬意を表し、\\n 最大限のバックアップをすることを約束しましょう」",
"388000411_39": "「それでは……",
"388000411_40": " ダイヴマシン・ニライカナイ――<ruby=エントリー>起動</ruby>ッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,35 @@
{
"388000421_0": "「草薙の隠れ里……。\\n これが、ダイヴマシン・ニライカナイが作る精神世界――」",
"388000421_1": "「でも、今の里とは少し様子が違う。\\n これは、僕が里を後にする前の光景……」",
"388000421_2": "「……なるほど。記憶を元に構築しているというのは\\n 本当みたいですね」",
"388000421_3": "(懐かしいな……。\\n 総司兄さんや捨くんと駆け回った、小さい頃のままだ",
"388000421_4": "(あの頃の僕は、忍として一人前になることを目指していた……。\\n 一度は道を違えたけれど、またこの場所に戻ってくるなんて",
"388000421_5": "「……いえ、おかしいことではないですね。\\n ここが、僕の原点なのですから」",
"388000421_6": "(総司兄さん、捨くん。遠回りはしましたが、あの頃抱いていた\\n 一族を大事に思う気持ち、決して忘れていませんよ",
"388000421_7": "「ここが、緒川さんの精神世界か」",
"388000421_8": "「静かで、とっても綺麗なところですね」",
"388000421_9": "「前にお邪魔した隠れ家に似ているわね」",
"388000421_10": "(今は感傷に浸るよりも、\\n 装者の皆さんを導くことが大切ですね",
"388000421_11": "「ようこそ、皆さん。\\n 草薙の隠れ里へ」",
"388000421_12": "「それじゃあ、ここが緒川さんの故郷なのか?」",
"388000421_13": "「ええ。と言っても、あくまで僕の記憶の中の里なので、\\n 細部は異なるでしょうが」",
"388000421_14": "「なるほど。忍者修行をするなら、\\n ここ以上におあつらえ向きの場所はないっていうわけね」",
"388000421_15": "「ええ。この里は、忍者の能力が必要とされる様々な地形が\\n 揃っていますから」",
"388000421_16": "「それでは皆さん、準備はよろしいですか?」",
"388000421_17": "「いつでも大丈夫です。\\n そのために、ここへ来たんですから」",
"388000421_18": "「ああ。\\n どんな厳しい修行だってこなしてやるさ」",
"388000421_19": "「それで、わたしたちは何をすればいいの?」",
"388000421_20": "「では、先程に続き忍の動きについていく訓練としましょう。\\n ただし、今度は地形を最大限に活用させていただきます」",
"388000421_21": "「皆さんは3人がかりで、僕が持つこの巻物を奪ってください。\\n 皆さんはどんな攻撃をしてもいいですよ」",
"388000421_22": "「3人で巻物を奪う、ですか……。\\n なんだか、ずいぶんこっちに有利な気がしますけど」",
"388000421_23": "「いくら開けた場所だからって、簡単すぎやしないか?」",
"388000421_24": "「そんなことはありませんよ。\\n なにしろ――」",
"388000421_25": "「このものたちの攻撃をかわす必要がありますからね」",
"388000421_26": "「アルカ・ノイズッ!?」",
"388000421_27": "「便利ですね、ダイヴマシンというのは。\\n イメージすることで、こんなものまで生み出せるようです」",
"388000421_28": "「今から僕のことはアカオニだと思ってください」",
"388000421_29": "「なるほど。\\n 巻物はさしずめ、二課の機密文書ってところね」",
"388000421_30": "「このアルカ・ノイズの攻撃をかいくぐりながら、\\n 巻物を奪う……それが最初の試練です」",
"388000421_31": "「もっとも――草薙の頭領として、\\n そう簡単に捕まるつもりはありませんが」",
"388000421_32": "「それでは、始めましょう。\\n 忍の道は、一筋縄ではいきませんよ」"
}

View file

@ -0,0 +1,70 @@
{
"388000422_0": "「そこだぁッ!」",
"388000422_1": "「捉え損ねた……ッ!",
"388000422_2": " けど、まだだぁッ!」",
"388000422_3": "「その負けん気の強さ、強くなるには欠かせない素養です。",
"388000422_4": " ですが――」",
"388000422_5": "「うわぁッ!?」",
"388000422_6": "「正直に真っ向から突っ込むばかりでは、\\n こうして足を掬われますよ」",
"388000422_7": "「くッ……、速すぎるッ!\\n 何をされたかわからなかった……ッ」",
"388000422_8": "「次はわたしですッ!」",
"388000422_9": "「がむしゃらに飛び込んできたところで……、",
"388000422_10": " ……ッ!?」",
"388000422_11": "(……死角から攻撃が……ッ!?)",
"388000422_12": "「裏をかくのが忍者の戦い方、ですよねッ!」",
"388000422_13": "(ギアの機能を生かした時間差遠距離攻撃……ッ!\\n 向かってきたのは、僕を攻撃位置に誘導するためですかッ",
"388000422_14": "「ですが――ッ!」",
"388000422_15": "「ニンジャ・アルカ・ノイズが壁に……ッ!」",
"388000422_16": "「よい工夫だと思います。ですが、まだまだ素直すぎる。\\n 相手も隠し玉を潜ませていて当然と思ってください」",
"388000422_17": "「――勉強になるわ」",
"388000422_18": "「隠し玉はわたしよッ!\\n これで間合いに捉えたッ」",
"388000422_19": "「未来さんの攻めに合わせてきましたか。\\n いい連携です」",
"388000422_20": "「このまま畳みかけるッ!」",
"388000422_21": "「く……ッ!」",
"388000422_22": "「わたしの世界のあなたから、何度も訓練を受けたッ!」",
"388000422_23": "「……ッ、僕の動きにこうもついてくるなんて……ッ!",
"388000422_24": " なら、これはどうですかッ!?」",
"388000422_25": "「クナイッ!?\\n 袖に隠していたのか……ッ」",
"388000422_26": "「いけない、マリアさ――」",
"388000422_27": "「――それも読んだッ!」",
"388000422_28": "「あの距離からの投擲を避けた……ッ!?」",
"388000422_29": "「もらった――ッ!」",
"388000422_30": "「巻物に手が届くぞッ!」",
"388000422_31": "「え……ッ!?\\n 身体が、動かない……ッ」",
"388000422_32": "「影を見てください」",
"388000422_33": "「影……?」",
"388000422_34": "「これは……わたしの影にクナイがッ!?\\n 避けたはずなのに、どうしてッ」",
"388000422_35": "「罠を張っておいたんです。\\n ロープを切れば、上からクナイが降ってくるように」",
"388000422_36": "「それじゃあ、さっき投擲したクナイは……?」",
"388000422_37": "「はい。\\n 罠を作動させるためのものです」",
"388000422_38": "「けど、ピンポイントでこの罠の場所に来るなんて、\\n わからないはず……」",
"388000422_39": "「もしかして、さっきマリアさんに押されているように\\n 見えたのも……」",
"388000422_40": "「演技だったっていうわけね……」",
"388000422_41": "「ご明察です」",
"388000422_42": "「このように、忍とは必ずしも真っ向から相手を倒すことだけを\\n 目的としているわけではありません」",
"388000422_43": "「アカオニの目的が二課の消滅だというなら、\\n 本来、アカオニは我々と正面切って戦う理由はありません」",
"388000422_44": "「聖遺物や機密を奪われるだけでも、\\n 日本国内における二課の存続は危うくなるのですから」",
"388000422_45": "「ですので、僕たちはアカオニが例え全力で逃げようとしても、\\n それを阻止しなければならないのです」",
"388000422_46": "「なるほど。\\n ことの重大さが身に染みてわかってきたよ」",
"388000422_47": "「ご理解いただけてなによりです。",
"388000422_48": " ……そろそろ休憩にしましょうか?」",
"388000422_49": "「いえ、まだやれますッ!」",
"388000422_50": "「ああ。\\n まだ何も掴めていないからな」",
"388000422_51": "「あなたが策を弄するなら、\\n その先の先まで読めるようになってみせるッ」",
"388000422_52": "「わかりました。\\n それでは、修行を続けましょう」",
"388000422_53": "「お願いしますッ!」",
"388000422_54": "(苦境でも決して折れない心の強さは、忍の大事な素養。\\n 皆さんは最初からそれを持っている",
"388000422_55": "(あとは、アカオニの再襲撃まで、僕がどこまで彼女たちの\\n 可能性を伸ばせるかにかかっていますね",
"388000422_56": "「もう日が暮れますね。時間経過に伴って、\\n 僕のイメージが影響しているみたいです」",
"388000422_57": "「そういうわけですので、皆さん。\\n 今日の修行はここまでとしましょう」",
"388000422_58": "「結局、一度も巻物に手さえ触れられなかったわね……」",
"388000422_59": "「ちっくしょうッ!\\n 明日だ、明日こそは絶対に奪い取ってやるッ」",
"388000422_60": "「身体の疲れは感じないはずなのに……。\\n もう一歩も動けそうにない……」",
"388000422_61": "「精神の疲労を、そのまま肉体の疲労のように\\n 感じているのかしら……」",
"388000422_62": "「休養も修行のうちです。\\n 今日のところは、僕の育った家で休んでください」",
"388000422_63": "「明日からは、本格的な修行に入りますからね」",
"388000422_64": "「明日から……?」",
"388000422_65": "「っていうことは……」",
"388000422_66": "「今日のは本格的じゃなかったの……ッ!?」",
"388000422_67": "「つくづくとんでもないな、忍者ってのは……」"
}

View file

@ -0,0 +1,67 @@
{
"388000511_0": "座学で学ぶ、五行相剋",
"388000511_1": "「ふあああぁ……。",
"388000511_2": " よく寝たなぁ」",
"388000511_3": "「フフ、大きなあくびですね」",
"388000511_4": "「けど、精神世界の中なのに眠るって、\\n どういうことなのかしら」",
"388000511_5": "「そういえばそうだな。\\n しかも、現実だと時間も経ってないんだろ」",
"388000511_6": "「それでこんなにすっきりするんだったら、\\n 得した気分だな」",
"388000511_7": "「そういう問題かしら……?」",
"388000511_8": "「皆さん、お揃いのようですね」",
"388000511_9": "「おはようございます」",
"388000511_10": "「おはようございます。\\n よく眠れましたか」",
"388000511_11": "「ああ。\\n ぐっすりだ」",
"388000511_12": "「それはよかったです。\\n 疲れを引きずっては、修行に支障をきたしますから」",
"388000511_13": "「この世界では、精神の疲れがそのまま肉体の疲れとして\\n 感じるみたいね」",
"388000511_14": "「そう考えると、緒川さんがわたしたち3人相手に\\n 涼しい顔をしていたのって……」",
"388000511_15": "「とんでもない精神力ということになるわね……」",
"388000511_16": "「それで、今日はどんな修行をするんだ?\\n こっちの準備はばっちりだッ」",
"388000511_17": "「そうですね。まずは忍術というものをよく知ってもらうため、\\n 座学といきましょうか」",
"388000511_18": "「……へ?」",
"388000511_19": "「ダイヴマシンに入る前にお話しした、\\n 五行思想については覚えていますか」",
"388000511_20": "「ああ、えーっと……\\n 水金地火木土天海、だったか」",
"388000511_21": "「それは太陽系の惑星の順番ですね……」",
"388000511_22": "「でも、大体あってるわよね」",
"388000511_23": "「惑星への名づけも、五行思想によるものですからね。\\n これに太陽と月を足したものが、つの曜日となります」",
"388000511_24": "「へぇ、そうだったのか」",
"388000511_25": "「意外と身近なところにあるものですね」",
"388000511_26": "「ええ。しかし、アカオニの術は五行思想ではなく、\\n 錬金術の四大元素を使ったものになっています」",
"388000511_27": "「四大、つまりは地水火風ね。\\n 被っているものもあるけど、つ足りないわね」",
"388000511_28": "「はい。ここで重要となるのが、アカオニが自分の術を\\n 忍術と規定していることです」",
"388000511_29": "「これはアカオニのこだわりによるものと思われますが、\\n だからこそ、突ける弱点もあります」",
"388000511_30": "「それが、<ruby=ごぎょうそうこく>五行相剋</ruby>です」",
"388000511_31": "「アカオニの術をかき消していたやつだな」",
"388000511_32": "「ええ。僕の術は装者の皆さんと比べれば、\\n 生み出せる力はそこまで大きくはありません」",
"388000511_33": "「しかし、適切な相性の術をぶつければ、\\n 小さな術でもかき消せます」",
"388000511_34": "「ただ、アカオニの錬金術師としての練度は、\\n 僕の術の威力を上回っています」",
"388000511_35": "「確かに、とんでもなく派手だったもんな」",
"388000511_36": "「相応の威力はある、ということね……」",
"388000511_37": "「ええ。アカオニの相手は主に僕がするつもりですが、\\n 戦場ではどんな状況になるかわかりません」",
"388000511_38": "「そこで、皆さんにもアカオニの術への対処を\\n 学んでもらおうと思います」",
"388000511_39": "「なるほど、それで座学か」",
"388000511_40": "「はい。そして要点は、アカオニの術が結局のところ\\n 忍術の紛い物であることです」",
"388000511_41": "「アカオニは錬金術の風の要素を\\n 木遁に見立てているようでした」",
"388000511_42": "「その練度は他の術より低かったのですが、\\n より重要なのは、要素がつ足りないことです」",
"388000511_43": "「五行思想における金、ね」",
"388000511_44": "「そうです。錬金術には、金遁がありません。\\n つまり、アカオニが予期せぬ術で虚を突けるというわけです」",
"388000511_45": "「なるほどな。\\n それがアカオニ攻略の鍵ってわけか」",
"388000511_46": "「でも、金遁っていうのはどんなものなんですか?\\n アニメとかマンガでも、あまり見たことがないような……」",
"388000511_47": "「あれじゃないか、小銭を指で弾いてぶつけるやつ。\\n 時代劇で見たことあるぞ」",
"388000511_48": "「着眼点がいいですね、あながち間違いではありません。\\n 金遁というのは他の術よりも曖昧で、解釈が広いんです」",
"388000511_49": "「例えば、さっき言ったように小銭を使ったり、\\n 鐘を鳴らして人心を惑わしたり、多種多様です」",
"388000511_50": "「どれも相手を倒すには向いていない気がするけど……?」",
"388000511_51": "「真っ向から倒すだけが忍の技ではありませんからね。\\n とはいえ、金遁の会得は他とはまた違った難しさがあります」",
"388000511_52": "「忍術を理解してもらうために説明はしましたが、\\n 金遁については僕が請け負うので、ひとまず忘れてください」",
"388000511_53": "「それじゃあ、あたしたちは何をすればいいんだ?」",
"388000511_54": "「忍術の会得にまでは至らないかもしれませんが……。\\n まずは木・火・土・水を肌で感じていただきます」",
"388000511_55": "「知り、理解することは術を解釈し、\\n 応用する際の大きな強みになりますので」",
"388000511_56": "「わかりました。\\n さっそくお願いします」",
"388000511_57": "「ああ。そうと決まったら、さっそく……、",
"388000511_58": " ……ッ!?」",
"388000511_59": "「なんだ、身体が動かない……ッ!?」",
"388000511_60": "「まさかこれは……影縫いッ!?」",
"388000511_61": "「いつの間に……?」",
"388000511_62": "「――と、このように、忍者の術は相手の意表を突くことで、\\n 最大の効果を発揮することができます」",
"388000511_63": "「修行中も、油断はしないようにしてくださいね」",
"388000511_64": "「いつ仕掛けられたのか、まったくわからなかった……。\\n 本当にとんでもないわね、本物の忍者は」"
}

