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"399000911_0": "諦めを選ばないもの、選んだもの",
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"399000911_1": "「――俺は1人だった」",
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"399000911_2": "「無能な父親は物心つく前に死んでいて、\\n 要領の悪い母親は俺がガキの頃に死んだ」",
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"399000911_3": "「両親を失ったガキから、周囲の大人は全てを奪い去った。\\n 金を、住処を、食べ物を、生きる方法を」",
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"399000911_4": "「奪われたならば、奪うしかなかった。\\n 生きていくために」",
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"399000911_5": "「――このクソガキがッ!\\n 親なしを育ててやってる恩を忘れやがってッ!」",
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"399000911_6": "「自分の物を取り返しただけなのに。\\n 俺は奪った以上の物を奪われた」",
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"399000911_7": "「生まれた時から多くを持つ奴らは、\\n 俺がいくらかを奪ったところで、溢れるほどに残っていやがる」",
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"399000911_8": "「だが俺は違った。\\n 奪った以上を奪われれば、何も残りはしない」",
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"399000911_9": "「誰もが俺には価値がないと断じた。\\n 価値がなければ何をしてもいいと侮った」",
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"399000911_10": "「ヒトらしく生きたくて、たった1度奪っただけの俺は、\\n 全ての尊厳を奪われて、ヒトたる権利すら失った」",
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"399000911_11": "「そして今――、\\n 命すら失おうとしている」",
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"399000911_12": "「クソが……、\\n 俺が何をしたってんだ……」",
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"399000911_13": "「ヒトなんてどいつもこいつもクズしかいねえ。\\n 自分が楽をするために、奪ってもいい誰かを探してるだけだ」",
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"399000911_14": "「どうせいつか死ぬくせに、\\n 暇さえあれば誰かを苦しめて……俺を馬鹿にして……」",
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"399000911_15": "「滅んじまえばいいんだ、ヒトなんて、\\n こんな世界なんて……」",
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"399000911_16": "「なんだよ、ここ……墓か? \\n ハッ……そんなに俺に死ねってのか……?」",
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"399000911_17": "「死ねばいいんだろ……。\\n お望み通り、もう持たねえよ……」",
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"399000911_18": "「ああ、ちくしょう……\\n 神様仏様……王様……なんだっていい、誰だっていい……」",
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"399000911_19": "「俺の願いを叶えてくれよ……\\n それかこのクソみたいな想い出を……俺から消し去ってくれ……」",
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"399000911_20": "「ちくしょう……ちくしょう……、\\n こんな世界、滅んじまえ……」",
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"399000911_21": "「どうして……\\n ほんのすこし……たった一欠片……」",
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"399000911_22": "「俺にだって、\\n 誰かが、愛を、くれたなら……」",
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"399000911_23": "「……やりなおして……、\\n もう1度、……」",
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"399000911_24": "(――♪\\n ――――♪)",
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"399000911_25": "(おやすみ――おやすみ――。\\n 今は泣いているぼうや――眠りは優しいから――)",
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"399000911_26": "(おやすみ――おやすみ――。\\n 闇はこわくない――ぼうやを包みこむ――)",
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"399000911_27": "「おやすみ……おやす、み……♪\\n ゆっくり……目を、閉じて――」",
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"399000911_28": "「母……さん……」",
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"399000911_29": "「…………」",
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"399000911_30": "「この身体は……\\n この記憶は……想い出は……?」",
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"399000911_31": "「私は――俺は――",
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"399000911_32": " 否……我こそは、この場で最も強く満つ、真なるヒトの想い」",
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"399000911_33": "「誰かを呪い、恨み、奪い、そして殺す。\\n それが、我。ヒトという生き物、ヒトの世界に満つ真実……」",
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"399000911_34": "「だが、この身体は……?",
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"399000911_35": " ……そうか……」",
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"399000911_36": "「その真理を知る我こそが、\\n かつてのヒトの王の器を持ちここに在ることは、紛れもなく運命」",
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"399000911_37": "「――――」",
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"399000911_38": "「……ヒトよ、新たなる我の、最初の民よ。\\n その呪い、その願い、確かに叶えよう――」",
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"399000911_39": "「だがもし、お前が求めた小さな愛とやらが、\\n 本当にあるのだとすれば――」",
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"399000911_40": "「この世界、我こそが再誕させようぞ」",
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"399000911_41": "「爺さん、1人でこんなところをうろつくたあ、\\n 不用心だったなぁ?」",
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"399000911_42": "「なんだ、時計の1つもつけてねえ。\\n 使えねえジジイだ」",
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"399000911_43": "「――愛がない」",
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"399000911_44": "「あ? ――なんだ、こいつはッ!?」",
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"399000911_45": "「あなた、わたしの祖父に似ているの。\\n よかったら少しお話をしませんか――」",
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"399000911_46": "「……」",