View file

@ -0,0 +1,22 @@
{
"388000521_0": "「――忍の役割は時代に応じて多岐に渡ります」",
"388000521_1": "「要人の警護を請け負うこともあれば、\\n 敵対組織から情報を盗み出すこともあります」",
"388000521_2": "「その場合も、忍び込んで盗み出すこともあれば、\\n 変装して他人を演じることもあります」",
"388000521_3": "「それらのいずれにも共通して必要なことは、\\n 常に平常心であることです」",
"388000521_4": "「だからって……滝行はないんじゃないの?」",
"388000521_5": "「身体の芯まで冷えたな、あれは」",
"388000521_6": "「わたしは火のそばでの瞑想が大変でした……」",
"388000521_7": "「ギアを纏わずに断崖絶壁を登るとか、\\n 正気じゃないわよね」",
"388000521_8": "「木の上だけを伝って移動とか、無茶だと思うんだよな。\\n ……緒川さんは水の上を走ってたけど」",
"388000521_9": "「お疲れのようですね、皆さん。\\n 休憩されますか」",
"388000521_10": "「いえ、まだやれるわ。\\n 休んでなんかいられない」",
"388000521_11": "「こうしている間にもアカオニがやってくるかもしれない」",
"388000521_12": "「ああ。雪辱も果たせずに、\\n おめおめと帰れないからな」",
"388000521_13": "「士気が高いようでなによりです」",
"388000521_14": "「それでは、昨日と同様の巻物争奪戦に移りましょうか」",
"388000521_15": "「今日こそ巻物を奪ってやるッ!」",
"388000521_16": "「ええ。\\n 少しは忍者の動きにも慣れてきたわ」",
"388000521_17": "「お願いしますッ!」",
"388000521_18": "「わかりました。\\n それでは――」",
"388000521_19": "「――巻物争奪戦を始めます。僕も皆さんの本気に応えるべく、\\n あらゆる手段を使わせてもらうとしましょう」"
}

View file

@ -0,0 +1,24 @@
{
"388000522_0": "「受けなさいッ!」",
"388000522_1": "「ニンジャ・アルカ・ノイズなど、\\n 物の数ではないわッ」",
"388000522_2": "「昨日よりもずっと戦えるッ!」",
"388000522_3": "「こいつらの動きにも慣れてきたッ!」",
"388000522_4": "「ニンジャ・アルカ・ノイズ相手なら、\\n もう十分戦えるようですね。さすがです」",
"388000522_5": "「それでは、これはどうです?",
"388000522_6": " ――火遁ッ!」",
"388000522_7": "「炎の術……ということは、\\n <ruby=そうこく>相剋</ruby>させるべきは水ッ!」",
"388000522_8": "「上手いッ!\\n 小川の水を巻き上げて相殺したッ」",
"388000522_9": "「いい判断です。\\n それでは、その水を使わせてもらうとしましょう」",
"388000522_10": "「なッ、マリアが巻き上げた水を\\n そのまま自分の術に……ッ」",
"388000522_11": "「水に打ち<ruby=か>剋</ruby>てるのは……土ッ!」",
"388000522_12": "「これかッ!\\n おおぉッ」",
"388000522_13": "「土を巻き上げて水に対しての壁としましたか」",
"388000522_14": "「どうだい、なかなかのもんだろ?」",
"388000522_15": "「自前で土や水は用意できないから、\\n 自然物で代替しただけだけどね。勝手はわかったわ」",
"388000522_16": "「ええ、驚きました。さすが、いくつもの修羅場を\\n くぐり抜けているだけあって、呑み込みが早いですね」",
"388000522_17": "「ですが、1つ覚えていていただきたいのは、忍の本質は\\n 小手先の技術ではなく、刃の下に心を置くということです」",
"388000522_18": "「どういう意味だ……?」",
"388000522_19": "「それはおいおい、おわかりになると思います」",
"388000522_20": "(むしろ、それを理解できなければ、\\n アカオニに対抗するのは難しい……",
"388000522_21": "(ですが、皆さんならきっと――)"
}

View file

@ -0,0 +1,52 @@
{
"388000531_0": "「ふー、忍者の修行ってのは、\\n なかなかハードだな」",
"388000531_1": "「厳しい修行を乗り越えなければ、\\n 命懸けの任務には送り出せませんからね」",
"388000531_2": "「逆に言えば、修行に耐えられる者を選別しているというわけね」",
"388000531_3": "「ええ。術の才能があっても、\\n 心が折れてしまっては忍としての適正があるとは言えません」",
"388000531_4": "「厳しいけど、それも1つの優しさなんですね……」",
"388000531_5": "「術の才能か……。",
"388000531_6": " 緒川さんは、他にはどんな術を使えるんだ?」",
"388000531_7": "「そうですね。\\n 口寄せなどはどうでしょう」",
"388000531_8": "「確か、動物とかを呼び出すことができるんですよね」",
"388000531_9": "「ええ、呼び出せますよ。\\n ガマなどは基本的な口寄せのつですから」",
"388000531_10": "「など……ということは、他にも?」",
"388000531_11": "「そうですね……興味がおありのようですし、\\n 見ていただくのが早いかもしれません」",
"388000531_12": "「かわいいッ!」",
"388000531_13": "「おー、ほんとにでてきた」",
"388000531_14": "「ふわふわのふかふか……ッ!\\n な、撫でさせてくれるかしら……ッ」",
"388000531_15": "「…………」",
"388000531_16": "「……ハッ!」",
"388000531_17": "「こほん……。\\n なるほど、忍術というのは奥が深いわね」",
"388000531_18": "「何も無かったことにした……」",
"388000531_19": "「いいんだぞ、マリア。無理しないで、\\n かわいいでちゅね、ってしてても」",
"388000531_20": "「そんな言葉遣いはしていないわよッ!」",
"388000531_21": "「照れるなって。",
"388000531_22": " なあ、こいつって、緒川さんの命令を聞いてくれるのか?」",
"388000531_23": "「ええ。概ね、僕の意志に従った行動を\\n 取ってくれますよ」",
"388000531_24": "「へぇ。\\n それじゃあ、朝起こしてもらったりできるのか」",
"388000531_25": "「起こしてもらう……ッ!",
"388000531_26": " それは……いいわね」",
"388000531_27": "「残念ながら、口寄せは術者が気を失ったりすれば、\\n 消えてしまうんです。だから、その使い方はできませんね」",
"388000531_28": "「そう……」",
"388000531_29": "「でもさ、緒川さん。\\n こいつ、戦えるとは思えないけど……なんの役に立つんだ」",
"388000531_30": "「そうですね……せっかくですから、\\n ここで忍の心の在り方についてレクチャーするとしましょう」",
"388000531_31": "「忍の技の冴えに必要なのは、\\n 何も技術だけではありません」",
"388000531_32": "「己が何を成したいのか、成すべきなのか――\\n それを明確にすることが重要です」",
"388000531_33": "「術に、そして己自身にどんな『役割』を与えられるか、\\n これを強く意識することで、忍の術は冴えるものなのです」",
"388000531_34": "「精神論で術が強くなったり弱くなったりするっていうことか?」",
"388000531_35": "「近いですが、単純な強さ弱さだけで測れることでも\\n ないのですよ、忍の技は」",
"388000531_36": "「確かに、この子に戦闘能力はありません。\\n しかし、忍の任務は探索、索敵、妨害と多岐に渡ります」",
"388000531_37": "「そして今、『皆さんに巻物を奪われないこと』が、\\n 僕自身に、そして術に込めた最大の『役割』です」",
"388000531_38": "「……ちょっと待って。",
"388000531_39": " 緒川さん……巻物を持っていないわッ!」",
"388000531_40": "「なんだって……ッ!?\\n いつの間に……」",
"388000531_41": "「術に役割を与える……\\n ひょっとして、この子が」",
"388000531_42": "「お気付きになられたようですね。\\n しかし、奪うことができますか ――<em=・>この子たち</em>から」",
"388000531_43": "「たち……?」",
"388000531_44": "「うわッ!?\\n いつの間にこんなに……」",
"388000531_45": "「くッ、かわいさで惑わそうというの?\\n これが忍の技……、なんて凶悪な……ッ」",
"388000531_46": "「マ、マリアさん……\\n それはちょっと違うと思うんですけど……」",
"388000531_47": "「この子たちに与えた役割は、皆さんから巻物を護ることです。\\n ただの猫と侮っていては、苦戦しますよ」",
"388000531_48": "「ニャ~」",
"388000531_49": "「挑発してるのか、こいつら?\\n ……やってやろうじゃないかッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,70 @@
{
"388000541_0": "「木の葉を巻き上げての目くらまし……ッ!\\n なかなかに厄介ね」",
"388000541_1": "「だけど……神経を研ぎ澄ませれば、\\n 見つけられないわけではないッ」",
"388000541_2": "「……見えたッ!\\n そこッ」",
"388000541_3": "「いい目をしていますね。\\n 見つかるとは思いませんでした」",
"388000541_4": "「目だけだと思わないでッ!」",
"388000541_5": "「一度捕らえた相手を放そうとしない、\\n その素早さと執念、さすがですね」",
"388000541_6": "「いつまでも逃げ切れると思わないことねッ!」",
"388000541_7": "「木を盾にしようというの?\\n その盾、一振りで切り倒して――」",
"388000541_8": "「ニャァ~~」",
"388000541_9": "「……ッ、猫……ッ!?」",
"388000541_10": "「猫を慮って攻撃を止めましたね。\\n 本物の猫だと思いましたか」",
"388000541_11": "「まさか、鳴き真似……ッ!?",
"388000541_12": " ふざけた真似をッ!」",
"388000541_13": "「覚悟ッ!」",
"388000541_14": "「ニャァ~」",
"388000541_15": "「え……ッ!?\\n 本物ッ」",
"388000541_16": "「頭の上がお留守ですよ」",
"388000541_17": "「上かッ!」",
"388000541_18": "「おや、いいんですか?\\n 僕に注意を向けて」",
"388000541_19": "「え?」",
"388000541_20": "「シャーッ!」",
"388000541_21": "「あいたたたッ!?\\n ちょっと、やめなさ……、やめて……ッ」",
"388000541_22": "「何遊んでるんだッ!」",
"388000541_23": "「遊んでるわけじゃないわよッ!",
"388000541_24": " 猫ちゃんが……」",
"388000541_25": "「なら猫は任せたッ!\\n 緒川さんはあたしが捕まえるッ」",
"388000541_26": "「体力には自信があるんだッ!\\n 簡単に逃げられると思わないでほしいねッ」",
"388000541_27": "「そのようですね。\\n なら、これはどうですか ――火遁ッ」",
"388000541_28": "「――見切ったッ!」",
"388000541_29": "「槍で叩き落した……ッ!",
"388000541_30": " <ruby=そうこく>相剋</ruby>もせずに真っ向から迎撃するとは……さすがですね」",
"388000541_31": "「力押しもまた、研ぎ澄ませば立派な技ですね」",
"388000541_32": "「役割が重要って言うなら、\\n これが槍を携えたあたしの役割だッ」",
"388000541_33": "「なるほど、これは一本取られました。",
"388000541_34": " では、もう一度……火遁ッ!」",
"388000541_35": "「何度だって撃ち落としてやるさッ!\\n うおおぉ――ッ」",
"388000541_36": "「……って、水の塊ッ!?\\n 押し流され……うわぁぁぁ――ッ」",
"388000541_37": "「水流が相手では、ギアをもってしても切り落とせは\\n しないでしょう」",
"388000541_38": "「卑怯だぞおおぉぉぉぉぉ……――ッ!」",
"388000541_39": "「ハッタリとて、立派な戦術ですよ。\\n 武術におけるフェイントと一緒です」",
"388000541_40": "「緒川さん」",
"388000541_41": "「これは……\\n 堂々とした登場ですね」",
"388000541_42": "「わたしたちはまだ、忍の本質というものがわかりません。\\n 少しでも、ヒントをいただけたらと……思いまして」",
"388000541_43": "「なるほど。\\n 構いませんよ」",
"388000541_44": "「この里が、緒川さんの育ったところなんですよね?」",
"388000541_45": "「ええ、そうなりますね。\\n 幼い頃から、修行修行の毎日でしたけど」",
"388000541_46": "「景色もすごく綺麗だし、落ち着きますよね。これだけ鮮明に\\n 思い出せるっていうことは、やっぱり大事な場所なんですか」",
"388000541_47": "「はい。やはり、この景色は僕にとっての原点なので、\\n こうしていると、昔を思い出しますよ」",
"388000541_48": "「あの頃、僕は兄や弟と一緒に修行に励んでいました」",
"388000541_49": "「本当に想い出でいっぱいの場所なんですね……」",
"388000541_50": "「そうですね。\\n 懐かしいです」",
"388000541_51": "(……今だッ!)",
"388000541_52": "「ですが――」",
"388000541_53": "「きゃッ!? う、動けないッ!?\\n これは……ロープで縛られてるのッ」",
"388000541_54": "「僕の意識を逸らして生まれた隙に、\\n 術者自身の拘束を狙う――いい手段です」",
"388000541_55": "「ただ、やはり動きが正直すぎましたね。あなたは心根が\\n 素直なので、そもそも虚を突くのには向いていないのでしょう」",
"388000541_56": "「ですが、忍の技を盗もうとするその心意気は\\n とてもよいと思います」",
"388000541_57": "「……こうもあっさりやられちゃうと、\\n 褒められるのも複雑です……」",
"388000541_58": "「うー、ひどい目にあった……。\\n 服が濡れて気持ち悪い」",
"388000541_59": "「わたしなんて引っ掻き傷だらけよ。\\n ……で、あなたもやられたわけね」",
"388000541_60": "「面目次第もございません……」",
"388000541_61": "「では皆さん揃ったところで、\\n 仕切り直しと――」",
"388000541_62": "「……いえ、どうやらそうもいかないようですね」",
"388000541_63": "「どういうこと?」",
"388000541_64": "「外でフィーネさんたちがお呼びのようです」",
"388000541_65": "「何も聞こえないけど……?」",
"388000541_66": "「精神世界のホストになった人にしか\\n 聞こえないんでしょうか」",
"388000541_67": "「恐らくそうでしょう。\\n 一度、現実世界に戻りましょう」"
}

View file

@ -0,0 +1,80 @@
{
"388000611_0": "クールジャパンのファミレスにて",
"388000611_1": "「あたしら……戻ってきたんだよな?」",
"388000611_2": "「ええ。精神世界の中とまったく感覚が変わらないから、\\n ほとんど実感がないけれど」",
"388000611_3": "「この天才が設計したダイヴマシンが作り出すのは、\\n まさにもうつの現実ッ そこに差などありはしませんッ」",
"388000611_4": "「ええ……まさしく、これは現実ね」",
"388000611_5": "「<size=25>精神世界の中にまでドクターがやってくるなんて、\\n ゾッとしないもの</size>」",
"388000611_6": "「ん?\\n 何か言いましたか」",
"388000611_7": "「でも、どうして中断しちゃったんですか?\\n 何か問題がありましたか……」",
"388000611_8": "「まさか、アカオニがもう来やがったか?」",
"388000611_9": "「いいえ、そうじゃないわ。\\n ちょっと小休止でも入れようかと思ってね」",
"388000611_10": "「そんな悠長なこと言ってられるかッ!\\n もう丸日以上経ってるってのにッ」",
"388000611_11": "「ご安心を。\\n 現実世界では時間ほどしか過ぎていません」",
"388000611_12": "「ほんとだ……\\n 入ったときから時間がほとんど進んでない」",
"388000611_13": "「どうやら、このダイヴマシンの性能は本物みたいね」",
"388000611_14": "「それはわかったけど、\\n 急ぐに越したことはないだろ」",
"388000611_15": "「ダイヴマシンが人の精神に与える影響は未知数なの。\\n 気付かないうちに精神が消耗しているはずよ」",
"388000611_16": "「いざアカオニが来たときに動けない、\\n なんてことにはなりたくないでしょ」",
"388000611_17": "「それはそうだけど……」",
"388000611_18": "「それに、ここまでのデータをフィードバックして、\\n ダイヴマシンも調整したいしね」",
"388000611_19": "「そうね……1、2時間くらい、\\n 外で息抜きでもして来なさい」",
"388000611_20": "「息抜きって……観光でもしていろということ?\\n この状況で」",
"388000611_21": "「専門家がこう言っているんです。休めるときには気持ちを\\n 切り替えて休むことも、必要なことですよ」",
"388000611_22": "「それは……一理あるわね。",
"388000611_23": " わかったわ、わたしたちはおとなしくしていましょう」",
"388000611_24": "「おい、いいのか?」",
"388000611_25": "「ごねたって仕方ないわ。\\n わたしたちは専門家じゃないのだから」",
"388000611_26": "「緒川さんはどうするんですか?」",
"388000611_27": "「僕はここで装置の調整を手伝います。\\n 被験者として、協力できることもあるでしょうから」",
"388000611_28": "「わかりました。\\n それじゃあ、わたしたちは街に出てみますね」",
"388000611_29": "「それじゃあ、また後で」",
"388000611_30": "「……行ったわよ」",
"388000611_31": "「く……ッ!」",
"388000611_32": "「ちょっと、大丈夫なの?」",
"388000611_33": "「……少し、眩暈がしただけです」",
"388000611_34": "「やっぱり、いくら人並外れて強靭な精神力を持つあなたでも、\\n 全然平気とはいかないみたいね」",
"388000611_35": "「まだまだ改良の余地があるわね。実用化には程遠いわ。\\n ……どうする ここでやめておく」",
"388000611_36": "「……いえ、僕なら大丈夫です」",
"388000611_37": "「時間をかけて調整すれば、\\n 負荷は減らせるかもしれないけど」",
"388000611_38": "「そんな猶予はありません。\\n 装者の皆さんが戻り次第、再開します」",
"388000611_39": "「ま、そう言うと思ったわ」",
"388000611_40": "「仕方ありませんね。それでは、時間が許す限り負荷を\\n 軽減できるよう、調整を試みるとしましょう」",
"388000611_41": "「お願いします」",
"388000611_42": "「なんだかんだ言っても、こうして外に出てみると、\\n おもしろいもんだよな、並行世界ってのは」",
"388000611_43": "「あたしの世界だと、あの辺にいい飯屋があったんだけどな。\\n こっちの世界だと全然違う店なんだな」",
"388000611_44": "「フフ。\\n 間違い探しみたいでおもしろいですよね」",
"388000611_45": "「アーティストなんかも、同じく世に出てる人もいれば、\\n まったく知らない人もいたりするのよね」",
"388000611_46": "「本当に、並行世界の数だけ色んな可能性があるんだなぁって\\n 思い知らされるよ……」",
"388000611_47": "「……にしても、あたしら、結局楽しんじゃってるけど。\\n いいのかな」",
"388000611_48": "「わたしも思うところがないわけじゃないけど、\\n 精神が消耗していると言われれば、否定できないから」",
"388000611_49": "「そうですね。今はこの世界の人たちを信じて、\\n わたしたちは少しでも回復させてもらいましょう」",
"388000611_50": "「そうだな……だったらあたしも、\\n ぐいーっと羽を伸ばすとするかッ」",
"388000611_51": "「あ……」",
"388000611_52": "「大きな腹の虫ね」",
"388000611_53": "「フフ……ッ」",
"388000611_54": "「いやぁ、照れるね。精神世界では腹は減らなかったけど、\\n 考えてみればいい時間だな」",
"388000611_55": "「確かに、腹ごしらえしておくタイミングとしてはぴったりね」",
"388000611_56": "「それじゃあ、ご飯でも食べに行きましょうか。\\n ちょうどあそこにレストランがありますし」",
"388000611_57": "「だな。腹が減っては戦はできぬだ」",
"388000611_58": "「へぇ、色々あるんだな、ここのレストラン。\\n 帰ったらダンナにも教えてやるか」",
"388000611_59": "「あなたの世界にあるとは限らないんじゃない?",
"388000611_60": " わたしたちの世界にも……あったかしら?」",
"388000611_61": "「なかったような……でも、自分の世界で食べられないものを\\n 食べられるみたいで、なんだか得した気分かも」",
"388000611_62": "「確かにね。\\n せっかくの食事、楽しみましょうか」",
"388000611_63": "「賛成。と、いうわけで、あたしはこのAランチ、\\n ライス大盛にするかな」",
"388000611_64": "「わたしはパスタにしようかな」",
"388000611_65": "「ンン〜ッ! このレストラン、ニンジャに相応しい\\n メニューはなくとも、味はなかなかでゴザルなッ」",
"388000611_66": "「……………………」",
"388000611_67": "「あの、今の声って……」",
"388000611_68": "「いえ……まさかそんなはず……。\\n だってここ、ランチタイムのレストランよ……」",
"388000611_69": "「だ、だよなぁ。\\n こんなところに、アイツがいるわけ――」",
"388000611_70": "「なるほどッ、そうくるでゴザルかッ!」",
"388000611_71": "「さすがは本場のニンジャコミックッ!\\n 新しいジュツのヒントが満載でゴザルッ」",
"388000611_72": "「食事を摂りつつ本場のニンジャコミックを嗜む……\\n なんて有意義な時間でゴザろうか」",
"388000611_73": "「……………………」",
"388000611_74": "「……ちょっと、覗いてみましょうか」",
"388000611_75": "「ああ……」",
"388000611_76": "「しかし、この鏡の中に潜むジュツはどう再現すべきか……。\\n 天井に立つくらいなら、なんなくできるでゴザルが……」",
"388000611_77": "「……アカオニッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,42 @@
{
"388000621_0": "「……アカオニッ!」",
"388000621_1": "「む? お主たちは、\\n 二課にいた奇天烈な恰好のおなごたちではゴザらぬか」",
"388000621_2": "「誰が奇天烈よッ!」",
"388000621_3": "「おまえにだけは言われたくないってのッ!」",
"388000621_4": "「フハハハッ!\\n これは失礼したでゴザルッ」",
"388000621_5": "「ていうか、その恰好で出歩いてるのかよ……?」",
"388000621_6": "「無論、これは<ruby=それがし>某</ruby>自慢の一張羅。ニンジャの本場たる\\n 二ホンに来たなら、正装であるべきでゴザろう」",
"388000621_7": "「よくそれで警察に捕まらないわね……」",
"388000621_8": "「通行人から、一緒に写真を撮ってくれとは頼まれたでゴザルな。",
"388000621_9": " もちろん、快く応じたでゴザルッ!」",
"388000621_10": "「忍者があちこちで撮影に応じたんですか……?」",
"388000621_11": "「イベントかなんかと勘違いされたんじゃないか……?」",
"388000621_12": "「それか、日本好きの面白外国人だと思われたかね。",
"388000621_13": " ……いえ、そんなことはどうでもいいのよ」",
"388000621_14": "「いったい、何が目的?\\n 破壊工作でもしようというの」",
"388000621_15": "「これは異なことを。せっかくだから、\\n 任務の合間に観光していただけでゴザル」",
"388000621_16": "「<size=25>か、観光……?\\n ……頭が痛くなってきたわ</size>」",
"388000621_17": "「<size=25>よく見れば、紙袋にコミックとか、\\n 忍者のおもちゃなんかがいっぱい……</size>」",
"388000621_18": "「<size=25>こんなバカ相手に大真面目に対策してたと思うと、\\n さすがに力が抜けるな……</size>」",
"388000621_19": "「<size=25>……けど、こうして出会っちまったからには、\\n ほっとくわけにもいかない</size>」",
"388000621_20": "「<size=25>でも、ここでニンジャ・アルカ・ノイズを出されたら、\\n 周囲への被害は甚大だわ。なんとかして外へ誘導しないと……</size>」",
"388000621_21": "「何をこそこそ話しておる。……ははぁん。\\n さてはお主たち、<ruby=それがし>某</ruby>を捕まえるつもりでゴザルな?」",
"388000621_22": "「よかろうッ!\\n 受けて立つでゴザルッ」",
"388000621_23": "「ま、待ってくださいッ!\\n こんなところで戦って目立つのは、忍者らしくないですッ」",
"388000621_24": "「む?\\n どういうことでゴザル」",
"388000621_25": "「えっと……むやみやたらと目立つのは、",
"388000621_26": " 闇に生きる忍らしくないということよ」",
"388000621_27": "「そ、そうだな……\\n 実力者こそ、人目を忍ぶものだろ」",
"388000621_28": "「…………なるほどッ!\\n それも悪くないでゴザルなッ」",
"388000621_29": "(単純……ッ!)",
"388000621_30": "「そうとなれば、場所を変えるでゴザル。\\n ついてくるでゴザルッ」",
"388000621_31": "「この辺りであれば、人目も気にならないでゴザろう」",
"388000621_32": "「ああ、十分だ」",
"388000621_33": "「ここで捕まえられれば二課への被害を未然に防げる……ッ!」",
"388000621_34": "「緒川さんから受けた修行の成果、\\n ここで確かめましょう」",
"388000621_35": "「クククッ……何やらやる気満々でゴザルな。\\n 試したいことがあるなら、やってみるがいいでゴザル」",
"388000621_36": "「なめるなッ!」",
"388000621_37": "「Croitzal ronzell Gungnir zizzl――」",
"388000621_38": "「ほうッ! そうやって変身するでゴザルかッ!\\n おもしろいッ」",
"388000621_39": "「――さあッ!\\n かかって来るでゴザルッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,26 @@
{
"388000622_0": "「そこだぁッ!」",
"388000622_1": "「ほう。この動きについてこれるでゴザルか。\\n わずか数時間で目覚ましい成長でゴザル」",
"388000622_2": "「それなら……これはどうでゴザルッ!」",
"388000622_3": "「く……ッ!」",
"388000622_4": "「うわぁぁぁぁ……ッ!」",
"388000622_5": "「あの男のように、<ruby=それがし>某</ruby>のジュツを相殺することは\\n できないようでゴザルな」",
"388000622_6": "「この場所だと、利用できる自然物が無い……ッ!」",
"388000622_7": "「この人数をもってしても、\\n わたしたちの手には余るというの……ッ」",
"388000622_8": "「……ふむ。\\n まあ、こんなものでゴザろう」",
"388000622_9": "「武器を収めた……?」",
"388000622_10": "「つぅ……どういうつもりだ?」",
"388000622_11": "「今、この場でお主らを手折るのは容易い。\\n しかし、それでは少々面白みに欠けるでゴザル」",
"388000622_12": "「<ruby=それがし>某</ruby>の体力も、もうじき十分に回復する。\\n お主らとの決着は、二課襲撃までお預けでゴザル」",
"388000622_13": "「どうして……?\\n 今戦った方が、圧倒的に有利なのに……」",
"388000622_14": "「フッ、知れたこと」",
"388000622_15": "「万全の<ruby=それがし>某</ruby>による全力全開のジュツで倒す方が、\\n カッコいいからでゴザルッ」",
"388000622_16": "「…………」",
"388000622_17": "「しからば、これにて御免ッ!\\n でゴザルッ」",
"388000622_18": "「あッ、待ちやがれッ!」",
"388000622_19": "「くそ、見失った……ッ!」",
"388000622_20": "「本当にふざけた奴だけど、あのままだとジリ貧だった……。\\n 助かったと見るべきかしらね……」",
"388000622_21": "「とりあえず、アカオニと遭遇したことを\\n 二課に報告しましょう」",
"388000622_22": "「そうね。警戒網を敷いてもらえば、\\n 動きを追えるかも」",
"388000622_23": "「次は必ず倒す……ッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,35 @@
{
"388000631_0": "「…………」",
"388000631_1": "(精神回復のため、外に出てみたものの……)",
"388000631_2": "(……瞑想に集中しきれない。\\n やはり、消耗は無視できませんか",
"388000631_3": "(しかし、アカオニとの戦いで切り札となるのは恐らく、\\n 装者の皆さんでしょう",
"388000631_4": "(彼女たちが、アカオニと対等に戦えるようになるまで、\\n ダイヴマシンの使用は続けなければ……",
"388000631_5": "「それまで、僕が音を上げるわけにはいきませんね」",
"388000631_6": "「……おなごたちの急成長が気になって偵察に来てみれば、\\n なにやらあの男、不調をきたしているようでゴザルな」",
"388000631_7": "「真っ向からのジュツ対決で雌雄を決したかったでゴザルが、\\n あの消耗具合ではそれもかなわぬようでゴザル」",
"388000631_8": "「しかし、それならそれで、<ruby=それがし>某</ruby>の新ヒッサツワザを\\n 試すチャンスでゴザルな……ククク」",
"388000631_9": "「む、この気配は――」",
"388000631_10": "「あのおなごたちが戻ってきたでゴザルな。\\n この場は去るとするでゴザル」",
"388000631_11": "「アカオニとレストランで遭遇しただとッ!?」",
"388000631_12": "「ああ。あの野郎、余裕しゃくしゃくに人前で飯なんか\\n 食べやがって……ッ」",
"388000631_13": "「おまけに、日本観光を堪能していたようよ」",
"388000631_14": "「ほとほと、行動が読めない男だな……」",
"388000631_15": "「でも、今のわたしたちでは、\\n 捕まえることはできませんでした……」",
"388000631_16": "「緒川さん、すぐに修行を再開してくれ。\\n 負けたままじゃ引き下がれないッ」",
"388000631_17": "「わかりました。\\n 修行を再開しましょう」",
"388000631_18": "「だけど、あなた……」",
"388000631_19": "「大丈夫です。\\n 彼女たちに賭けましょう」",
"388000631_20": "「……仕方ないわね、\\n サポートくらいはしてあげる」",
"388000631_21": "「その行動、僕ほどではありませんが、\\n なかなかに英雄的……」",
"388000631_22": "「余計な事言わなくていいのよ」",
"388000631_23": "「げふぅッ!?」",
"388000631_24": "「ど、どうしたのよ、いきなり……?」",
"388000631_25": "「なんでもないわ。\\n 気にしないで」",
"388000631_26": "「すぐに精神世界へ戻りましょう」",
"388000631_27": "「ここからの修行は少々手荒になりますが……\\n ついてこられますか」",
"388000631_28": "「当然だッ!\\n どんなことだって乗り切ってやるさッ」",
"388000631_29": "「決死の試練なら慣れたもの。\\n それが必要なら、<ruby=おじけ>怖気</ruby>ることなどありえないわ」",
"388000631_30": "「お願いしますッ!\\n その先に、希望があるのならッ」",
"388000631_31": "「聞くまでもなかったようですね。\\n わかりました、修行を再開しましょう」",
"388000631_32": "(あなたたちなら、この修行も必ず乗り越えられる……\\n 僕はそう信じています"
}