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"399000911_47": "「このおじいさんがわたしに酷いことを……ッ!\\n 怖かったわ、あなた……」",
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"399000911_48": "「おいおい、人の妻に手を出すとは、\\n こりゃ大事だなあ?」",
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"399000911_49": "「――お前たちにも、愛はないのか」",
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"399000911_50": "「うおッ!?\\n な、何すんだ、やめ……」",
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"399000911_51": "「あ――あああッ!?」",
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"399000911_52": "「この目で世界を見た。世界を識った。\\n 哀しきヒトの子が願った愛を探した……」",
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"399000911_53": "「だが、それでも」",
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"399000911_54": "「ヒトが求めた愛など、\\n どこにもありはしなかったのだ」",
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"399000911_55": "「この力も、得た身に馴染みつつある。\\n この世界を、愛で満たすには……1度、壊してしまわねば」",
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"399000911_56": "「そのための障害となるのは……」",
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"399000911_57": "「僕は人を護ろう、 \\n ソロモン、キミが人を治めるのなら」",
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"399000911_58": "「そのための組織だからね、\\n 錬金術師協会は」",
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"399000911_59": "「これは……\\n かつての我を形作っていた……想い出……なのか?」",
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"399000911_60": "「なるほど――ヒトを護る組織もある。\\n 下らぬことを目的に据えているが……この男は、よもや……」",
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"399000911_61": "「……ならば力を蓄え、動きを妨げ、\\n 必ずや目的を遂げねばなるまい」",
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"399000911_62": "「我はソロモン。ヒトの嘆きを知る、知恵の王。\\n ヒトの望みし終わりへ導く王が故に」 ",
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"399000911_63": "「え――――?」",
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"399000911_64": "「ソロモンの中から、何かが……\\n あの子を……貫いた……ッ!?」",
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"399000911_65": "「立花、響――ッ!!!」",
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"399000911_66": "「あ……く……ソロモンの杖が、\\n どうしてソロモンさんの中から……ッ!?」",
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"399000911_67": "「我こそが、ソロモンの杖。\\n ヒトがヒトを殺す兵器の格納庫……バビロニアの宝物庫を統べる者」",
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"399000911_68": "「そしてヒトの真なる想い、\\n この世界の滅びを願う、絶望から生まれし救世主」",
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"399000911_69": "「ヒトを正しき<ruby=みらい>未来</ruby>へ導く、\\n 真なる王である」",
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"399000911_70": "「ヒトの想い……絶望……?」",
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"399000911_71": "「喋ってる場合じゃないわよッ!\\n 治療をしないとッ!」",
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"399000911_72": "「大丈夫です、ギアを纏っていれば……、\\n わたしはまだ、折れていな――ぐうううッ!?」",
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"399000911_73": "「なんで、ギアのバリアが……\\n 効いてない……ッ!?」",
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"399000911_74": "「シンフォギア――なるほど確かに、\\n 唄い伝え、繋ぐための技術なのだろう……」",
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"399000911_75": "「だが……ヒトは死ぬ。どれほど生きようとも。\\n その不可逆には、誰も抗えはしない」",
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"399000911_76": "「故に、殺すのだ。殺し尽くすのだ。二度と心が生きぬよう。\\n 二度と、希望など唄わせぬように」",
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"399000911_77": "「希望など抱くから、絶望は深くなる。\\n 哀しみは<ruby=かいびゃく>開闢</ruby>より続き……それ故、ヒトは愛を棄てるのだ」",
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"399000911_78": "「それこそが、ヒトを殺さんとするヒトの殺意」",
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"399000911_79": "「――ッ!?」",
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"399000911_80": "「ヒトを護らんとする意思よりも、\\n ヒトを害さんとする意思が優るのは当然のこと」",
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"399000911_81": "「ヒトは滅ぶ。\\n 他ならぬヒトの意思が故に――ッ!」",
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"399000911_82": "「これは――ッ!」",
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"399000911_83": "「……崩壊していくッ!\\n 世界が……オレの、識るべきものたちが……ッ!」",
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"399000911_84": "「崩壊を……留め、きれない……ッ!」",
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"399000911_85": "「本気で世界を終わらせるつもりなのッ!?\\n ソロモンの杖が、――聖遺物の意思がッ!?」",
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"399000911_86": "「……我が意志ではない、ヒトの意思だ」",
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"399000911_87": "「違うッッ!!」",
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"399000911_88": "「人は、憎み合うだけじゃない……」",
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"399000911_89": "「争うことになった人とだって手を繋げるって、\\n わたしは知っているから……」",
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"399000911_90": "「手を取り合えるヒトなど極僅かに過ぎん。\\n 比較にならぬほど膨大な、ヒトを憎むヒトの想いがある」",
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"399000911_91": "「ヒトはヒトを憎む。\\n すなわち、ヒトはヒトに憎まれている」",
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"399000911_92": "「貴様たちの言う愛とて、\\n どれだけが憎に転換されてきた?」",