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@ -0,0 +1,40 @@
{
"388000711_0": "雪中行軍",
"388000711_1": "「皆さんからの報告を聞く限り、アカオニは消耗状態から\\n ほとんど回復していると思われます」",
"388000711_2": "「二課への再襲撃は、そう遠くないでしょう。\\n ですので、当初の予定を早め、修行の大詰めといきます」",
"388000711_3": "「この修行を現実世界で行った場合、命の危険さえあります。\\n 精神世界とはいえ、皆さんの安全は保障できません」",
"388000711_4": "「重ねて確認します。\\n ――覚悟はよろしいですか」",
"388000711_5": "「答えなら決まっているわ」",
"388000711_6": "「ああ、もちろんだ」",
"388000711_7": "「やってください。\\n 覚悟ならできています」",
"388000711_8": "「……わかりました。\\n それでは、まずは場所を移しましょう」",
"388000711_9": "「ここは……雪山?」",
"388000711_10": "「なんて寒さだ……ッ!\\n 精神世界だってのが嘘みたいだ」",
"388000711_11": "「ここはかつて、僕も修行をした場所です。\\n 着の身着のまま、ここに放り出されたものです」",
"388000711_12": "「こんなところで……。",
"388000711_13": " わたしたちは、ギアを纏ってもいいんですか?」",
"388000711_14": "「ええ、構いませんよ」",
"388000711_15": "「そういうことなら、遠慮はしないわ」",
"388000711_16": "「Seilien coffin airget-lamh tron――」",
"388000711_17": "「ギアを纏えば、このくらいの寒さなんて……、",
"388000711_18": " ……ッ!?」",
"388000711_19": "「どういうことだ、こりゃ……ッ!?」",
"388000711_20": "「ギアには温度変化への耐性もあるはずなのに……」",
"388000711_21": "「ここは僕が作った精神世界です。\\n 現実世界と同じだとは思わないでください」",
"388000711_22": "「なるほど。\\n 確かにこれは過酷な環境だわ」",
"388000711_23": "「それで、あたしたちは何をすればいいんだ?」",
"388000711_24": "「僕は山頂で皆さんを待ちます。\\n そこまで、巻物を奪いに来てください」",
"388000711_25": "「そこまで辿り着いた方にのみ、\\n 草薙の秘伝を授けます」",
"388000711_26": "「草薙の秘伝……それを手にすることで、\\n 修行が完成するということですね」",
"388000711_27": "「だけど、辿り着いた方にのみ、って……。\\n まるで、誰か脱落するみたいな言い方だな」",
"388000711_28": "「……それだけ厳しい修行ということです。\\n 無茶をすれば、命の保証はできません」",
"388000711_29": "「どうかそのことを忘れず、適切な判断をしてください」",
"388000711_30": "「行っちまった……\\n あの目、本気だな」",
"388000711_31": "「とりあえず、山頂を目指しましょう。\\n ギアの防寒機能が働かない以上、時間をかけるのは危険だわ」",
"388000711_32": "「待ってくださいッ!\\n 何かいます……ッ」",
"388000711_33": "「なるほど。\\n こいつらの相手も、試練のうちってわけか」",
"388000711_34": "「いい加減戦い慣れてきたとはいえ、油断はしないで」",
"388000711_35": "「できるだけ、体力を温存しながら戦いましょう」",
"388000711_36": "「ああ、了解した。",
"388000711_37": " ――行くぞッ!」"
}

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@ -0,0 +1,24 @@
{
"388000712_0": "「邪魔をしないでッ!",
"388000712_1": " ……きゃあッ!?」",
"388000712_2": "「どうした、無事かッ!?」",
"388000712_3": "「だ、大丈夫ですッ!\\n 足元が滑って……ッ」",
"388000712_4": "「確かに、この足場の悪さは問題ね」",
"388000712_5": "「ったく、こいつら何十匹いやがるんだよッ!」",
"388000712_6": "「ギアがある分、緒川さんも容赦はしてくれないようね。",
"388000712_7": " ……上等ッ! 道なら切り拓けばいいッ!」",
"388000712_8": "「合わせるぞッ!」",
"388000712_9": "「<size=40>はぁああああああああ――ッ!</size>」",
"388000712_10": "「今だッ!」",
"388000712_11": "「ここは駆け抜けるわよッ!」",
"388000712_12": "「はいッ!」",
"388000712_13": "「よし、ここまで来ればとりあえずは大丈夫だろう」",
"388000712_14": "「あ……」",
"388000712_15": "「どうしたの?\\n どこか怪我でもしてた」",
"388000712_16": "「あれを……」",
"388000712_17": "「ん……?」",
"388000712_18": "「…………ッ!?」",
"388000712_19": "「ここにもニンジャ・アルカ・ノイズが……ッ!」",
"388000712_20": "「とことん、こっちを休ませるつもりが\\n ないみたいだなッ」",
"388000712_21": "「だとしても、止まってなどいられないッ!\\n 押し通るわよッ」"
}

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@ -0,0 +1,11 @@
{
"388000721_0": "「この……しつこいッ!」",
"388000721_1": "「はぁ、はぁ、はぁ……ッ!\\n 思っていたよりきついわね……」",
"388000721_2": "「ああ……戦いっぱなしなのはもちろんだが、\\n それにしたって、なんでこうも消耗するんだ……」",
"388000721_3": "「ひょっとして……酸素濃度が薄い?」",
"388000721_4": "「そうかッ!\\n 山頂を目指して高度が上がるほど、酸素も少なくなるッ」",
"388000721_5": "「この息苦しさはそういう理屈か……ッ!\\n まったく、至れり尽くせりな試練だなッ」",
"388000721_6": "「山頂がまだあんなに遠い……。\\n 本当に近付いてるのかな……」",
"388000721_7": "「とにかく進むしかないわ。\\n そのためにも――」",
"388000721_8": "「こいつらを突破しないとねッ!」"
}