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"399000911_93": "「誰かを恨み、誰かから恨まれるだけの世界。\\n 他者を憎み、他者から憎まれるだけの存在」",
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"399000911_94": "「世界ごとなくなってしまえば、\\n 分解されたまま再構築に至ることもなければ――」",
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"399000911_95": "「愛は増悪に再構築されることも、\\n 殺意に転じることもない」",
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"399000911_96": "「ヒトがいなければ……\\n ヒトはもう、ヒトを殺すまい」",
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"399000911_97": "「絶望の輪廻転生にとらわれることはない。\\n シンフォギア、貴様にもまた……優しき終わりが訪れよう」",
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"399000911_98": "「故に、ここで終わること、それこそが愛ッ!!\\n 二度と壊れぬよう、ここで散るが良いッ!!」",
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"399000911_99": "「か、身体がッ!?」",
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"399000911_100": "「我が打ち込んだ崩壊の因子だ。\\n フォニックゲインで抗っているようだが、長くは持たぬ」",
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"399000911_101": "「わたしの身体が分解されてる……、\\n このまま、消える、なくなって……」",
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"399000911_102": "「――ッ」",
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"399000911_103": "「それでも、\\n わたしは、進むことをやめたりなんかしない……ッ!」",
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"399000911_104": "「……それほどに、震えているのにか。\\n 安心せよ、その恐怖すらも――終わりは包み込む」",
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"399000911_105": "「そうだね……震えてる。\\n 死んだら、生き返ることなんてできない」",
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"399000911_106": "「そうしたらもう、わたしは……\\n 大好きな人たちに会えなくなってしまう……」",
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"399000911_107": "「だから――死ぬのは怖いッ!\\n 消えてしまうのは嫌だッ!」",
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"399000911_108": "「――――」",
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"399000911_109": "「だと、してもッ!!」",
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"399000911_110": "「この世界のプレラーティさんが……\\n ううん、この世界だけじゃないッ!」",
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"399000911_111": "「わたしが<ruby=たお>斃</ruby>し、時に手を取り乗り越えてきた人たち全員が、\\n 命を賭してわたしに教えてくれていたッ!!」",
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"399000911_112": "「わたしがここで消えてしまってもッ!\\n わたしがしてきたことを、明日に繋げてくれる人たちがいるッ!」",
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"399000911_113": "「それがたとえわたしじゃなくたって……\\n 人は、想いを背負って歩いていける……ッ!」",
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"399000911_114": "「あなたが背負っていることだって……",
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"399000911_115": " それと、何ひとつ変わらないはずだッ!!」",
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"399000911_116": "「――――」",
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"399000911_117": "「その想いだって、世界がなくなってしまったら……\\n 誰も繋げなくなってしまうッ!!」",
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"399000911_118": "「だからわたしは、わたし自身の最期まで、この生命を使うんだ。\\n 明日へ向かう人のために……ッ!」",
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"399000911_119": "「恐怖を認め、まだ立とうとするか……。\\n 如何に研磨し鍛え上げれば、このような精神が生まれるのだ」",
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"399000911_120": "「わたしは1人で立つんじゃない。\\n 信じてくれる人、護りたい人、みんなが支えてくれているッ!」",
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"399000911_121": "「……そのようなヒトは存在せぬ。\\n 世界が終わる中で、ヒトを想えるヒトなどありはしない」",
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"399000911_122": "「ああ……そうだとも。\\n そんな心強きヒトを、私は識らない――」",
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"399000911_123": "「…………。\\n よかろう、そのことを証明してやろう――」",
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"399000911_124": "「空に、街が映し出されて……ッ!?」",
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"399000911_125": "「きゃああああッ!?」",
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"399000911_126": "「未来――ッ!!!」",
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"399000911_127": "「想い出を焼却したノイズ、\\n そして数多のノイズに囲まれ、もはや長くはない」",
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"399000911_128": "「他のシンフォギアも同様だ」",
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"399000911_129": "「くそッ!\\n このままじゃキリがねえッ!」",
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"399000911_130": "「だとしてもッ!\\n 諦めないデスッ!」",
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"399000911_131": "「これ以上、世界を壊させないッ!」",
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"399000911_132": "「諦めるものかッ!\\n たとえこの身が砕けようとも、最後の一瞬まで――ッ!」",
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"399000911_133": "「少しでも長く戦い続けることでッ!\\n きっとあの子たちの助けになるはずッ!」",
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"399000911_134": "「どけッ! あたしが、あたしの世界を――、",
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"399000911_135": " ぐああああッ!」",
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"399000911_136": "「これより、貴様を支える全てが失われる」",
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"399000911_137": "「そんな――みんなが……ッ!」",
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"399000911_138": "「終わりだ。\\n 絶望を――この愛こそを、受け入れるのだ」"
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