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@ -0,0 +1,18 @@
{
"388000722_0": "「はぁ、はぁ……」",
"388000722_1": "「おい、大丈夫か?\\n 顔色悪いぞ」",
"388000722_2": "「大丈夫、です……。\\n これくらい、平気……」",
"388000722_3": "「そんな、ギアが……ッ!?」",
"388000722_4": "「体力を消耗しすぎたのね……。\\n 吹雪もいよいよ強くなってきたし、このままじゃまずいわ」",
"388000722_5": "「どうする? きっと緒川さんも見てるはずだ。\\n 先に精神世界を出るか」",
"388000722_6": "「……いえ。\\n このまま進みます」",
"388000722_7": "「大丈夫? ……なんて、聞くだけ無駄ね。\\n 意地でも進むって顔してるわ」",
"388000722_8": "「はい。わたしだけ途中で諦めるなんて……\\n そんなこと、できませんッ」",
"388000722_9": "「……よし。そういうことなら、あたしの背中に隠れな。\\n 少しは吹雪もしのげるだろ」",
"388000722_10": "「ありがとうございます……」",
"388000722_11": "「お礼を言われるまでもないさ。",
"388000722_12": " できる限り体力を温存するんだ、いいね?」",
"388000722_13": "「……はい」",
"388000722_14": "(だけど、吹雪はどんどん強くなっていく。\\n 山頂もほとんど見えなくなった……",
"388000722_15": "(……ゴールまではいったい、あとどれくらいあるの?)"
}

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@ -0,0 +1,54 @@
{
"388000731_0": "(あれからもう、1時間近く歩き続けてるけど、\\n 吹雪は一向に止む気配がないわね……",
"388000731_1": "「はぁ……はぁ……」",
"388000731_2": "(心配なのは、この子の体調ね。\\n 息が荒いし、熱もありそうだわ",
"388000731_3": "(精神世界での不調が肉体にどう影響を及ぼすかわからないけど、\\n こうも辛そうだと、見ているに忍びない……",
"388000731_4": "「おい、大丈夫か?」",
"388000731_5": "「はぁ……はぁ……、平気、です……」",
"388000731_6": "「……あたしの背中に乗れ」",
"388000731_7": "「え……?",
"388000731_8": " でも……」",
"388000731_9": "「あたしの方がまだ、いくらか元気だ。\\n 遠慮すんなって」",
"388000731_10": "「そうね。\\n 変わりばんこで背負っていきましょうか」",
"388000731_11": "(とはいえ、わたしも徐々にしんどくなってきている……。\\n 山頂まで体力が持つかどうか……",
"388000731_12": "「――それがあなたたちの判断ですか?」",
"388000731_13": "「緒川さん……ッ!?」",
"388000731_14": "「だいぶ辛そうですね、未来さん」",
"388000731_15": "「……まだ、やれます……」",
"388000731_16": "「ここは精神世界とはいえ、肉体と精神の間には強い繋がりが\\n あると、ドクターたちから説明を受けています」",
"388000731_17": "「このままでは、現実世界のあなたがどうなるか、\\n わかりませんよ」",
"388000731_18": "「…………ッ!」",
"388000731_19": "「奏さん、マリアさん。\\n 本当はわかっているのでしょう」",
"388000731_20": "「なんのことだ?」",
"388000731_21": "「このまま、未来さんを庇いながらでは、\\n 山頂になど辿り着けないと」",
"388000731_22": "「そんなこと……\\n やってみなけりゃわからないだろうッ」",
"388000731_23": "「この状況でも、ですか?」",
"388000731_24": "「え……?」",
"388000731_25": "「な……ッ!?\\n いつの間に……ッ」",
"388000731_26": "「完全に囲まれてるわね……。\\n 百……いえ、千どころの数じゃないわ」",
"388000731_27": "「任務のためには、\\n ときとして犠牲をいとわない覚悟が必要です」",
"388000731_28": "「未来さんを置いて2人で進めば、山頂に辿り着けるでしょう。\\n その暁には、草薙に伝わる秘伝をお人に授けます」",
"388000731_29": "「ふざけるなッ! そんなことできるもんかッ!\\n ここまで人で来たんだッ 進むなら、最後まで一緒だッ」",
"388000731_30": "「奏、さん……」",
"388000731_31": "「なるほど……主君に仕え、命令の遂行を至上目標にする忍には、\\n そういう考え方もときには必要というわけね」",
"388000731_32": "「それが忍の道です」",
"388000731_33": "「おいッ!\\n まさか、置いていくなんて言うんじゃないだろうなッ」",
"388000731_34": "「そんなことするくらいだったら、\\n 全員で山を下りた方がマシだッ」",
"388000731_35": "「奏さんはこう言っていますが、あなたも目標を放棄しますか?\\n あなたの覚悟はその程度だったということですか」",
"388000731_36": "「覚悟……ね。今、わたしたちがすべきは、\\n アカオニに対抗できる、忍の秘伝を手に入れること」",
"388000731_37": "「そのためには、犠牲も厭うべきではない……」",
"388000731_38": "「――なんて、そんなことをわたしが納得すると思っているの?」",
"388000731_39": "「誰かを犠牲にしたうえでの勝利なんて、お断りよッ!」",
"388000731_40": "「マリアさん……」",
"388000731_41": "「わたしにあるのは、仲間を犠牲にする覚悟なんかじゃない」",
"388000731_42": "「厳しい戦いでも、仲間と共に生き抜く。",
"388000731_43": " ――それがわたしの覚悟よッ!」",
"388000731_44": "「ハハッ……\\n なんだよ、びっくりさせやがって」",
"388000731_45": "「……わたしだって、仲間の足を引っ張るためにここに\\n いるわけじゃない。……まだ、戦えるッ」",
"388000731_46": "「ギアを……?\\n 既に限界は越えているはずなのに……」",
"388000731_47": "「限界?\\n そんなものはね、超えるためにあるのよ」",
"388000731_48": "「ああ。3人揃ったなら、\\n どれだけアルカ・イズがいたところで、関係ない」",
"388000731_49": "「せっかくここまで来てもらってなんですけど、\\n 山頂で待っていてもらえますか 必ず、辿り着きますから」",
"388000731_50": "「皆さん……」",
"388000731_51": "「――お見事。\\n 全員、合格です」"
}

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@ -0,0 +1,39 @@
{
"388000741_0": "「ご、合格……?」",
"388000741_1": "「合格って、どういうことだッ!?\\n 山頂につくのが目的なんじゃないのか」",
"388000741_2": "「この試験の本質は、山頂に辿り着くことではありません。\\n ……というより、決して山頂には着かないようになっています」",
"388000741_3": "「嘘だったってことか……?」",
"388000741_4": "「すみません、騙すような真似をして」",
"388000741_5": "「ですが、皆さんの覚悟、しかと見届けました」",
"388000741_6": "「さっき語った忍の覚悟……\\n あれは騙りだったということ」",
"388000741_7": "「嘘というわけではありませんよ。確かに、たとえ犠牲を\\n 出しても任務を全うしなければならないときはあります」",
"388000741_8": "「しかし、そこで簡単に仲間を切り捨てるのは、\\n 強さではなく諦めです」",
"388000741_9": "「切り捨てるは強さに非ず。\\n 忍の道とは、心を捨てることではありません」",
"388000741_10": "「決して諦めず、どんな苦境にも折れずに\\n 耐え忍ぶ強い心を、主君の刃であるその身の礎とする」",
"388000741_11": "「それが、刃の下に心あり、ということです」",
"388000741_12": "「ここで未来さんを置いていくことを選ぶようでしたら、\\n その時点で皆さんを失格とし、修行を中断するつもりでした」",
"388000741_13": "「ということは……」",
"388000741_14": "「草薙の現頭領として、認めましょう。\\n 皆さんの心には、既に忍の資格があります」",
"388000741_15": "「免許皆伝のお墨付きがもらえたみたいね」",
"388000741_16": "「ん? 待ってくれよ。だったら、山頂でくれるって言ってた、\\n 草薙の秘伝ってのはなんだったんだ」",
"388000741_17": "「ああ、それですか。\\n 残念ながら、そんな便利な秘伝は存在しません」",
"388000741_18": "「そうだったんですかッ!?」",
"388000741_19": "「なんだよ、緒川さんも人が悪いなぁ」",
"388000741_20": "「その過程で心の強さを証明することが、\\n 本当の試練だったんですね」",
"388000741_21": "「その通りです。\\n 皆さんは見事、証明してくれました」",
"388000741_22": "「本当に大切なのは、心の強さか。\\n 忍者ってのは、粋なもんだな」",
"388000741_23": "「恥ずかしながら……長らく草薙の里から離れていた僕も、\\n それをしばらくは失念していたんですよ」",
"388000741_24": "「大切なことを僕に思い出させてくれたのは、\\n 翼さんです」",
"388000741_25": "「そうなのか?",
"388000741_26": " へへッ、さすがは翼だ」",
"388000741_27": "「それより、修行が済んだのなら早く戻りたいところね。\\n 寒さはなくなったけど、消耗していることに変わりはないもの」",
"388000741_28": "「そうですね。\\n それでは、精神世界の外に出してもらうようコンタクトを……」",
"388000741_29": "「な、なんだッ!?」",
"388000741_30": "「地震……ッ!?」",
"388000741_31": "「いえ、この世界で起こることは、全て僕が管理できるはずです。\\n 地震なんて起こるはずが……」",
"388000741_32": "「空間にひびが……ッ!?」",
"388000741_33": "「これは……なんらかの外的要因で、\\n ダイヴマシンが機能不全を起こしている……」",
"388000741_34": "「く……ッ!」",
"388000741_35": "「緒川さんッ!?\\n どうしたんですかッ」",
"388000741_36": "「いけない……、\\n この世界が、壊れる……ッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,71 @@
{
"388000811_0": "ニンジャと忍",
"388000811_1": "「ここは……草薙の里じゃない。\\n ……戻ったの」",
"388000811_2": "「いかにもッ!\\n ここは僕の研究室兼、英雄部隊のアジト――」",
"388000811_3": "「そんなことより、どういう状況だ?\\n なんでいきなり、現実世界に」",
"388000811_4": "「襲撃よ。\\n アカオニがやってきたわ」",
"388000811_5": "「なんだってッ!?」",
"388000811_6": "「初手で設備の電源系をやられてね。今は予備電源を\\n 使っているけれど、ダイヴマシンが強制終了したのはそのせいよ」",
"388000811_7": "「…………」",
"388000811_8": "「……緒川さん?」",
"388000811_9": "「……大したことはありません。",
"388000811_10": " 心配をかけてしまうとは、僕もまだまだですね」",
"388000811_11": "「…………」",
"388000811_12": "「それより、我々も迎撃に向かいましょう。\\n アカオニは今、司令が相手を」",
"388000811_13": "「英雄部隊もね。それでも苦戦しているわ。",
"388000811_14": " ……ここはいいから、あなたも行きなさい」",
"388000811_15": "「やれやれ、仕方ありませんね。それでは、この英雄の\\n 叙事詩的活躍を御覧に入れるとしましょうッ」",
"388000811_16": "「それで、あなたたち、やれそうなの?」",
"388000811_17": "「ああ、修行は終えた。正直、あのアルカ・ノイズが\\n 何百来ようが、負ける気はしないな」",
"388000811_18": "「すぐに出ますッ!」",
"388000811_19": "「あのふざけた忍者もどきには、\\n たっぷり借りを返さないとね」",
"388000811_20": "「……行きましょう。\\n 今のあなたたちなら、十分に対抗できるはずです」",
"388000811_21": "「はいッ!」",
"388000811_22": "「おおおおぉッ!」",
"388000811_23": "「ちぃ……ッ!\\n 一撃で体が関の山か……厄介な」",
"388000811_24": "「いや、十分すごいですよ……」",
"388000811_25": "「こう素早くちゃ、弾がろくに当たらない……ッ!」",
"388000811_26": "「英雄の戦場に泣き言は要りませんッ!\\n あなたたちはこの天才が率いる英雄部隊ッ」",
"388000811_27": "「1人1人が精鋭となって、僕に続きなさいッ!\\n 寡兵で大軍を相手取った、スパルタ兵のようにッ」",
"388000811_28": "「スパルタ兵は全滅してますけどね……」",
"388000811_29": "「ふーむ……やはりあの男の拳は凄まじいものがあるが、\\n それ以外はザコでゴザルな」",
"388000811_30": "「もう1人、妙な腕を持つ男が混ざっているでゴザルが、\\n あれはなんでゴザろうか。二課が秘匿する改造ニンゲン」",
"388000811_31": "「……いや、それにしては、戦闘センスがいまいちでゴザルな。\\n 失敗作でゴザろうか」",
"388000811_32": "「どこにでも妙な輩というのはいるものでゴザルな」",
"388000811_33": "「――見つけたぞ、アカオニッ!」",
"388000811_34": "「来たでゴザルな」",
"388000811_35": "「まるでわたしたちを待っていたような口ぶりね」",
"388000811_36": "「然り。<ruby=それがし>某</ruby>の敵となるは、猛者でなければならんでゴザル。",
"388000811_37": " それには、お主らが相応しい。……トォッ!」",
"388000811_38": "「さあ、誰から戦うでゴザル?\\n もちろん、人同時でも<ruby=それがし>某</ruby>は構わぬでゴザルが」",
"388000811_39": "「いい度胸だ。\\n それならあたしが――」",
"388000811_40": "「緒川さん……?」",
"388000811_41": "「ここは僕が相手をさせていただきます」",
"388000811_42": "「らしくないわね。\\n やけに好戦的じゃない」",
"388000811_43": "「そうですね……どうやら、自分で思っていたよりも、\\n 忍というものを軽んじられたことが腹立たしいようです」",
"388000811_44": "(精神世界とはいえ、\\n 久しぶりに里の空気に触れたからでしょうか",
"388000811_45": "(……不思議なものですね。\\n 一度は忍の道から身を引いたというのに",
"388000811_46": "「……怒りに任せて、というわけではないみたいね。\\n いいわ、私はあっち側の援護に向かうとするわ」",
"388000811_47": "「皆さんは――」",
"388000811_48": "「援護します」",
"388000811_49": "「そのために修行してきたんだ」",
"388000811_50": "「ほんの3日間の弟子でも、\\n 師匠の露払いくらいはできるつもりよ」",
"388000811_51": "「……ええ、お願いします」",
"388000811_52": "「方針は定まったようでゴザルな。\\n しからば――」",
"388000811_53": "「おなごたちの相手は、こやつらに務めさせるとするでゴザル」",
"388000811_54": "「そして、お預けとなっていたジュツ比べの決着、\\n 今ここでつけるでゴザル」",
"388000811_55": "「その前に、1つお伺いします。\\n あなたにとって、忍者とはなんですか」",
"388000811_56": "「む? ヤブからボーンでゴザルな。\\n ニンジャとは、か……そんなもの、決まっているでゴザル」",
"388000811_57": "「ニホンが生んだ、スペシャルにクールな、\\n スーパーヒーローッ」",
"388000811_58": "「1人で万軍にも匹敵する、\\n スーパーソルジャーでゴザルッ」",
"388000811_59": "「……なるほど。\\n やはり、そのようなものでしたか」",
"388000811_60": "「やはり、あなたは忍を名乗るべきではない……ッ!」",
"388000811_61": "「本物の忍の戦い方……教えてさしあげましょう」",
"388000811_62": "「ククク……ならば、今日ここで其方を超え、\\n <ruby=それがし>某</ruby>が真のニンジャマスターになるでゴザルッ!」",
"388000811_63": "「ここで会ったがヒャクネンメッ!\\n いざ、ジンジョーに勝負ッ」",
"388000811_64": "「緒川さんも戦い始めたみたいね」",
"388000811_65": "「まあ、緒川さんなら大丈夫だろうけど」",
"388000811_66": "「……緒川さん、ちょっと様子がおかしくなかったですか?\\n ひょっとしたら、ダイヴマシンで消耗してるのかも……」",
"388000811_67": "「……こっちも早めに片付けたほうがよさそうね」",
"388000811_68": "「ああ。\\n そういうことなら、速攻で片付けるぞッ」"
}

View file

@ -0,0 +1,14 @@
{
"388000812_0": "(速い……でもッ!)",
"388000812_1": "「――そこッ!」",
"388000812_2": "「ほう。あの娘、更なる研鑽を積んだようでゴザルな。\\n この短時間で、大した成長でゴザル」",
"388000812_3": "「よそ見をしている余裕を与えた覚えはありませんッ!」",
"388000812_4": "「む……ッ!」",
"388000812_5": "(このタイミングなら入る……、",
"388000812_6": " つ……ッ!?)",
"388000812_7": "「おっと」",
"388000812_8": "「危ない危ない。\\n ……お主、どこか悪いようでゴザルな」",
"388000812_9": "「……さあ、どうでしょうか」",
"388000812_10": "「フッ、痩せ我慢は身体に毒でゴザルぞ。\\n ここでは気が散る。場所を変えるでゴザル」",
"388000812_11": "「逃がしません――ッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,35 @@
{
"388000821_0": "(気配を消した……何を考えている?)",
"388000821_1": "「……口寄せ」",
"388000821_2": "(ふざけた男でも油断はできない。\\n 打てる手は打っておきましょう",
"388000821_3": "(さて……どう出ますか?)",
"388000821_4": "(…………。",
"388000821_5": " ――殺気ッ!)",
"388000821_6": "「でやぁッ!」",
"388000821_7": "「<ruby=それがし>某</ruby>の気配に気付くとは、さすがは本場のニンジャ」",
"388000821_8": "「あなたの中途半端な隠形を見破れないほど、\\n 草薙の頭領は無能ではないということです」",
"388000821_9": "「ハハッ、言ってくれるでゴザル。\\n ならば、これはどうでゴザル」",
"388000821_10": "「カゲブンシンッ!」",
"388000821_11": "「フハハハハッ、どうでゴザルかッ!\\n 幻影ではない、全てが<ruby=それがし>某</ruby>の実体でゴザルぞッ!」",
"388000821_12": "「ニンジャ・アルカ・ノイズの姿を自分の鏡像に変えましたか。\\n ……目障りですね」",
"388000821_13": "「見抜くの早すぎでゴザルぞッ!\\n もう少し驚いてほしいでゴザルッ」",
"388000821_14": "「そんな筋合いはありません」",
"388000821_15": "「愛想のない男でゴザルなッ。\\n しかし、これはさすがに驚くでゴザろうッ」",
"388000821_16": "「――カトンッ!」",
"388000821_17": "(これまでと代わり映えのない火遁の術……?)",
"388000821_18": "「――と、思っているでゴザろう?\\n 甘いでゴザルッ」",
"388000821_19": "「スイトンッ!」",
"388000821_20": "「…………ッ!?」",
"388000821_21": "「ドトンッ!」",
"388000821_22": "(ニンジャ・アルカ・ノイズも含めた、\\n 遁術の波状攻撃……ッ",
"388000821_23": "「フハハハハッ、驚いたでゴザろうッ!\\n さあ、どんどんいくでゴザルぞッ」",
"388000821_24": "(くッ……、威力は下がっていますが、手数が多すぎる……ッ!\\n 迎撃の術を使い分けるのがやっとだなんて……ッ",
"388000821_25": "「クククッ!\\n まだまだ速度を上げるでゴザルよッ」",
"388000821_26": "(普段ならば、押し負けることはないのに、今は……、",
"388000821_27": " ……ッ!?)",
"388000821_28": "「ここでゴザルッ!」",
"388000821_29": "(この音色は……ッ!?",
"388000821_30": " いけない、意識が……薄れ……ッ)",
"388000821_31": "「詰めの詰めまで油断していい相手ではない\\n ……のではなかったでゴザルか」",
"388000821_32": "(この術は……、意識を……、\\n 乗っとるつもり、か……ッ"
}

View file

@ -0,0 +1,49 @@
{
"388000831_0": "「ちょこまかと動き回るだけのアルカ・ノイズ、\\n 緒川さんの修行を受けたあたしらの敵じゃないッ」",
"388000831_1": "「でも、この数の多さは厄介ね」",
"388000831_2": "「緒川さんの援護に行くまでに倒しきらないと、\\n 二課に向かわれたら非戦闘員の方たちも危ない……ッ」",
"388000831_3": "「緒川さんだったら大丈夫だろうけど……\\n それでも、手助けできるに越したことはないしなッ」",
"388000831_4": "「はいッ!」",
"388000831_5": "(緒川さん、さっき一瞬苦しそうな顔をしていた気がする……。\\n 何か、身体に異常が起こっているのかも……",
"388000831_6": "「勢いはこっちにあるッ!\\n このまま押し切って――」",
"388000831_7": "「待ってッ!\\n ……誰か近付いてくるわ」",
"388000831_8": "「緒川さんッ!」",
"388000831_9": "「よかった、無事だったんですねッ!」",
"388000831_10": "「…………」",
"388000831_11": "「――待ってッ!」",
"388000831_12": "「…………ッ!?」",
"388000831_13": "「……間一髪だったわね」",
"388000831_14": "「緒川さんッ!?\\n なんで、あたしらを攻撃するんだッ」",
"388000831_15": "「さては……アカオニが化けた偽物だなッ!?」",
"388000831_16": "「ククク……偽物とはご挨拶でゴザルな。\\n この身体は正真正銘、この男のものでゴザル」",
"388000831_17": "「……ゴザル?」",
"388000831_18": "「その口調、まさか……ッ!?」",
"388000831_19": "「いかにも。\\n <ruby=それがし>某</ruby>がヒョウイのジュツで奪ったでゴザルッ!」",
"388000831_20": "「憑依ですって……ッ!?」",
"388000831_21": "「然り。ジュツ比べは、<ruby=それがし>某</ruby>の勝利ということでゴザルな。",
"388000831_22": " フハハハハハハッ!」",
"388000831_23": "「ば、馬鹿を言うなッ!\\n 緒川さんがおまえなんかに負けるもんかッ」",
"388000831_24": "「敗北したからこその、この結果でゴザろう?」",
"388000831_25": "「……とりあえずあなたは口を閉じなさいッ」",
"388000831_26": "「緒川さんがあの口調で喋らされてるのを見ると、\\n 確かに、なんとも……ッ」",
"388000831_27": "「複雑……ですね……」",
"388000831_28": "「フッ、絶望で抗う気力も無くなったようでゴザルな」",
"388000831_29": "「しかし……少々興ざめでゴザルな。\\n 現代に残る最後のニンジャマスターも、この程度でゴザったか」",
"388000831_30": "「とはいえ、この男を倒した今、\\n <ruby=それがし>某</ruby>こそが新たなるニンジャマスターということでゴザル」",
"388000831_31": "「道を究めるというのは、\\n 存外虚しいものでゴザルな……」",
"388000831_32": "「……おい。\\n そいつは聞き捨てならないな」",
"388000831_33": "「ええ。軽々しく究めたなどと\\n 口にしてもらっては困るわね」",
"388000831_34": "「緒川さんがわたしたちに教えてくれたことは、\\n そんな薄っぺらなことじゃないッ」",
"388000831_35": "「ほう……?\\n では、ニンジャの道にはこの先があると申すのでゴザルか」",
"388000831_36": "「この先どころか、おまえはそもそも入り口にすら\\n 立ってないんだよ」",
"388000831_37": "「ニンジャマスターを名乗るつもりなら、緒川さんの弟子である\\n わたしたちを倒してからにしてもらいましょうか」",
"388000831_38": "「形だけなぞったあなたに、\\n 緒川さんに勝ったなんて言ってほしくありませんッ」",
"388000831_39": "「やれやれ、現実を受け入れられないようでゴザルな。\\n 愚かなものでゴザル」",
"388000831_40": "「ならば、其方たちのシショーのジュツで\\n 相手をしてやるでゴザルッ」",
"388000831_41": "「――クチヨセッ!」",
"388000831_42": "「これは……緒川さんの口寄せッ!?」",
"388000831_43": "「でも、緒川さんが呼び出した黒猫とは全然違います」",
"388000831_44": "(……この猫、かわいくないわ)",
"388000831_45": "「ろくに使えないジュツを<ruby=それがし>某</ruby>がアレンジしてやったでゴザル。",
"388000831_46": " ――さあ、引導を渡してやるでゴザルッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,19 @@
{
"388000832_0": "「くぅぅ……ッ!」",
"388000832_1": "「確かに、そなたたちの成長速度は凄まじいでゴザル。",
"388000832_2": " しかし――それも所詮はこの程度」",
"388000832_3": "「<ruby=それがし>某</ruby>のジュツの前には無力でゴザル」",
"388000832_4": "「……何を勝ったつもりになってる。\\n あたしはまだ立てるぞッ」",
"388000832_5": "「泥にまみれながら、でゴザルか?\\n ……まったくもって、クールとは程遠い」",
"388000832_6": "「そんなものがニンジャだなど、笑わせないでほしいでゴザル。\\n ヒーローとは、もっと輝いて然るべきものでゴザル」",
"388000832_7": "「クール? ヒーロー?\\n ――安いわね」",
"388000832_8": "「何……?」",
"388000832_9": "「泥臭くて結構。泥にまみれようが、土にまみれようが、\\n 何度だって立ち上がる……立って戦い続けるッ」",
"388000832_10": "「刃を支えるのは、いつだって心の強さ。\\n どんな苦境にも<ruby=か>剋</ruby>つ者を――忍者と呼ぶのよ」",
"388000832_11": "「それが、わたしたちが緒川さんから教わった\\n 忍者の在り方ッ」",
"388000832_12": "「なんだ……何を言っているでゴザル……?」",
"388000832_13": "「たとえあなたがどれだけ強くてもッ!」",
"388000832_14": "「どれだけの敵が立ちふさがろうとッ!」",
"388000832_15": "「あたしたちは、緒川さんから教えてもらった忍の力で、\\n おまえを倒す――ッ」",
"388000832_16": "「この光は、いったいなんでゴザルか……ッ!?」"
}

View file

@ -0,0 +1,38 @@
{
"388000911_0": "忍ノ金科玉条",
"388000911_1": "「変身した後で……さらに変身をッ!?\\n その装備はいったい、なんなんでゴザルかッ」",
"388000911_2": "「ギアは、わたしたちが必要とするとき、\\n その気持ちに応えてくれる」",
"388000911_3": "「緒川さんから教わった、忍の心得。\\n それが、新たな力を与えてくれたのよ」",
"388000911_4": "「さしずめ、忍型ギアってところか。\\n おまえを倒して、緒川さんを助けるための力だ」",
"388000911_5": "「けど、まずは――」",
"388000911_6": "「こいつらを片付けるのが先ね」",
"388000911_7": "「ああ。\\n 分、てとこか」",
"388000911_8": "「ホワッツ……? 何をふざけたことを。\\n そんなことができるはずが……」",
"388000911_9": "「いつの話をしているの?」",
"388000911_10": "「やれます。\\n この忍型ギアを纏った、わたしたちならッ」",
"388000911_11": "「肩慣らしにはちょうどいい」",
"388000911_12": "「木の葉を舞わせて目くらましを……、\\n これは……まさかニンジュツッ なぜ、お主が……ッ」",
"388000911_13": "「もちろん、これで終わりじゃないわ」",
"388000911_14": "「――くらいなさいッ!」",
"388000911_15": "「やるじゃないか、マリア。",
"388000911_16": " あたしもいいところ見せてやるとするかッ!」",
"388000911_17": "「くらえッ!\\n あたしの炎をッ」",
"388000911_18": "「今度は炎を……ッ!?\\n いったい、どうなってるでゴザルか……ッ」",
"388000911_19": "「そっちにアルカ・ノイズが行ったわッ!」",
"388000911_20": "「…………ッ!?」",
"388000911_21": "「馬鹿めッ!\\n 油断しているから、そういうことに……」",
"388000911_22": "「鏡……ッ!?\\n いつの間に……ッ」",
"388000911_23": "「もう、わたしたちに忍術もどきは通じませんッ!」",
"388000911_24": "「……どうやら、そのようでゴザルな。\\n 変身しただけで、こうもニンジュツを使いこなすとは……」",
"388000911_25": "「その装束、ギアと呼んでいたでゴザルな。",
"388000911_26": " ――おもしろい」",
"388000911_27": "「決めたでゴザル。さらなる強さを手に入れるため、\\n その装束、<ruby=それがし>某</ruby>がもらい受けるッ!」",
"388000911_28": "「あら、宗旨替えかしら。\\n 節操がない男ね」",
"388000911_29": "「どのみち、おまえにはギアは纏えないっての」",
"388000911_30": "「ギアは誰にでも応えてくれるわけじゃない……。\\n 目先の強さが欲しいだけの人には、尚のことですッ」",
"388000911_31": "「わけのわからないことを。\\n いいから、<ruby=それがし>某</ruby>に渡すでゴザルッ!」",
"388000911_32": "「緒川さんを助けるにも、まずは動きを封じなければね」",
"388000911_33": "「怪我をさせずに捕まえる、か。\\n 少し前までは無茶だと思うところだったけど」",
"388000911_34": "「今のわたしたちならッ!」",
"388000911_35": "「ええ、緒川さんを助けるわよッ!」"
}

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@ -0,0 +1,18 @@
{
"388000912_0": "「<ruby=それがし>某</ruby>の動きにこうもついてくるとは……、\\n 先の戦いと大違いでゴザル」",
"388000912_1": "「だが、いずれも決め手に欠けている。\\n この男の身体を気遣っているのでゴザルな」",
"388000912_2": "「所詮は素人。\\n 甘さを捨てきれぬ、二流に過ぎぬでゴザル」",
"388000912_3": "「甘さなど、抱えていく覚悟はとうに済ませたッ!」",
"388000912_4": "「ああ。……けど、厄介だな。もともとアカオニが強い上、\\n 緒川さんを気遣う必要があるとなれば、打てる手は限られる」",
"388000912_5": "「何か手はないものかしら。\\n 緒川さんの身体からアカオニを引きはがすような……」",
"388000912_6": "(緒川さんほど強い人が、なんの手も打てずに一方的に\\n やられたとは思えない……",
"388000912_7": "(緒川さんが今まで話してくれたことの中に、\\n 何か、状況を打開するヒントがあるかもしれない",
"388000912_8": "「ニャァ~」",
"388000912_9": "「え……?」",
"388000912_10": "「あれは……\\n 緒川さんが口寄せで呼び出していた黒猫……」",
"388000912_11": "「残念ながら、口寄せは術者が気を失ったりすれば、\\n 消えてしまうんですよ。だから、その使い方はできませんね」",
"388000912_12": "(緒川さんの黒猫が消えていないなら、\\n 緒川さんの意識はまだ残っているということ",
"388000912_13": "(この状況で黒猫を呼び出して、\\n 術を解いていないなら……何か、意味がきっとあるッ",
"388000912_14": "「……マリアさん、奏さん。\\n 提案があります」",
"388000912_15": "「もしかすると――」"
}

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@ -0,0 +1,20 @@
{
"388000921_0": "「<size=25>……話してみて。\\n アカオニには聞こえないように</size>」",
"388000921_1": "「<size=25>緒川さんが口寄せで呼び出した黒猫が近くにいます。\\n きっと、何か意味があるはず</size>」",
"388000921_2": "「<size=25>……なるほど。\\n やっぱり、ただでやられる緒川さんじゃなかったな</size>」",
"388000921_3": "「<size=25>わかったわ。詳しいことを聞いている時間はなさそうだから、\\n <ruby=しさい>仔細</ruby>はあなたに任せる。だから、ここはわたしたちに任せて</size>」",
"388000921_4": "「<size=25>はい……ッ!</size>」",
"388000921_5": "「<size=25>いい顔だ</size>」",
"388000921_6": "「さて、それじゃあ――」",
"388000921_7": "「話し合いの時間を許した覚えはないでゴザルッ!」",
"388000921_8": "「気張るとするかッ!」",
"388000921_9": "「行けッ!」",
"388000921_10": "「はいッ!」",
"388000921_11": "「ム……? 1人だけ別行動を?\\n 何をするつもりでゴザル」",
"388000921_12": "「さあ――",
"388000921_13": " 何かしら、ねッ!」",
"388000921_14": "「畳みかけるぞッ!」",
"388000921_15": "「承知ッ!」",
"388000921_16": "「ムゥ……教えてくれるつもりはないでゴザルか。",
"388000921_17": " ならば、お主らを倒してあの娘を追うまででゴザルッ!」"
}

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@ -0,0 +1,20 @@
{
"388000922_0": "「ニャァ~」",
"388000922_1": "(どんどん森の奥に入って行く……。",
"388000922_2": " この先にきっと、戦局を左右する何かがある――ッ!)",
"388000922_3": "「あれは……アカオニッ!?」",
"388000922_4": "「…………」",
"388000922_5": "「動かない……? そうか、緒川さんの身体を動かしている間、\\n 自分は動けないんだッ」",
"388000922_6": "「アカオニが咥えてるあの笛……操られてる緒川さんも咥えてた。\\n あれが緒川さんを操る仕掛けなのかも」",
"388000922_7": "「それなら――」",
"388000922_8": "「…………」",
"388000922_9": "「……アカオニは動かない。\\n これを壊せば――」",
"388000922_10": "「アルカ・ノイズッ!?",
"388000922_11": " ……ッ!」",
"388000922_12": "「――忍なら、詰めの詰めまで油断しないッ!」",
"388000922_13": "「やっぱり、罠があった……」",
"388000922_14": "「ニャァ~」",
"388000922_15": "「うん。\\n あなたのご主人様を解放しようね」",
"388000922_16": "「きっと、この笛を破壊すれば――ッ!」",
"388000922_17": "「これで……」"
}

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@ -0,0 +1,85 @@
{
"388000931_0": "「ちぃ……ッ!\\n やりづらいったらない……ッ」",
"388000931_1": "「手心を加えて勝てるつもりとは、\\n なめられたものでゴザルなッ」",
"388000931_2": "「それにいい加減、お主らとの戦いも飽きた。",
"388000931_3": " ――少々手荒くいかせてもらうでゴザルッ!」",
"388000931_4": "「な……ッ!?\\n 急に動きが数段速くなった……ッ」",
"388000931_5": "「肉体のリミッターを外したでゴザルッ!\\n この速度、捕らえられるものなら捕えてみるでゴザルッ」",
"388000931_6": "「緒川さんの身体で好き勝手やりやがって……ッ!\\n あたしが止めてやるッ」",
"388000931_7": "「いけないッ、それはフェイントよッ!」",
"388000931_8": "「何……ッ!?」",
"388000931_9": "「<ruby=と>殺</ruby>ったッ!」",
"388000931_10": "「……ッ!」",
"388000931_11": "「……?\\n なんだ、急に動きが……」",
"388000931_12": "「制御が、利かない……ッ!?\\n まさか、本体を抑えられたでゴザルか……ッ」",
"388000931_13": "「――そういうことです」",
"388000931_14": "「馬鹿なッ!? お主、なぜ喋れるでゴザル……ッ!?\\n お主の意識は封じたはず……」",
"388000931_15": "「どうやら、未来さんがやり遂げてくれたようですね」",
"388000931_16": "「何……? ……ッ、まさか、さっきの小娘が<ruby=それがし>某</ruby>のジュツを\\n 破ったというのでゴザルかッ」",
"388000931_17": "「ええ。未来さんは本当に色々なものをよく見ようとしている……\\n 彼女なら、やり遂げてくれると信じていました」",
"388000931_18": "「それはともかく。\\n 僕の身体、そろそろ返してもらいますよ」",
"388000931_19": "「ぐ……、おのれぇぇぇぇ……ッ!」",
"388000931_20": "「ふぅ……他人に身体を使われるというのは、\\n 気持ちのいいものではないですね」",
"388000931_21": "「緒川さん……なのよね?」",
"388000931_22": "「ええ、僕です。",
"388000931_23": " なんとか身体の制御を取り戻せて……つッ」",
"388000931_24": "「ど、どうしたんだ?」",
"388000931_25": "「……アカオニが無茶をしてくれたせいで、\\n いくらか筋を痛めてしまったようです」",
"388000931_26": "「ですが、動けないほどじゃありません。",
"388000931_27": " それより、未来さんのところに行きましょう」",
"388000931_28": "「そうよッ! 本体を抑えたということは、\\n アカオニと人で向かい合っているはずッ」",
"388000931_29": "「急いで援護に向かわないとッ!」",
"388000931_30": "「未来さんの居場所は口寄せした黒猫の気配でわかります。\\n 急ぎましょう」",
"388000931_31": "「無事かッ!?」",
"388000931_32": "「わたしなら大丈夫です。\\n 緒川さんも意識が戻ったようで、よかったです」",
"388000931_33": "「ええ、未来さんのおかげです」",
"388000931_34": "「で、アカオニは……」",
"388000931_35": "「ぐぅぅぅ……ッ!\\n 動けないでゴザル……ッ」",
"388000931_36": "「これは……どういうこと?」",
"388000931_37": "「この子がやってくれたんです」",
"388000931_38": "「ニャァ~~」",
"388000931_39": "「黒猫を使った影縫いの応用です」",
"388000931_40": "「戦いでは役に立たないのかと思ってたけど、\\n おまえ、やるもんだなッ」",
"388000931_41": "「ニャァ~~~♪」",
"388000931_42": "「馬鹿な……ッ、\\n こんな奴らに<ruby=それがし>某</ruby>が敗れただとッ!?」",
"388000931_43": "「認めない……認めないでゴザルッ!\\n こんな地味な敗北など、<ruby=それがし>某</ruby>は認めないッ!」",
"388000931_44": "「真にクールなのは、<ruby=それがし>某</ruby>でゴザルッ!」",
"388000931_45": "「地味、ね……。あなた、さんざん忍者が\\n 好きだのクールだの言っていたけど」",
"388000931_46": "「あなたが憧れたのは見た目や術が派手なだけの、\\n 張りぼてのヒーローだったわけ」",
"388000931_47": "「何……?」",
"388000931_48": "「あなたが憧れたコミックのヒーローだって、\\n もっと大事な本質を持っていたんじゃないかしら」",
"388000931_49": "「そこが見えていなかったというのなら……」",
"388000931_50": "「あなたは自分が何をしたいのか、\\n 自分でも本当にわかっていなかったということよ」",
"388000931_51": "「…………ッ!」",
"388000931_52": "「憧れを持つのはいい。だけど、『何か』になりたいなら、\\n そして『何か』を為したいのなら――」",
"388000931_53": "「まずは曇った目を凝らして、\\n 自分が憧れたものをよく見なさいッ」",
"388000931_54": "「でなきゃ、理想とはかけ離れたところに流されていくだけよ」",
"388000931_55": "「マリアさん……」",
"388000931_56": "「……まったく。\\n 恥ずかしいことを思い出させてくれるわ」",
"388000931_57": "「……<ruby=それがし>某</ruby>が、憧れたもの……」",
"388000931_58": "「…………」",
"388000931_59": "「……1つ、聞きたいでゴザル」",
"388000931_60": "「お主は、<ruby=それがし>某</ruby>のジュツに完全にかかっていなかった\\n ……そうでゴザルな」",
"388000931_61": "「ええ。僕は術にかかりかけた時点で、意識を精神の奥に\\n 沈みこませ、完全に封じられるのを防ぎました」",
"388000931_62": "「あとは、あなたの術を崩すために僕が仕込んだとっておきの術が\\n 解けてしまわないように、耐え忍ぶだけです」",
"388000931_63": "「<ruby=それがし>某</ruby>のジュツを崩す、とっておき……?」",
"388000931_64": "「この子ですよ」",
"388000931_65": "「ニャァ~」",
"388000931_66": "「ネコ……ッ!?\\n ど、どういうことでゴザルかッ」",
"388000931_67": "「錬金術をベースにしたあなたは、木遁が苦手でしょう?\\n <ruby=ごぎょうそうこく>五行相克</ruby>において、金遁は木遁に<ruby=か>剋</ruby>つ――」",
"388000931_68": "「金遁は解釈の幅広い術です。見てください。\\n 僕が口寄せで呼び出したこの猫、目が金色でしょう」",
"388000931_69": "「この『金』眼の黒猫こそ、僕の金遁。\\n つまり、あなたの天敵だったというわけです」",
"388000931_70": "「なんというか……\\n とんちみたいな話だな」",
"388000931_71": "「でも、実際にその子が勝敗を分けたのよね」",
"388000931_72": "「はい。この子はちゃんと、\\n アカオニの本体を探し当ててくれました」",
"388000931_73": "「僕はそれまで、術が解けないように耐え続ければよかった。\\n それが、僕とあなたの術比べの捉え方の違いです」",
"388000931_74": "「派手なだけの術を真似したって、\\n それは忍者になったとは言えないってわけだな」",
"388000931_75": "「わたしも学ばせてもらったわ。忍者とは、心の在り様。\\n 刃を支えるのは、いつだって心ということをね」",
"388000931_76": "「ええ。\\n それが忍の道というものです」",
"388000931_77": "「シノビの、道……」",
"388000931_78": "「…………ク」",
"388000931_79": "「ククク……フハハハハハハハッ!\\n <ruby=それがし>某</ruby>はこの小さなネコに敗れたでゴザルかッ! それはいいッ!」",
"388000931_80": "「どうやら、本当に……<ruby=それがし>某</ruby>はニンジャの道の入り口にすら\\n 立っていなかったようでゴザルな。いや、ユカイユカイ」",
"388000931_81": "「お主……いや、オガワ殿。\\n <ruby=それがし>某</ruby>、ニンジャの道の奥深さを教わったでゴザル」",
"388000931_82": "「このジュツ比べ、<ruby=それがし>某</ruby>の完敗にゴザルッ!」"
}

View file

@ -0,0 +1,63 @@
{
"388001011_0": "濃密な日の終わり",
"388001011_1": "「ずいぶんはっきりと負けを認めたわね」",
"388001011_2": "「なぁに、悟っただけでゴザルよ。<ruby=それがし>某</ruby>が名乗っていたニンジャなど、\\n さしたる価値のない虚像に過ぎないと」",
"388001011_3": "「されど、この地にて<ruby=それがし>某</ruby>はまことの『忍者』……\\n そう、真のニンジャマスターに出会うことができた」",
"388001011_4": "「オガワ殿……",
"388001011_5": " いや、マスターッ!」",
"388001011_6": "「へ、変な呼び方をしないでほしいのですが……」",
"388001011_7": "「<ruby=それがし>某</ruby>、心から感服したでゴザル。\\n 是非、マスターと呼ばせていただきたい」",
"388001011_8": "「そして、どうか<ruby=それがし>某</ruby>をマスターの弟子にッ!」",
"388001011_9": "「……は?」",
"388001011_10": "「いや、弟子って……。\\n そもそもあなた、二課を潰しに来たんでしょう」",
"388001011_11": "「そんなのは既に過去のこと、裏の家業はもうやめでゴザルッ! \\n もともと、クールだからやっていただけでゴザルしッ」",
"388001011_12": "「とんでもないぶっちゃけ方したな、おい」",
"388001011_13": "「ほ、本気なのはわかりますけど……\\n さすがに調子がよすぎるというか……」",
"388001011_14": "「まったくだ」",
"388001011_15": "「お、ダンナたち。\\n 無事だったみたいだな」",
"388001011_16": "「ああ、君たちのおかげで、被害は最小限に抑えられた。\\n アルカ・イズも全て処理した」",
"388001011_17": "「で、その男の処遇についてだが。当然ながら、\\n 逮捕ということになる。色々と聞きたいこともあるしな」",
"388001011_18": "「二課潰しをもくろんだ黒幕のこと、\\n 洗いざらい吐いてもらうぞ」",
"388001011_19": "「フッ、見損なってくれるなでゴザル。\\n 廃業したとはいえ、ジンギはダイジッ」",
"388001011_20": "「依頼主のことは、話せないでゴザル」",
"388001011_21": "「連行しろ」",
"388001011_22": "「了解しました」",
"388001011_23": "「あ、ちょっ、お主たち、何をするでゴザルッ!?\\n 今のウソ、話す、話すでゴザルからッ」",
"388001011_24": "「マスタァァァァァー……ッ!」",
"388001011_25": "「呼んでいるようだが……\\n おまえのことか」",
"388001011_26": "「よしてください……。\\n あれの面倒をみるなど、考えるだけで頭痛がします……」",
"388001011_27": "「いずれにしろ、あの男から情報を引き出して、\\n 雇い主を洗いだすのが急務だな。忙しくなりそうだ」",
"388001011_28": "「最後まで変な奴だったな……」",
"388001011_29": "「ともあれ、これで一件落着ね……\\n 終わってみれば、人的被害はなかったようでなによりだわ」",
"388001011_30": "「設備はそれなりにやられたがな。\\n まったく……予算には限りがあるというのに」",
"388001011_31": "「あら、<ruby=やすぶしん>安普請</ruby>を作り直すいい機会じゃない」",
"388001011_32": "「最新の防衛設備を<ruby=やすぶしん>安普請</ruby>とは、言ってくれるな」",
"388001011_33": "「わびしいですねぇ、\\n 平和を守る組織が懐の心配とは」",
"388001011_34": "「どうでしょう? ここはこの僕に投資して、\\n 世紀の大発明でひと儲けするというのは」",
"388001011_35": "「却下だ。ダイヴマシンのような危ういものを、\\n おいそれと作られてはかなわんからな」",
"388001011_36": "「フ……ハハハッ!\\n 驚くくらい締まらないなッ」",
"388001011_37": "「フフ……それじゃあ、わたしたちは帰りましょうか」",
"388001011_38": "「そういえば、ダイヴマシンの中には長くいたけど、\\n 現実世界では半日くらいなんだよな」",
"388001011_39": "「言われてみればそうね。\\n ほんと、濃密な半日だったわ」",
"388001011_40": "「お別れですね。\\n 皆さんには、なんとお礼を言えばいいやら」",
"388001011_41": "「わたしたちも貴重な経験をさせてもらったわ」",
"388001011_42": "「ああ。\\n 翼へのいい土産話ができたしな」",
"388001011_43": "「緒川さんに教わったこと、きっと忘れません」",
"388001011_44": "「ええ。僕も、並行世界に自慢の弟子ができて、\\n 嬉しいです」",
"388001011_45": "「草薙の教え、どうかこれからの皆さんの戦いに\\n 役立ててください」",
"388001011_46": "「それでは――」",
"388001011_47": "「ありがとうございましたッ!」",
"388001011_48": "後日・とある政府施設――",
"388001011_49": "「……あれから、どれくらい経ったでゴザろうか。\\n ここは日が差さぬゆえ、時間の経過がわかりにくいでゴザルな」",
"388001011_50": "「しかしッ!\\n <ruby=それがし>某</ruby>にとってこれしきのこと、なんでもないでゴザルッ!」",
"388001011_51": "「まことの忍者の戦いとは、<ruby=か>剋</ruby>つ――つまり耐え忍ぶことッ!\\n マスターからそう教わったでゴザルからな」",
"388001011_52": "「すなわちッ! これはマスターからの試練と言えるでゴザルッ!\\n ならば、超えてみせよう、この試練ッ」",
"388001011_53": "「試練を乗り越えて成長した<ruby=それがし>某</ruby>の姿を見たら、\\n マスターも弟子と認めてくれるはず」",
"388001011_54": "「再びまみえるときが楽しみでゴザルな、我がマスター。",
"388001011_55": " ククク……フハハハハハハハッ!」",
"388001011_56": "「…………ッ!?」",
"388001011_57": "「どうしたのよ。\\n 変な顔して」",
"388001011_58": "「いえ、なんだか寒気がしまして……」",
"388001011_59": "「風邪でも引きましたか? 休暇を願い出た\\n 英雄部隊の面々といい、あなたといい、情けないですねえ」",
"388001011_60": "「どうでしょう……。\\n ただの風邪なら、まだいいんですけどね」"
}

View file

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{
"388001111_0": "心の刃は、常に研ぎ",
"388001111_1": "アカオニとの戦いから数日後――",
"388001111_2": "「よう、翼、ダンナ。\\n お邪魔するよ」",
"388001111_3": "「奏ッ!?\\n どうしたの、急に」",
"388001111_4": "「次の定期報告はまだ先のはずだが。\\n 何か問題でも起こったのか」",
"388001111_5": "「それがさぁ、聞いてくれよ。\\n この間、忍者騒ぎでこことは別の並行世界に渡っただろ」",
"388001111_6": "「そのとき、あたしの世界のことを錬金術師たちに\\n 任せてきたんだけど、借りを返せー……なんて言ってきてさ」",
"388001111_7": "「借り……?」",
"388001111_8": "「ああ。錬金術をベースにしたエセ忍者の話をしたら、\\n 向こうの局長が興味をもったみたいでさ」",
"388001111_9": "「忍術についての情報を欲しがってるんだよ」",
"388001111_10": "「統制局長、アダム・ヴァイスハウプト……。\\n それはまた、厄介なやつに借りを作ってしまったことに……」",
"388001111_11": "「でも、忍術の情報と言われても……\\n 緒川さん、なんとかなりませんか」",
"388001111_12": "「術は直接伝承するのが基本ですから、\\n 渡せるようなものは何も……」",
"388001111_13": "「そもそも、緒川忍軍の秘伝ですので、\\n おいそれと教えるわけにもいきません」",
"388001111_14": "「だよなー。ま、それは向こうも承知の上だろうからさ。\\n 何かそれっぽいものを渡して誤魔化そうかなって」",
"388001111_15": "「誤魔化すって……大丈夫なの?」",
"388001111_16": "「連中と渡り合うには、\\n これくらいの図太さが必要なんだって」",
"388001111_17": "「それなら、この巻物を渡そう」",
"388001111_18": "「よいのですか?\\n 重要なものなのでは」",
"388001111_19": "「先日、実家の蔵を漁っていたら出てきたものでな。\\n 俺も内容は把握したからこそだ」",
"388001111_20": "「なに、雰囲気だけはあるが、中身はせいぜい『忍術入門書』と\\n いったところだ。惜しいものではない」",
"388001111_21": "「お、そりゃいいな。\\n 何事も基礎が肝要って言うしッ」",
"388001111_22": "「奏がそれでいいなら、いいんだけど……」",
"388001111_23": "「で、それはそれとして、ここからはあたしからのお願いだ。\\n 緒川さん、あたしに稽古つけてくれないか」",
"388001111_24": "「稽古ですか?」",
"388001111_25": "「せっかく並行世界の緒川さんから忍者の心得を教わったんだ。\\n こっちの世界の緒川さんとも、手合わせしたくってさ」",
"388001111_26": "「なるほど、そういうことですか。\\n 僕は構いませんよ。装者の訓練のお手伝いは、望むところです」",
"388001111_27": "「そういうことであれば、トレーニングルームを使うといい。\\n 話に聞くダイヴマシンほどではないが、色々と融通は利くさ」",
"388001111_28": "「サンキュー、ダンナッ!\\n それじゃ、さっそく始めるとしようかッ」",
"388001111_29": "「並行世界の緒川さんも強かったけど、\\n こっちの緒川さんはどうかな」",
"388001111_30": "「並行世界の僕と競い合うのもおかしな話ですが、\\n これは負けるわけにはいきませんね」",
"388001111_31": "「翼も一緒にどうだ?」",
"388001111_32": "「う、うんッ」",
"388001111_33": "「奏と緒川さんから一本とれるか……か。",
"388001111_34": " 緒川さん、お手合わせ、よろしくお願いしますッ」",
"388001111_35": "「よっしゃッ!\\n あたしの忍術、ご披露といくかッ」"
}